第5章 開発途上国における都市計画制度の実態と整備課題
3. 各国都市計画制度の整備状況の比較
2.において評価した各都市の都市計画制度の整備状況を比較すると図5.3.6のとおり となる。本分析結果によると、都市計画法やマスタープラン作成などに関わる基本的な制 度は整備されており(4力国中3力国)、都市計画手法としては、ヨーロッパ諸国に見られ るようなマスタープランにより事業実施の優先度を明らかにして都市施設の整備を図ろうと するマスタープラン先行型の都市整備を進めている。
しかし一方では、財源不足の影響もあり、市街地開発事業が十分に機能しておらず
(用途規制は4力国中1力国)、土地利用規制と併せて適切な開発誘導政策を図ってい くことが今後の課題として指摘できる。
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6 5 4 3 2 1 0
都 市 計 画 法
マ 特土 ス 定地 タ 地利 1画区用 ラ 細画 プ 詳計 ン 計
用 建 途 築
規規 制 制
市 土交 街 地通 地 区計 開業画画
発 整 事 理 業 事
凹ジャカルタ
■クアラルンプール ロバンコク 国マニラ首都圏 ロ東京
図5.3.6 各都市の都市計画制度の整備状況
5.3.2開発途上国における都市計画制度の問題点
東南アジアにおける都市計画制度の整備状況を踏まえて、その問題点について分析 を行った。このうち、他の項目と比較して特に整備状況が悪い①市街地開発事業と②土 地利用規制、および都市計画制度を運用する能力として都市政策・施策運用の課題で ある①都市管理組織と②都市開発財源に着目して分析を加えた。
都市計画事業・制限の問題を表5,3。2、都市政策・施策運用の問題点を表5.3.3に示
す。
表5.3.2都市計画事業・制限の問題点
都 市 計 画 事 業
ロ
制 限 の 問 題 点
市 街 地 開 発 事 業 制
土 地 利 用 規
急速に進む民間開発 による市街地の膨張に インフラ整備が追いっ かず、結果として広域 交通のボトルネックの 発生、スラム化、下水 排水処理システムの不 備による環境悪化、都 市景観の悪化などが
生じている。
ゾーニング条例が制度 上存在するが、実体は 現況土地利用を追随 するものにすぎない。
都市計画の不在によ り、都市交通施設の整 備方針が計画として担 保されず、土地利用を 誘導するカを有してな い。このため、事業化 に際する合意形成や 事業調整が困難。
Specific Planにより開発 誘導策を盛り込んだ詳細 地区計画を策定すること ができるが、現在まで策定 された事例がない。
民間企業の閣発行為の 奨励と事業の緩和措置の ため、サブディビジョン・コ ンドミニアム法が条例で規 制されているが、日本のよ うに一般的な規制になって
いない。
容積率・建蔽率について は、建築規制法に基づく 内務省令により、一定の 高さ,若しくは床面積を超 える高層建築物、大規模 建築物について規制が成 されている。しかし、全ての 建物が規制対象となって いるのではなく、規制内容 も極めて緩い。
公共は、開発許可に際 し、公共施設や低価格 住宅の建設》高水準の 計画基準の遵守を義務 づけ新市街地の整備を
進めてきた。
民間開発に頼りつつも、
公共は比較的明確な政 策方針のもとに、都市の 整備と交通開発を継続 的に推進している点で は、都市の近代化に成
功しているといえる。
土地利用コントロールは ローカルプランに基づき、
各自治体が開発許可と して行うことになるが、本 来規定すべきローカルプ ランが現在策定中である ので、その上位計画であ るストラクチャープランに 基づいてなされる。
開発認可は必ずしも明 確な制度化がなされて おらず、あくまでも関連 機関・官吏による一連 の許可手続きの一環と してとして捉えられてい るに過ぎない。
全市域に亘って詳細地 区計画が策定されてお り、計画図、建築条例 に準拠し、大規模な宅 地開発を規制している が、現実にはカンポン
(伝統的居住区)内での インフォーマル住宅開 発が極めて多い。従っ て、コントロールを受け る開発は高所得層向け
に限られている。
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表5.3.3 都市政策・施策運用の問題点
マニラ首都圏 バンコク(BMA) クアラルンプール ジャカルタ(DKI)
都市管理組織
実情に合わなくなった 去の土地利用計画 改訂が遅れ、低層住 地域の一角に高層 ルが建設されるな
、自治体の開発に対
計画部局(DTCP等)と事 実施機関(DOH等)が かれており、相互間の
比較的小さな人ロ規模 都市化圧力のもとで、
地管理と官民パートナ シップという独自の戦 的な手法によって都 の近代化に成功した。
の背景として、継続的
地方分権化の流れを受 て、都市整備の主体 中央政府から地方自 体に移行しつつある。
かし、人材不足から自 連絡や調整力が欠如して
いる。特に計画側の力が
い。
画策定段階における各 一
データの不備(地図情
治体の都市行政全般
する指導が適切に行な に関わる遂行能力が低
われていない。 な行政対応が行われて 匹中央省庁の縦割り行
・連携不足が自治体 混乱を招いている。
報、社会統計資料)が有 いることが挙げられる。一
効な計画策定の妨げにな
っている。
都市開発財源
都市計画の体系的制 がぼとんど不備な状 であり、更にそれらを 度化・実効していくた
都市開発財源が確保され 市は、都市開発に要す 開発財源を有していな
。従って、事業は国か
税の徴収制度が確立し おらず、地方自治体 予算不足が事業実 ていないため、官が都市
開発に乗り出すことができ い.公共より民間の経 力が強く、民間資金等 財源とする高速道路に し税収を財源とする幹
らの交付税と補助金に に際して最大の問題 めの資金力の不足が よって実施される。なお、 となっている。
問題になっている。そ ため、自治体レベル 土地利用計画を自 体自ら反対している
ころもある。
大規模建築に際し、駐 場の整備費用負担制 もあるが、目的税では く、用途は人件費補填
で使用されている。
、補 幹 道路 の公 的施設整備が遅れてい
塗
1.都市計画事業・制限の問題
都市計画事業・制限が体系的に整備されていない。また、マニラの「土地利用規制」の 事例に見るように、ゾーニング条例、開発許可等の制度があっても、実現を図るべき将来 都市像としての基本計画策定と関連法制度の運用が機能していない。例えば、法的規 制が不十分なまま民問開発による市街化が大規模かっ無秩序に進行するなど、劣悪な 市街地が形成されており、適切な開発誘導や規制が行える法制度の充実が求められて
いる。
2.都市政策・施策運用の問題点
対象とする全ての国において都市計画、土地利用計画は自治体により所管されている が(表5.3.3)、予算不足、人材不足から地方自治体の都市計画に関わる事業遂行能力 は十分ではない。ジャカルタの「都市管理組織」の事例で見るように、流動性がないため、
中央官庁から自治体へ人材が移動せず、また、施設整備に関わる都市開発は各国とも 大きな障害となっている。
5.3.3開発途上国における都市計画制度の整備課題
上項2,で抽出された都市計画制度の問題点を改善するために、アンケート結果を基に 次のとおり、今後、専門家が積極的に取り組むべき整備課題の抽出を行った。
1.都市計画事業・制限の整備課題
(1)体系的な都市計画制度の整備支援
研究対象とした4力国には、日本の国土総合開発計画、大都市圏計画に対応するよう な地域計画などの上位計画が確立されていない(表5.3.1)。4ヶ国の首都圏への人口集 中や市街地の拡大を考えると、全国的視野に立脚した都市計画の上位計画に対する必 要性は高い.また、都市計画に対する上位計画に留まらず、下位計画、施設整備計画、
事業計画を有機的にリンクさせることで、都市計画事業・制限の担保を図ると共に、合理 的かっ体系的な制度を構築することが必要である。
(2)市街地整備の制度導入支援
マニラの「市街地開発事業」の事例に見るように、近年の東南アジア諸国では、民間が 都市開発の担い手として大きな役割を果たしている。行政は、マスタープランの整備、土 地利用規制、インフラ整備等を担うとともに、民間のポテンシャルを誘導していくためのイ ンセンティブの付与など、法制度を整備していくことが必要である.
また、民間開発に対しては、開発ガイドライン(例えば、我が国の開発指導要綱、土地 区画整理計画標準)を明確に示す手法が有効と考えられる。例えば、ジャカルタの「土地 利用規制」の事例に見るように、大規模開発の場合には比較的スムーズに事業を進める ことが可能であるが、人口密集地域、あるいはスラム地域をどう改善していくかが課題とな っている。これらの地域では、民間主体の開発行為のみで事態を改善を期待することは 困難であり、行政側の能動的な関与が期待される。
なお、第4章におけるカウンターパートから見た政策・事業の優先度評価では、留学生 は「官民協働」、研修員は「開発財源」が最も優先度が高い代替案として選定されている。
土地区画整理事業は、官民協働による代表的な都市整備事業であり、これにより都市開 発に必要な開発財源を確保しようとする手法である。このように、同事業は開発途上国側 からも高い二一ズのあることが確認できる。
2.都市計画制度の運用能力の整備課題
(1)都市行政組織の機能強化支援
東南アジア4力国では、都市計画を策定する機関と、プロジェクトを行う機関が別組織 であり(表6.4.1参照)、バンコクの「都市行政能力」の事例でみられるように、両機関の連 携が十分ではない。計画の事業化を促進するためには、技術協力についても計画策定 支援に留まらず、個別事業の実施、管理までを視野に入れ、総合的、一体的にパッケー ジとして協力していくことが望ましい。これも、バンコクの場合に見られるように、各国の行 政機関による情報収集が不足している上、デrタを有機的、体系的と活用する体制にな っていない。今後は、コンピュータ、GISなどを利用した情報活用マニュアル等の整備が 必要であり、これらの点に関する技術協力の優先度が高い。
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