: M936131
: 高 田 昌 慶
: 山 田 卓 三
= 山 田 卓 三
小学校水泳プールに自然発生するヤゴの教材化
高田 昌慶 1.はじめに
プv・一・ルに自然発生するヤゴは、各地で環境教育を意図して教材化されてい る。本研究は、環境教育の素材としてではなく、生命尊重の精神を培う感動 体験および自然認識の素材として、大量に手に入るヤゴの教材化を図る目的
で行った。
ヤゴを飼育・観察していく過程で、子どもの興味関心が最も集中するのは 羽化である。しかし、トンボ類の羽化の多くは、夜間に行われているため、
子どもがみる機会はほとんどない。
本研究は、羽化時間を調節し、学校時間内で羽化を観察できるようにする ための方法を確立すると共に、プールでの産卵・生育・羽化の実態調査を通
して、材料を大量に確保するための手だてを究明する目的で行った。
2.材料および方法
(ユ)プールにおける羽化の実態調査
羽化頭数や羽化場所などの羽化状況と共に、気象条件や光町の環境条件を 調査し、因果関係について検討した。羽化した新成虫の鳥による被捕食数か
ら生存率を算出し、影響因子について検討した。水生生物などをサンプリン グし、プー…ルの生態系とヤゴの発生・生育状況を調べた。
② プールにおけるギンヤンマの発生
教材としての有用性が高いギンヤンマを、プールで発生させるための手だ てについて検討した。ホテイアオイ等の水生植物の植栽によるギンヤンマの 産卵・発生を確認すると共に、人工産卵床の開発に取り組んだ。
(3)羽化時間の調節
羽化日を特定する判別基準について検討するため、羽化前の変態過程を観
察した。そして、羽化時間を調節し、学校時間内で羽化させる羽化制御の可 能性について検討した。また、羽化失敗の原因と対策についても検討した。
3.結果
(1)タイリクアカネの羽化は、午後9時30分から午前0時までの問に集中的に
(約85%〉行われていた。羽化頭数や羽化の期間は、調査年度によって異な っていた。タイリクアカネの羽化頭数と、羽化日の最高・最低気温および日 没後の気温・湿度との問に、弱ないし中程度の相関が見られた。他の気象条 件との相関は見られなかった。羽化場所(水平分布)は、調査地によって違 いが見られたが、羽化位置(垂直分布)は、ほぼ同じであった。植栽を行っ た1994年度は、ギンヤンマの発生数が増加し、タイリクアカネとシオカラ
トンボの発生数が激減した。
新成虫は、朝方に飛び立ったが、ツバメやセキレイに捕食されることがあ った。生存率との強い相関が見られたのは、鳥が飛来する直前の気温であっ た。タイリクアカネの場合は、17〜18℃以下であると飛び立てず、ほとん
どの個体が捕食された。
ヤゴは、天敵のいないプールの中で、食物連鎖の頂点に立っていた。ヤゴ の餌となる他の小動物も、大量に発生していた。
(2)ギンヤンマは、植栽したホテイアオイやガマへ産卵した。人工産卵床とし ては、ぺL一一一パータオルや発泡スチレン製トレーが利用できた。捕獲産卵では
トレーにペーパータオルを敷いた方式が、自然産卵では、はしごのパイプに ペーパータオルやトレーを取り付けた方式が効果的であった。
(3)ヤゴの下唇内部組織は、羽化前から徐々に退行し始め、成虫の下唇にまで 変化していくことが確認できた。
ギンヤンマの羽化直前個体は、1晩以上羽化させずに放置する(過抑制)
と、複眼が黄化した。この状態になった個体に登り棒を与えることにより、
1時間以内に羽化させる(羽化制御)ことができた。複眼が黄化した状態に