北 海 道 草 地 研 究 会 報 第 四 号 1985・3
以上の結果を踏まえて、今後は本研究の趣旨にしたがい、移植個体の充実度、移植時期、土中の移植 位置などを処理したさらに詳細な検討が課題となる。
1
. はじめに
根釧地方にあミけるチモシ‑草地の生産性向上 に関ナる土壌肥料学的研究
第2報 牧草収量に対する植生条件と窒素施用量の影響
木曾誠二(根自il農試)・菊地晃二(北見農試)
根釧地方の採草地での生産性向上を図るためには、草地の植生状態(いわゆる草種構成)を考慮した 施肥管理を行うことが重要であることを、前報で指摘した。本報では、ひき続き道東7地域で植生条件 の異なる草地にヲいて窒素用量試験を実施し、実用的視点より牧草収量と植生および窒素施用量との関 係について検討したので、その概要を報告する。
2 .
試験方法(1 )調査地域および土壌条件
調査地域は、根室支庁管内では中標津町、別海町(上春別)、釧路支庁管内では標茶町(虹別)、厚 岸町(大田)、阿寒町、音別町さらに十勝支庁管内は大樹町で計7地域である(図‑ 1)。なお、それ ぞれの地域における土壌の種類は、厚岸町が厚層黒色火山性土、標茶町は未熟火山性土、音別町は掲色 低地土で、その他の4地域は黒色火山性土であったo
(2) 供試草地
北 海 道 草 地 研 究 会 報 第 四 号 1985・3
各調査地域では、一地域につき 4草地を選 定し誌験に供試した(表ー1)白各草地の植 生状態(草種構成)は、チモ
ν
ー・アカクロ ーパ ' Vロクローパ・混播草地(T R )、チ モν
ー・ν
ロクローパ 309も混播草地(T⑪)、 チモν‑. ν
ロクローパ 109
ら混播草地(T W)
、チモν
ー単一的草地( T )
、ケシタッキープjレーグラス・レッドトップ ' Vパムギ等 の生産性の低いイネ科草種あるいは雑草類が 大半を占めている草地
( D )
の5タイプに大きく区分できた。
× 印 調li地域
収量調査は、 1番草は6月中旬から 7月 上 旬、 2番草は8月中旬から 9月上旬にかけて 実施した。その時のチモ
ν
ーの生育は別海町・図‑ 1 調 査 地 域
表 一1 試 験 圃 の 概 況 地 域 土壌の種類 植 生 調 査 日
T
T
⑪R
6. 22、8.29標 茶 未山熟性火土
"
( 虹 別 )
T
6. 22、 一 D 6.22、8.29TW
7. 6、 9. 5別 海 黒山 色 火
TW
6.26、 9. 5 (上春別) 性 土T
7. 6、 9. 5T "
TR
7. 2、9. 5 中 標 津 11T
⑪"
D 7. 10、 D 11
TR
6.28、 8.24阿 寒
" T TW
⑪" "
D 11
TR
6. 21、 8.31厚 岸 厚層山黒 色
T
⑮ 11 ( 大 田 ) 火 性 土 D 7. 2、9. 5D 7. 2、
TR
6.21、 8.163日h二 Jj jl 低褐地色土
T
⑪ 11T "
D
"
TR
6. 16、8.30 大 樹 黒 色 火TW "
山 性 土
T
11D
"
TR:
チモν
ー・アカクローパ混播草地T⑪:チモ
ν
ー・ν
ロクローパ (30%)混 播 草 地TW:
チモν
ー・ν
ロ ク ロ ー パ (109ら)混播草地T:
チモν
ー単草地備 考
429; 年年F5
I
年乙l
上
1 0年、ケイブン 5 ‑ 6年
"
2年 、 タ イ 肥 3 ‑ 4年 1 0年 以 上
11
2年、タイ肥 7 ‑ 8年
"
15 ‑ 1 6年 2年 510年8以年上
H
2年
517年0年年、以タ上イ肥 243 年年年
10年 以 上
D:ケシタッキープjレーグラス、レッドトップ、
ν
パムギ、雑草主体草地‑95‑
北海道草地研究会報 第四号 1985・3
中標津町・阿寒町では出穂前期から中期、その他の地域は穂、苧期から出穂始期であった。
ようにしたロまたリン酸、カ (K9/I0 a・年) リ、マグネ
ν
クムは収量制限要因とならないように十分量施肥した。施肥配分比は早春、 1番草後2 1で実施し、 1番草、 2番草 の生草収量を調査した。
3.
結果および考察各地域での年間生草収量の推移をみると、一般に収量は窒素施用量の増加とともに増収傾向を示した が、その様相は草地の植生状態により異なっていた(図ー2、3、4 )。これを各地域ごとにみると、
まず音別町では、
T R
とT
⑪草地は窒素 施用量を増すと収量は増加Lたが、N8
区付近でほぼ頭打ちを示し、.それ以上の 窒素施用量では同じ収量水準であった。T
草地は前報では窒素施用量の増加に伴 (3) 施肥設計各草地についてそれぞれ窒 素用量試験を実施した(表‑
2 )。窒素施用量は 10 aあ たり
o
K~から 20 K~ までの聞 で5段階を設けたが、草地の 植生状態により設定窒素用量 を変えた。ただし、いずれの 草地でも無窒素区(N0区)と 窒素8K~ 区 (N8区)は含む表‑ 2 施 肥 設 計
‑施肥配分:早春、 1番草後
‑ ・ ・
...・・・・・・・・・・.・・・・・・・・・...
2
‑ ・ .
・ .11 ・ 2 : 1・・・・・・・・...̲・・・・・・・・.・・・・・・..
‑試験規模.1区9m2 3反復
・調査項目 :1番草、 2番草 収量
4
"
‑・・・・・・・...、...・...
︐︐ .
d
‑ Q
U H
"
・・・・・・・2・・・・・・・・・・.・・・・・・・・・.・・・・・・・・
‑ λ'1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・.・・・・・・・・・,...
N20 20
"
生
い直線的に増収したが、音別町の場合は これと異なり
N8
区以上では収量が停滞 していたoこれは堆きゅう肥が多量に施 用されたためであり、すでにN8
区の段 I,O~ 0 階でチモν
ーの著しい倒伏が観察され、窒素過剰の状態と判断された。
D
草地はぷ 「 音 m i n i 1 2 f
/' Iト 8目 2~
o l.̲̲̲1.
o ~
̲J̲ I l; 20
o " H 12 Il;. 20 日 12
N 施用量 (K~/l0 a ) 窒素施用により収量増は認められはする
ものの他の3草地と比べると収量水準は 低く、しかも大部分はケンタッキープノレ ーグラス、レッドトップ、雑草類で占め られていた。
o T R 、ム T
⑪・
x DT W 、 A T
※収量調査日
※※多量の堆きゅう肥を施与 図一2 収量の推移
阿寒町の場合でもほぼ音別町と同様に、
T R
とT
⑮草地はN8
区までは同じ収量水準で推移したが、それ以降ではT R
草地は停滞、T
⑨草地は‑96‑
北 海 道 草 地 研 究 会 報 第 四 号 1985・3
滅収傾向を示した。またT Wおよび D草地の収量は窒素施用量とともに増加したが、 D草地の大半は雑 草類であった。
厚岸町、標茶町においてもT⑪草地では
N
8区で収量は頭打ちを示し、 T R草地は T⑩草地よりも全 体に高い収量水準で推移した。とくに厚岸町のT R草地ではN O
区でも 10 aあたり 5トンの高収が得られた。 D草地では収量水準が低く施肥反応も小さかった。
次にこの厚岸町、標茶町を比較すると、
ほぽ同一植生の草地で窒素施用量が同じ でも収量水準が大きく異なっていること が注目される。すなわち、厚岸町の草地 の収量は標茶町よりも高いことが認めら れた。なお両地域の収量調査はチモ
ν
ー の出穂始期で行われており、この収量差 がチモν
ーの生育期によるものとは考え られない。このような地域による収量差 はすでに根室.~1I路管内の実態調査から も明らかにされており、この原因として 気象条件の違いとともに土壌条件の相違 も大きく関与している可能性が指摘され ている。つまり厚岸町地域は厚層黒色火 山性土、標茶町地域は未熟火山性土が主に分布し、両土壌では塩基置換容量、腐植含量等の土壌の理化学性が太きく異なっている。そのため土
R υ A q
生 草
収 3
︒ ︐ 白
鼠
Jt1‑f芋町 6.21※
8.31 練茶町 8.~!)
ton t
/
IOa 0
'‑" 0 " 8 12 16 ~O o ,1 8' 12 1 fi :!n
口 一 円
査調R
⑪ 量 T T D収
O
ム
×
※
a
nU
/
Edvh
量用施
N
図‑ 3 収量の推移
壌中での塩基の挙動とくに流亡が、収量水準の低い未熟火山性土(標茶町)で大きいこと、また両土壌 では施肥窒素の挙動や地力窒素供給力にも違いがあることが確認されている。したがって、今後、両地 域での収量差および肥培管理上の問題を論じるtにあたり、土壌の種類の相違は重要な課題となるであろ
う。その場合、塩基類の挙動に加えて窒素の面からの解析も必要であることを指摘しておきたい。
さらに別海町、中標津町、大樹町をみると、 TR 草地は T~ T W草地よりも高収であったが、これ ら3種類のマメ科混播草地の収量はN 4区からN 8区で頭打ちとなった。
T
草地は直線的な増収傾向を、またD草地は施肥反応が小さく低収で推移じたロいずれにしても 3地域ともこれまで述べてきたように、
草地の植生状態により収量に対する窒素の施肥反応は異なっていたoただ別海町のT Wの2草地におい ては両者で収量推移の様相が著しく相違していたo これは高収を示した方のT W草地では2年毎に完熟 鶏糞が施与されていたためと考えられ、これと類似した例は前述した音別町
T
草地でも認められた。こ のように植生状態とともに有機質肥料も施肥窒素の反応に大きく関与するため、その有無は肥培管理上 留意すべき点である。以上、道東7地域の採草地で牧草収量、植生および窒素施用量との関係を検討してきたが、これらの 関係を前報の結果をも加味すると図ー5に示すように模式化できた。すなわち、採草地の植生状態は実 用的視点からみると 5タイプに区分でき、各タイプの草地では牧草収量に対する窒素施肥反応は異なっ
‑97‑
北海道草地研究会報 第四号 1985・3
てくる。これは前報の結果(4タイプ に区分)と同様であるが、本報ではチ モ
ν
ー・ν
ロクローパ混播草地をν
ロ クローパの構成割合によりさらに細分 した。この結果に基づき、各タイプの 草地でそれぞれの目標収量を確保する に必要な窒素量はほぼ算定できるであ ろう。ただしこの場合、土壌の種類の 違い、有機質肥料の有無は施肥窒素の 反応に影響を与えるので、窒素量を算 定する際にはこれらの要因を考慮する 必要がある。4 .
要 約チモ
ν
ー草地での施肥管理とくに窒 素施肥法の指針を確立するため、道東 7地域の採草地を対象に窒素用量試験 を実験を実施した。得られた結果は次 の通りである。(1) 採草地の植生状態は実用的視点 から5タイプに区分できたロ
(2) 各タイプの草地では、牧草収量 に対する窒素施肥反応は異なっていたロ
(3) また土壌の種類、有機質肥料は 窒素施肥反応に影響を与える重要な要 因と考えられた。
(4) 以上より、採草地の生産性向上 を図るためには、}その植生を考慮して 窒素肥料を施与する必要のあることを 指摘した。
別措j田J 7.6※ 9.5
o 4 H 12 !ti 20 o 4 8 12 16 20
~t 日
草 5
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大初回J; ; ; ※
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o 4 8 12 1 G 20
図‑ 4 収量の推移
N 施 川 町 (K9./ 10a )
畳 生 草 収
t O n
/
10a
'‑"
4 8 16
N
施 ‑ 用 量 (K9/10a)① チ モ ト ・ ア カ ク ロ ー パ.Vロ ク ロ ー パ ・ 蹴 草 地
② チ モ ト. Vロクローパー(30各 〕 蹄 草 地
③ チ モ ト.VロクEー パ (10引 間 草 地
@ チ モ ト 単 一 草 地
⑤ヶ;,t?."キーブルーグラス・νフドトフプ、 νパムギ、
維草等を主体とした草地
図‑ 5 草地の植生と N施用量の関係(模式図)
‑98
ー北海道草地研究会報 第四号 1985・3
根釧管内にあ
λける草地の土壌診断に関ナる研究
第
2報 土 壌 中 の 有 効 態 加 里 含 量 に 対 応 し た 加 里 施 用 量 に つ い て
三枝俊哉(根釧農試)。菊地晃二(北見農試)
試験目的
草地はその管理来歴の違いにより、各圃場ごとに土壌養分含量が犬きく異なっている。従って、草地 の効率的な維持管理には土壌診断に基づく合理的施肥技術が重要である。
しかし、現状では診断基準値が各地域に対応しきれていないこと、診断値から施肥量への処方筆が明 らかでないことなどの問題があり、土壌診断が農家に十分活用されているとは言い難い口
そこで前報では、根釧管内の土壌の種類に対応した基準値を新だに設定するために、その手始めとし て、根釧管内に分布する主要火山性土における草地の土壌養分含量の実態調査を行なった。その結果、
土壌の有効態養分含量は塩基置換容量やりん酸吸収係数に大きく影響されており、同じ管理を行なって も作物や土壌への反応が異なることが予想された。
本報は特に加里に注目し、混播採草地において土壌の性質に対応した診断基準値とそれに基づく加里 施用量を検討するために、根釧管内4ケ所において加里用量試験を行なったものである。
試験方法
1)農家および闘場の選定
根釧管内の主要火山性土である未熟火山性土、黒色火山性土、厚層黒色火山性土(以下未熟、黒色、
厚層と略す)の分布する地域に各々代表地点を設置した。
(図一1 ) 2)試験設計
厚層黒色 火山性土 試験設計を表ー1に示した。すなわち、早春に硫加を散 ~ (標津町
J I !
北 )l̲,'
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布することにより、土壌の加里肥沃度に3段階のレベノレ(I、 ‑v
V
~。未熟火山性土(別海町 E、 III)を設け、 レベノレ別に4段階の加里用量試験を行f
工黒色火山性土 ・西春7jiJ) った。なお、レベルを設定するための硫加の量は土壌タイ (鶴居村下時裡)
. 一
厚層黒色火山性主プを考慮して決めたロ ‑ (浜中町姉別)・
供試草地はチモ
ν
ーとマメ科の混播採草地である。共通 施肥は北海道施肥標準に従い、窒素、りん酸1、苦土の順に 1 0 a当たり年間8、 10、4 K~、施肥配分はりん酸を早 春全量、他を早春および1番草刈取後に均等分施した。図‑ 1 加里堀地試験圃場地点図
調査項目はし 2番草の生草収量および早春に加里のレベルを設定した段階での有効態加里含量であ る。