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プールにおけるギンヤンマの発生

 い、釣り用のミミズだけでよい。

 このような理由から、すでに導入されている蝶などと同様に、教材として 扱ってほしいと考えている。そのためには、以下のような制約がある。

 Tillyard(1917)は、産卵形態を、植物組織内産卵と植物組織外産卵に大 別した。タイリクアカネなど、ほとんどのプールのトンボの産卵は、飛翔し ながら尾端を水面に打ちつけ、水中に卵をまき散らす様に産卵する「打水産 卵」である。水さえあれば、ヤゴが自然発生する。しかし、ギンヤンマを発 生させようとすれば、卵を産みつける「物」を用意してやらなければならな

いQ

2.水生植物の植栽と産卵

 ギンヤンマの産卵は、水生植物の茎などに産卵管を挿入し、卵を1粒ずつ 産みつけていく「植物組織内産卵」である。そこで、産卵床として、比較的 手に入りやすかったホテイアオイとガマを植栽した。植栽の時期は、プール の使用が終了した9〜10月である。

 ホテイアオイは、15〜20株を1〜2株ずつに分け、水面に浮かべた。

(1991・1992年一曽根小学校,1993・1994年一高砂小学校)。

 ガマは、赤松教諭と児童たちが鉢植えにし、低学年用プールの壁際に沈め た(1993・1994年一高砂小学校)。

3.人工産卵床の開発

(1)捕獲産卵(♀を捕獲して産卵させる〉

 ①カップ+ぺ・・一・・パータオル方式(1993年10月1日〜)(図18−1)

 近藤氏の指導を受け、人工採卵を試みた。ロ径100mmのクリアーカップに

ペーパータオルを3枚(円形にカット)敷き、水が溜まらない程度に湿らせ た。捕獲iした♀を1頭入れ、空気穴を開けたブタをして産卵させた。

 ②トレー+ペーパータオル方式(1994年9月22日〜)(図18−2)

 カップを弁当用のポリスチレントレーに変えた。ペーパータオルを底面い っぱいに3重に敷き、水が溜まらない程度に湿らせた。ブタをして、20W

の蛍光灯下で産卵させた。

(2)自然産卵(プールで産卵させる>

 1993年10月3日午前10時30分、高砂小学校のプールで、♀が、発

泡スチレン製のタコ焼きの舟(以下トレー)に、単独産卵しているのを発見

した。♀は、すでに植栽済みであったホテイアオイなどよりも、人工物を産 卵床として選択した。

 調べてみると、裏返しに浮かんでいたトレーの水面下の部分に、びっしり と卵が産みつけてあった。一部は、すでに艀化済みであった。

 ③トレー裏返し方式(1993年10月6日〜)(図18−3)

 トレ・一一ilS体・彩色したトレー・ペーパータオルを貼付したトレーを裏返し にし、空気を抜いて、水面下になる部分ができるだけ多くなるようにして浮 かべた(1993・1994年一高砂・曽根小学校,1994年一教育センター)。

 ④パイプ+ペーパータオル方式(1994年9月13H〜)(図18−4)

 プールに飛来したギンヤンマペア(連結した♂と♀)は、最初に、内壁面 やプールのはしごの金属製パイプに、産卵行動をみせる。そこで、4カ所の はしごに、3重にしたペーパータオルを巻きつけ、針金で固定した。

ペーパータオルの上半分を足場用に、下半分を産卵用に設定した(1994年 一教育センター)。

 ⑤トレー方式縦バージョン(1994年9月21日〜)(図18−5)

 ペーパータオルは、水に濡れると破れたりして扱いにくいので、トレーに 取り替えた。トレーは、縦長の位置で半分が水没するようにし、針金で固定

図18−1 カップ+ペーパータオル方式

ペーパータオル3枚

  プタ付きトレー

図18−2 トレー+ペーパータオル方式

裏返し空気を抜いたトレー

      

   ∵方式

/はしご等の金属パイプ

学鋲

   ペーパーータ才ル3枚

./.

Jv!/針がね

図18−4 パイプ+ペーパータオル方式

1 ヒプ1はしご罰鋤プ

1      1 1      1 1      1 1      1

糎で獣形

1      1 1      1

トレー

針がね

図18−5 トレー方式縦バージョン

した(1994年一教育センター,北浜・中筋・伊保南小学校)。

H 結果

1.水生植物への産卵

 ギンヤンマは、ホテイアオイ・ガマの区別なく産卵した。観察する限りで は、全て、水面下の植物組織への産卵であった。植物組織の生死には関係な

く、枯れたガマの葉にも産卵した(図19)。

 産卵場所の選択は、♂のり一ドによるものだと思われる。飛翔中の♀の動 きは、早すぎてつかめていない。しかし、すでに産卵を経験済みだと思われ る老熟した♀と若い♂のペアL一一一の場合でも、すぐに植物に産卵することは少 なかった。まず、内壁面やプールサイドなどに、無駄だと思われる産卵行動 を何度も繰り返した。

 産卵は♀のり・・…ドで行われていた。♀は、尾部先端をいっぱいに延ばし、

水中の植物組織をまさぐる。気に入れば、産卵管を突き刺して1つずつ卵を 埋め込んでいく。1つ終わる毎に腹部を少しずつ屈曲させ、下から上へと産 卵していった。時には、胸部や後翅が水没するほど深い所にまで産卵するこ

ともあった。

 産卵行動中、♂は、足を踏ん張って自分の体を固定し、尾部付属器で、♀

の後頭部辺りをしっかりと掴んでいる。♂は、♀が上下左右に移動するに連 れて、足場を少しずつ変えたが、♀に比べて移動量は少ない。理由は、足場 がつかまりやすくて広い平面ではないため、♀の動きに合わせて、足場を頻 繁に変えることができないからだと思われる。よって、産卵は、♂の胸部を 中心とした、扇形の範囲で行われることになる。♀が産卵し続けている内に

図19 植栽したガマの茎に産卵するギンヤンマペア

♂の足場がなくなり、近くにあった間仕切りの金属パイプにしがみつく場面 も観察された。

 人間が近づいても♀の目には入らないようで、もっぱら♂が産卵中の♀を 引きはがす様にして逃げた。しかし、すぐに別の場所で産卵し始めた。産卵

中は他の刺激に対しての反応性が低く、カメラで15cmまで近寄れたことも

あった。

 産卵場所の移動は、♀の合図によって行われる。その場での産卵を完了し た♀は、小刻みに翅を震わせる。移動は、その2〜3秒後に行われた。

 産卵跡は、ポッポッと毛羽立った様になっているが、卵は、見えない。表 皮をめくると、斜めに突き刺さった卵が見つかった。

 産卵時問は、短いもので数分、普通は30分以上かかった。時には、1時 間以上の産卵も観察された。

 ガマへの産卵跡は、比較的確認しやすかったが、ホテイアオイは、造りが 複雑で、卵の確認は、難しかった。よって、1回の産卵により産みつけられ た卵の数は、確認できていない。持ち帰った約15 cmの枯れたガマの葉から は、40頭ほどの1齢幼虫が艀化した。

2.人工産卵床への産卵

 ①カップ+ぺ㎞パ㎞タオル方式

 カップに閉じこめた♀は、盛んに羽ばたいて暴れた。カップがやや小さめ であったため、翅がかなり損傷した。

 日当たりのよいプールサイドに出しておいたところ、いつのまにか静かに なり、ペーパータオルへ産卵し始めた。移動中の車内や室内でも産卵したた め、光量と産卵との関係は確認できていない。

 産卵の様子は、植物組織への場合と同様で、尾部を延ばした状態から徐々

に屈曲させながら、1粒ずつ産みつけていった。

 産卵は、主に3重にしたペーパータオルの2枚目に行われた。3枚目とカ ップの底との問にも一部産卵した。卵は、淡黄白色であり、視認しにくいが

1日後には、淡灰褐色になり、艀化が近づくにつれて茶褐色化していった。

 産卵は、2〜3回に分けて行われたが、産卵時間,産卵数共、確認してい

ない。

 ②トレー+ペーパータオル方式

 ♀は、ブタをしてしばらくの問、飛び立とうと暴れていた。しかし、翅が どこにも触れないような比較的広い空間であることや、光を当てたことの影 響などもあってか、産卵し始めた。翅の損傷はなかった。

 全肢を踏ん張って体を固定し、腹部の伸屈で、卵を産み広げていく様子は

①と同様である。また、頭部・胸部は動かさず、尾部先端で産卵場所を探る ようにして扇形に産み広げる様子が観察できた。ある程度産みつけると、違 う場所に移動して、産卵し続けた(図20)。

 ♀は、産卵し始めると、少々の刺激には反応しなくなった。ペーパータオ ルごと取り出して机上に置いても、産卵行動の中断はなかった。手や顔を近 づけても怯えることはなかった。てこの原理で産卵管を突き立て、卵を産み つける様子が良く観察できた。尾部先端がペーパータオルから外れた時、初 めて異常を感じて飛び立った。

 ③トレー裏返し方式

 偶然プールに浮かんでいたタコ焼きの舟から艀化した1齢幼虫は、512

頭にもおよんだ(図21−1>。

 1994年8月25日、新たにトレーを浮かべた。9月12日までに、教育 センターでは2/6に、高砂小学校では6/6に産卵していた。産卵時の触 感を考慮して、一部のトレーにペーパータオルを巻きつけていたが、優先的

図20 トレーに敷いたペーパータオルへの産卵

 産卵部位は、水面下になった部分であった(図21−2)。ペーパ…一一タオルは 常に水を含んでいたが、そこへの産卵は、ほとんど見られなかった。

 観察した範囲では、植物が産卵床として多く選択された。そこで、緑およ び数色のボスカで彩色したトレーを浮かべてみたが、トレV・一一への産卵回数自 体が少なかったため、色による選択の違いは、確認できていない。トレー上

に留まっていた時間は、観察した限りでは、多くても1〜2分であった。

 トレーの下になった部分のみに、アメンボ卵が産みつけられていた。

 ④パイプ+ペーパータオル方式

 センタープールでのトレーへの産卵は、確率・数量共、高砂小学校には及 ばなかった。飛来したギンヤンマペアは、産卵場所を、内壁面・はしご・

プールサイドなどで物色するだけで、水面のトレーには全く留まらずに飛び 去ることが多かった。そこで、必ず産卵行動を見せるはしごの金属パイプに ペーパータオルを巻いておけば、産卵するのではないかと考えた。

 この方式は、予想以上の成果を上げた。その後、飛来したペアは、いつも 通りパイプにつかまり、巻きつけてあったペーパータオルを好んで産卵した

(図22・1)。1ペアは、1ヵ所だけでなく、4ヵ所をめぐって、各々のペー パータオルに産卵した。

 この方式では、足場が広く、自由に移動できるため、産卵跡は、半径の長 い扇形になった。ほとんど縦距に産みつけているものもあった(図22−2)。

 4ヵ所での産卵の様子を以下に示す。

・A(北西)水面より上部に産卵していた。2枚目中心に産みつけていた。

・B(南西)上部・下部共に産卵していた。1枚目専心に産みつけていた。

・C(南東)水面下に産卵していた。2枚目にやや多く産みつけていた。

・D(北東)上部・下部共に産卵していた。1・2枚目共に産卵していた。

 産卵数は、いずれも300〜600卵であった。B・Cの産卵数が比較的

多かった。