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156増加続く経常収支

ドキュメント内 わが国の国際収支における中長期的な分析 (ページ 163-171)

輸出と輸入はともに増加したが、貿易収支は2002年の11兆7,330億円から、2003年 には12兆2,550億円に5,220億円増加した。

サービス収支は2002年5兆2,640億円の赤字から、2003年には3兆8,890億円の赤

字へ1兆3,750億円へと大幅に改善した。最も大きな要因は、その他サービス支払い収

支で、7,690億円改善しているが、円高による支払額の減少が寄与している。次いで、

旅行収支の5,650億円である。旅行収支の改善は、受取が5,800億円増加したが、支払 は160億ドルの増加にとどまったことによる。ただ、これは2003年に行われた旅行収 支統計の計上方法の見直し関連している。見直しは、訪日外国人へのアンケート調査に 基づき、外国人が日本に持ち込む日本円等に関するデータを収集し、日本に持ち込む、

あるいは持ち出す日本円を反映するのが目的とされ、同様の調査が日本人旅行者につい てもなされている。その結果、受取額と支払額がともに2002年までの統計と異なるこ とになった。2002年から2003年にかけて、日本人の出国者はテロや SARSの影響を受

けて1,652万人から1,330万人に19.5%減少している。それを考慮すると旅行支払は

6,000億円程度減少したはずなので、見直しによる受取の増加と支払いの増加が同程度

となり、その意味で5,800億円の旅行収支の改善は旧統計でも言える。

所得収支は、160億円の微増であるが、直接投資収益の収支は 4,990億円の減少し、

証券投資収益の収支が4,760億円の増加している。直接投資収益の収支の減少は、円高 による減収と考えられるのに対して、証券投資収益収支の増加は、証券投資収益の受取 の増加によるものであり、海外証券投資の急速な積み上がりを反映している。証券投資 収益受取は、1999年6兆2,440億円から2003年には7兆9,850億円に1兆7,400億円増 加しており、所得収支黒字の増加に大きく貢献している。

以上の結果から、経常収支黒字は2002年の14兆1,400億円から2003年には15兆7,850 億円と、1兆6,460億円増加し、1998年ぶりに過去最高を更新している。経常収支の

GDP比も2002年の2.8%から2003年には3.2%に高まっている。

表 8‑3  経常収支(暦年) 

  1999 2000 2001 2002 2003

経常収支  13,052 12,875 10,652 14,140 15,785 貿易収支  14,016 12,563 8,527 11,733 12,255

輸出  45,795 49,526 46,584 49,480 51,926

輸入  31,779 36,962 38,056 37,746 39,671

サービス収支  -6,150 -5,134 -5,315 -5,264 -3,889

受取  6,935 7,462 7,834 8,235 8,942

輸送  2,605 2,760 2,917 3,004 3,105

旅行  391 364 402 438 1,019

その他  3,939 4,339 4,515 4,793 4,855

支払  13,086 12,596 13,149 13,500 12,831

輸送  3,478 3,783 3,934 3,939 3,951

旅行  3,720 3,437 3,219 3,326 3,342

その他  5,889 5,376 5,997 6,235 5,538

所得収支  6,574 6,505 8,401 8,267 8,286

雇用者報酬  5 0 -5 -10 -14

直接投資収益  434 608 1,543 1,444 945

受取  704 891 2,045 2,107 1,528

支払  269 283 501 663 583

証券投資収益  4,936 5,113 6,227 6,346 6,821

受取  6,244 6,609 7,663 7,576 7,985

支払  1,308 1,496 1,436 1,231 1,163

その他投資収益  1,199 785 636 488 534

移転収支  -1,387 -1,060 -960 -596 -867

経常収支GDP比  2.6 2.5 2.1 2.8 3.2

為替レート  114 108 122 125 116

実質成長率  0.1 2.8 0.4 -0.4 2.7

経常収支:単位 10 億円 

世界的なドル安傾向 

1997〜1998年のアジア通貨以降に顕著となったドル高傾向と、アメリカが世界経済

の牽引役を果たすことで、経常収支赤字が急速に拡大し、2003年の経常収支赤字対 GDP

比は4%を超える高い水準となっている。さらに、景気後退懸念から大規模な減税を行

うことで、景気の下支えをしている。その結果、経常収支だけでなく財政収支の赤字も 拡大し、双子の赤字の維持可能性が疑問視されるに至っている。そのような状況の中で、

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世界的にはドル安傾向へ調整する動きが進んでいる。図 8-1は、円、ユーロ、ウォンと バーツの対ドルレートを示したものである。それによれば、2002年第1四半期を基準 にすれば、2003年第4四半期において、ユーロ36%、円18%、ウォン10%、バーツ8%、

各々増価している。特に、インフレ懸念から金利引き下げに消極的であったユーロの増 加が著しい。次いで円の増価が続くが、ウォンやバーツなどのアジア通貨も増価傾向に あることが分かる。その意味で、ドル安傾向は2002年から観測された傾向であり、円 ドルレートの動きだけにとらわれる必要はない。ただ、日本の経常収支黒字もGDP比

で3%を超える水準にあることから、円レートの行方についても注視することが必要で

あろう。

図 8‑1  為替レートの推移:2002 年第 1 四半期=100 

70 75 80 85 90 95 100

02Q1 02Q2 02Q3 02Q4 03Q1 03Q2 03Q3 03Q4

日本 ユーロ ウォン バーツ

単位:各国通貨/ドル 

海外直接投資の動向 

円高への危惧は、日本経済を牽引した輸出の減退を引き起こす可能性によるものであ るが、最近の日本の輸出企業は、為替レート変動に対して頑健生を高めていると言われ る。その対策としては、為替レートの短期的変動に対しては先物によるヘッジであり、

長期的な変動に対しては、世界的な規模での生産活動の展開があげられる。その意味で、

為替市場における投機的な動きに対しては企業の対応に脆弱性が残るものの、市場原理 に基づく為替レートの変動に対しては十分に対応する能力を持っている。

しかし、企業活動の世界的規模での展開は、企業の円レートの変動に対する対応能力 を高めるものであるが、日本経済にとっては「空洞化」を意味する可能性がある。その 意味で、企業の海外直接投資の動向にも注視することが必要である。

表 8-4は、1998〜2002年の地域別海外直接投資の推移を表している。それによれば、

2003年の直接投資総計は3兆3483億円であり、2001年以降減少傾向にあるが、高い水 準で推移している。地域別直接投資内訳の傾向によれば、ヨーロッパ向けが最も多く、

次いで米国向けとアジア向けがそれに続いている。2002年の直接投資産残高統計によ れば、米国16兆3千億円、ヨーロッパ8兆4千億円、アセアン3兆6千億円、韓国・

台湾・香港1兆7千億円、中国1兆5千億円であり、直接投資を地域別増加率で見れば、

アジア向け直接投資が顕著に増えていることが分かる。その意味で、日本企業の海外直 接投資行動は、地域経済統合を積極的に進めている米国やEUへの投資を怠ることなく、

さらにアジアへの工場移転を積極的に進めていると考えられる。なお、ケイマン諸島へ の直接投資も規模が大きいが、租税回避地として知られ、特別目的会社設立に利用され ることが多い。

表 8‑4  地域別海外直接投資(暦年) 

  1998 1999 2000 2001 2002

総計  3,162 2,591 3,401 4,659 4,048

米国  744 808 1,521 860 951

中国  171 41 101 263 327

韓国・台湾・香港  203 23 92 185 140

アセアン  568 115 19 473 509

ヨーロッパ  291 936 1,179 2,177 1,223 ケイマン諸島  499 268 394 181 433 単位:10 億円 

本章の目的 

本章では、最近の経常収支の動向を分析するために、日本経済を含めた経常収支モデ ルを構築し、中長期的な視野で予測シミュレーションを行い、今後の経常収支に大きな 影響を与えると考えられる要因、特に、為替レートと海外直接投資の動向が与える影響 について分析する。

8-2 . 経常収支モデルの概要

8‑2‑1  財の輸出入  8‑2‑1‑1  輸出関数 

輸出関数は、輸出先市場の景気動向を反映させるために地域別に推定される。地域区 分は、日本の輸出先市場としての重要性から、米国、韓国・台湾・香港、アセアン、EU とその他の地域に6区分される。輸出関数に用いられる輸出は地域別輸出統計とし、説 明変数として、地域別所得要因、輸出競争力要因(輸出価格)と実質海外直接投資残高 が用いられる。輸出価格指数は、貿易統計における輸出価格指数が用いられる。

実質海外直接投資残高は地域区分をせず、一括して扱っている。一つは地域別直接投

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資残高が半期データであることにもよるが、企業の国際的な展開を考えるときに、地域 向け直接投資が、当該地域との輸出入だけでなく、他の地域との輸出入の関係にも大き く影響を与えると考えられることによる。もちろん、当該地域向け直接投資残高の方が、

方程式の説明力を高めるケースもあるが、顕著と言えるまでには至っていない。

表 8-5に輸出関数の弾力性を地域別にまとめている。それによれば、所得弾力性は、

米国、韓国・台湾・香港、アセアンと EUで1を上回るのに対して、中国とその多地域 では1を下回る。ただ、所得要因として、米国とEUは当該地域の国内総生産を用いて いるのに対して、それ以外の地域では当該地域の輸入を変数としている。ところが、米 国とEU以外の地域では、輸入の伸びが国内総生産のそれを大きく上回ることから、国 内総生産を用いる場合と比べて、所得弾力性が過小評価となる可能性が高いことに留意 が必要である。価格弾力性は、中国を除いて有意に推定されている。特に、EUとその 多地域向け輸出の価格弾力性が1を上回っている。

興味深いのは、直接投資残高の弾力性である。中国を除いてマイナスである。すなわ ち、海外直接投資残高の増加は、中国を除く各地域への輸出を減少させる。特に、米国 とEUの先進工業地域への輸出を抑制する効果が大きい。さらに、韓国・台湾・香港、

アセアン及びその他地域への輸出に対しても抑制的に働く。それに対して、海外直接投 資残高の増加は、中国への輸出を増加させる効果が大きい。日本の中国における海外直 接投資残高は急速に増加しているものの、2002年末で全体の4%程度であり、中国にお ける海外直接投資残高が適切との考えもあるが、輸出関数では有意に推定されない。す なわち、中国への輸出を説明する変数として適切なのは、中国への直接投資ではなく、

直接投資総計であるという点を注視する必要がある。この事実は、企業の地域別直接投 資が、企業活動の国際的な展開の一部であることを強く示唆していると思われる。

表 8‑5  輸出関数の弾力性 

所得弾力性 価格弾力性 直接投資

米国 1.350 0.817 -1.559

中国 0.458 1.437

韓国・台湾・香港 1.189 0.606 -0.530 アセアン 1.252 0.747 -0.917 ヨーロッパ 1.656 1.349 -2.576

その他 0.787 2.012 -0.673

以下では、推定結果を示す。なお、括弧内の数値はt値、RADJは自由度修正済決定 係数、SEは方程式誤差の標準偏差、DWはタービンワトソン比である。また、PDLは 多項式ラグによる分布ラグ推定を意味し、PDL(k,m,n,変数)において、kはラグパターン として課せられる次数、mはラグの長さ、nは制約条件である。制約条件は、0:制約 無し、1:遠点ゼロ、2:近点ゼロ、3:両端ゼロを表している。

ドキュメント内 わが国の国際収支における中長期的な分析 (ページ 163-171)