第2章 読書指導理論・実践の考察
第5節 読書指導理論・実践のまとめ
野地の「精読・多読」「個性読み」や増田の発達段階に沿った「テーマ読書」は、現在の読書指導の 課題を解決するために目指したい読みである。しかし、それらは野地や増田の理論のままでは実践で きにくい。実践するためには、理論の課題を解決していかなければならない。
野地の理論においては、どのような読書活動を設定し、どのように精読、多読を取り入れていくの か、読書生活に機能する精読とはどんな力か、国語科教材で身に付ける精読と多読の力はどうつなが っていくのか、個性読みをどのような手順で指導していくのかなどを明確にしていく必要がある。
増田のテーマ読書については、小学校における段階の見直しをし、読解力との関連や、国語科「読 むこと」の単元での位置づけを明確にしていく必要がある。
海外の先行実践では、リテラチャー・サークルとブッククラブに注目した。これらは、日本では重 視されてこなかった読み方(自分との関連づけ、作品の評価・批評)を重視しているところから、読 書の新たな読み方を見出すことができる。さらにこの読み方は自由な読み方でありながら、本の文章 から離れず、根拠、理由を明確にしながら一人ひとりの読みを保障している。また、多様な力を継続 的に身に付けることのできる活動、話すこと、書くこととも結びついた活動であり、筆者の研究の視 点①「読書力の明確化」②「読書力の形成を目指す連続的・系統的な読書活動」③「書くこと・話し 合うことと結びついた指導法」に適合すると考えられる。
日本においては、四者の先行実践について検討してきた。これらを整理すると、表 2-12 のように なる。
表 2-12 読書活動の比較
名前 論文・著書 時期・時間 主な学習活動 使用した本や文章
足立 幸子
全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 発 表 要 旨 (2002)
No103
2日
小学校5年生でリテラチャー・サ
ークルを行う。 実践者が選んだ5種類の 本
学校図書館 (2009)
No706
7時間 小学校6年生でリテラチャー・サ
ークルの国語単元にする。 実践者が紹介した本 全 国 大 学 国
語 教 育 学 会 発 表 要 旨 集 (2011)
平成 23 年 2 月 15 日~2 月 18 日
中学校1年生、2年生でリテラチ ャー・サークルを行う。
学校図書館の本
実践者が持参した本(1 年生は「家族」に関する 本、2年生は「生と死、
かけがえのない人たち」
に関する本 有元
秀文
『 読 解 力 が 飛 躍 的 に 向 上 す る ブ ッ
5 ~ 6 時 間
+ 読 書 の 時 間
第5学年「大造じいさんとガン」
で ブ ック クラ ブを 行う単 元 にす る。
テーマや作者に関連する 数冊の絵本
72 ク ク ラ ブ の
実 践 入 門 』
(2010) 7時間
第3学年「手ぶくろを買いに」で ブッククラブを行う。(3時間)そ の後本を3冊読む。(3時間)最後 の時間に4冊の共通点、相違点を 話し合う。(1時間)
3冊のきつねの本
大村 はま
『 大 村 は ま 国 語 教 室 8 読 書 生 活 指 導 の 実 際
(二)』 (1984)
1年間
○帯単元「読書」読書生活の記録
・私の読書計画・読書日記・読書 ノート・感想文・読みたい本・私 の読んだ本・図書紹介・書評・「読 書」について考える・新しく覚え た言葉・私の読書生活の評価・読 書と私
生徒が選ぶ本
杉本 直美
『 自 立 し た 読 む 手 が 育 つ 読 書 生 活 デザイン力』
(2010)
朝 の 学 活 開 始前 10 分間、
29 時間
表現Ⅰ(中学生)
本を読み、「わたしの読書生活記 録」(読書ノート)へ記入したい生 徒は記入する。
学校図書館や学級文庫の 本
金 曜 日 の 6 校時(通常は 5時間授業)
年に6回 6時間
表現Ⅱ(中学生)1時間
「わたしの読書生活記録」(読書ノ ート)を使って、グループやクラ スで感想を交流する。
「表現Ⅰ」で読んだ本
表現Ⅱ 2時間
ポップをつくり、それを使って友 だちにその本のよさを伝える。
「表現Ⅰ」で読んだ本
表現Ⅱ 1時間
本の感想やおすすめの部分につい て、様々な表現方法を使って自由 に語り合う。
「表現Ⅰ」で読んだ本
表現Ⅱ 2時間
「 ○ ○生 はこ んな 本を読 ん でい る」という観点で本を1冊選び、
リ ー フレ ット を作 成して 交 流す る。
「表現Ⅰ」で読んだ本
毎月、隔月
( 1 時 間 ず つ)
読書ノート(読みたい本の数、
読んだ本の数、印象に残った本や おすすめの本、これからの読書計 画、みんなへの質問やメッセージ など)を基に交流する。友達の読 書生活の状況や読書についての考 え方を知るとともに、自分の読書 生活を見つめ直す。
友達の読書ノート
海外で実践されているリテラチャー・サークルとブッククラブは、読解力を明確にして継続的に行 っていくものなので、年間を通して行うことができれば、筆者の目指す読書活動として有効なものだ と考える。しかし、日本の場合、シラバスに基づいて教科書の単元ごとに、授業時数が定まっている ので、海外の活動をそのまま年間を通して実践することは不可能である。
足立と有元は、日本で実践できる方法として、単元の中にこれらの活動を組み入れる方法を提案し ている。この方法であれば、年間2~3回の国語科「読むこと」の単元で実践することは可能である
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と考える。その場合、留意することは、多読をして話し合う時間を入れるため、教科書教材の読解の 時間を短縮することと、教科書教材を精読する際、身に付けさせる読解力を精選するということであ る。これらのことができるかどうかは、筆者の実践により、実証したいと考える。
大村は、読書指導を単に本の紹介をするだけのものではなく、読書について考える力や選書力、読 む技術や本を活用する技術など、幅広い力を身に付けさせようと実践を行った。これは読書生活を高 め、自立した読み手を育てる読書生活指導である。このことは、筆者の研究の視点①「読書力の明確 化」に適合する。現在の読書指導においても読書生活を高めていくという展望をもつべきである。ま た、大村が年間を通して実践した「読書生活の記録」は研究の視点②「読書力の形成を目指す連続的・
系統的な読書活動」③「書くこと・話し合うことと結びついた指導法」に適合すると考えられる。「大 村の作成した「手びき」は筆者の研究の視点④「個に応じた指導法」に適合する。読書指導は、一人 ひとりの実態に応じて適した方法で行うことが必要であり、そのことにより、野地の「個性読み」を 育成することにつながっていくと考える。
杉本も大村と同じように読書生活を高める指導を行った。教師による読書ノートへのコメントは研 究の視点④「個に応じた指導法」に適合する。読書ノートによる交流は、自分の読書生活を見つめ直 す機会になり、読書ノートの活用は、読書の質を高めたり幅を広げたりすることにつながる。これは、
研究の視点①「読書力の明確化」③「書くことと結びついた指導法」に適合する。
大村の「読書生活の記録」と杉本の「読書ノート」も、リテラチャー・サークルやブッククラブと 同様、筆者の目指す読書活動として有効なものとして考えられる。
これらの読書活動は、筆者の実践により、有効性を検討していくが、読書力については、これまで 検討してきた先行研究を基に、さらに読書力を定義している他の先行研究においても検討し、整理し ていく必要がある。実践において指導と評価をしていくためには、読書力の定義は不可欠である。
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