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第3章 引張破壊に対する構成則

3.5 解放力算定手順

3.2節で説明したように,HPM におけるひび割れ発生の取り扱いは,ペナルティ関数の値 をゼロとすることで部分領域間の結合を分離させる.ひび割れ後は,境界の法線方向の応力 と相対変位 関係に対して引張軟化特性をモデル化する.引張軟化特性は,相対変位 の増加 により表面応力 が低下していく現象である.一般的な非線形収束計算アルゴリズムによる軟 化現象の計算では,内力低下分が外力との残差力(不釣り合い力)となり,残差力が解消され るように変形が求められる.HPM においても同様で,表面応力 の低下分を残差力として取 り扱い,荷重項に加算する.

解放力を考慮した非線形アルゴリズムである拡張rmin法については,2.4節で説明している.

ここでは,解放力を荷重項に加算するまでの計算手順を説明する.解放力計算手順を図 3.5.1 に示す.

①荷重増分率より相対変位増分を計算

②相対変位を計算

③相対変位に対応する引張軟化曲線上の応力を求める

④応力減少分を解放応力とする

⑤解放応力増分を部分領域境界で積分 開始

⑥解放力増分を荷重項に加算

終了

境界数分終了?

Y N

ひび割れている?

Y

N

図 3.5.1 解放力計算手順

以下,図 3.5.1の解放力計算手順に従って以下に説明する.

① 荷重増分率より相対変位増分を計算

荷重増分率 は,それぞれの要素が塑性状態になる増分率のうち,最小のものである.荷重 増分率 が求まると,それにより相対変位増分を計算する.

2つの部分領域 と 間の境界 における相対変位の増分を とする.n回目 の反復による相対変位増分 は式(3.5.1)で求まる.

(3.5.1) ここに, :反復n回目の荷重増分率より求めた相対変位増分

:反復n回目の荷重増分率

の成分は,式(3.5.2)に示すように境界面の法線方向と接線方向の相対変位である.

(3.5.2) ここに, , :それぞれ境界面の法線方向と接線方向の相対変位増分

② 相対変位を計算

①で求めた相対変位増分を加算し,現ステップの相対変位を計算する.

(3.5.3)

③ 相対変位に対応する引張軟化曲線上の応力を求める

④ 応力減少分を解放応力とする

引張軟化曲線上の解放応力増分 は,図 3.5.2 に示すように,境界面の法線方向の相対変 位増分 より求める.

図 3.5.2 引張軟化曲線上の減少応力の計算

⑤ 解放応力増分を部分領域境界で積分

解放応力は垂直成分の他にせん断成分も考えられ,両者を含めた解放応力の増加量を とすると, の成分は式(3.5.4)で表される.

(3.5.4) ここに, :境界面の法線方向の垂直応力増分

:境界面の接線方向のせん断応力増分

解放応力の垂直応力成分 は引張軟化曲線を用いて増分変位より直接求めることができ るが,せん断成分は直接求める方法が無いため,せん断成分の解放応力 は の解放率 と同じ比率で解放されると仮定し,式(3.5.5)で求める.

(3.5.5) ここに, , :それぞれ反復n-1回目とn回目の法線方向の垂直応力

:反復n-1回目の接線方向のせん断応力

n回目の反復による解放応力の増加量を とすると,解放力増分 は式(3.5.6)に 示すように, を境界面で積分して求められる.

(3.5.6)

ここに, (3.5.7)

:境界 の法線方向と接線方向の座標系への座標変換マトリッ クス

(3.5.8)

:1次変位場を表す関数

(3.5.9)

, :自由度設定位置の座標(一般に図心)

⑥ 解放力増分を荷重項に加算

式(3.5.6)で求めた解放力増分を外力増分として荷重項に加算する.

以上の方法で解放力を外力増分として取り扱うことができる.