セイタカ アワダチソウ
折り曲げて 角度をつける
切り込みを入れ 差し込む
ゴ
アルミ缶をカット
図24−2 簡易羽化装置
もつが、カップ飼育では、毎日水換えと掃除をしてやらなければならなかっ た。100頭以上の飼育になると、この世話だけで時間がとられてしまう。
1994年度は、研究室の同僚のアドバイスをいただいて循環濾過式個別飼 育装置を考案し、労力の軽減と水の腐敗防止を図った。
飼育装置の主な構成は、上部濾過装置,活性炭,塩ビ管,角形樋,アルミ チャンネル,ランジェリーケース,網戸のアミ,ビニールパイプ,大型容器 である(図25−1,2)。
この飼育装置の仕組みは、上部のアルミチャンネルの穴から濾過された水 が滴下し、下部のアミ目から汚水が濾過装置まで吸い上げられるというもの
である(図25−3>。
餌の食べ残しは、スポイトなどで除去してやらねばならないが、水換えや 容器の掃除の手間がいらない。水換えは、2カ月に1回で十分であった。数
日間放置して、調査に出かけることもできた。
個体毎の成長は、絶縁テープに書いてアルミチャンネルなどに貼りつけて おいた。低温時には、サーモスタット+ヒーターにより、ほぼ恒温飼育が可
能である。
この装置で終齢まで飼育したギンヤンマを、適宜、実験に供した。
ただし、この飼育装置で飼えるのは、12齢以上のギンヤンマのヤゴであ る。それより小さなヤゴの場合、餌がアミ目から逃走するため、飼育には適 さない(図25−4)。成長記録を取った時はカップ飼育で、記録を取らなかっ た時はバットでの集団飼育を行った。
2.羽化日の特定
石田ら(1988)によると、「終齢幼虫は羽化が近づくと、翅胸の筋肉が 発育して胸が立体的に変化するとともにこれまで紙のように薄かった翅芽が
図25−1
小型循環濾過式個別飼育装置
(36頭まで飼育可)
欝罰錆 髭制欝
刀三下岨購
s
図25−2
大型循環濾過式個別飼育装置
(108頭まで飼育可)
濾過水
図25−3
循環濾過式個別飼育装置の仕組み
図25−4
ギンヤンマの個別飼育
(ミミズを摂食する終齢幼虫)
厚ぼったくふくらむ。さらに複眼が大きくなって左右が接着するのが殻をす かしてみえ、ロ器の筋肉の退化がはじまって摂食することをやめる。大多数 は羽化の2,3日あるいは4,5日前からこのような態勢にはいり、羽化の 直前に水面から突出した杭,水際の石などによじ登って比較的短時間のあい だに羽化をはじめる。」という。
終齢幼虫を個別飼育し、胸・翅芽・複眼の変化を観察した。また、C◎rbet
(1962)や六山(1964)らの研究を追試し、下唇(下あご)内部組織の収 縮(退行)過程を調べた。
3.羽化抑制処理
(1)冷蔵処理→加温処理と昼夜逆転処理
夜の間に行われてしまう羽化を制御するため、冷蔵処理→加温処理や昼夜 逆転処理を用いて実験を繰り返した。
冷蔵処理→加温処理は、矢野(1977)が「定めた時刻にチョウを羽化さ せる方法」で開発した処理法である。蠕が羽化する直前に8℃前後で冷蔵し 羽化させたい日に取り出して30℃で加温するというものである。蠕は、加 温開始後20〜34分で羽化に至る。この方法によれば、授業中に、羽化の 開始から完了までを観察できる。この処理法を水生昆虫であるギンヤンマに 当てはめて実験してみたが、ヤゴは弱るばかりで、羽化も失敗が続いた。
並行して、昼夜逆転による羽化制御を試みた。これは、以前、ホタルを子 どもたちに見せるために考えた方法である。夜間にi採集したホタルを1晩中 照明下におく。翌朝、暗幕を目張りして真っ暗にした理科室にホタルを放つ
と、夜間ほどではないが発光し、飛翔する個体もあった。多摩昆虫園のホタ ルも、同様の方法で、日中の観察を可能にしているという。この方法をヤゴ
きなかった。そこで、羽化直前からではなく、終齢に脱皮した直後や、摂食 を停止した直後から昼夜逆転処理を試みた。
(2)過抑制処理
(ユ)の各処理による羽化制御実験を繰り返しても、再現性のある結果は、な かなか得られなかった。失敗を繰り返す内、羽化直前個体は、上陸場所を与 えずに1晩以上放置する(過抑制)と、翌朝には羽化場所を求めて活発に動 き回ることが分かった。この個体は、登り棒を与えられるとすぐさま上陸し しばらくして無事に羽化した。時刻は、午後2時頃であった。
偶然の成功を再現性のあるものにするため、過抑制を他の処理法とも組み 合わせて実験を行った。
4.羽化の失敗
過抑制処理により、何とか日申に羽化させることができるようになったも のの、羽化の失敗という問題が大きな障害となっていた。羽化の失敗とは、
羽化し始めた個体が、何らかの原因で、無事に成虫に変態できないことを指 す。失敗のタイプは、以下の3種に大別できる。
①頭部や肢部が殻から抜けず、そのまま体が固まってしまう。
②上半身を抜き出し倒垂(ぶらさがる)した後、起きあがれずに、体が 固まってしまう。
③起きあがって抜け殻につかまり、翅や腹を伸長させる途中で、落下し てしまう。
特に多い失敗例は、①である。原因を、過抑制による体力の消耗,単一餌
(ミミズ)による栄養素不足,乾燥による殻の固化などに求め、改善策を検 討した。
上陸後の殻の乾燥を防ぎ、光を遮って自然な羽化を促すための羽化装置を
考案した。これは、ペットボトルをカットし、中に簡易羽化装置を入れたも のである。湿度を高めるため、霧吹きで内部を濡らした後、アルミホイルで
くるんだ。
H 結果
1.ギンヤンマの飼育下における成長過程
1993年度は、卵からの飼育に取り組んだ。10月3日から27日までに 1701頭の1齢幼虫がトレーやペーパータオルから激化した。しかし、薄 紅にまで育ったヤゴは、わずか29頭(約1.7%)であった。特に、1,2 齢時の死亡率が高く、3齢以上に育ったヤゴは、40頭(約2.4%)しかい
なかった。高密度飼育により、水質や溶存酸素などに問題が出たものと思わ れる。なお、脱皮回数は、9〜14回とされているが、同時に飼育したタイ リクアカネは、9齢で羽化した。ギンヤンマは14齢が終齢であったが、途 中の5〜8齢(4段階)を、3段階で済ませた個体があったようである。
1〜4齢までは、アルテミア(ブラインシュリンプ〉で育てた。アルテミ アは、ペットショップで購入した。5齢〜11齢までは、糸ミミズやアカム シを与えた。糸ミミズは、熱帯魚専門店で購入し、アカムシは、問屋から仕 入れた。12齢から14齢(終回)までは、釣り用のミミズで飼育した。こ れは、釣具店で簡単に手に入る。ミミズは、体長に合わせてカットするなど して与えた。オタマジャクシやメダカ、ホウンネンエビなどを与えたことも あったが、これらは、安定して数多く入手することが困難であった。
1994年度の飼育は、循環濾過式飼育装置による、個別飼育のみとした。
なりの個体差があった。また、齢期によって、脱皮までの日数は異なるよう である。各齢期および各区切りまでに要した時間を表7−1に示す。データ数 は少ないが、水温を変えて飼育した結果を表7・2に示す。成長スピ・一一・・ドは、
水温が高いほど早くなるようである。
2.羽化日特定の判別基準
(1)羽化までの変態過程
Corbet(1962)は、 Anax(ギンヤンマ属)の変態を6stageに分けている。
・1stage一幼虫の外部変化は殆ど見られない。休憩の段階である。
・2〜4stage一複眼が次第に広がり頭部の中央に近づき、正筆面で接触する
まで。
・5〜6stage一複眼が接触し、下唇の組織が下唇前基節、さらに下唇亜基節 に入っていく。下唇のさやの中には成虫の下唇が完成し下唇亜基節の中に 入ってしまうまでの間である。
六山(1963,1964,1965)は、シオカラトンボ,ウスバキトンボ,アキ アカネ・マユタテアカネ・ヒメアカネの変態を、複眼の変化について、5つ のstageに分けた。さらに、下唇の変化について、以下の5stageに分けた。
・astage一下唇内には組織が充実している。
・bstage一下唇内の血管が少し集まってくる。
・c stage 一下唇内に成虫の下唇ができかけてくる。キチン化してくる。
・dstage一新しい下唇ができ、下唇前基節に移動する。下唇に生えている毛 も次第に茶褐色になってくる。
・estage一新しい下唇が下唇亜基節内に入り、下唇ができあがる。
飼育下では、複眼の接合は、終齢に脱皮してから約14日後であった。さ らに、羽化するまでに要した時間は、12〜13日もあった。複眼の変化は
fo
Fl一
表7−1 ギンヤンマの成長過程毎の平均日数
(飼育温度27〜29℃)
12齢に脱皮 13齢に脱皮 14齢に脱皮 複眼の接合 摂食停止 下唇退行開始下唇退行完了 羽化
7±SD…2a3±49322±11る1
13.9±1.7ia・±1ゆ i49±12
表72 成長過程毎の日数と水温
複眼接合 摂食停止 下唇退行開始 下唇退行完了
15℃1 8.0±1.0 4.0±2.0
獺ぎ6±1:3r3.。±1.。
十・
17.7±O.6
27 一2 4.9±1 .2
s
30℃ 1 2.1±1.3 1 .6±O.5 2.4±O,5
羽化日を特定するに当たっては、予備的なものにすぎないと言える。胸部や 翅芽の変化も、1日毎の変化量が把握しにくいうえ、最終到達段階の姿も明 瞭に違いが分かるものではなかった。これらの変化で羽化日(今夜羽化する
という日)を確実に特定することはできなかった。
以後の観察は、下唇内部組織の変化に的を絞って行った。下唇内部組織の 退行は、双眼実態顕微鏡による観察で、摂食停止後3.◎±1.0日(飼育水 温27〜29℃)で始まることが分かった(表7−1)。これは、筋肉等が退行し
て下唇鈎が動かなくなり、餌を捕食できなくなった結果として、必然的に摂 食を停止するのではないことを示すものである。先に摂食停止が起こり、そ
の後、退行が始まるのである。
下唇内部組織の退行は、動鈎の先端から始まった。飼育水温下では、この 部分だけで1日を要したので、肉眼による観察では、開始日を見誤りやすい
と思われる。
退行が完了して成虫の下唇ができあがるまでには、さらに4.9±1.2日 かかった。そして、ヤゴは、その日の夜、羽化した。
(2)下唇内部組織の退行と羽化日の特定
子どもたちが判別しやすいように、摂食停止後からの退行の段階を1日毎 の平均的変化に合わせて、以下の5段階に分けた。
・第1段階一筋肉が充実し、血管が直線的に広がっている。噛みつこうとす ることもある(図26−1)。退行は、まだ始まっていない。
・第2段階一動鈎での退行が始まる。肉眼での確認は難しい。双眼実態顕微 鏡で観察すれば、筋肉の退行と共に、末端の血管が縮まって、白い固まり 状になっているのが分かる。ここで1〜2日を要する。
・第3段階L下唇前基節での退行が進む(図26−2,3,4)。これは、真っ 直ぐに伸びていた2本の最も太い血管(白く見える)が、S謝状に折りた たまれる様子からも確認できる。ここで1日を要する。