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 昼夜逆転処理は、羽化直前個体には効果がなかった。しかし、摂食停止直 後から昼夜逆転処理にかけた場合、6〜7日後の朝には、12/14頭(約 86%)の元気な複眼黄化ギンヤンマが手に入った。複眼接合時から処理し

た場合、9〜11日後の朝には、15/15頭(100%)が元気な状態で

複眼が黄化していた。午前10時に簡易羽化装置に入れ、羽化させた。

 羽化時刻は、午後0時〜午後7時までの間であった。午後3時〜午後5時 までの間に20/26頭(約77%)が羽化した。

(2)過抑制→冷蔵処理→加温処理

 飼育法は①と同様である。処理の開始は、羽化予定日からでよい。羽化直 前個体の複眼は、羽化抑制されると、翌朝には変色し始める。変色過程は、

①深緑色→②黄みがかる→③黄緑色→④真黄色である。

 朝の時点で②であれば、容器に入れ、15℃で保存した。これは、体内で の変態スピードを押さえ、翌朝までもたせるための冷蔵処理である。冷蔵保 存する頃には気管呼吸に変わっているようなので、胸部の1/3程が出るよ

うに、水量を加減する必要がある。③,④であれば、そのまま簡易羽化装置 で羽化させることが可能であった。

 夕方の時点で②であれば、そのまま朝までもつ。③,④であれば、夜の内 に水中で羽化し、溺死してしまう(水中羽化死)ので、8℃で保存した。変 態をほとんど停止させ、翌朝までもたせるためである。

 冷蔵保存した個体は、活動が低下しており、このままでは、すぐに羽化す ることはない。そこで、容器ごと30℃設定のインキュベータに入れた。体 内の活性を目覚めさせるための加温処理である。

 加温は、10〜30分でよい。活性を取り戻した複眼黄化ギンヤンマは、

羽化しようとして、容器の中で暴れ始める。この状態になった個体は、簡易 羽化装置に移すと、すぐさま上陸する。足場を固めて定位するまでに時間の かかる個体もあるが、ほとんどの個体は、1時間以内に羽化を開始した。

 最も良い結果を出した組み合わせば、夕方に②を15℃で、③,④を8℃

で冷蔵保存した場合であった。これらの個体は、翌朝には、体力を温存した ままほとんど複眼が黄化した状態になっている。簡易羽化装置で定位させた 後であれば、直射日光の元でも、抵抗なしに羽化した(図32)。

 過抑制のみで、冷蔵・加温処理を行わなかった場合は、1時間以上たって も羽化しないことがあった。

 以上の処理は、25℃設定の場合のものである。複眼の変色に見られる過 抑制の限界は、高温では早まり、低温では遅くなるので注意しなければなら

ない。

 判別基準は、複眼黄化の進み具合が主になるが、泳ぎ方の変化を参考にす ると良いことが分かった。観察によると、直腸鯉による鰐呼吸は、羽化が近 づくと、徐々に気管呼吸へと移行していった。

 鯉呼吸時は、肛門から直腸鯉に水を吸い込んでガス交換を行っている。そ して、吸い込んだ水を勢いよく肛門から噴射し、その反動でジェット推進を 行う。しかし、気管呼吸に移行したヤゴは、ジェット推進が行えなくなり、

1,2齢時と同様に、体をくねらせるようにしてフラフラとしか泳ぐことが できないようになった。水中にいると溺れてしまうので、クイックイッと亭 亭と体を必死で動かして、呼吸のできる場所を探した。これは、水を吸入・

排出する役目をする肛門付近の腸壁にある弁の開閉を司る筋肉の機能が、働 かなくなるためだと考えられている。

 「ジェット推進」は、羽化自制の限界に達していないことを意味し、「フ ラフラ泳ぎ」は、羽化自制の限界に達しており、冷蔵保存の時期にきたこと を知る目安となる。

 状態を把握するため、レンガの上に出ている個体を水中に放してチェック した。その時、すでに用済みとなった直腸鯉を肛門から吹き出す個体もあっ た。ほとんどの個体は、直腸鯉を羽化殻の底に残して羽化する。

図32 クロスジギンヤンマの羽化制御

  (時刻:午後0時22分,照度:194101x>

 クロスジギンヤンマと共に昼夜逆転処理にかけていたウスバキトンボが、

午前9時頃、金網製の容器に上陸して活発に動き回っていた(図33−1)。

 複眼黄化ギンヤンマと同様の動きであったため、簡易羽化装置に移すと、

クロスジギンヤンマと同様に羽化した(図33・2>。

4.羽化失敗の原因と対策

 羽化を失敗した多くの個体を調べてみると、過抑制しすぎて弱っている個 体や、肢部欠損の個体に失敗が多いことが分かった。肢部欠損は、集団飼育 時の共食いによるものだと思われる。

 ペットボトルを加工した湿室で羽化させるようにしたところ、タイプ①(

頭部や軍部が抜けない)やタイプ②(倒垂後、起きあがれない)の失敗が少 なくなり、無事に殻から脱出できる個体が増えた(図34)。

 しかし、タイプ③(起きあがった後、落下する〉の失敗が増加した。殻か らの脱出が第一関門であった。それをクリアーした後の失敗なので、残念で ならなかった。倒押している時問が短いため、肢部の固化が十分でないまま 起き上がり、つかまり損ねて落下するのではないかと考えた。倒垂時間を計

ってみたが、特に短いということはなかった。一度下に落ちると、翅が痛ん でまともに伸長することはない。もう一度、殻や棒につかまらせても、つか

まり直せた個体は1頭もなかった。

 1994年11月1◎日、野池で採集してきたクmスジギンヤンマを使って 羽化失敗の原因究明を行っていた。左前肢欠損個体の羽化が、頭部を半分抜 いたところで止まっていたpその個体は、何度も体を抜こうとしたが、成功

しなかった。その時、宙に浮いた欠損前肢が目についたので、試しに、アロ ンアルファで登り棒に固定してみた。すると、体が再び抜け始め、脱出に成 功した。他の個体の固定できていない足をアロンアルファで固定してやる