第4章 読書日記指導の構想に向けて
第5節 「読書日記」の考案
これらの課題を改善するための書く読書活動として、大村の読書生活指導論と中学生用の「読書生 活の記録」に焦点を当て、それを小学生の読書指導に活かす点を以下のように定めた。
研究の視点①「読書力の明確化」について
・意欲・態度・技術を含めた幅広い読書力を目指す。
・読んだページ数や感想を書かせるだけの単なる記録ではなく、読書生活を高めるというねらいをも って指導を行う。つまり、「読書設計力」を身に付けさせる。
研究の視点②「読書力の形成を目指す連続的・系統的な読書活動」について
・年間を通して継続する。
・児童の書いたものを学級に紹介したり、それをもとに学習を行ったりする。
研究の視点③「書くこと・話し合うことと結びついた指導法」について
・書く活動であるとともにそれをもとに話し合うことができるようにする。
研究の視点④「個に応じた指導法」について
・児童にもっと考えさせたい場合は、「てびき」として、書き出しの言葉を朱書きする。
大村は生徒の意見を取り入れながら記録の改善に努め、昭和 51 年度は以下の「読書生活の記録」を 書かせた。以下はその目次である。
目次 まえ書き
1 私の読書計画
2 読書日記(4月~3月)
3 読書ノート 4 感想文 5 読みたい本
6 私の読んだ本・概観 7 図書紹介・書評 8 感想文集
9 「読書」について考える 10 新しく覚えた言葉 11 私の読書生活の評価 12 私の読書生活 読書と私 あと書き
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目次1と 11、12 は「読書設計力」、目次2は「読書習慣」、目次3は「読解力」、目次4は「活用力」、目 次5は「選書力」の育成ができる内容となっており、幅広い読書力を形成することができると考える。そ こで、筆者が定義した読書力に沿って、小学生に指導できる最小限のもの(「私の読書計画」「読書日記」「読 書ノート」「私の読書生活の評価」「私と読書」)を選ぶことにした。そして、これらの内容を含んだ書く活 動として「読書日記」を考案した。
以下の表は、大村の「読書生活の記録」から取り入れたことと筆者の変更点を明確にしたものである。
表 4-14 筆者が考案した読書日記 大村の「読書
生活の記録」 大村から取り入れたこと 筆者の変更点
①私の読書 計画
読みたい本や目標ページ 数、冊数を書く。
月ごとではなく、いつでも自由に書く。
②読書日記 1日1行でもよい。感想を 書いても書かなくてもよ い。1冊の本を読んでいる 途中でも書ける。
毎日ではなく、2日に1度、自由な量を書 く。国語の教科書教材に関連した本や自分 で選んだ本の感想の他に、読書生活につい て書くこともできる。
③読書ノート 読み方の例を示す。 これまでに学習した読み方から選んで書 く。
④私の読書生 活の評価
振り返る項目を示す。 メモではなく、文章で書く。月末ではなく、
自由に書く。
⑤私と読書 文章で自己評価をする。 年に2~3回、読書日記を読み直し、自分 の伸び、読書に対する思い等を書く。
この読書日記では「朱書き」「交流」「活用」を重視し、以下のように指導していく。
・大村は「読書生活の記録」を時々提出させ、3項目から5項目くらいを点検したが、筆者は、小学 生に対する指導ということもあり、継続して朱書きを行い、その朱書きで児童のどのような読書力 が形成されるかを捉え、さらに次の指導へつなげていく。その朱書きは、筆者が定義した読書力に 基づくものとする。先行研究では、個に応じた朱書きの実践による児童の変容について具体例を示 したものが見当たらないことから、朱書きに重点を置く。
・杉本が定期的に読書ノートを交流させ、自分の読書生活を見つめさせてきたことを活かし、筆者は さらに読解力についての交流もできるようにし、児童が多様な読み方を習得することができるよう にする。
・大村が「読書生活の記録」を国語科の様々な場で活用していたことを参考にし、日常的に書く読書 日記を国語科「読むこと」の授業と関連させながら指導していく。
第6節 小学校教育における「読書日記指導」の目的・内容・方法 第1項 研究の視点に沿った読書日記指導の構想
(1)研究の視点①「読書力の明確化」
指導においては、筆者が定義する「読書力」に沿って評価していく。肯定的評価やアドバイスは、
読書日記への朱書き(ノートを通した対話)と音声による対話により行う。
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また、児童自身が読書力に基づき自分の読書力を評価する活動を取り入れ、自分の読書力の伸びや 読書生活について考えられるようにする。
(2)研究の視点②「読書力の形成を目指す連続的・系統的な読書活動」
書く量は少なくてもよいので年間を通して書くことを継続させる。継続していくためには、教師が こまめに児童の読書日記を見て、朱書きをし、児童の書く意欲を高めることが必要である。
年間を通して指導していくことで、個・学級全体の変容を捉え、評価、指導の改善を行っていく。
(3)研究の視点③「書くこと・話し合うことと結びついた指導法」
一人で書くだけでは、読書は閉ざされたものになってしまう。自分の読みを他者に開いていき、共 に学び合うことが読書力形成に有効だと考える。
読書日記に書いたことを基に、リテラチャー・サークのような読書会を行うことや、読書日記を互 いに読み合うなどの活動を設定していく。
(4)研究の視点④「個に応じた指導法」
児童の読書力には大きな個人差がある。そこで、個に応じて、選書や読み方、読書のし方等につい て、朱書きや読書日記を基にした対話により指導していく。
朱書きは、大村の「てびき」を参考にして、以下のように行っていく。
・できた読み方について肯定的な評価の言葉を書く。
・もっと深めたいこと、広げたいことについて、書き出しの言葉を書き、それに答えさせるように する。
・選書や読み方についてアドバイスをする。
・教師の思いを書く。
以上のことから読書日記指導の視点として、①「個に応じた教師の朱書き、」(児童の身についた読 書力を誉めたり助言をしたり、感想を深めたいことについて質問を書いたりすること)、②「児童の自 己評価」(自分の読書生活や読書日記を振り返り、読書日記に自分の問題点や伸び、目標などについて 書くこと)、③「教師と児童との音声による対話」(休憩時間に本の選び方や読書に対する思い、読書 の様子等について対話すること、④「学級に対する教師の取り組み」(児童の読書日記を朝の会で学級 に読み聞かせしたり教室に展示して読み合ったりすること)を設定する。
第2項 読書日記指導の目的
読書日記指導の目的は、筆者が定義した読書力に基づき、以下のように設定する。
①国語科の「読むこと」の授業や日常の読書において、読書意欲・態度を育て、日常の読書に機能す る読書技術(読書設計力・選書力・読解力・活用力)を形成する。
②家庭での読書においても、自分で本を選び、自分の読み方で読書を続けていくことができるように する。
③読書から自分のあり方を考えることができるようにする。
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①は、筆者が定義した読書力を明確にした指導の目的である。読解力に関しては、読書に機能する 読解力を身に付ける精読と同じテーマや作者の本等を読み広げ、視野を広げる多読を行う。
②は、自らが自分の方法で読書を進めていく力の形成を目指す目的である。野地の「個性読み」を 目指す。
③は、野地の「省察(探索)のための読書」にあたるところである。読書により、一人ひとりがど う生きていくのかを省み、探っていく力を形成していきたい。これは、自分と関連づけて読むことに より可能となると考える。
第3項 読書日記の内容
読解力と共に読書設計力、選書力を身に付けさせるために、読書に関することを自由に書くことが できるものとする。具体的には以下の内容である。
・読解力を身に付けていくために、本を読んだところまで、または読んだ後に感想を書く。また、
友だちの読書日記を読んだ感想を書く。
・読書設計力を身に付けていくために、読書に対する自分の思いや自分の読書生活に対する思いを 書く。
・選書力を身に付けていくために、自分の本の選び方について考えて書く。
第4項 読書日記指導の方法
では、読書日記指導の具体的な指導の手順を示す。
(1)読書日記との出会い
読書日記との出会いは、国語科「読むこと」の授業時間に行う。
まず、ノート(国語ノートと同様のマスノートまたは高学年の場合は罫線のノート)を示し、「読書 日記」という名前のノートであることを伝える。
次に「読書日記」と「日記」の違いについて以下のように話す。
○「日記」には、自分のしたことや見たこと、聞いたこと、想像したこと、考えたことを書いて いるが、「読書日記」は、本を読んで思ったことや読書について思うことを家庭で書くノートで
ある。一日おき、あるいは一週間に1~2回くらい書く。
○1冊の本を全部読んで長い感想文を書くのではなく、読んでいる途中でもそこまでのことについ て自分の素直な感想を書くものである。
○書く量は決まっていない。少なくてもよいし、書きたければ多く書いてもよい。
○書き方は自由である。
○この読書日記を1年間書き続けると、次のよさがある。
・本の読み方が分かるようになる。
・書くことに慣れ、自分の素直な思いを書くことができるようになる。
・自分の読書のし方について考え、目標を持って読書をしようとする。
・本の内容から自分のことを見つめ、自分のこれからのことを考えることができるようになる。