オースチン市発展の特徴は、シリコンバレーやボストンの産業集積を模倣し、人工的、計画 的に産業振興を進めたことにあります。世界の多くの都市で同種の産業振興が進められる中、
オースチン市が際立った成果を上げた要因の1つに SXSW という世界的なイベントの誕生と それを支えたSXSW社があったことは特筆すべきことと考えられます。
SXSWから沖縄が学ぶべきことの1つは、総合的な戦略性と考えられます。
産業振興に関する、構想、戦略をもって、多くの人のつながりを時間をかけて形成すること で、さほどの経済力を持たなかった地域でも大きな発展の可能性があることを証明したのがオ ースチンと考えられます。
図︓オースチン市の⼈⼝推移
Data Source: http://www.ci.austin.tx.us/demographics/tabular.htm
なぜ発展したのか︖ そのポイント
■なぜ発展したのか
SXSWが発展してきた要因として、インディーズに起源をもち、その文化を保っていること があります。意図して保たれた面とさまざまな偶然が重なって保たれた面が相まって、ほかに ない、継続的な発展を成しえたと考えられます。
現在のSXSWから垣間見ることができるインディーズの文化、継続的発展につながって、い くつかのたぐいまれな基本的な価値観には以下のものがあると想定されます。
■⾃主的な参加形態の選択
期間中、複数の会場で、たくさんのワークショップやセッションが同時並行で開催されてい ます。参加者はすべてに参加することはできません。何を選び、どこで何をするかはすべて参 加者にゆだねられています。主催者側から情報提供はあるものの至れり尽くせりではありませ ん。おもてなしをされている感じはありません。参加者自体が主催者の一員としてイベントを 作っていると理解する方がよさそうです。
自主性の文化は、沖縄のゆるやかで、自分を大事にする風土に共通するものではないでしょ うか。
■キーパーソン不在
一般的なコンベンションとは異なり、開催期間中、主催者側からの挨拶はありません。運営 側と参加側という区別が行われていないことがSXSWの特徴の1つです。主催者は事務局や行 けば会うことはできますが、表立ってスピーチを行ったり、VIP をアテンドしたりすることは ありません(そういう光景を見ることはありません)。
これは主催者側の意図の表れではないかと考えられます。沖縄においても主催者が主催者然 として現れないスタンスが運営設計のヒントになるのではないでしょうか?
2016年にはオバマ大統領がゲストとして参加しました。これは、スピーカーとしても価値を 認められてのことです。オースチン市長であっても、期間中に形式的な挨拶スピーチをするこ とはありません。行政側は、SXSWとは一線を画しながら独自の協力を行っています。行政が 期間中に行う活動は、たとえば、世界中から視察に訪れる行政関係者への対応です。
■ボランティアの数の多さ
ボランティアには学生が多いですが、老若男女が運営を手伝っています。基本的にはオフィ シャルTシャツを着て、入退館時のバーコードの読み込みや、各部屋の音響、撮影のお手伝い などをしています。ボランティアの数の多さも、町全体で作り上げていく雰囲気の醸成に役立 っているように見受けられます。
■スポンサー表⽰が控えめ
会場の展示で気が付くのはスポンサー表示の目立たなさです。スポンサー企業の表示、独自 企画もありますが、大々的には行われず、控えた感じで行われています。大々的に行う企業は 公式スポンサーではなく、会場近辺に独自に施設を準備している企業です。会場では、スポン サーも特別扱いせず、スポンサーの意向で成り立っている雰囲気を出さないようにしているよ うです。
■マッチングイベント(ミートアップ)の多さ
SXSWでは午後になるとセッション以上に、ミートアップイベントが多数開催されています。
会場の部屋を用意されていることもあれば、建物の片隅や、アパートの一室、広場にあるテン トの中など多くの場所でミートアップイベントが開催されています。
ミートアップイベントには何かのテーマがあり、それに関心がある人であれば誰でも参加で きるようになっています。飲食がふるまわれる場合もあります。ミートアップで、知り合いを 作り、情報交換をするのがSXSWでの重要な生活様式になっています。
■街全体での演出
開催期間中は、会場周辺はSXSW一色となります。飲食店、お土産物店などもこの時期は年 間最大の稼ぎ時となります。それもあって、多くの街の人、商店の人はSXSW参加者に好意的 です。また、近隣のホテルがほとんどSXSWの会場、参加者の宿泊場所となります。
基本的には、SXSWへの参加者がロビーや、WiFi、無料フードの対象となりますが、SXSW の参加者でなくても、参加できてしまう雰囲気もあります。
街の街灯には透明なビニールのシートが巻き付けられています。この上に、参加者自由にチ ラシを貼ります。貼られたうえにまた貼られるので1日前のチラシは見えなくなってしまいま す。街があたかも新歓時期の大学のキャンパスのようになっています。
町全体の盛り上がり感もSXSWの世界観を作るうえで重要な要素と考えられます。
■ブランド管理
写真等の撮影について、SXSWのポリシーとして、プレスにのみ許可されることになってい ます。主だったセッションの様子はyoutubeに公開されています。しかし、実際には、参加者 は写真やビデオを自由に取っています。撮影を止められることはありません。自由にオープン に拡散してもらうことが前提となっているようです。
一方、随所に感じるのは、高いデザイン性が盛り込まれていることです。年度年度のロゴや イメージ画像などは、音楽や映画を取り込んだイベントらしく、とてもスタイリッシュでハイ センスなものとなっています。差別化されたブランドイメージ作りもSXSWをエキサイティン グにする魔法の1つなのでしょう。
■謎の部分
あまりにセッションやワークショップが多く、全体感が見えないのもSXSWの特徴の1つで す。主催者からの情報は隠されることはない一方、あまりに多すぎて、何がどうなっているの か構造化してつかむことは困難です。
参加者の情報もアプリで検索して、いつでも会うことができます。しかし、何万人の中から、
自分が会いたい人を見つけることは理詰めでできることではありません。あえて、カオスが作 り出されている演出もあるよう見受けられます。カオスが謎を生み、謎が魅力を高める面もあ るようです