技術協力の実態と実施方策
6.1はじめに
6.1.1本章の目的
第5章では、開発途上国の都市問題を解消・緩和するための手段として都市計画制度 に着目し、その実態にっいて検証した。
本章の目的は、都市計画制度に関する技術協力に着目し、①我が国および国際援助機 関が行う技術協力の実態を明らかにし、②そのうちタイで行われた我が国の土地区画整理 に関する技術協力を事例として時系列分析を行う。これにより、③技術協力がタイの土地区 画整理に関する制度の整備段階に応じて行われたことを実証し、④都市計画制度に関する 技術協力を有効に実施するための示唆を得ることである。
6.1.2本章の方法
本章の方法は、①我が国の技術協力の実施機関である国際協力機構(JICA)、および 世界銀行、UN−HABITの2つの国際援助機関を対象として、各機関の都市計画制度に関 する技術協力の目的、活動内容、組織体制、分野別・地域別の実績について分析をする。
そして、JICAの代表的な4っの技術協力事業である研修員受け入れ、専門家派遣、開発 調査、技術協カプロジェクトの事業内容、構成、規模、実施プロセスを分析し、その実態に っいて検証を行う。
さらに、②タイで実施された土地区画整理に関する我が国の技術協力の事例を用いて、
既存文献、データ、資料のレビュー、および関係者のインタビューを踏まえた時系列分析を 行い、社会の二一ズの変化と技術協力の対応状況を分析する。これにより、技術協力がタイ の土地区画整理に関する制度の整備段階に応じて行われたことを実証する。
6.1.3本章の手順
本章の手順は、次のとおりである。
1) 6,2では、国際援助機関等の行う開発途上国における都市計画制度に関する技術協 力の実態を明らかにするため、その内容、事業、事業の実施プロセスについて分析を
行う。
第一に、開発途上国における都市計画制度に関する技術協力の内容について分析
する。(6.2.1)
第二に、開発途上国における都市問題に関する技術協力の事業にっいて分析する。
(6,2.2)
第三に、第5章で検証を行った都市計画制度の整備課題から必要とされる技術協力 の内容に適合した事業にっいて分析する。(6.2.3)
158
第四に、開発途上国における都市計画制度に関する技術協力事業の実施プロセスに
ついて分析する。(6.2.4)
2) 6、3では、都市計画制度に関する技術協力を有効に実施するための示唆を得るため、
タイの土地区画整理に関する技術協力を事例として時系列分析を行う。
第一に、本節6.3の分析を行うための設定項目を定める。(6.3.1)
第二に、タイの都市の整備状況を分析する。(6.3.2)
第三に、タイの都市問題の発生要因を分析する。(6,3,3)
第四に、タイの土地区画整理に関する技術協力の実態について分析する。(6.3.4)
第五に、社会の二一ズの変化と技術協力の対応状況を分析する。(6.3.5)
4.6.3では、本章をまとめる。(6.4)
第6章開発途上国における都市計画制度に関する技術協力の実態と実施方策
6,1はじめに
ぎ繋 6.1.1本章の目的
6」・2本章の方塗
◇
6・1・3本章の型贋
号
6.2我が国および国際援助機関が実施している都市計画制度に 関する技術協力の実態
6・2・1開糞途上国における都市計璽制度に関する技術協力
舷
62、2、開糞途去国における都市計璽型度1三関三至藝術協力の事業
く}欝
6.2.3都市計画制度の整備課題から必要とされる技術協力の提案内容に 適合した事業
・く>
6,2,4開発途上国における都市計画制度に関する技術協力事業の 実塵プ・セス
号
6、3土地区画整理に着目したタイにおける都市計画制度に関する 技術協力の実施方策
6,3,1本節の分析の目的、対象とする技術協力、分哲の車法
号
6.32タゴにおける都市の整璽状況
ラ
6・3・3タイにおける都市問題の発生要因
◎、、
6・3・4タイの土地区画整理些関する技術協力の実態
妓
6.3.5土地区画整理に関する制度の整備段階と技術協力
号
6.4本章のまとめ
図6.1.1本章の流れ 160
6.2我が国および国際援助機関が実施している都市計画制度に関する技術 協力の実態
本節6.2は、我が国および国際援助機関が開発途上国に対して実施している都市計画 制度に関する技術協力の実態を明らかにする。
このため、我が国の技術協力の実施機関である国際協力機構(JICA)および世界銀行、
UN−HABITの2つの国際援助機関を対象として、各機関の都市計画制度に関する技術協 力の①組織体制、②技術協力の目的・活動内容・担当部署、③分野別・地域別実績、およ びJICAを対象に4つの事業(①研修員受け入れ、②専門家、③開発調査、④技術協カプ ロジェクト)の①事業内容、②構成、③規模、④実施プロセスを分析する。
6.2.1開発途上国における都市計画制度に関する技術協力
1.開発途上国における都市計画制度に関する技術協力の世界的な取り組 みの経緯
今日、開発途上国の都市化は急速に進行しているが(1)、これまでは「先進国=都市、途 上国=農村」1)といった所謂ステレオタイプの切り口により両者の社会事業は大別されてきた。
また、開発途上国に対する技術協力は、まずは農業や農村開発に関する支援が重視され てきた経緯もあり、開発途上国における都市計画制度に関する技術協力や、その対象とな る都市問題が重要課題として認識されだしたのは比較的最近のことである。
まず、1972年、ストックホルムで開催されたr人間環境会議」において、今日の地球環境 問題が国際的に初めて討議された。当会議においては環境に関わる数多くの議論がなされ、
その中で「人間居住(Human Settlements)」に関わるセッションも設けられた。これが国際的 に途上国の都市問題を包括的に取り上げた初めての機会である。これを受け、1976年にカ ナダ国のバンクバーにおいて「国民人問居住会議」が開催され、「居住問題」に焦点を当て 都市や住宅に関わる討議がなされた。そして、1978年にはこれら一連の会議成果を踏まえ、
ケニア国のナイロビに国連組織である国連人間居住センター(UN−HABIAT)が開設され七
いる2)。
人問居住会議は第1回の会議から20年後にあたる1996年に第2回会合が、トルコのイ スタンブールにおいて開催された。この会議では、飲料水の不足、交通渋滞、医療サービス の不足、農村の荒廃、スラム化、貧困、不衛生、ホームレス、暴力・犯罪等、都市悪化にと もなう諸問題の解決・防止を主なテーマとして議論がなされ、居住環境改善のため国内外で のパートナーシップの構築を求める「イスタンブール宣言」、および人間居住に関する目標 や行動計画を定めた「ハビタット・アジェンダ」を採択した3)。また、世界銀行も重要課題の一 つとして掲げるなど開発途上国の都市問題を重要視しようとする動きが本格的に始まった。
このように、現在では開発途上国の都市問題は、固有の一都市、一地域に限定される問題 ではなく、むしろ地球規模で取り組むべき課題として理解されている4)。
2.我が国および国際援助機関が行う開発途上国における都市計画制度に
関する技術協力
(1)JICAが行う都市計画制度に関する技術協力
1)JICAの組織体制
我が国において主に開発途上国の都市計画制度に関する技術協力を行っている機関 は、独立行政法人国際協力機構(JICA)である。JICAは1954年のコロンボ・プラン加盟(2)
を契機として研修員の受け入れ事業や専門家派遣を行うため1955年に設立されたアジァ 協会、および海外の移住事業を担当していた海外移住協会から発展した組織である。
2003年10月には独立行政法人への移行化に伴い組織を再編し、開発課題(開発の対 象として取り上げる項目)へのアプローチを強化するために事業別体制から課題別の実施 体制に移行し、従来の地域部と連携を図りながら事業を推進している5)。なお、現在JICA が開発課題として設定している項目は次の20件である6)。
①人間の安全保障
②平和構築
③貧困削減
④自然環境保全
⑤保健医療
⑥社会保障
⑦情報通信技術
⑧経済政策
⑨農業開発・農村開発
⑩都市開発・地域開発
⑪ガバナンス
⑫ジェンダー主流化・WID
⑬環境管理
⑭教育,
⑮水資源・災害対策
⑯運輸交通
⑰エネルギー・鉱業
⑱民問セクター開発
⑲水産 ⑳南・南協力 2)J豆CAの目的、活動内容、担当部署
JICAは我が国のODA(政府開発援助)のうち、技術協力、および無償資金協力の調査、
実施促進に関する業務を担当しており、もって開発途上国の自助努力を支援することを目
的としている7)。
JICAにおいて都市問題を対応する部署は社会開発部であり、各種の事業を通じて都市 問題に関しても積極的に取り組んでいる。この活動内容については、次項6、2.2「開発途 上国における都市計画制度に関する技術協力の事業」において分析する。
なお、図6.2.1は、JICAが取り組む重要な課題の一っである貧困削減に関する取り組み 方策を示したものである。本図に示されるようにJICAでは、インフラ、経済活動、居住環境 等の都市問題も貧困と密接にっながっている8)ものとして捉えており、都市計画(制度)に関 する技術協力はその有効な手段として位置付けている。
162