第3章 読書力の検討
第1節 先行研究における読書力の検討
74
75
り返ることも入っており、幅広い力を求めている。これらの力は、読書生活を築いていくために必要 なものであると考えられる。
本章では、古市の幅広い分類に基づき、先行研究における「読書力」の分類を行うことにする。
図3-1における読書技術については、分類、評価しやすくするために①②⑧を「読書設計力」、③ を「選書力」、④⑤⑥を「読解力」、⑦を「活用力」の4つにまとめることにする。
では、「読書力」を考えるための手がかりとして、系統的、具体的な力を設定している昭和 26 年版 学習指導要領「読むことの能力表」と増田(1971)の読書能力、嶋路(1974)の「長編の読書能力」、 大村(1984)の帯単元「読書」で身につける多様な力、安居(2005)の「読書力」「読書生活力」、吉 田(2010)の「優れた読み手が使っている方法」を取り上げ、分類する。古市の分類により当てはま らないと考えられるものについては「その他」に入れる。
第 1 項 昭和 26 年版学習指導要領「読むことの能力表」
「読むことの能力」として表示されているものを以下に引用する。表の中の能力の番号は、後述す る表に対応できるように、筆者がつけたものである。第2項以降の表の番号についても同様である。
表 3-1 昭和 26 年版学習指導要領「読むことの能力表」
学年 能 力 継続学年
1
1 本や絵本を読みたがるようになる。
2 本の持ち方やページの繰り方に慣れる。
3 文をどこから読み始めたらよいかがわかる。
4 文のどの方向から読めばよいかわかる。
5 正しく行をたどって読むことができる。
6 拾い読みではなく、文として読むことができる。
7 声を出さないで、目で読むことができる。
8 声を出して読むことができる。
9 自分の名前が読める。
10 自分の経験と文字とを結びつけることができる。
11 短い文章なら、そのだいたいの意味が分かる。
12 簡単な入門準備書または、入門書的な読み物を娯楽のために読むことができる。
13 初歩的な読み物を即座に読むことができる。
14 ひらがなが読める。
15 アラビア数字が読める。
16 文字のほかの諸記号(てん・まる・かぎ)がわかる。
17 漢字は、だいたい三〇字ぐらい読むことができる。
1-2 1 1 1 1 1 1-2 1-2
1 1-2 1-2
1 1-2
1 1 1-3
1
76 2
18 読むことにだんだん慣れてくる。
19 考えながら読む態度が、高まってくる。
20 黙読するとき、くちびるを動かさないで読むことができる。
21 大ぜいの前でじょうずに読むことができる。
22 一年生の初歩読本程度の読み物を即座に読むことができる。
23 二年生程度の読本を読んで理解し、練習してなめらかに読むことができる。
24 長い本でも、最後まで読み通すことができる。
25 問に答えるために、黙読することができる。
26 文の荒筋をとらえることができる。
27 情報や知識をうるために、本を読む度数がますます多くなる。
28 読んだ本の内容を、他人に伝えて喜ぶようになる。
29 絵および文の前後の関係を手がかりにして、ことばを理解することができる。
30 かたかなのだいたいが読める。
31 文字のほかの諸記号がわかり、それに注意して読むことができる。
32 漢字は、だいたい一三〇字ぐらい読むことができる。
1-3 2-4 1-3 1-3 1-2 2-3 2-4 2-3 2-4 2-4 2-4 1-3
2 2-3
2
3
1 長い文でも、楽しんで読むことができる。
2 ひとりで本を読む習慣ができる。
3 音読より早く黙読することができる。
4 いろいろな目的のため、本を読む能力と意欲がだんだん増してくる。
5 自分の興味をもっていることについて、読み物を選択することができる。
6 内容の要点をじょうずに読み取ることができる。
7 文の好きなところや、おもしろいところを抜き出すことができる。
8 文の常体と敬体との区別が分かる。
9 手びきや注釈などを利用して読むことができる。
10 目次を利用して読むことができる。
11 他人を楽しませるために、なめらかに、わかりやすく音読することができる。
12 かたかなが読める。
13 漢字は、だいたい二八〇字ぐらい読むことができる。
2-4 1-3 2-4 3-4 3-5 3-4 2-4 3-5 3-4 3-4 2-4
3 3
4
14 物語・実話・ぐう話・時事などの種々の読み物に対する興味がだんだん増して くる。
15 文の組み立てがわかる。
16 文の段落がわかり、その要点がつかめる。
17 問題を解決するために読むことができる。
18 読書によって得た知識や、思想をまとめることができる。
19 前後の意味から、わからないことばの意味をとらえることができる。
20 一つのことばのいろいろな意味について、考えることができる。
21 ことばの構造とか意味について、一段と強い興味ができてくる。
22 よい詩を読んで楽しむことができる。
23 児童のための新聞や雑誌を楽しんで読むことができる。
24 漢字はだいたい四八〇字ぐらい読むことができる。
25 (ローマ字が読める。)
4-6 3-5 3-5 4-6 4-6 4-6 4-6 3-6 3-6 4-6
4 3-6
5
1 良書に対する興味が増してくる。
2 文意を読み取ることができる。
3 長文でも、その要点を書き抜きしながら、読むことができる。
4 文の内容や表現について、こどもらいしい批評ができる。
5 読む速度がだんだん増してくる。
6 物語などを脚色して、演出することができる。
7 参考書や地図・図面などを利用して調べることができる。
8 辞書のひき方がわかる。
9 辞書をひいて、新出語の読みや意味をとらえることができる。
4-6 3-5 5-6 4-6 4-5 4-6 4-6 4-6 5-6
77
10 漢字はだいたい六八〇字ぐらい読むことができる。 5
6
11 よい文学に対して興味が増してくる。
12 多種多様な文に興味をもつようになる。
13 本を選択して読むことができる。
14 序文を読んで、本を選択することができる。
15 文意を確かに早くとらえることができる。
16 文の組立を確かに早くとらえることができる。
17 叙述の正しさを調べることができる。
18 案内や注意書きなどを利用して読むことができる。
19 読む速度がいよいよ早くなる。
20 感想や批評をまとめながら、読むことができる。
21 参考資料・目次・索引などを利用して読む能力が増してくる。
22 新聞・雑誌などを読む能力が増してくる。
23 娯楽のためや知識をうるために、黙読する能力が増してくる。
24 個人を楽しませたり、情報を伝えたりするために、明確な発音でなめらかに音 読する能力が増してくる。
25 漢字は、だいたい当用漢字別表を中心とした八八一字程度の文字が読める。
26 (ローマ字のつづけ字を読むことができる。)
6-
5-6 5-
5-
5-6 5-6 5-
5-
5-6 5-
5-
5-
5-6 5-6
6 6
以上の能力を分類すると、以下のようになる。
対象 読書技術
読書活動 への積極 的な態度
い ろ ん な 本 や テ ク ス ト を読む
読書環境 の利用
読書環境を
創造する 読書習慣 その他 昭和 26 年版
学習指導要領
「読むことの 能力表」
(低学年)
7.8.10.
11.20.21 23.25.26 28,29
1.12.13 18.19.22 27
24 2.3,4.5.
6.9.14.
15.16.17 21.30.31 32 昭和 26 年版
学習指導要領
「読むことの 能力表」
(中学年)
3.5.6.7 9.11.15 16.17.18 19.20
4.21 1.14.22 23
2 8.12.13 24.25
昭和 26 年版 学習指導要領
「読むことの 能力表」
(高学年)
2.4.5.6 7.9.13 14.15.16 17.18.19 20.21.23 24
1 3.11.12 22
8.10.25 26
78
この表を見ると、低学年、中学年、高学年では共に、読書技術が多い。低学年では、「その他」の、
読書に必要な基礎的な本の知識や文字を読むこと、「読書活動への積極的な態度」が多い。
さらに「読書技術」を分類すると以下のようになる。
<読書技術>
対象 読書設計力 選書力 読解力 活用力
昭和 26 年版学習指 導要領「読むことの 能力表」(低学年)
10.11.23.26.
29
28.
昭和 26 年版学習指 導要領「読むことの 能力表」(中学年)
5.9.10. 6.7.15.16.19.20 17.18
昭和 26 年版学習指 導要領「読むことの 能力表」(高学年)
13.14.21 2.4.9.15.16.17 18.19.20
6.7
読書技術においては、「読解力」が一番多い。
第2項 増田信一の「読書能力」
増田は、読書能力を以下のように示すとともに、幼稚園から高校までのどの範囲で、それらを身に付 けるのかも矢印で示している(矢印は省略)。
1 読書の興味 1 本を読む興味を増す。
2 終わりまで読み通す。
3 読書量を増し良書を読む。
4 いろいろの種類の文章を読む。
5 むずかしい図書を読む。
2 図書の選択 6 目的に応じて選んで読む。
7 目次や図書目録を引く。
3 情報処理の読み 8 必要な知識や情報を集める。
9 目次や索引を利用する。
10 図表や写真を利用する。
11 手引き・注釈・解説を利用する。
12 辞書・参考図書・新聞を利用する。
13 調べたことを組み立てる。
14 課題の解決に適応させる。
4 楽しみ読み 15 楽しんで読む。
16 おもしろいところをつかむ。
17 場面や情景を想像する。
表 3-2 増田信一の「読書能力」
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上記の読書能力を分類した結果を以下に示す。
18 心情を想像して味わう。
19 すぐれた表現を味わう。
20 余暇を利用して読む。
21 じょうずに朗読する。
5 創造的な読み 22 自分の考えと比較しながら読む。
23 他人との受け取り方の違いを知る。
24 作者の考え方をつかむ。
25 感想や意見・判断をもつ。
26 ものの見方や考え方を変革する。
27 適切な批判をする。
28 感想や批評をまとめる。
6 適切な速さ 29 速く読む。
30 目的に応じた速さで読む。
7 読書の反省向上 31 読書を反省して向上する。
対象 読書技術
読書活動 への積極 的な態度
いろんな本 やテクスト を読む
読書環境の 利用
読書環境を
創造する 読書習慣 その他
増田信一
6.7.8.9 10.11.12 13.14.16 17.18.19 21.22.23 24.25.26 27.28.29 30.31
1.2.3.15 20
4.5.10
80 増田の「読書能力」も「読書技術」が一番多い。
<読書技術>
対象 読書設計力 選書力 読解力 活用力
増田信一
31 6.7.9. 10.11.12.15.16 17.18.19.22.23 24.25.26.27
8.13.14.28
ここでも、読解力が多いが、「読書設計力」が入っている。
第3項 嶋路和夫の「長編の読書能力」
嶋路(1974)は「長編の読書能力」について、次のようにまとめている。
1 遅速調整力・・・読みのリズム。時には速く、時にはゆっくりと。遅速の自由性。速読力が基 底にあること。
2 持続力・・・・・読み通す力。ねばり。根気。集中力ともかかわってくる。
3 停留力・・・・・立ち止まる力。時には立ち止まり考える力。先を予想し期待する力。
4 イメージ構成力・描かれている長編の世界(文学の世界、非文学の世界を含めて)を構成する 力。部分的なイメージを一連のものとしてつなぐ力。見える力。
5 総括力・・・・・長編を読み終わった時、「要するに、この作品(図書)は・・・」というよ うに、全体としてとらえ直せる力。まとめる力。
これらの力を分類すると次のようになる。
対象 読書技術
読書活動 への積極 的な態度
いろんな本 やテクスト を読む
読書環境 の利用
読書環境を
創造する 読書習慣 その他 嶋路和夫 1.3.4.5 2
嶋路の長編を読む力は、ほとんどが「読書技術」であった。
<読書技術>
対象 読書設計力 選書力 読解力 活用力
嶋路和夫 3.4 5
これも「読解力」が一番多い。
第4項 大村はま~帯単元「読書」で身に付ける力~
大村は、『大村はま国語教室8』において単元「読書」の様々な実践を紹介している。その実践内容 を端的に表した「目次」からその力を分類する(表 3-3)。