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4つの視点による指導

ドキュメント内 児童の読書力を形成する (ページ 149-178)

第5章 「読書日記指導」実践の実際(2012 年度、第3学年)

第1節 4つの視点による指導

第1項 指導方法

第4章で示したように、「読書日記指導」の視点として以下の4点を設定し、実践する。

(1)個に応じた教師の朱書き

指導者たちが従来、実践してきた読書ノートや読書日記では、読書意欲や読書態度の育成を重視し ていたが、筆者はそれらと共に、定義した読書力をもとに具体的な読書技術の育成もねらう。そのた めに、日頃から国語科で学習した表5-1の「読み方」を掲示し、他の本でも活用できるようにした。

143 表 5-1 「読み方」一覧

① おもしろいところ、すきなところ、ふしぎなところ、

感動したところ、疑問に思うところなど

② 人物に対する思い、人物関係

③ 人物の気持ち、人物の気持ちの変化

④ 人物同士をくらべる。

⑤ 大切なこと、学んだこと

⑥ 自分の考えが変わったこと。

⑦ 作者が伝えたいこと。

⑧ 本の内容や表現に対する思い。

⑨ 自分と人物をくらべる。

⑩ 自分だったら・・と考える。

⑪ 思い出したこと

⑫ これまでの自分、今の自分、これからの自分

表 5-1 の読み方を読書力と対応させると以下のようになる。

読解力(解釈)・・・②③④⑤⑥⑦

読解力(人物や作品に対する熟考・評価)・・・①⑧ 読解力(自分と関連づける熟考・評価)・・・⑨⑩⑪⑫

第2章で示したように、大村のてびきは、個に応じた指導法として有効なものとして考えられる。

そこで、それを参考にして、筆者が定義した読書力や表 5-1 に基づいた朱書きに重点をおいて実践を 進めることにする。

朱書きは以下のように行う。

○一人ひとりのできた読み方や書き方、考え方、意欲等が表れた文章に花丸を付けたり肯定的な評価 の言葉を朱書きしたりして、児童が意欲や自信をもつことができるようにする。

<例>

・「・・・な読み方ができましたね。」「・・・に読んだところがよいですね。」「あらすじを分 かりやすくまとめて書くことができましたね。」「・・・に考えることができたのですね。」

など

○感想を引き出したり深めたり広げたりするための書き出しの言葉を書く。

<例>

・「どうしてそう思ったかというと・・」「○○を他の言葉でいうとしたら・・」「やさしいとこ ろは他にもあって・・」「○○の本の登場人物と比べると・・・」など

○分からないことについては、質問を書き、児童がそれに答えるようにし、ノートを通した対話がで きるようにする。

○読書に対する児童の悩みや質問があった場合は、それに対し、アドバイスをする。

○児童の読書の様子を見ながら、必要に応じて本を紹介したり、どのような読み方をしたらよいかア ドバイスをしたりする。

○読書のよさを感じられるように、教師の思いを伝える。

<例>

144

「伝記を読むとその人のすばらしいところを感じることができますね。」など

(2)児童の自己評価

生涯にわたって学び続けていくためには、教師による評価だけではなく、児童の自己評価も不可欠 である。そこで、児童自身が読書日記を振り返る場を設定し、自分の伸びや課題を自覚し、次の読書 の目標を決めることができるようにする。

<振り返りの観点>

・どんな読み方をよく行ったか。

・どんな本をよく読んだか。どんな本が好きか。

・家でよく本を読んだか。

・どれくらいの時間読んでいるか。

・読書に対してどう思うか。

・本をどのように選んだか。

・友だちと本の話をしたか。など

(3)教師と児童との音声による対話

休憩時間を使い、読書日記をもとに児童の読書に対する思いや読書の様子、本の選び方等を聞き、

認めたり助言したり適した本を薦めたりする。

(4)学級に対する教師の取り組み

児童の読書日記を学級に紹介したり読み合ったりすることでどのような読書力がついているかをみ んなで共有し、それぞれのよさを認め合うことができるようにする。

第2項 国語科単元と読書日記

読書日記は、日常的に自由に読書生活や読書感想を記録するものであるとともに、国語科から全く 離れたものではなく、国語科教材と関連した読書の記録であることも必要である。

表 5-2 は、3年生の「読むこと」の教材(G社)と日常で読んできた本、そして一斉指導として読 書日記に書かせたことについて示したものである。

表 5-2 年間読書指導

月 国語科教材 日常の関連読書 読書日記

・つり橋わたれ

・ゆうすげ村の 小さな旅館

・同じ作者の本

・ファンタジー

不思議なところ、おもしろいところなどを書 く。(朝の会で筆者が紹介する。)

あらしの夜に ・同じ作者の本

・友だち関係を描 いた本

これまで学んだ読み方をもとに作成した「読 み方のてびき」から選択して書き、国語の読書 会で話し合う。

145 第3項 実践結果

では、児童が書いた読書日記を取り上げ、個と学級全体の成果、変容、課題について考察する。T は筆者が書いた朱書きである。波線は筆者が読書日記に引いた線であり、そこに花丸もつけた。※は 筆者の考えや肯定評価したことである。また、筆者が定義した読書力(表 3-5)のどの力が表れてい るかについての考察もした。< >は表 3-5 の番号である。( )の中の番号は、読書日記指導の視 点(①「個に応じた教師の朱書き」②「児童の自己評価」③「教師と児童との音声による対話」④「学 級に対する教師の取り組み」)である。

ここでは8人分の読書日記を取り上げる。8人中、国語の市販テストと国語ノートによる評価がA

(十分到達)の児童は4人、B(到達)の児童は3人、C(到達していない)の児童は一人である。

(1)児童Aの読書日記から(評価Aの児童)

この児童は、文章を的確に読み取ることや想像すること、大事なことを捉えることなどが十分でき る児童である。どの教科においても理解力、表現力がある。何事にもまじめに取り組み、読書日記も 年度初めから意欲的に書いてきた。初めから、書く内容は分かりやすく、文量も多かった。すでに読 む能力と書く能力が十分身についた児童である。

○11 月 8 日『くまさんじゃなくてきつねさん』

このお話に出てくるうさぎさんは前となりにすんでいたくまさんが遠くの町に引っこしてそのかわ りにきつねさんがこしてきたのにいつまでもきつねさんをくまさんだと思ってしまうところがうさぎ さんとくまさんのなかのよさを表していると思いました。

そして、私はなんとなく新しい友達をつくる時のちょっと遠りょし合う気持ちににているなあと思 いました。

T・・自分のことを考えたところがいいですね(視点①)。

※ここでは、人物関係を読み取ること<読書力④>や自分との関連づけ<読書力⑥>ができていた。

○12 月 12 日『ぎんいろのねこ』

あこちゃんのお母さんはある日、どぶしろというねこに大切なたいをとられてしまいました。私は、

なんてひどいことをするねこだなあと思いました。でも、どぶしろは意地悪なねこではありませんで した。確かに人が大事にしていたものをとることはいけないことです。だけど、それは自分の四匹の

読書案内 ・担任が薦める本

・自分が自由に選 んだ本

友だちの読書紹介カードを読んで感想を書 く。

これまでの自分の読書のふり返りを書く。

11 12

・モチモチの木

・木かげにごろ り

・同じ作者の本

・民話

『木かげにごろり』の感想を書き、交流する。

(国語の時間)

これまでの自分の読書のふり返りを書く。

冬眠する動物た ち

・動物の冬眠に関 する本

分かったこと、驚いたことなどを書く。(朝 の会で筆者が紹介する。)

自分の本の選び方について書く。

2 わにのおじいさ んのたから物

・おにが出てくる 本

あらすじ、人物の気持ち、人物に対する思い 等について書き、読み合う。(国語の時間)

146 子どもに食べさせるためだとわかったからです。

あこちゃんが公園におきっぱなしにしていた「ももたろう」の本を四匹の子どもによみきかせをし ていたところから私は子ども思いなやさしいねこだなあと思いました。また、本をかりたおれいにす みれの花をおいているところからもねこのやさしさを感じることができました。

どぶしろなんかではなくすてきなぎんいろのねこの姿が思いうかびました。

T・・2か所からねこのやさしさを感じることができましたね(視点①)。

※人物に対する感想をもつこと、複数の叙述から人物に対する優しさを感じること<読書力⑤>や人物 の行動の理由を解釈すること<読書力④>ができていた。この読書日記を学級で紹介した(視点④)。

○12 月 17 日 読書のふりかえり(視点②)

私は、前回の読書のふりかえりで書いた「長い本を読む」ことに挑戦しています。しかし、目標通 りに読むことができません。それは、短い本の方が話の結末がすぐわかるのでついつい手にとって読 んでしまうからです。

でも、逆に長い本はどうなってしまうのだろうという楽しみもあると思うので、まずは1冊何か読 み終える努力をしたいと思います。

T・・その気持ちはよくわかります。長い本と短い本を同時に読んでいくという方法もありますよ(視 点①)。

児童Aの返事:アドバイスありがとうございました。しばらく先生が教えてくださったやり方でやろ うと思います。

T・・やってみてください。その方法があえばよいのですが(視点①)。

※読書の悩み<読書力①>や長い本を読み通したいという意欲<読書力⑧>が表れていた。本の選び方に ついては、休み時間にも児童Aと話をした。その後、どんな本を読めばよいか相談しに来たので、

長編であり、子どもの命に関する本『電池が切れるまで』を紹介した(視点③)。

○12 月 19 日 『電池が切れるまで』

(前略)ゆきなちゃんには3人も妹たちがいてなかなかお母さんをひとりじめすることができません。

だから病院に入院しているときはずっと一緒にいたいと思っていたのにできるだけがまんしているの がすごくお姉ちゃんらしいと思いました。私はもし、自分が神経芽細胞腫というがんになっていたら すぐにくじけていると思います。(中略)一方、ゆきなちゃんは神経芽細胞腫というがんにかかって いても、なんでも一生懸命になってのりこえていっているところがりっぱだなあと思いました。まだ とちゅうなのでこれから続きを読んでいきたいです。

T・・自分だったらと考えながら、ゆきなちゃんのすばらしいところを読み取りましたね(視点①)。

※人物に対する感想をもつこと<読書力⑤>、「自分だったら」と考えること<読書力⑥>ができ、続き を読みたいという意欲<読書力⑧>が表れていた。この読書日記を学級で紹介した(視点④)。その 後、この本を読み終えることができた。

○12 月 30 日「ピカソ』

ピカソは天才画家です。私がピカソのすごいと思ったところは一つのかき方にとどまることなく、

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