下水処理場では、水処理、汚泥処理プロセスに多く の電力や重油などを消費しておりCO2排出量が大き い。さらに処理過程におけるN2Oなどの温室効果ガス の発生も多い。地球温暖化への対応を強化するために も、省エネルギー型の汚泥処理プロセスを開発し、温 図−4 システムA(清掃工場)及びシステムD(下水処理場)のLCA評価の境界
室効果ガスの排出を抑制することが望まれている。こ れまでにも土木研究所では、省エネルギー型の燃焼シ ステムとして、加圧流動炉と過給機を組み合わせた新 たなシステム(過給式流動燃焼システム)や、草木類 の混合メタン発酵のための前処理技術等を開発してき た8)。現在は新たな資源・エネルギー回収プロセスの 構築に向けた研究に着手している。
近年、従来のバイオディーゼル原料(Jatrophaや Coconutなど)に比べて単位面積当たりの収穫量が格 段に高く、食料とも競合しない有用藻類からの油脂回 収等が注目されている。従前も、石炭火力発電所から 排出されたCO2を用いて、ポンド内の高脂質含量の藻 類からのバイオディーゼルを生産する研究プログラム が実施されてきた9)が、当時としては石油系ディーゼ ル燃料と比べて高コストであることが課題であった。
しかし、その後の原油価格高騰などを経て、最近、再 び脚光をあびることとなっている。
本プロセスでは、藻類を排水処理プロセス及び燃料 源として併用することが経済的に有利であると指摘さ
れている9)、10)、11)。排水処理方式の一つに、High Rate
Algal Ponds(HRAPs)がある。HRAPsは、滞留時 間2−8日間、水深0.2−1mで継続的に攪拌されたポン ドであり、藻類の光合成による酸素供給によって、排 水中の溶解性有機物が従属栄養細菌によって好気分解 するのを促進する方法である12)。ニュージーランドに おけるHRAPsの夏期屋外試験では、表面積31.8m2、 水深0.3m、容量8m3のポンド(表面流速0.15m/s、
CO2添加、滞留日数4日および8日)で、藻類平均生 産量16.7g/m2/dayおよび9.0 g/m2/day、沈殿池 における回収率はそれぞれ、69%、83%であったと報 告 さ れ て い る 。 こ の 2池 の 藻 類 優 占 種 は 、 Scenedesmus sp、Microactinium sp、Pediastrum
sp、Ankistrodesmus spであった13)。
これら状況を参考に、藻類による下水処理の高度化 を検討した。具体的には、下水の藻類による生物処理
(二次処理)への代替や二次処理の追加的処理への応 用、汚泥濃縮や脱水の分離液および汚泥消化の脱離液 の栄養塩除去などが考えられるが、本研究では、まず 二次処理の追加処理について実現可能性を評価するこ ととした7)。
下水処理場に流入する下水を二次処理(反応槽容 量:0.5m3、反応槽HRT:8hour)した処理水を攪拌 器付セルカルチャーフラスコに入れ、攪拌しながら培 養した。滞留時間(HRT)が4日程度となるように ポンプで下水処理水を投入してオーバーフロー水を排 出した。実験の状況を写真-1に示した。水質は溶解 性全りんおよび溶解性全窒素が減少したが、反応槽中 のクロロフィルaの濃度は、既報13)と比べて1/20程 度であり、さらなる向上が可能と考えられた。藻類 は、Scenedesmus科が96%を占め、単一科の有占が可 能であることが示された(写真-2)。Scenedesmus 科に関する既往研究では、通常の緑藻の構成成分中の 脂質含量が十数%程度あり14)、さらに貧窒素状態で 43%まで向上することが報告されている15)。その他、
栄養塩類の除去効果、重金属(クロム、銅、カドミウ ム)の除去効果に関する報告もあり、これらの特性か らScenedesmus科を用いて下水処理を高度化するこ とは有望であると考えられた7)。
6.おわりに
今後、地球温暖化対策を更に強化していく上で、草 木系未利用バイオマスや、生ゴミ、畜産系廃棄物な ど、エネルギーポテンシャルの高い廃棄物系バイオマ
写真-2 半連続式反応槽で優占したScenedesmus acutus
写真-1 半連続式反応槽の様子(実験18日目)
Vol. 36 No. 135 2012/4 下水道を核としたバイオマス利活用に関する研究開発 スをどのように活用していくかが大きな鍵となる。東
日本大震災後に発生した電力需給のひっ迫や今後のエ ネルギー政策の検討の中で、再生可能エネルギーの利 用促進は重要な課題になると予想される。
下水道分野では、下水処理場の施設ストックを活用 することで、地域で発生するバイオマスの受け入れが 可能であり、これは施設整備・管理の面から見ても効 率的であることから、現在、十分に利用が進んでいな いこれらのバイオマス利用に不可欠な方策の一つであ ると考えられる。土木研究所リサイクルチームでは、
上記のような観点から、今後も引き続き下水道システ ムを活用した効率的なバイオマス利活用を推進するた めの研究開発を進めていきたいと考えている。
参考文献
1)岡本誠一郎、(独)土木研究所における新たな中期 計画と下水汚泥等に関する研究の取り組み、再生 と利用、Vol.35, No.132, pp.14-19, 2011
2)循環型社会ビジョン実現に向けた技術システムの 評価モデル構築と資源効率・環境効率の予測評価
(K2021)、平成20年度廃棄物処理等科学研究報告 書、pp.98-116、2009
3)岡本誠一郎、堀尾重人、山下洋正他、循環型社会 ビジョン実現に向けた技術システムの評価モデル 構築と資源効率・環境効率の予測評価、平成22年 度循環型社会形成推進科学研究費補助金総合研究 報告書、pp.84-93、2011
4)独立行政法人土木研究所、公共事業由来バイオマ スの資源化・利用技術に関する研究、平成20年度 下水道関係調査研究年次報告書集、
http://www.db.pwri.go.jp/pdf/D6301.pdf、2009 5)国土交通省国土技術政策総合研究所、わが国の街
路樹Ⅳ、国土技術政策総合研究所資料 No.506、
2009.
6)牧孝憲、高橋正人、落修一、三宅且仁、尾崎正 明、全国のダム流木発生量調査、土木学会論文集
G、Vol.63 No.1、22-29、2007
7)独立行政法人土木研究所、下水中の栄養塩を活用 した資源回収・生産システムに関する研究、平成 21年度下水道関係調査研究年次報告書集(発行準 備中)
8)桜井健介、土木研究所における下水汚泥の有効利 用 の 取 り 組 み 、再 生 と 利 用 、Vol.35, No.131, pp.92-101, 2011
9)National Renewable Energy Laboratory. A Look Back at the U.S. Department of Energy’s Aquatic Species Program: Biodiesel from Algae.
NREL/TP-580-24190,
http://www.nrel.gov/docs/legosti/fy98/24190.pdf 10) Bei Wang, Yanqun Li, Nan Wu and Christopher
Q. Lan. CO2 bio-mitigation using microalgae.
Applied Microbiology and Biotechnology, 79
(5), pp.707-718, 2008.
11) Jon K. Pittman, Andrew P. Dean, Olumayowa Osundeko. The potential of sustainable algal biofuel production using wastewater resources.
Bioresource Technology, 102(1), pp.17-25,2011 12) Pond treatment technology Edited by Andy
Shilton, IWA publishing, 2006. ISBN:
9781843390206.
13) J.B.K.Park and R.J.Craggs. Wastewater treat-ment and algal production in high rate algal ponds with carbon dioxide addition, Water Science and Technology, 61(3):633-639, 2010.
14) 彼谷邦光、微細藻類オイルの化学、日本微生物 資源学会誌、26(1)、pp.1-10、2010.
15) Shovon Mandal and Nirupama Mallick.
Microalga Scenedesmus obliquus as a potential source for biodiesel production. Applied Microbiology and Biotechnology, 84(2), pp.281-291, 2009.
水機で脱水ケーキにして、全量焼却しています。3箇 所の汚泥処理場のうち2箇所では、高分子凝集剤を添 加してベルトプレスまたは、スクリュープレス脱水機 で脱水し、流動焼却炉で焼却しています。もう1箇所 の汚泥処理場では、凝集剤として、消石灰と塩化第二 鉄を汚泥に添加して、フィルタープレス脱水機で脱水 し、多段焼却炉で焼却しています。
名古屋市における下水道発生汚泥の処理につ いて教えてください。
15箇所の水処理センター(1箇所の水処理セ ンターは休止して全面改築更新中)で発生す る汚泥は、専用の輸送管で圧送して、3箇所の汚泥処 理場で集約処理を行っています。
輸送された汚泥は、汚泥調整槽に集めて、重力式濃 縮槽で濃縮します。濃縮汚泥は、凝集剤を添加して脱
名古屋市の下水汚泥処理について
キーワード:集約処理、土質改良材、セメント
Q & A
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Q1
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A1
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Vol. 36 No. 135 2012/4 Q & A 下水汚泥焼却灰の有効利用の状況を教えて
ください。
有効利用率は、平成16年度から95%を超え ており、高い水準にあります。有効利用さ れていない焼却灰は埋め立て処分しています。
焼却灰の有効利用先には、どのようなもの がありますか。
汚泥焼却灰は、主に土質改良材、セメント 原料に有効利用されています。
土質改良材としてどのように有効利用して いますか。
下水道工事で発生する掘削残土に汚泥焼却 灰(石灰系・高分子系)を土質改良材として 添加し、埋め戻し材として再生させています。汚泥焼
却灰を添加することにより、掘削残土の水分を低下さ せるとともに、土粒子間の結合力を高めることができ ます。その結果、埋め戻しに適した強度を持ち、地震 時にも液状化しにくい埋め戻し材に改良することがで きます。平成22年度では、約8,200トンの焼却灰が土 質改良材として有効利用されています。
セメント原料にはどのように有効利用され ていますか。
昭和60年度から、セメント原料として汚泥 焼却灰を有効利用する方法を検討し、平成 8年頃から、本格的運用を開始しており、平成22年度 では約5,600トンの実績を有しています。
(名古屋市上下水道局計画部技術管理課技術開発担当 主査 北折康徳)
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