下水汚泥の有効利用の形態は、マテリアル利用、エ ネルギー利用に分けられる。セメント原料等としての 建設資材利用やコンポスト等としての緑農地利用が着 実に進展している一方、下水道バイオガス又は汚泥燃 料としてのエネルギー利用は低い水準にとどまってい る。それぞれの状況を以下に概観する。
(1)マテリアル利用
①建設資材利用
下水汚泥の建設資材利用としては、セメント原料 としての利用の割合が多くなってきており、平成21 年度においては、乾燥重量ベースで約60%が建設資
表-1 下水汚泥の処理及び処分状況(汚泥発生時乾燥重量ベース、平成21年度)(国土交通省調べ)
表-2 下水汚泥の処理及び処分状況(処分時体積ベース、平成21年度)(国土交通省調べ)
Vol.36 No.135 2012/4 下水汚泥資源利用の動向と今後の施策について 表-3 実施主体別の有効利用実施状況(汚泥発生時乾燥重量ベース、平成21年度)(国土交通省調べ)
図-3 下水汚泥の最終処分・利用形態の経年変化(汚泥発生時乾燥重量ベース)(国交省調べ)
※汚泥処理の途中段階である消化ガス利用は含まれない。
材利用されており、うち約2/3がセメント原料とし ての利用となっている。焼却灰や溶融スラグを建設 資材として利用する形態は、大きく分けて次の2つ がある。
1) 処理された下水汚泥(焼却灰や溶融スラグ)
そのものを資材として利用するもの
(例:石灰系焼却灰の埋め戻し材、路盤材 等)
2)焼却灰や溶融スラグを建設資材の原材料の一 部又は全部として利用するもの
(例:高分子系焼却灰の陶管及び透水性レンガ 原料としての利用 等)
最近では、焼却灰と掘削残土を用いて改良土を製 造する技術が実用化されているほか、下水汚泥焼却 灰だけで他の材料を添加することなく、レンガやタ イル等の製品を作り出す技術も開発されている。
下水汚泥の建設資材利用促進に関しては、以下の ような指針類がある。
1)下水汚泥の建設資材利用マニュアル(案)
2001年版((社)日本下水道協会)
2)下水汚泥建設資材化のガイドライン(案)
2001年版((社)日本下水道協会)
②緑農地利用
下水汚泥には、多量の肥効成分や有機物が含まれ ており、適正な施用を行うことによって土壌改良材 や肥料として十分な効果を有することが明らかに なっており、平成21年度においては、乾燥重量ベー スで約15%が緑農地利用されている。
下水汚泥を緑農地に利用する場合の形態として は、脱水ケーキ、乾燥汚泥、炭化汚泥、コンポスト 化汚泥が考えられる。このうち、コンポスト化汚泥 は、汚泥が質的に改善されており、取り扱いやす く、発酵処理の際に滅菌・安定化する利点があるこ とから、有効利用の促進の観点からコンポスト化の 意義は大きい。
緑農地利用に関しては、次のような指針類がある。
1)都市緑化における下水汚泥の施用指針(昭和 61年、平成7年一部改正)
2)下水汚泥の農地・緑地利用マニュアル-2005 年版-((社)日本下水道協会)
3)下水汚泥コンポスト施設便覧-2001年版-
((社)日本下水道協会)
なお、肥料の品質を保全するため肥料の規格等を 定めている肥料取締法が平成11年7月に改正され、
平成12年10月から施行されている。これにより特殊 肥料とされていた下水汚泥を原料とする肥料が普通 肥料に位置付けられ、「下水汚泥肥料」は、農林水産 大臣の登録を受けなければならないとされている。
また、最近では、全量を輸入に頼っているリンに
ついて、その枯渇が懸念されていることや食料需要 の増大及び産出国による輸出制限のため国際相場が 乱高下しており、下水及び下水汚泥中に含まれるリ ンを回収し、肥料や肥料原料として活用する取組が 注目されているところである。そのため、国土交通 省下水道部では、下水道管理者がリン資源化事業の 実施について検討するための手引きをとりまとめる ことを目的として、平成21年度に「下水道における リン資源化検討会」(座長:津野洋 京都大学大学院 工学系研究科教授)を設置し、検討を行った。同検 討会では、リン資源化の検討に際しては、「下水処理 場の特性」、「リン資源化技術」、「需要者のニーズ」の 3要素のマッチングが重要との視点に立って事業化 に向けた検討が進められ、「下水道におけるリン資源 化の手引き」が平成22年3月にとりまとめられてい る。国土交通省下水道部では、今後とも、農林水産 省など関係省庁をはじめとする多様な主体と連携し つつ、下水道におけるリン資源化が推進されるよ う、取り組んでいく予定である。
(2)エネルギー利用
下水汚泥のエネルギー利用は、主に下水道バイオガ スの利用、固形燃料化であり、この他、下水汚泥焼却 廃熱を利用した発電・冷暖房等がある。
①下水道バイオガス利用
下水道バイオガスには、下水汚泥の嫌気性消化過 程において発生するメタンを主成分とするバイオガ スと、下水汚泥をガス化炉により熱分解することで 発生する一酸化炭素や水素を主成分とするバイオガ スの2種類がある。ガス化炉は平成22年度に東京都 において、世界で初めて導入されているが、全国で は主に嫌気性消化によるバイオガス化が進められて いる。
平成21年度の消化槽からの下水道バイオガス発生 量は約3億m³であり、内訳をみると、約7割(220 百万m³)が利活用されており、残り約3割(86百 万m³)は焼却処分されている。また、下水道バイ オガス発生量の約2割(66百万m³)はガス発電に 利活用されているが、約3割(89百万m³)は消化 槽の加温用としての用途にとどまっており、今後、
熱と電気を同時に発生させるコジェネレーション利 用の普及が望まれる。
下水道バイオガスを用いた発電は、下水処理場の 電力費の節約と資源有効利用の観点から進められて い る 。平 成21年 度 時 点 で40基 、総 発 電 容 量 約 23,232kW、総発電量は、約9,000万kWh/年に上り、
平成21年度に全国のポンプ場及び下水処理場で消費 された総電力量約72億kWhの約1%に相当する。
Vol.36 No.135 2012/4 下水汚泥資源利用の動向と今後の施策について
②固形燃料化利用
下水汚泥の固形燃料化の手法として、現在、炭 化、油温減圧乾燥及び造粒乾燥があり、火力発電所 や製紙工場のボイラーの化石燃料代替として利用す る取組が行われている。
炭化とは、脱水汚泥を乾燥した後、低酸素もしくは 無酸素状態で蒸し焼きするもので、工程の温度に大き く依存するが、炭化汚泥は約13MJ/kg(3,000 kcal/kg)の発熱量(低位)を有しており(石炭は 26.6MJ/kg)、また、ほとんど臭いがしないという 特徴を有しており、広島市や愛知県、大阪市などで 具体的な取組が進められている。
また、脱水汚泥を廃食用油等に投入し、減圧・加 熱の条件下で水分を蒸発させる油温減圧乾燥汚泥 は、約22MJ/kgの発熱量(低位)を有しており、
福岡県御笠川浄化センターでは平成13年度より松浦 火力発電所に供給を行っている。
平成21年度に固形燃料として利用された下水汚泥 は、約2.7万t-DSであり、全体の約1%であるが、
複数の自治体で事業化が検討されており、今後、固 形燃料化の進展が予想される。