第 8 章 中性子ビームによる検出器の性能評価 78
8.4 MINE1
8.4.4 今年度の結果
今年度のセットアップは図8.44のようにした。読み出しのシステムとしては新システムを使用 している。
図8.44: セットアップ図
今回は中性子の変換層としてはB-GEMは用いず、アルミニウムのカソードの両面に2.0µm厚 の10Bを蒸着させたB-Alを利用した。また、今回のビームテストでは0.8mmピッチの二次元読 み出しストリップではなく、図8.45のようなサイズが6mm×24mmのパッドを4×16並べた片面 の読み出しボードを上側と下側で読み出す事を試みた。しかし、読み出しのエレクトロニクスの制 限やチェンバーの構成上の理由から、図8.46のように上下の読み出しボードをつなげて信号を検 出している。つまり、パッドの数は128個あるが、読み出しとしては64chである。
図 8.45: 今年度のMINE1のビームテストで 使用した読み出し基盤
図 8.46: 上下の読み出しをつなげている様子
このようなセットアップで昨年度と同様に中性子ビームと検出器の間に何も置かずに中性子の時 間に依存する強度を測定した。その結果が図8.47である。
図 8.47: 中性子共鳴スピンエコー法により時間に対する強度をもった中性子を検出した結果 今回の共鳴現象は110kHzでおきている。このサインカーブをAsin(f x+c) +Bという関数で フィッティングし、このときに得られた、AとBの値を計算することによって得られた値をビジビ リティーと呼ぶ(A/B)。このビジビリティーという値がサンプルなしの状態で高いものが良い検 出器となる。今年の測定データから得られたビジビリティは0.50であった。昨年度の測定データ から得られるビジビリティーは0.67であるため、昨年度よりも悪くなったといえる。
この理由はMINE2の時に判明した読み出し基盤の材質である、ガラスエポキシ樹脂が影響して いるのではないかと考えられる。特に今回のセットアップでは上下に読み出しをセットアップして いるため、散乱する割合が高くなっている可能性が高い。
また、今年度はビームの波長分布を測定することを試みた。このMINE1の波長分布の測定は既 存の検出器では見ることが出来ていない。
ビームの一番上流にチョッパーを置き、ビームの波長分布を見た。チョッパーは26Hzで動いて いるため、約40msecの広範囲のデータになる。また、MINEのビームラインのセットアップによ り、中性子の波長分布が8Å∼9Å に制限されているため、図8.48のような分布図が測定される。
このビームの波長分布が見えている部分を拡大すると、図8.49のようになる。チョッパーを入れて いることでビームの強度が落ちているため(約1/100)、統計数が少ないが先程のサインカーブと同 様にフィッティングを行うと、周期が109kHz、ビジビリティーが0.71という値が得られた。この ように、全ての範囲でビジビリティーの測定が可能であるため、サンプルを置いた時の波長分布の 測定も可能であり、中性子共鳴スピンエコー法に有用である事がわかる。また、10nsecでサンプ リングしているため、これよりも細かいデータも見ることが出来る。
図 8.48: チョッパーを置いた時のMINE1の 波長分布図
図 8.49: 波長分布の中で見える共鳴現象の様子