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日本の先行実践の検討

ドキュメント内 児童の読書力を形成する (ページ 53-78)

第2章 読書指導理論・実践の考察

第4節 日本の先行実践の検討

第1項 足立幸子の実践~リテラチャー・サークルの実践に向けて~

足立(2002)は、スペインの読書運動「読書へのアニマシオン」(作戦と呼ばれる一種のゲーム的な 方法)を研究し、実践した結果、以下の扱いにくい4点を認識するようになった。

①アニマシオンは、民間の中で成立したもので、授業や教科という枠組みの中で行ってはならない。

②子どもたちがその「作戦」に参加するかどうかを決められるという自由参加の原則がある。

③参加者全員に 1 冊の本を用意しなければならないという物理的・経済的な問題がある。

④「作戦」で用いられる素材(教材)と呼ばれるカードの作成が非常に難しく時間もかかる。

そこで、その 4 点を解決できる方法として、アメリカで開発された Literature Circles(リテラチ ャー・サークル)を取り上げた。

前述したリテラチャー・サークルを、大学の講義の一部を用いて大学生にほぼ毎週実施した結果、

少人数で同じ本について自分の読みや活動結果を披露したり、話し合ったりすることが大学生にとっ て非常に楽しいとともに、大学生の読書における思考過程や思考のレベルを把握できることを実感し ている(p.104)。

小学校 5 年生 1 クラスに対しても 2 回リテラチャー・サークルを試した結果、大学生と同様に、非 常に楽しんでグループの活動ができること、疑問点を話し合うだけでなく、絵をかくこと(イラスト レーターの仕事)、表現を音読すること(文章担当者)、他の登場人物の場合を想定して詩をつくるこ

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と(登場人物担当者)などの活動についても十分な成果が得られたとしている(p.104)。

足立(2011)は、読書における初読に着目し、初読の過程を生かした読書指導の方法の開発におい て次の 4 点の条件を見出した(p.85)。

①終わりの場面を知らない途中の段階での思考を学習の対象とするかどうかが鍵となること。特に 初読の途中での思考を扱った読書指導が必要であること。

②初読で働く読みの志向性や、先を予想することを中心に据えた、思考の扱いが重要であること。

③途中の思考を扱う場合に、一字一句ごとの思考を取り上げるのではなくて、ある程度のまとまり における思考を取り上げることが現実的であること。

④教科書教材は、初読という意味から扱いにくい。本だけでなく、様々な媒体を用いることが可能 であること。

以上の 4 点をリテラチャー・サークルが、満たしているかどうか検討するため、中学生 1 年生及び 2 年生各 1 学級に実践したところ、リテラチャー・サークルがこれらの点を満たしていることが明ら かになった。

さらに、読書を国語科の教育課程に位置づけるためには評価が重要だと捉え、「読者反応」(読者が 読書に際して起こす様々な反応)に着目し、勝田(2011)の読者反応をとらえるアプローチをもとに、

「書きことばによる反応」「話しことばによる反応」「観察」が授業における読書にどのように盛り込 まれているかについて他者の実践を通して検討した。中学校 3 年生 1 学級に対する実践の結果、書き ことばによる反応を用いる方法、書きことばによる反応をもとに、話しことばによる反応を引き出す 方法、観察を書きことばによる反応で補う方法などを示し、これらの反応を評価していく可能性を示 した。

以上の足立の研究から、リテラチャー・サークルを日本の学校で実践していくことは可能であると 考えられる。ただし、実践は中学生以上が多いことから、小学校で実践できるかどうかについては考 察していく必要がある。

第2項 有元秀文の研究~ブッククラブの実践に向けて~

有元(2008)は、これまでの日本の国語の授業における課題を以下のようにとらえている。

①今までわが国で行われてきた国語の授業では、国際社会で必須とされる「テキストから根拠を挙げ て自分の意見を述べる」力が十分に育たないことが PISA 調査の結果明らかになった。

②PISA 調査では読解力は読書量にほぼ比例することが明らかになったが、詳細すぎる読解に偏りがち な国語の授業では、読書量が決定的に不足する。

③本を読むだけで、本の内容について話し合いを行わないことが多い従来の読書教育では、読んだこ とについて意見を述べる国際型読解力は育たない。

そこで、ブッククラブを取り上げ、子どもにリーディング・ストラテジー(成人のすぐれた読者が 身に付けている、効果的に読書するテクニック)を身に付けさせることを重視し、以下の 14 の問いを 提案している。

(1)「バックグラウンド・ナリッジ」の問い ①基礎知識

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(2)「正確な理解」の問い ③キーワードの理解 ④キーセンスの理解 ⑤文章構成の理解 ⑥イラスト、図表の理解

(3)「深い理解」の問い ⑦解釈

⑧予測 ⑨要約 ⑩主題

(4)「発信」の問い

⑪クリティカル・リーディングの問い ⑫クリエイティブ・リーディングの問い ⑬パーソナル・リーディングの問い ⑭視点を変える問い

有元は、日本の授業の全部をブッククラブで行うことは困難だと考え、教科書教材の時間を短縮し、

余った時間を読書単元として関連した本を読むことを提案する。その際、教科書教材も 14 の問いを用 いるブッククラブの指導法を取り入れることを重視し、小学校の教科書教材第 5 学年「大造じいさん とガン」の単元構成を示している(pp.24-25)。

以上のように、有元も足立と同様に、海外の読書指導法を日本で取り入れる方向で研究を進めてお り、実践を通して検証しようとしている。

日本の学校で行うには様々な困難が予想されるが、筆者も実践を通して、これらの読書活動の可能 性を探っていきたい。

第3項 大村はまの実践~読書生活指導~

(1) 大村はまの帯単元「読書」の指導観

大村は、直接の学習の対象にされていなかったそれまでの読書指導を見直し、昭和 41 年度から昭和 45 年度までの5年間、年間を通して帯単元「読書」(月に2、3時間ずつ) の指導を行った。

その帯単元「読書」において、大村(1984)は読書生活指導についての考えを以下のように述べて いる(pp.6-8)。

①読書指導は読書案内だけではない。

②読書指導の内容は本を探すところから始まり、いろいろの読書の技術を身につけることである。

③読書指導は、読解指導のあとに続くものではない。読解指導へのつけたしでない、単なる発展で もない。

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④読んだことを蓄えておくだけの“情報人”でなく、読んだことから何か発見したり、何か作り出 したりする読書人に。

⑤読書は、まず読者のためのものである。

①は、本を読んでみるように薦めたり、次に読むべき本を指示したりすることは大切な内容である が、読書指導の内容はもっと広く多岐にわたっているという考えを示している。

②において、大村は、「教養のために数少ない本をていねいに読むことに力を注いだ読書の世界から、

自分の選んだ本を自分の選んだ読み方で読むことである。本を選び、その本の読み方を選ぶ、これが 一人前の読書人である。」と述べており、読書技術を自分で使いこなすことを目指している。

③は、読書生活、読書指導の中に読解すること、読解指導が位置づくという考えである。

④では、大村は多くの本を読むだけではなく、読んで考え、読んで行動し、いろいろな生活に広げ ていくような人や問題に出会った時に助けを本に求める人を読書人と述べている。

⑤では、読書とはただ受け取ることではなく、本の使い手になり、読書指導に、読解指導を超えた 本を活用する技術を求めることだと述べている。

このように、大村は、本を紹介する読書指導だけではなく、本を選ぶ技術、読み方の技術を身に付 けた自立した読書人を育成することを重視している。この自立した読書人は、野地が求める「個性読 み」ができる人ということになるだろう。

では、鳴門教育大学附属図書館「大村文庫」に所蔵されている「月例研究会資料」の中から帯単元

「読書」の学習指導案を対象とし、大村の指導観を見ていく。

大村は、昭和 41 年に中学1年生を、42 年に同じ生徒である 2 年生を、44 年に新しい1年生を受け 持っている。指導案は、昭和 41 年5月、昭和 42 年 10 月、43 年3月、44 年5月のものが所蔵されて いた。次にその指導案の記述を表にして示す(表 2-9、下線は前回との指導案との相違点:細による)。

表 2-9 大村の指導案の中の「指導計画」

41 年 5 月 20 日

第1学年 1 毎日少しずつでも読書をし、読書日記を書くようにさせる。読書日記には、

月日、書名のほか、その日何ページから何ページまで読んだか、その読んだ範 囲について感想を書く。

2 本を一冊読み終わったら、できたら感想文をまとめる。日記のままで、感想 文をまとめなくてもよい。

3 読書日記は、一枚終わるごとに提出させ、次の用紙を与える。

4 一か月に二時間、「読書」の授業をおく。

5 「国語教室通信」(週刊)、指導者の談話、掲示、図書紹介のプリントなどに よって、読む本を選ぶための指導をする。

6 読書日記を掲示する。

7 感想文を掲示したり、プリントして配布したりする。

8 個人指導をできるだけ多くする。

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