第 7 章 GEM の中性子検出器への応用 64
7.4 B-GEM の中性子変換層としての利用
中性子変換層として、B-GEMを複数枚使用するため、生成された電子をいかに増幅部へと転送 するかが重要になる。しかし、電子がGEMを通過する際には必ず収集効率と引き出し効率が効い てくるので、そのままの数の電子を検出する事は不可能である。そのため、GEMの増幅機能を利 用して、電子が収集され失った分をB-GEMの部分で増幅させ、孔に入った時と同程度の電子の数 を検出するように補正をする必要がある。
7.4.1 セットアップ
実効ガス増幅度が1となる∆VGEMの探索をするために、図7.3のようにGEMを3枚利用して 測定を行った。この時の各領域での電場等は表7.1のように設定した。
図7.3: セットアップ図
表7.1: 実効ガス増幅度が1となる∆VGEMの探索での各測定時の設定
パラメーター 使用ガス ∆VGEM1 ∆VGEM2、3 ED ET1 ET2 EI (V) (V) (kV/cm) (kV/cm) (kV/cm) (kV/cm)
∆VGEM1 P10 120∼300 350 0.3 2.1 2.1 3.5
ED P10 210 350 0.1∼1.0 2.14 2.14 3.5
ET1 P10 210 350 0.3 0.2∼2.1 2.1 3.5
∆VGEM1 P10 225∼265 350 0.3 0.35 2.1 3.5
∆VGEM1について2回測定しているが、これは1回目で考えていた設定がうまくいかなかった ので、探索方法を変えて、もう一度測定を行った。
7.4.2 実効ガス増幅度が 1 となる ∆V
GEMの探索
まず、GEM1の電圧である、∆VGEM1を下げる事により増幅を抑えられ、ある一定の値からは 一定の電子しか増幅されないと予想し測定したが、測定結果である図7.4からわかるように、増幅 が起こっているために一定にはならず、さらに電圧を下げるとデータすら得られなかった。つまり、
増幅が起こらないと測定をする事が出来ないという事になる。
図7.4: ∆VGEM1に対するガス増幅度の変化
次にGEM1の電圧を低く設定し、GEM1における収集効率、引き出し効率をED、ET1を変え る事により測定した。また、効率表記では比較がしにくいので測定に用いるADCの電荷量を縦軸 にとったデータをとった。それぞれのデータは以下の図7.5、図7.6である。
図7.5: EDに対するADCの電荷量の変化
図 7.6: ET1に対するADCの電荷量の変化
GEMを多数積層する場合、RTでは収集効率が多く得られる値に設定する。そのため、引き出 し効率が低い値に設定されてしまう。これでは、GEMに戻る電子の数が多くなってしまうので、
これを解消するために、∆VGEM1を変えた時のADCの電荷量の値が、EDに対するADCの電荷 量の変化を測定した時に得られた値と同じ値になる点を探索することにした。その探索結果が図 7.7である。
図 7.7: 適切な∆VGEM1の探索
∆VGEM1を操作する事で、引き出し効率の効果を上げる事ができたといえる。この結果から、
∆VGEMを約240Vに設定する事で生成された電子の数と同じ値が得られる、と言える。
7.4.3 検証実験
実際の測定では、変換層として複数枚のGEMを使用するため、実効ガス増幅度が1になるよう な∆VGEMのGEMを複数枚挿入した場合としない場合で、値が同じになるかを検証した。
具体的なセットアップを図7.8、図7.9に示す。この時の各領域の設定は表7.2のように設定した。
図7.8: 変換層なしのセットアップ 図7.9: 変換層ありのセットアップ 変換層を加えた時は、∆VGEM1、2を予想していた値240Vあたりの3点に変化させて、測定し た。そして得られた結果が図7.10である。
表 7.2: 実効ガス増幅度が1で動作しているかの検証実験時のセットアップ
セットアップ 使用ガス ∆VGEM1、2 ∆VGEM3、4 ED ET1、T2 ET3 EI (V) (V) (kV/cm) (kV/cm) (kV/cm) (kV/cm) 図7.8 p10 なし 350 0.3 なし 1.75 3.5
P10 240 350 0.3 0.3 1.75 3.5
図7.9 P10 242 350 0.3 0.3 1.75 3.5
P10 243 350 0.3 0.3 1.75 3.5
図7.10: ∆VGEM1、2を変化させた時のMean値の変化
図7.10でわかるように、変換層がない時に得られたMeanの値とほぼ同じ値が得られた。これ によって、GEMを複数枚用いても、∆VGEMを240Vあたりに設定する事でGEMを変換層とし て使用する事が可能であることがいえる。
7.5
10B の厚みによる計数率の変化
自然界のボロンは10Bと11Bが混在している。中性子と反応するのは10Bのみであり、その割 合は約20%程度である。そこで、GEMにコートするボロンは10Bを濃縮したものを用いる必要 がある。今回用いた材料は10Bの割合が99%以上のものである。
まず、GEMにコートする10Bの厚みを変えて計数率の変化を調べた。厚みは前節で述べたよう に、1.2µm、2.1µm、2.4µmの3種類である。
7.5.1 セットアップ
チェンバー内は図7.11のようにセットアップし、図7.12のようにチェンバーと線源(252Cf)の 間に減速材としてポリエチレンを置く事で中性子の速度を下げさせ、室温程度の熱中性子を捕らえ させる。この時の各領域の設定は表7.3のように設定した。
図7.11: チェンバー内のセットアップ図
図 7.12: 測定の概略図 表 7.3: B-GEMの厚みに依存する計数率の測定時の設定
使用ガス ∆VGEM1 ∆VGEM2 ED ET EI
(V) (V) (kV/cm) (kV/cm) (kV/cm)
Ar-CO2 233 520 1.5 1.5 6.5
7.5.2 測定結果
測定結果は図7.13である。図からわかるように10Bの厚みを増やす事によって検出効率を上げ る事が出来る事がわかる。しかし、このまま10Bの厚みを増していっても、荷電粒子が10Bの中 で止まってしまいガス中に出てくる事ができない。そこで、次の節では先ほどの変換層の部分で述 べたようにB-GEMの枚数を増やす事で検出効率がどのように変化するかを測定する。
図 7.13: 10Bの厚みに対する検出効率の変化