第7章 結論
7.1 本研究で得られた成果
細について説明した.
離散ひび割れの進展は領域分割に依存するため,本研究では,領域分割の影響を低減させる 方法としてデローニ三角形分割を用いた.これにより,現実的なひび割れを比較的良好に再現 でき,領域分割の違いによる影響は小さくなる.また,デローニ三角形分割を用いた場合,ひ び割れ面のせん断が機構として伝達するという考えも併せて示した.
第4章では,コンクリートの圧縮破壊解析に適した構成則を提案した.HPMでは,圧縮破壊 を部分領域内部に対して適用する.コンクリートの圧縮応力ひずみ関係を表す骨格曲線は,圧 縮限界ひずみ まではトリリニアを用い, を超えた場合は軟化を考慮する.本研究では,
圧縮強度 より圧縮強度時のひずみ を求める経験式としてShahの式を用いた.この を圧縮 応力ひずみ関係の経験式に適用させて,トリリニア近似と比較すると,経験式としてよく用い
られるSaenz式[53],Popovics 式[54],前川・福浦式[16]によく対応する骨格曲線になることを
明らかにした.
コンクリートの圧縮繰り返し履歴特性については,本研究で用いる拡張 rmin法で誤差が生じ ないように,骨格曲線からの除荷勾配を初期剛性とした直線でモデル化する方法を提案してい る.
コンクリートの圧縮降伏応力は,二軸応力状態により変化するといわれており,これを表現 するため,本研究ではKupferら[59]が提案した降伏曲面を用いた.ただし,この降伏曲面をHPM のトリリニアに対応させるため,第1折れ点と第2折れ点を,降伏曲面と相似形とする曲面で 定義する方法を提案した.
また,コンクリートは,圧縮降伏状態によりポアソン比が変化するといわれている.しかし ながら,実験で求めているポアソン比は,ひび割れを含んだひずみを計測していることに注意 しなければならない.離散ひび割れでは,ひび割れによる体積変化がモデル化できているため,
ポアソン比は初期値のまま変化させないことにした.本章の最後では,コンクリートの圧縮応 力算定方法について説明した.
第5章では,鉄筋コンクリートにおける鉄筋のモデル化の方法を提案した.本研究では,鉄 筋を積層要素としてモデル化する方法を採用した.一般的に鉄筋を積層要素とする場合は,鉄 筋の軸方向と,その直交方向に剛性をもつ薄い板要素をコンクリート層に重ね合わせる.とこ ろが,HPMでは部分領域と部分領域間のペナルティに対して,鉄筋の剛性を重ね合わせなけれ ばならない.その方法として複数の方法を検討し,鉄筋は部分領域間の一軸積層モデルのばね として積層に重ね合わせる方法を提案した.
鉄筋の非線形構成則については,本研究で対象としている問題が単調載荷であるため,履歴 則はあまり重要ではなく,バイリニアモデルを用いることにした.バイリニアモデルは弾性か
ら塑性となる値が明確であり,材料非線形アルゴリズムとして本研究で用いる拡張 rmin法との 親和性が高い.
第6章では,鉄筋コンクリート構造物の解析をとおして,HPMに導入した鉄筋コンクリート 構成則と材料非線形解析アルゴリズムの適用性を検証した.
はじめに,無筋コンクリートに対する検証として,アンカーボルト引抜き試験[62]の解析を 行った.試験体の寸法と拘束位置が異なる2種類のモデル,モデル1とモデル2を対象とした.
解析モデルの領域分割は,デローニ三角形分割を用いた.
モデル1の試験では荷重変形関係が得られており,解析結果が試験結果とよく対応した.同 じモデルで破壊エネルギーを変えた計算を行い,破壊エネルギーの低下が引張破壊強度に大き く影響することが明らかとなった.
モデル2の試験結果では,ひび割れの進展が対称と非対称になる場合の2種類の破壊パター ンが得られている.解析モデルが 1/2対称モデルの場合は,途中からひび割れが分岐して拘束 点に進展するひび割れと,斜め下の側面境界に進展するひび割れが得られた.一般的にひび割 れの分岐を計算するのは難しいといわれているが,試験結果とよく対応した結果が得られた.
モデル2の解析モデルをフルモデルとした場合は,非対称にひび割れが進展し,試験結果の非 対称の破壊パターンと対応する結果となった.これらの結果により,本研究で提案した解析手 法は,無筋コンクリートのひび割れの進展と分岐について,定量的,定性的な表現が可能であ ることが検証できた.
次に,鉄筋コンクリートの検証として,試験体が鉄筋で補強されているディープビーム載荷 試験[62]の解析を行った.この例においても,領域分割にデローニ三角形分割を用いている.
本研究で対象とするディープビーム載荷試験の試験体は,6本の鉄筋が2 段に配置され補強さ れている.鉄筋の直径より配筋位置を定め,その部分を積層要素として鉄筋をモデル化した.
試験結果と解析結果の荷重変形関係を比較すると,ひび割れが進展して最終的に崩壊するま で,試験結果とよく対応した結果が得られた.解析結果のひび割れの進展に対しても,最初に 供試体下面中央に曲げひび割れが入り,次に支持版から載荷版に向かいせん断ひび割れが進展 していく過程を表すことができた.ひび割れが開くに従い,支持版と載荷版間に圧縮ストラッ トが形成され,最終的に圧縮破壊により計算が終了した.このように,鉄筋のある構造物にお いても,本研究で提案した方法は,試験結果によく対応した結果を示すことが検証できた.
HPMは連続体の変形に対する解析精度がFEMと同等であり,ペナルティ消失という簡便な 方法で変形体の離散的な破壊を解析できる手法である.本研究で提案した鉄筋コンクリート構 成則と材料非線形アルゴリズムを HPM に導入することで,ひび割れを含む進行性破壊過程を