第 8 章 中性子ビームによる検出器の性能評価 78
8.1.1 昨年度の結果
昨年度の結果について紹介する。昨年度は二次元読み出しストリップのピッチは1.6mmピッチ、
読み出しシステムは旧システムを使用した。
このセットアップで図8.3に示すように円形ビームプロファイルとカドミニウムで作ったスリッ トでの画像データを取得した。
図8.3: 円形ビームプロファイル(左図)、カドミニウムスリット(右図)の画像データ 中性子ビームであるので、角度分散が小さいのでスリットを検出器の前にセットしてもシャープ な画像が得られる。
次に検出効率を評価するために、10気圧の3Heのワイヤーチェンバーと比較した。このとき、
B-GEMを用いた検出器は熱中性子ビーム(2.2Å)を十分細かくコリメートした。3Heワイヤー チェンバーの検出効率を100% とすると0.6µm厚の10Bを両面にコートしたGEMを8枚積層し たチェンバーでの検出効率は24% となった。この値は前節で述べたシミュレーションの値とほぼ 違わない値である。
次に、位置分解能を評価するために、直径0.5mmのピンホールを使って、信号の拡がりを見た。
ピンホールは検出器のすぐ手前に置いている。その結果は図8.4となっている。
ほとんどの検出位置はひとつのストリップであり、隣のストリップは約一桁落ちとなっている。
そのさらに隣となるとさらにもう一桁落ちる。この位置分解能はストリップのピッチ幅1.6mmで 制限されていると言える。今年度は0.8mmピッチの読み出しを用いて再測定をした。
そして、検出器全体の性能を評価するために、細いビームを固定して、検出器を上下左右に16mm ステップで動かして特性を調べた。その結果が図8.5である。
きれいに16mmステップにビームを検出する事が出来ている。ストリップピッチ1.6 mmピッ チと比較して、GEMの孔ピッチが十分に狭い140µm、すなわち0.14mmであるので、GEMチェ ンバーでは、原理的に平行電場で読み出しボードまで電子を運ぶ事ができ、検出位置にひずみが生 じない。測定した検出効率を測定器の中央で規格化した結果が表8.2である。
この結果から、検出効率のばらつきはせいぜい±5% 程度である。検出器効率のばらつきに関
図8.4: 直径0.5mmのピンホールを用いた時の信号の拡がり
図8.5: 16mmステップでテストチェンバーを動かした時の検出位置
表8.2: チェンバーの中心で規格化した検出効率のばらつき 1.00 0.98 1.03 1.02 0.99
0.97 0.99 0.98 1.02 0.98 0.98 0.99 1.00 1.00 0.98 0.97 1.01 1.00 1.01 0.98 1.00 1.05 1.03 1.02 0.98
ここまででB-GEMを用いた検出器の基本特性を測定できたといえる。そこで、サンプルを用い て広角散乱のテストを行った。図8.6のようにセットアップをし、ビームが直接チェンバーに入ら ないようにした。
図 8.6: MUSASIでのサンプルテストのセットアップ
中性子の波長は2.24Å で固定であるので、ブラックピークが見えるようにサンプルを回転させ ながらデータ収集を行った。サンプルは、単結晶のK2SeO4とNaClの2種類である。検出できた ピークの拡がりは、コリメータの広さやサンプルの大きさで決まっている。まず、NaClの測定を 行い、ブラックピークが測定できるかを確認した。その結果は図8.7のようになっている。各ピー クの散乱角と対応するhkl指数を示してある。図からわかるようにチェンバーで測れる領域内にあ るすべてのピークを捕らえる事が出来た。
また、K2SeO4のサンプルテスト結果を図8.8にしめす。図からわかるように、広角散乱まで捕 らえる事が出来、ラウエ斑点を捕らえている。
図 8.7: 単結晶NaClのブラッグピーク 図8.8: 単結晶K2SeO4のブラッグピーク