第2章 読書指導理論・実践の考察
第3節 海外の先行実践の検討
28 ような指導が必要なのかを検討していく必要がある。
・野地や増田が論じた精読や多読をどのように行うのか、また、どのような力をつけていくのかを 明らかにする必要がある。
・個のどんな課題に対し、どのような手立てをとるのかを明らかにする必要がある。
第2項 まとめ
野口の研究から、読書活動は多様になってきたが、「それぞれの読書活動がどのような力を身に付け させることができるのか。」「どのように質を高めていくことができるのか。」「読むことを書くこと・
話し合うこととどのように関連させればよいのか。」「読書に課題をもつ児童に対してどのように取り 組んでいけばよいのか。」については明確に示されていない。
そこで、筆者の研究の視点として、①「読書力の明確化」②「読書力の形成を目指す連続的・系統 的な読書活動」③「書くこと・話し合うことと結びついた指導法」④「個に応じた指導法」を設定し、
これらに適合する読書活動はどのようなものがあるのかについて、先行実践を検討していくことにす る。
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② 子どもたちは読みたい本を選び、同じ本を選んだ者同士でグループを作る。
③ 子どもたちは、グループごとに読む範囲を決める。
④ 子どもたちが自分の読む役割を決める。
⑤ 子どもたちはそれぞれ、自分の役割で、決めた範囲を読む。
⑥ 役割に基づいてグループで話し合う。
⑦ ③~⑥を繰り返して、1冊の本を読み切る。役割は毎回変える。
⑧ 自分たちのグループで話し合ったことをクラスに紹介する。
リテラチャー・サークルは、同じ本を読んだ者同士の話し合う活動であるとともに、書く活動も含 まれている。上記⑤の自分の決めた役割で読む際には、役割シートに書きこむ。それをもとに話し合 いをするわけである。役割とは、例えば、シカゴの公立学校の Daniels のものは、次のようなものが ある。
表 2-2 リテラチャー・サークルの役割 (フィクション系の本の場合)
どのグループにも置きたい役割 必要であれば加えたい役割 コネクター
(自分とのつながりを見つける)
サマライザー
(要約をする)
クエスチョナー
(疑問を見つける)
リサーチャー
(作者、テーマなどを研究する)
リテラリー・ルミナリー
(優れた表現などに光を当てる)
ワード・ウィザード
(特別な語を取り上げる)
イラストレーター
(目に浮かんだ情景を絵にする)
シーン・セッター
(場面の特徴をとらえる)
これらの役割から、リテラチャー・サークルは、本の多様な読み方を習得できる活動であり、②「読 書力の形成を目指す読書活動」の可能性が高いと考えられる。
足立(2004)は,Daniels がこのリテラチャー・サークルの原理としている8つの学習理論(① Reading-as-Thinking Research ②Reader Response Literary Criticism ③Independent Reading ④ Scaffolding Theory ⑤ Collaborative Learning ⑥ Group Dynamics ⑦ Detracking ⑧ Balancing Instruction)を以下のように紹介している。(Daniels、1994、 pp.32-44)
①思考としての読書研究・・近年の研究で、読書行為は、複雑でダイナミックな思考過程ととらえら れるようになった。優れた読者は、「読書前」に準備をし、「読書中」に意味を構成し、「読書後」
にテクストを越える考えを生み出すための思考方略を用いることが分かっている。
②読者反応・文芸批評・・文芸(Literature)を探究する行為者としての読者という立場に基づき、
読者の個々の読書反応を重視する。
③個人読書・・読書指導には一人で読む時間が重要であることが SSR(sustained silent reading)
や DEAR(drop everything and read)などで明らかにされた。
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④足場設定理論・・大人や他者によって設定された手助け(足場)によって学習範囲が広がる。
⑤協同学習・他者との協働(collaborative/cooperative)学習は、一人だけでは得られない学習の成 果をもたらす。
⑥グループ・ダイナミクス・・集団による学習は、学習に対する期待をもたせたり、自分のやること に責任を持たせたり、葛藤―解決の構造を持たせたりすることができる。
⑦デトラッキング・・子供それぞれが異なる作業を行うことは意欲や読書の質を向上させる。
⑧バランスのとれた指導・・最近のアメリカの教育において効果的な指導方法は、バランスがとれて いることであるとされている。
上記の⑤⑥は、小集団で話し合う時の理論であり、集団で話し合う意義が示されている。また、前 述したように書く活動もあるので、リテラチャー・サークルは、③「書くこと・話し合うことと結び ついた指導法」を行うことができると考えられる。
(2)アメリカのリテラチャー・サークルで身に付ける力
『MOVING FORWARD with LITERATURE CIRCLES』は、アメリカのリテラチャー・サークルの共同 研究の結果であり、第3学年からミドル・スクールまでの教室の担任教師、読むことの教師、学校管 理者のためにつくられたものである。この本の中でリテラチャー・サークルは次のように定義されて いる。
リテラチャー・サークルとは、一つのテクストについて児童たちが小さなグループでともに語り 合うための機会である。これは勝手気ままに営まれるトークの時間ではなく、むしろ、さまざまな 登場人物や出来事、テクストと関連する個人的経験、及び作者の工夫に関する観察などに焦点化さ れたディスカッションである。児童たちが各々の意見を分かち合い、各自の読書体験を内省するに つれて、一人一人の理解は洗練された方法で育っていく。児童をある特定の方法で考えさせるため に教師が質問をするような伝統的なディスカッションとは違って、リテラチャー・サークルは児童 たちに、自発的に質問を作らせ、児童たちがお互いに助け合ってそれに答えていくためのコンテク ストを提供するものである。Schlick Noe と Johnson は言う。「協働がこのアプローチの核心である。
児童たちは他の読者とともに意味を構築していくにつれて、各自の理解を作り変え、付け加えを行 っていく。」(Schlick Noe and Johnson,1999)
リテラチャー・サークルでは、教師は児童たちが自分たちでディスカッションできるように支援す るために次のようなヒントを与えている。これらは、教師がねらっていることであり、児童につけた い力(読書力)であると考える。
このヒントがどのような力なのかを明確にするために、PISA 調査以来わが国でも注目され、つけた い力として求められている「PISA 型読解力」と照らし合わせ、考察していく。
個人的なつながりをつくるためのヒント
①この物語から何を思い出しますか?
②この物語の登場人物か物語そのものから個人的に思い出すつながりを少なくとも一つ教えてくださ
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い。(物語と)同じ興味関心や感情や経験を持ったことがありますか?登場人物の一人が好きだった り、ちょっと違うなと思ったりしましたか?
③どのような読者ならこの本を好むと思いますか?
④この物語(本)のなかであなたに似ている登場人物は誰ですか?どのような点が似ているのでしょう か?
⑤この物語(本)に出てくる人物のなかで、仲のよい友達になれそうなのはどの人物ですか?
⑥少なくとも二人の登場人物をあなた自身やあなたの家族、あなたの友達と比べてみなさい。
重要な要素を確認するためのヒント
⑦この物語のなかで最も重要な考えを一つか二つあげなさい。
⑧作者は、この物語によって人生についてあなたにどのようなことを語りかけようとしていますか?
⑨この物語のなかでもっとも重要な部分やもっともおもしろい部分はどこだとあなたは考えますか?
⑩もっとも重要な登場人物は誰だと考えますか?なぜその人物が重要なのでしょうか?
⑪この小説を読み進めるにつれて、中心人物についてわかってくるはずです。その人物の身体的特徴を 書いてみましょう。それだけでなく、その人物が感じたことや行ったことも例としてあげてみましょ う。
⑫その本のなかから一人の人物を選んでください。重要な人物ではあっても中心人物ではない人物で す。その人物を描写し、その人物と中心人物との関係を説明しなさい。そして、その人物が物語のな かでなぜ重要なのかということを教えてください。
⑬この物語のなかで何に驚きましたか?それはなぜですか?それ以外の展開をあなたはどのように予 想していましたか?
その物語についての感じ方を表現するためのヒント
⑭この物語を読んであなたはどのように感じましたか?物語のどこの部分でそのように感じたか、教え てください。
⑮他の子がこの物語(本)を読むことを楽しいと思うか、そうでないと思うか、考えてみて、あなたが そのように考える理由を教えてください。
⑯この本をだれか他の人にすすめたいと思いますか?その理由は?
⑰この作者が書いたほかの本を読みたいと思いますか?その理由は?
⑱この物語を読んでいる間、あなたの心にはどんなことが浮かびましたか?
⑲この物語のどの部分が一番お気に入りですか?その理由は?
⑳もっとも好きな人物は誰ですか?嫌いな人物は誰ですか?その理由は?
○21この物語を読んでいくうちに、あなたの感じ方は変わりましたか?それはどのように?
作者の工夫に注意を向けるためのヒント
○22もし、この本の作者がたった今このクラスに来たとします。あなたならその人物に何を言ってあげま すか?また、どのような質問をしますか?
○23この本を書き直すことができたとしたら、どんなふうに書き直しますか?