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4.2 ホットフィラメントと CEM による中性化された Rb 原 子の検出子の検出

4.2.2 実験

実験準備

実験系の配線図を図4.11に示す.

まず,Rbイオン源の温度を昇温しRbイオン引き出しの準備を行った.400 C/hour で温度が上昇するように調整し,定常的な運転を行う700∼800 Cまで加熱した.Rb アンプルはオーブンからの輻射で同時に加熱されていくので,アンプルについている熱電 対で温度をモニターした.Rbアンプル,イオン源本体チェンバー,ターボ分子ポンプな どの冷却水系に冷却水を流し,過熱を防止した.

また,昇温と同時に引き出し電圧を与える引き出し電極と,引き出しの為の電場整形を 行う追い返し電極におよそ1.5 kV程度の電圧を印加した.ターゲット温度がおよそ600

C程度から表面イオン化が起こりはじめ,Rbイオンによるカレントが診断系ファラデー カップで観測できるようになった.

イオン源温度が安定した後,まず診断系ファラデーカップに最適化して引き出している Rbイオンのカレントを測定した.典型的なRbイオンビームのファラデーカップでのカ レントは10 nA程度である.

次にカレントインテグレータを中性化器オーブンに繋ぎ変え,三連四重極電極の電圧を 調整してRbイオンビームが最も多く中性化器に入射されるように調整した.こちらは典 型的には数nARbイオンが入射されていた.

最後に再びカレントインテグレータを診断系ファラデーカップに繋ぎ変え,設定を変更 せずにRbイオンビームのカレントを読み取った.今後,ここで読み取れるRbイオンの ビームカレントと中性化器に入射しているRbイオンのカレントの比は変化しないとし て,加熱を行い中性化器で直接Rbイオン入射カレント量が読み取れなくなっても診断系 ファラデーカップの読み値からその値を推定できるようにした.

また,中性化器を400 C/hour程度で,実験を開始するおおよその温度である800∼ 1000 C付近まで加熱した.

ホットフィラメントに定電流電源でおよそ1 Aの電流を印加し,フィラメントを赤熱 させた.また,CEMにおよそ−1.7 kVの負電圧,リフレクターに数Vの正電圧を印加 した.CEMの出力シグナルをカレントインテグレータへと接続し,そのパルス化された 信号をスケーラーで計数出来るようにした.

4.11 ホットフィラメントとCEMによる中性化されたRb原子の検出実験配線図

以降の実験を行う際の,典型的なRbイオン源,中性化器,静電三連四重極電極及び ホットフィラメントとCEMの動作パラメータを表4.24.44.34.5にまとめる.

ヒーター温度 850C

加速電圧 1284 V

加速電極リーク 0.3µA 追い返し電圧 967 V 加速電極リーク 510µA Rbアンプル温度 87C

4.2 典型的なRbイオン源パラメータ

中性化標的温度 1057C ヒーター電圧 13.3 V ヒーター電流 14 A 中性化標的印加電圧 −1000 V 中性化標的リーク電流 0µA

4.3 典型的な中性化器パラメータ

AC+ 67 V AC- 56 V B+ 48 V B- 51 V

4.4 典型的な静電三連四重極電極パラメータ

フィラメント電流 1 A フィラメント電圧 1.2 V

CEM電圧 -1700 V

CEMリーク電流 146µA

4.5 典型的な検出系パラメータ

測定

中性化器の特性を考える上で重要なパラメータについて以下の測定を行った.

!中性化標的電圧依存性測定

イオン化器から放出されたイオンは中性化標的に印加する負電圧によって引きつけら れ,標的表面に集まり中性化される.負電圧を強く印加するほど標的がイオンを引き付け る能力は上昇するので,それによる中性化器の性能変化を調べた.中性化標的温度を固定 し,中性化標的に印加する電圧を0∼ −1700 Vで変化させてCEM計数率の変化を測定 した.

!中性化標的温度依存性測定

中性化器のオーブンまたは中性化標的でイオン化/中性化されたRbはその金属表面か ら熱エネルギーによって放出される.この離脱過程は金属表面の温度が高いほどより活発 になるため,中性化器出力には温度依存性が存在する.中性化標的にある電圧を印加し,

中性化標的温度を700∼1000Cの間で変化させてCEM計数率の変化を測定した.

!ビームプロファイル測定

中性化器から出力されるビームの形状はおおよそ中性化器の中性化標的とオーブン穴の 幾何学的形状によって決定される.中性化器から設計どおりのビームプロファイルを持つ 原子線が出力されているか確認するためにビームプロファイルを測定した.中性化器オー ブンの穴の直径は6 mmの設定としている.中性化標的温度を1000 C,中性化標的印

加電圧を-1000 Vとして,ホットフィラメント位置を変化させてCEM計数率を測定し,

ビームプロファイルを測定した.

!中性化器出力減衰測定

中性化器に入射されたFr原子はその寿命よりも充分に短い時間で外に放出される必要 がある.中性化器内部にある原子の放出を測定するために,イオンビーム遮断後の中性 化器からの出力の減衰曲線を測定した.中性化標的温度,中性化標的印加電圧を固定し,

中性化器直前のゲートバルブを閉じてRbイオン源からのイオンを遮断する.その後の CEM計数率の時間変化を測定した.

4.2.3 実験の結果と考察

!中性化標的電圧依存性測定

CEM計数率の中性化標的に印加する電圧依存性のグラフを図4.12及び図4.13に示す.

中性化標的に印加する電圧の上昇に伴って,CEM計数率は上昇している.当初は中性 化器のプラチナ壁から熱的に放出されるイオンを引き寄せれば良いと考えていたため,数 百V以上の電圧ではCEM計数率は頭打ちになると予想していた.しかし,実際にはそ の値を超えてもCEM計数率は増え続けている.これは,高電圧をかけることによって中 性化器壁面から離脱するイオンを中性化標的がより効率的に引き寄せることが出来るよう になったためである.電圧上昇によるCEM計数率の限界は見えていないが,電圧印加電 源のリークカレントが大きく装置が破損する可能性があったため,−1.7 kV以上の電圧 での実験は行うことが出来なかった.

!中性化標的温度依存性測定

CEM計数率の中性化標的の温度依存性の測定結果を図4.14及び図4.15に示す.

中性化器の温度の上昇に伴って,CEM計数率は上昇している.中性化器の温度が上昇 するに従って中性化標的や中性化器オーブンの表面から原子が離脱しやすくなったためで あると推察される.この実験においては,温度上昇によるCEM計数率の限界点は見えて いないが,温度上昇に伴って中性化標的電圧印加電源のリークカレントも増加し,装置に 影響があると判断したため,1100 C以上の測定は行わなかった.

!ビームプロファイル測定

ビームプロファイル測定の結果を図4.16に示す.中性化器から広がりを持った出力が 存在することが分かる.横軸は検出器を移動させている直線導入器の目盛り読みである.

今回は広がったビームの半分程度しか検出できなかったと思われるため,ビーム中心の絶 対位置は特定できなかった.

!中性化器出力減衰測定

Rbビーム遮断後のCEM計数率の時間変化を図4.17に示す.Rbイオンビーム遮断の 為のゲートバルブの開閉に時間がかかるため,時間のゼロ点はRbビームを遮断し始め た時点からいくらか時間が経過している.ゲートバルブを閉める直前のCEM計数率は 1173 count/sであった.

この出力の減衰曲線を考えるために,中性化器内部の原子の動きを単純化したモデルを

考える(4.18).中性化器に関係する原子には,以下の3つが存在するとする.

(1) 中性化標的から出て,オーブンに開いた穴を通り抜け検出される原子 (2) サイクルから失われ,検出もされない原子

(3) 中性化器内部に存在し,中性化とイオン化を繰り返している原子

この中で,(1)及び(2)は,時間あたりにある一定の確率で(3)から生じるとする.

上記を仮定して,Rbを入射し続け定常状態にある中性化器の出力を遮断した場合を考 える.ある一定時間T で測定を繰り返すとすると,先程分類した3つの原子はそれぞれ,

(1) D[i+ 1]=R[i]×PD

(2) S[i+ 1]=(R[i]−D[i+ 1])×PS

(3) R[i+ 1]=R[i]−D[i+ 1]−S[i+ 1]

ただし初期値としてD[0]=初期原子数×PD,S[0]=(初期原子数−D[0])×PS,R[0]=初期 原子数−D[0]−S[0]PD及びPSはそれぞれ一定時間Tの間に原子が観測される確率,失 われる確率である.

測定して得られるのは(1)であるから,測定結果を(1)でフィッティングを行えばPD

及びPS を求めることができる.図4.17中の赤線はフィッティングの結果であり,これ より,PD= (0.39±0.0097)×102PS = (6.2±0.35)×102であることが分かった.

あまり存在しないと考えていた,失われる成分が多いことが分かる.壁面への原子の吸着 は,中性化器が高温であることから考えにくいので,この失われる成分はイオンビーム入 射口から出ていってしまう成分である.これは高いイオン化効率を持つオーブンであって も,一部は中性原子として放出され,ビーム入り口から出ていってしまう原子が存在する ためと推測される.

長時間経過しても一定の成分が存在するが,これは測定チェンバー内に充満してるRb