3.3.3ワークショップの開催とカウンターパートから見た都市問題の分類・体系化 1.ワークショップの開催
本実験では、被験者の問題認識を深めるため、ワークショップを開催し、開発途上国 の都市問題に関する討論を行った。
ワークショップを実施、運営する手法としては、一般に幅広く使用されているブレーン・
ストーミング法を適用した(附録1参照)。
ブレーン・ストーミング法は、4っの基本的ルール(①他人のアイデアを批判しない、② アイデア発想は自由奔放に行う、③より多くの意見を出す、④他人のアイデアの相乗りを 歓迎する)を除けば、会議の参加人数、進行・運営方法、最終的な意見の収敏・整理方 法にっいては具体的な規定がない。
そこで本実験では、次に示す規定を設定した。
(1) 構成メンバー
①ファシリテーター1司会者1名(筆者が担当)
②セクレタリー1書記1名
③ブレーン・ストーマー:会議参加者(被験者)10名
(2)ブレーン・ストーミング法の適用方法
1)討論する方法の説明
自己紹介、参加者紹介、スタッフ紹介、ワークショップ開催の趣旨、スケジュール、実施 に際しての留意点、およびブレーン・ストーミング法の基本的ルールについて説明した。
2)討論する議題(テーマ)の説明
第2章において作成した表2.3.3「発生要因、整備課題より分類・体系化した国際援助 機関等が対象とする都市問題」、および「図2.3.2国際援助機関等が対象とする都市問 題の構成」を用いて国際機関の都市問題への対応状況や近年取り組んでいる施策、お よび関連する研究内容にっいて司会者がプレゼンテーションを行った。
3)討論の開始
開発途上国の都市問題の実態にっいて参加者各自のプレゼンテーションを行い、① 国際援助機関等から見た都市問題の分類・体系化に対する意見、②参加者の国におけ る都市問題の発生要因、および問題相互問の関連性について各自の見解を述べてもら う。これにより、各参加者の情報を共有した後、討論を開始Lた。
4)討論の記録
プレゼンテーション終了後、それに対する質疑応答を挟み、ブレーン・ストーミング法を 用いた自由な討論を開始する。提案された意見、議論の内容はセクレタリーがノートに記
録した。
5)討論の総括
最後に司会者が議論となった論点、提案された課題にっいて総括した。
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(3)討論の内容
ワークショップで出された意見、討論内容の要旨は次のとおりである。(順序不動)
1)国際援助機関等が対象とする都市問題とその技術協力
・本研究において示された国際機関が対象としている都市問題の構成は、よく理解で きる。また、実際に行われている技術協力の内容もこれに準拠している。(バングラデ イシュ)
・地域によっては(例えば紛争地区など)、国際機関やJICAの支援は未だ十分ではな い。(アルバニア)
・開発財源の不足を補うために導入されている国際機関(アジア開発銀行)のプロジェ クトが成果をあげていない。(インドネシア)
2)深刻となっている主な都市問題
・大都市にはゾーンニング(用途区域制度)が導入されているが、厳密に適用されてお らず、不適切な土地利用が問題になっている。(ベトナム)
・都市開発、都市基盤施設が適切に管理されておらず、その原因は専門分野の人材、
技術の不足である。(ベトナム、ネパール、インドネシア、ブラジル)
・道路容量、駐車場が不足しており、急増する車輌(主に自家用車)に対処できていな い。特に上海では交通管理が必要である。(中国、フィリピン)
・貧困者層にとって住宅施設の確保は重要であり、大きな都市問題となっている。(ア ルバニア、バングラディシュ)
・地域の復興、経済の発展にともない、都市においては徐々に貧富の格差が広がりっ つある。(アルバニア、ブラジル)
・住宅の問題が深刻になっており、国や自治体による取得補助制度の未整備から貧 困層は、必要な申請書類が準備できないなどの理由により、支援が受けられにくい。
(アルバニア、ブラジル)
・都市における貧困層の増大、スラム化が大きな問題となっている。(ベトナム、ネパー ル、バングラディシュ、ブラジル)
・住宅政策が十分に行われていない。(ネパール)
・政府、自治体からの開発方針が不明確である。(ネパール)
・政治優先、中央集権的な弊害、および都市開発に対する公共的な関与、支援が不
十分である。(ネパール、バングラディシュ)
・都市問題は相互問で複雑に関連し合っている。(インドネシア)
・都市内交通網の整備が喫緊の課題である。(バングラディシュ、ブラジル)
・市街地が無秩序に拡大している。(バングラディシュ)
・都市整備事業を行うための法制度が整備されておらず、M/Pで計画された案件の実 施が担保されていない。(バングラディシュ)
・計画官庁の権限が弱く、自治体に対する事業化の支援ができない。(バングラディシ ュ)
・都市犯罪が増加しており、社会秩序・規範の安定化が求められている。(ブラジル)
・都市における社会問題の対応が重要である。(ブラジル)
・都市機能の過度の集中と人口増加が著しい。(フイリピン)
2. カウンターパートから見た都市問題の分類・体系化
ワークショップにおいて、国際援助機関等から見た都市問題の分類・体系化の構成に ついて検証を行った。L(3)5)で上述したとおり、同体系の構成は、カウンターパートにも 十分に理解され、概ね受け入れられた。その後の討議も踏まえ、都市問題の構成として は次の事項が指摘される。
(1)開発財源の重要性
カウンターパートからは、「開発財源」の重要性が強調された。例えば、国際協力が導 入される主な原因は開発財源の不足を補うためであるという指摘(インドネシア)や、宅地 整備や公共住宅の不備などによりスラムが発生している要因は、開発財源が不十分であ ることから、住宅政策が効果的に進められていないためである(アルバニア他)との指摘が
なされた。
国際援助機関等から見た都市問題の分類・体系化では、開発財源は都市財政として 取り扱われており、これでは民間セクターへの支援や民間資金による事業費調達(住宅 整備も含めて)の視点が欠落している。本ワークショップでも指摘されたように、開発途上 国の都市問題を考えるうえで、開発財源の確保は欠かせない視点であると考えられること から、従来の項目である「都市開発政策」にr開発財源」を加えて「都市開発政策・財源」
と改称する。
(2)環境保全の取り扱い ●
環境保全の重要性は、ワークショップにおいて、直接的な表現で言及されなかったが、
都市機能を向上させるための重要な概念として理解されていた。しかしその対象は、市内 の広範な地域に対する環境保全、保護というよりは、スラムや住宅と関連してものとして理 解されており、特に居住施設と一体となった周辺環境という比較的に限定された空間や 身近に存在するものとして事例が紹介されている。
環境は非常に広義な概念であり、第2章で検証したように国際援助機関等はこれをグ ローバル・イシュー(国際化問題)の一っとして位置付けており、内容も環境影響評価や 公害対策など広範な事項が対象に含まれている。このように両者間には、同項目の範囲、
規模、重点の置き方に多少の差異がある可能性が確認される。
(3)公園・緑地の取り扱い
公園・緑地は開発途上国にとってまだ深刻な都市問題として取り扱われていないことも あり、ワークショップにおいては、都市基盤施設、あるいは居住施設に含まれる事項として 理解されていた。このように、本項目を都市問題の項目の一つ取り扱うには不適当と判断 されることから、これを都市基盤施設に含まれる事項として取り扱う。
(4)都市防災の取り扱い
都市防災も公園・緑地と同様に、ワークショップにおいては、他の項目との比較により、
深刻な都市問題としては検討されなかった。実際に、都市防災は都市の重要な目的とし て理解されているが、手段としては都市基盤施設の一っとして整備されている。従って本
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項目も都市基盤施設に含まれる事項として取り扱う。
(5)カウンターパートから見た都市問題の分類・体系化
このように、国際援助機関等から見た都市問題の分類・体系化をカウンターパートの視 点から見直し、1項目の改称(「都市開発政策」→「都市開発政策・財源」)、2項目の削 減(「公園・緑地」、「都市防災」)を行い、カウンターパートから見た都市問題の分類・体 系化を表3,3.1に示す14項目に定めた。なお、本研究は、あくまでもカウンターパートの 視点から開発途上国における都市問題の構造を研究するものであることから、これをもっ て本研究で対象とする都市問題の分類・体系化として取り扱う。
表3.3.1発生要因、整備課題より分類・体系化したカウンターパートから見た都市問題
1
No
髭 5z、 ,蓉
法制度 都市計画法、公共用地取得制度
2 都市計画 国土・地域計画、M/P、都市計画、土地利用、空間計画、都市構造、都市景観 都市計画事業・制限
勃 〜、 り協瀦
市基盤施設
土地区画整理、市街地整備手法、中心市街地活性化、再開発、災害復興開発、用途規 制、建築規制
置 3
都市施設(上下水道、ゴミ処理施設、教育施設)、情報通信技術(IT)、電力、熱・エネル ギー供給施設、都市防災施設、公園・緑地
5 都市交通 公共交通、街路、自動車交通、運輸交通、物流、歩道 居住施設
話 に 〜
市管理組織
住宅・建築、建築制度、居住環境、公営住宅、宅地整備、不動産
脇 z,一 、
ッド・ガバナンス(良い統治)、組織能力の向上、技術移転、都市計画教育
8 都市開発政策・財源 都市の成長管理、都市経済、リサイクル運動、過密化対策、開発財源、都市財政
9 地方分権 地方計画、地方分散政策
10 都市の貧困 貧困層への都市サービスの提供、スク才ッター対策、ホームレスの問題、失業対策
11 住民参加 住民参加、コミュニティ開発、民間セクター開発、民活、NGO 12 社会問題 社会的疎外、家族の不安定性、治安悪化
13 人ロ・健康 人ロ・エイズ/感染症
14 環境保全 歴史的建造物、歴史的環境保全、街並み保全、環境影響評価、公害対策
3.ワークショップの開催とカウンターパートから見た都市問題の分類・体系化の まとめ
本実験では、ワークショップを開催し、ブレーン・ストーミング法を適用して開発途上国 の都市問題に関する検討を行うとともに、カウンターパートから見た都市問題の分類・体 系化を図った。これによりワークショップとカウンターパートから見た都市問題の分類・体系 化についてまとめる。
(1)カウンターパートから見た都市問題の分類・体系化
国際援助機関等から見た都市問題の分類・体系化16項目をカウンターパートの視点