3.日本下水道事業団で取組む汚泥からのエネ ルギー回収技術
3.1 担体充填式高速嫌気性消化システム
(1)システムの基本原理
本技術は、平成19年度よりメタウォーター(株)と JSの共同研究により開発を進めてきたシステムである。
図3−1は、各種下水汚泥のメタン発酵回分試験
(35℃)における分解特性をメタンガス発生速度で表 したものである。ガスの発生は3〜4日程度で概ね完 了している。しかし、汚泥を連続して投入する従来の 消化法において消化日数を3〜4日で運転することは できない。図3−2に示すように、従来の完全混合型 浮遊式嫌気性消化法で消化日数を3日〜4日で運転し た場合、増殖速度の遅い(4〜10日)メタン菌は消化 汚泥とともにタンクから流出してしまい(ウォッシュ アウト)、菌体を消化タンク内に保持することができ 図2−12 各種廃棄物系バイオマスの賦存量と利活用状況(2008年 日本有機資源協会資料)
なくなるためである。担体充填法はこの問題を解決す るために、消化タンク内に設置した担体にメタン菌を 付着固定化することで、増殖速度の遅いメタン菌をタ ンク内に保持、安定したメタン発酵が可能としたもの である。本プロセスでは、特にメタン菌増殖速度の大 きい高温嫌気性消化法(55℃)を採用している。
(2)システムの特徴
下水汚泥の中でも、初沈汚泥は炭水化物を主体とし 嫌気性分解が比較的容易に行われるのに対し、余剰汚 泥は微生物細胞を構成する難分解性のセルローズやた んぱく質を主成分とするため、生物分解性が低い。余 剰汚泥のメタン発酵では前段の酸発酵過程が律速とな り、担体を充填してメタン菌濃度を高めても消化日数 3〜5日では安定したVS分解率を得ることは困難で ある。したがって、本システムでは原則余剰汚泥を処 理対象からはずし、初沈汚泥単独若しくは初沈汚泥と 同等以上にメタン発酵性に優れた生ごみとの混合汚泥 を処理対象としている。
本システムは、消化タンク内に担体を充填すること
から、既設のコンクリート製消化タンクへの設置導入 は困難である。基本的には鋼板製消化タンクとなるこ とから、敷地スペースに余裕の少ない中小規模処理場 における嫌気性消化設備新設箇所をターゲットにして いる。
鋼板製タンクとすることで、建設期間の短縮やコス トの縮減も期待されている。
(3)実証プラントの概要と実験結果
各種室内試験等の予備実験の結果をもとに、平成20 年7月、熊本県八代北部流域浄化センター内に実証プ ラントを設置し(写真3−1参照)、実用化に向けた試 験を実施している。表3−1に実証プラントの概要を、
図3−3に処理フロー図を示す。消化タンクの有効容 量は6.5m3で、担体充填率は15%である。生ごみは、
八代市内学校給食センターで発生する給食調理残渣を 実験に用いている。
実証試験による試験結果の一例を図3−4に示した。
初沈汚泥と生ごみの混合比率1:1.1(TSベース)で 行ったときの結果で、消化日数わずか5日でもVS分解 図3−1 汚泥の種類とメタン発酵特性 図3−2 従来法と担体充填法のイメージ
写真3−1 担体充填法実証プラント
(熊本県八代北部流域浄化センター)
表3−1 実証プラントの概要
Vol. 36 No. 135 2012/4 下水汚泥有効利用の課題と日本下水道事業団における取り組み
率、ガス発生量とも安定した処理が行われていること がわかる。
表3−2は、初沈汚泥単独及び初沈汚泥と生ごみの 混合メタン発酵試験の結果をまとめたものである。初 沈汚泥単独で処理した場合、消化日数5日でVS分解 率(汚泥有機分の減少率)は57%、投入汚泥VS当り のガス発生量は500Nm3/t-VSという良好な結果が得ら
れている。
初沈汚泥と生ごみとの混合メタン発酵試験では、消
化日数5日でVS分解率は68〜71%、投入VS当りガス発 生量は620〜650Nm3/t-VSという結果が得られている。
なお、平成23年度国土交通省の下水道革新的技術実 証事業(B-DASHプロジェクト)の対象技術の一つと して「担体充填式高速嫌気性消化プロセス」を含む
「超高効率固液分離技術を用いたエネルギーマネジメ ントシステム」(メタウォーター株式会社とJSの共同 提案)が選ばれ、大阪市中浜処理場内に新たに大型実 証プラント(消化タンク容量50m3)を設置して試験 図3−3 実証プラントの処理フロー図
図3−4 実証プラントにおける試験結果の一例(消化日数5日 生ごみ混合比率1:1.1)
を行うことにしている。