6.3.2 解析条件
解析モデルを図 6.3.2に示す.領域分割はデローニ三角形分割[52]を適用した.図 6.3.2の赤 枠内に鉄筋を積層にモデル化した.配筋を考慮して鉄筋層高さを40mmとし,厚みは鉄筋の総 断面積から設定した.材料定数を表 6.3.1に示す[62].この引張強度と破壊エネルギーの値から
得られるHordijkらの式による引張軟化曲線を図 6.3.3に示し,圧縮強度からトリリニアで近似
したスケルトンカーブを図 6.3.4に示す.Saenzによる式,Popovicsによる式,前川・福浦によ る式と比較すると,第1折れ点から第2折れ点にかけてはPopovicsとSaenzおよび前川・福浦 による曲線の中間を通り,第2折れ点はいずれの経験式ともよく対応している.また,圧縮限 界ひずみ後の除荷については, Saenzと前川・福浦による曲線に対して平均的な直線となって おり,設定したスケルトンカーブは概ね既往の経験式に対応している.
鉛直荷重は拡張rmin法の収束性を考慮して細分化し,左右の載荷版の中央上面に与えた.
Reinforcement
図 6.3.2 解析モデル
表 6.3.1 材料定数
項目 コンクリート 鉄筋 支承版 圧縮強度 fc (MPa) 54.4 375.3 - 引張強度 ft (MPa) 3.3 375.3 - ヤング係数 E (GPa) 33.3 210 210
ポアソン比 n 0.167 - 0.3 厚み (mm) 100.0 29.79 100.0 破壊エネルギーGf (N/mm) 0.13 - -
鉄筋角度 (°) - 0.0 -
ダウエル効果係数 - 0.005 -
0 1 2 3 4 5 6
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
ひび割れ幅 (mm)
結合応力(MPa)
図 6.3.3 引張軟化曲線
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000
0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012
Stress (kPa)
Strain
弾性 Saenz 前川・福浦 Popovics
トリリニアα=0.5
図 6.3.4 圧縮応力のスケルトンカーブ
6.3.3 解析結果
図 6.3.5 に荷重変形関係を示す.解析結果の変位が急激に増大しているのは,左側支持版上 のコンクリートが圧縮破壊したためである.ひび割れが進展して最終的に崩壊するまで,よく 対応する結果が得られた.
図 6.3.6に変形図(変形倍率40.0)と最小主応力3コンター図を示す.コンターの色は赤で
圧縮強度54.4 MPa に対応している.部分領域境界に描画している太線は,ひび割れ幅が5 μm
以上であることを示す.最初に供試体下面中央に曲げひび割れが入り,次に支持版から載荷版 に向かいせん断ひび割れが進展していく過程を表すことができた.ひび割れ後に支持版と載荷 版間に圧縮ストラットが形成され,最終的に圧縮破壊により計算が終了した.
図 6.3.7にせん断力が (e) Q=441 kNのときのひび割れ幅を示す.供試体中央の左側のひび割
れ幅が0.28 mmであり,支持版付近で0.55mmであった.
このように,鉄筋コンクリートにおいても進行性破壊現象が精度良く計算できることが確認 できた.
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Sh ear fo rce (k N )
Displacement (mm)
Experimental results Numerical results
図 6.3.5 荷重変形関係
(a) Q=100kN
(b) Q=200kN
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Shear force (kN)
Displacement (mm)
Experimental results Numerical results
(a) (b)
3
-54.4 0.0
MPa
(c) Q=300kN
(d) Q=400kN
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Shear force (kN)
Displacement (mm)
Experimental results Numerical results
(c) (d)
3
-54.4 0.0
MPa
(e) Q=441kN
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Shear force (kN)
Displacement (mm)
Experimental results Numerical results
(e)
3
-54.4 0.0
MPa 図 6.3.6 変形図とσ3コンター図
0.28
0.55 0.16
0.25 0.20
0.04
0.10 0.18 0.15 0.11 0.04
0.13 0.10
図 6.3.7 ひび割れ幅(単位 mm)(Q=441 kN)
6.4 まとめ
第6章では,HPMに導入した鉄筋コンクリート構成則と材料非線形解析アルゴリズムの適用 性を検証するために,鉄筋コンクリート構造物の解析を行った.まず,無筋コンクリートに対 する検証として,アンカーボルト引抜き試験[62]の解析を行い,次に,鉄筋コンクリートの構 成則の検証として,試験体が鉄筋で補強されているディープビーム載荷試験[62]の解析を行っ た.
6.2節では,アンカーボルト引抜き試験に対する検証結果を示した.試験体の寸法と拘束 位置が異なる2種類のモデル,モデル1とモデル2に対してシミュレーション解析を行った.
解析モデルの領域分割は,デローニ三角形分割を用いた.モデル1はモデル2よりも試験体が 大きく,拘束点が載荷点から離れた場所にある.モデル1の試験では荷重変形関係が得られて おり,解析結果は試験結果とよく対応する結果が得られた.同じモデルで破壊エネルギーを変 えた計算を行い,破壊エネルギーの低下が引張破壊強度に大きく影響することが明らかとなっ た.モデル2の試験結果では,ひび割れの進展が対称と非対称になる場合の2種類の破壊パタ ーンが得られている.解析モデルが 1/2対称モデルの場合は,途中からひび割れが分岐して拘 束点に進展するひび割れと,斜め下の側面境界に進展するひび割れが得られた.一般的にひび 割れの分岐を計算するのは難しいといわれているが,試験結果とよく対応した結果が得られた.
モデル2の解析モデルをフルモデルとした場合は,非対称にひび割れが進展し,試験結果の非 対称の破壊パターンと対応する結果となった.これらの結果により,無筋コンクリートのひび 割れの進展と分岐について定量的,定性的な表現が可能であることが検証できた.
6.3節では,鉄筋コンクリートの検証として,試験体が鉄筋で補強されているディープビ ーム載荷試験の解析結果を示した.このモデルにおいても,領域分割はデローニ三角形分割を 用いた.ディープビーム載荷試験の試験体は,6 本の鉄筋が2段に配置され補強されている.
鉄筋の直径から配筋位置を定め,その部分を積層要素として鉄筋をモデル化した.試験結果と 解析結果の荷重変形関係を比較すると,ひび割れが進展して最終的に崩壊するまで,よく対応 する結果が得られた.解析結果のひび割れの進展に対しても,最初に供試体下面中央に曲げひ び割れが入り,次に支持版から載荷版に向かいせん断ひび割れが進展していく過程を表すこと ができた.ひび割れが開くに従い,支持版と載荷版間に圧縮ストラットが形成され,最終的に 圧縮破壊により計算が終了した.このように,鉄筋のある構造物においても,本研究で提案し た方法は,試験結果によく対応した結果を示すことが検証できた.