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リテラチャー・サークルと読書ノートの実践(2011 年度、第5学年)

ドキュメント内 児童の読書力を形成する (ページ 100-122)

第4章 読書日記指導の構想に向けて

第1節 リテラチャー・サークルと読書ノートの実践(2011 年度、第5学年)

第1項 リテラチャー・サークルの実践

(1)読書会の課題と改善

2010 年度、広島県内公立小学校(M小学校)における、第5学年の教科書教材『注文の多い料理店』

の単元では、「登場人物の考え方」や「作者の思い」「作品の特徴」に焦点を当て、それらを読みの観 点(何に着目して読むかという読み方)として読み取らせた後、『雪わたり』を『注文の多い料理店』

と同じ観点で比べながら読ませた。そして、単元のゴールに設定した読書会では、宮沢賢治の同じ本 を読んだ者同士でグループを作り、作品の特徴(構成や表現とその効果)を中心に話し合わせた。

単元の学習の中で、児童は宮沢賢治の様々な作品を読み、自分が読み取ったことをノートに書き、

読書会ではそれをもとに自分の考えを話し、宮沢賢治の作品の特徴の共通点と相違点について話し合 うことができた。「作品の特徴」という読みの観点に焦点を当てることでつけたい力も明確になり、児 童の自己評価や教師による評価も容易になった。しかし、単元の学習を通して見たとき、児童の主体 的な学びとその楽しさ、読書力の評価に課題が残った。これまでは、教師が様々な本を用意し、読書 会のために読ませ、決まった観点で話し合わせてきた。もちろん児童の力をつけるときには意図的な 指導が必要である。しかし、生涯にわたって自分で本を選び自分で読書生活を高めていく力をつける ためには、今までの教師主導の一斉の読み方や読書会のやり方だけでは不十分であった。教師が中心 になって進めなくても自分たちで自由に読み方を選んで読み進めたり多様な読み方を学び合ったりす ることや、読書の楽しさを友だち同士で共有することが望ましいと考えた。

そこで、注目したのが、足立によって紹介されたアメリカの「リテラチャー・サークル」(1990 年 代から 2000 年代に盛んになった読書会)である。足立(2009)は、リテラチャー・サークルのことを、

自分がどのように読み、その本や作品をどのようなものと評価・判断したかを仲間に伝え、共有する 点において優れた効果をもつ読書活動だと述べている。また、優れた読者が行っている読書活動を子 どもたちに意識的に行わせるために自分の読む役割を決め、本の性質やテーマや背景などに縛られず 自由に読むことや読み方を定着させることもできるとしている。

また、第2章で検討したように、リテラチャー・サークルは、日本の教科書であまり取り上げられ ていない「自分と関連づけて読む力」や「作品や人物を評価・批評する力」を重視しており、国際的 な読解力とされている PISA 型読解力を育成することができる読書活動であるとも考えられる。

筆者は、このリテラチャー・サークルが、現在の国語科で行われている教師主導の読書会、または 反対に児童任せになり、どんな力をつけるのか明確になっていないような読書会の課題を解決する可 能性をもつものだと考えている。つまり、リテラチャー・サークルの手法を取り入れることにより、

主体的な態度で読書をして話し合う読書会、友だち同士が楽しく本について話し合う読書会、多様な 読み方の習得を目指した読書会が可能になるのではないかと考える。

しかし、アメリカとは社会的な背景や学校教育の内容・方法等が異なるため、アメリカで行われて いることをそのまま日本で取り入れることは不可能であろう。そこで、まず、アメリカのリテラチャ ー・サークルの理論が日本の小学校で適用できるかどうか考察する。

足立(2004)は、Daniels がこのリテラチャー・サークルの原理としている8つの学習理論(①思

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考としての読書研究②読者反応・文芸批評③個人読書④足場設定理論⑤協同学習⑥グループ・ダイナ ミクス⑦デトラッキング⑧バランスのとれた指導)を紹介している(Daniels、1994、 pp.32-44)。

筆者は、足立が紹介しているこれらの理論が小学校の指導に適用できるかについて、まずこれまで の自分の実践を基に考察する。

<学習理論①思考としての読書研究について>

これまでの学校の国語科「読むこと」の単元学習では、単元のゴールに教科書教材の発展として教 科書教材と同じ作者や同じテーマの本を読み、感想を伝え合う活動を設定してきたが、読む意欲をも たせる「読書前」と本の読み方を学ぶ「読書中」の指導は弱く、「読書後」にはどんな力がついたのか 明確になっていないことが少なくなかった。

アメリカのリテラチャー・サークルは、足立によると、「読書前」で教師が本を数冊用意し、児童の 読みたいという気持ちを起こさせる。「読書中」では、一人読みの段階で、役割シートなどに示された 指導によって読む。「読書後」には、振り返ったり熟考したり自分の言葉で要約したりするという。

このことから、リテラチャー・サークルの「読書前」「読書中」「読書後」の思考過程をとらえるこ とで、本を読む力をつける単元学習の一連の流れや日常の読書活動の流れを改善できるのではないか と考える。この理論は、授業改善を図ることにより実践に適用できるだろう。

<学習理論②読者反応・文芸批評について>

日本の国語科教科書の「てびき」の中には、「最も強く心に残ったことについて話し合いましょう。」 というように、一つの正解ではなく自由な考えを求めるものも入っている。

児童の読み方は、それまでの経験や知識、ものの考え方、読書生活の状況により多様なものである。

ところが、授業の様子を見ると、自由に読むことができる学習課題に対しても、教師が正解をもって 導いていくことや児童の多様な読みを適切に評価できないことなどから児童に達成感をもたせること ができなかったり、読む意欲を低下させたりすることがある。特に文学作品の学習の場合、個々の読 書反応を大切にする幅広い学習課題や発問の設定と評価基準・評価方法の改善が必要である。

<学習理論③個人読書について>

自分のペースで読み、自分の考えをもつことが重要であるので、この理論は納得でき、そのまま実 践に適用できると考える。

<学習理論④足場設定理論について>

大村(1984)は、しなければならないことや考えなければならないときに生徒ができるように心を耕 す手びきを作成し、生徒の言葉や考えを広げてきた。筆者もそれらを参考にして、これまで児童が読 み方や話し合いの進め方を理解できるように、また、児童の感想を広げることができるように「学習 の手引き」を作成してきた。手がかりとなるものがあることにより、児童の言葉や考えが広がること を筆者は実感してきた。したがって、この理論は実践にそのまま適用できると考える。

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<学習理論⑤協同学習について>

一人では読み方が浅い場合があるが、友だちの感想や意見を聞き合うことにより、今まで気づかな かった事に気づいたり、学んだりするものである。グループ学習では、学び合うことができるので協 同学習の理論は日本でも大切にしていきたいものである。しかし、そのためにはグループ内の話し合 いのルールの確立、一人ひとりが安心して自分の考えを話し合える雰囲気が必要である。

<学習理論⑥グループ・ダイナミクスについて>

児童がグループの友だちと関わることにより、意欲を高めることができるのも学校生活の中でよく 見られることである。しかし、自分たちで葛藤―解決の構造をもたせることは小学校高学年でも容易 ではない。それができるようにするためには、自分の考えをしっかりともっておくこと、話し合いの 力をつけておくことが必要であるが、しばらくの間は教師が支援していかなければならないだろう。

<学習理論⑦デトラッキングについて>

これについては問題点もある。児童によっては、友だちと違うことをすることで不安感をもつ子も いるのではないか。一人ひとりに力をつけておき、自信をもたせておくことが前提となるだろう。

また、異なる役割の児童が集まって話し合いをしたときに、自分が同じ読み方をしていないので、

友だちの意見に対して自分の意見を言えなかったり思考を深めることが難しかったりするのではない だろうか。

<学習理論⑧バランスのとれた指導について>

児童主体の学習か、教師主導の授業かは、単元の中のねらいや学習内容等によって考えていかなけ ればならない。読書において、児童主体でやりすぎると、教師のねらうことができないこともある。

教師主導でいけば、児童の意欲や主体性が育たないという問題点が出てくる。バランスについては難 しい問題である。

学習理論①から⑧までを見ると、第5学年では、③と④と⑤の理論はそのまま取り入れることがで きる。①と②と⑥の理論については現在の方法を改善すればリテラチャー・サークルは実施可能だと 考える。実践して検討する必要があるのは⑦⑧である。

(2)実践方法

では、研究の視点「読書力の明確化」「読書力の形成を目指す系統的・連続的な読書活動」「書く活 動・話し合う活動と結びついた指導法」に適合していると考えるリテラチャー・サークルの実践を取 り上げる。

この実践は、2011 年度5月~6月に、広島県内公立小学校(K小学校)の第5学年1学級(計 11 名)に対して国語科の「読むこと」の授業と日常の読書活動の時間において行ったものである。

国語科では、読み方の役割を決めて教科書教材『世界でいちばんやかましい音』(東京書籍)を読ま せ、リテラチャー・サークルの方法を習得できるようにした。これは、有元が教科書教材をブックク ラブで学習する単元構成にしたのと同様の方法である。その後、児童が教科書教材に関連した本の中

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