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骨粗鬆症性骨折の診断

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第Ⅱ章  骨粗鬆症の診断

C.  骨粗鬆症性骨折の診断

a. エックス線写真による椎体骨折の評価

胸腰椎のエックス線撮影はどのように施 行するか

 椎体骨折の判定を目的とした場合,通常,胸椎と 腰椎についてそれぞれ前後像と側面像の撮影を行う。

撮影時には,エックス線焦点・フィルム間距離,撮 影体位,エックス線の中心線,撮影時の呼吸状態な どに注意する208)。焦点・フィルム間距離は

100 cm,

エックス線の中心線は胸椎と腰椎でそれぞれ

Th8

L3

が標準である。また,コンピューター処理した画 像では処理方法も統一する。

 前後像は椎体レベルが確認できるように,胸椎に ついては

C7

L1

を,腰椎については

Th12

S1

を 含める。撮影体位は背臥位(または立位)で,股関 節と膝関節を屈曲させ,背面を撮影台に密着させる。

 側面像は椎体骨折の判定に最も重要であり,正確 な側面撮影になるように撮影時のポジショニングに

細心の注意を払う。撮影体位は側臥位で,股関節と 膝関節を軽く屈曲させる。枕などを利用して,脊柱 が撮影台と平行な正側面になるように注意する。

椎 体 変 形 の 半 定 量 的 評 価 法( semi- quantitative method: SQ 法)はどのよ うに行うか

 側面エックス線写真の目視により,椎体変形の程 度を,正常の形態(グレード

0)を基準にして,軽度

変形(グレード 1),中等度変形(グレード

2)と高

度変形(グレード 3)に分類する209)(表 9,図 15)。

計測は行わずに,正常像と考えられる椎体の形態に 基づき椎体高の低下や椎体面積の減少を推定する。

椎体高と椎体面積の減少がグレード別に提示されて いるが,計測する必要はなく,目安とする。

図 15 椎体変形の半定量的(SQ)評価法(文献 209 より引用改変)

骨折による椎体変形の程度を,隣接椎体と比較した場合の椎体高(前縁高,中央高または後縁高)または椎体面積の 減少率から判定する。

第Ⅱ章 骨粗鬆症の診断

椎体変形の定量的評価法( quantitative- measurement: QM 法)はどのように 行うか

 椎体の前縁高(A),中央高(C)と後縁高(P)を 計測して,その結果を判定基準と比較して評価する

(表 9)。 計 測 に は, 山 本 ら の 方 法210)や,

National Osteoporosis Foundation

の評価法211)を用いる。

既存骨折,新規骨折,新鮮骨折,臨床骨折,

形態骨折の用語はどのように用いるか

 既存骨折(prevalent fracture)はある特定の一時点 におけるエックス線写真より判定される骨折,新規骨 折(incident fracture)は二つの時点におけるエックス 線写真の比較より判定される骨折に対して用いる212)。 新規骨折のうちで椎体変形の度合いが増強したものを 増悪(worsening)として区別する場合もある。

 急性期の骨折を意味する場合は,新鮮骨折を用いる。

  腰 背 部 痛 な ど の 臨 床 的 に 骨 折 を 疑 う 症 状 が あ り,エックス線写真より確認される骨折は臨床骨折

(clinical fracture)として,臨床症状の有無とは無関 係 に 判 定 さ れ る 形 態 骨 折(morphometric fracture)

と区別する。

既存椎体骨折の判定はどのように行うか

 椎体骨折の判定時には,まず,骨折以外の原因に よる椎体変形を除外する128,213)

 エックス線写真の読影では椎体の傾斜や椎体の立 体的構造を考慮することが重要である。特にエック ス線の斜入射による視差効果(

parallax effect

)に注 意する。

 既存骨折の判定には,SQ法単独または

SQ

法と

QM

法の両方を用いることが多い212)

QM

法は一部の臨床試験では使用されているもの の,疫学や実臨床ではほとんど使用されていない。

一方,

SQ

法は疫学,臨床試験で広く使用されており,

実臨床にも推奨される212)

SQ

法ではグレード

1

以上を骨折と判定する。

 QM法では表 9に示す判定基準や標準椎体高の平 均値−

3SD

以下を骨折とする基準などが用いられる。

 既存椎体骨折の数や椎体変形の程度は新たな骨折 のリスク要因であり214),それらについても評価する。

新規椎体骨折の判定はどのように行うか

 新規骨折は二つの時点におけるエックス線写真を 比較して判定する。比較の際にはポジショニングや 拡大率の違いに注意する。

 SQ法ではグレードが

1

段階以上進行した場合を新 規骨折と判定する。

QM

法では,ベースラインに対する椎体高比(%),

椎体高(絶対値)の変化の一方または両方により判 定する。

 治癒過程の椎体骨折では時間とともに徐々に椎体 の圧潰が進行するため,骨折椎体に新たに発生した 骨折(増悪を含む)にも注意を要する。

新鮮椎体骨折のエックス線写真による評 価のポイントは

 椎体骨折の急性期には椎体変形がない場合もあり,

椎体終板の断裂像や前壁の突出像などの軽微な変化 に注意する。また,時間をおいてエックス線写真を 再撮影し,椎体変形の変化を確認することが必要で ある。

ま と め

 エックス線写真による椎体骨折の判定は

SQ

法と

QM

法のいずれかで行う。いずれの方法を用いる場 合も椎体の傾斜や椎体の立体的構造を考慮すること が重要である。

 既存椎体骨折の数や椎体変形の程度は,新たな骨 折の危険因子である。

表 9 椎体骨折の評価基準(文献 212 より引用改変)

側面エックス線写真による椎体骨折の判定は以下のいずれか の方法で行う。

Ⅰ 定量的評価法(Quantitative Measurement:QM 法)

C/A,C/P のいずれかが 0.8 未満,または A/P が 0.75  未満の場合を椎体骨折と判定する。椎体の高さが全体 的に減少する場合(扁平椎)には,判定椎体の上位ま たは下位の A,C,P よりおのおのが 20%以上減少し ている場合を椎体骨折とする。(文献 215)

Ⅱ 半定量的評価法(Semiquantitative Method:SQ 法)

図 15と対照してグレード 0 から 3 までに分類し,グレー ド 1 以上にあてはまる場合を椎体骨折と判定する。(文 献 209)

【付記】

1)エックス線像の読影では椎体の傾斜や椎体の立体的構造 を考慮することが重要である。

2)骨折治療の観点からは上記の椎体変形を認めなくても,

以下のいずれかにあてはまれば椎体骨折と判定できる。

①エックス線写真上(正面像も含む),明らかに骨皮質 の連続性が断たれている場合は椎体骨折と判定でき る。

② MRI 矢状面像の T1 強調画像で,椎体に限局してその 一部が帯状あるいはほぼ全部が低信号の場合(STIR  像では同領域にほぼ一致して高信号を認める場合)

32

第Ⅱ章 骨粗鬆症の診断

 C.骨粗鬆症性骨折の診断

b. MRI の活用法

MRI は新鮮骨粗鬆症性骨折の診断に有用か

216,217)

 骨折発生からの経過期間と骨折部位により

MRI

の 有用性は異なる。

 椎体骨折については

MRI

による診断は骨折初期よ り診断率が高く,骨折発生

2

週間以内では,エック ス線による診断に比べ診断率は高く,椎体骨折評価 基準(2012年度改定版)において,早期の椎体骨折 の診断や椎体骨折の新旧の判定に

MRI

検査が有用で あるとされた212)

 椎体骨折以外の骨粗鬆症性骨折は新鮮期に限って 述べる。MRI は大腿骨近位部骨折では転位のない骨 折に限って有用である。上腕骨近位部骨折および橈 骨遠位端骨折では,有用性はほとんどないが,骨盤 骨折では有用である。また,悪性腫瘍による病的骨 折の鑑別にきわめて有用である。

MRI による骨折判定方法は

 すべての骨折において,新鮮期の骨折は

T1

強調画 像 で は 低 信 号,short-T1 invention-recovery(STIR)

では高信号となる。椎体骨折においては,T1 強調矢

状断画像で,椎体に限局してその一部が帯状,ある いはほぼ全部が低信号の場合(STIR 像では同領域に ほぼ一致して高信号を認める場合)を椎体骨折と診 断する。

 MRIを椎体骨折の診断の「めやす」に用いると新 鮮椎体骨折の正診率がきわめて高いという報告を基 に,椎体骨折評価委員会で

MRI

の有用性が決定され た。骨折診断に迷う場合は

MRI

検査を行い,以下の「め やす」を参考に診断する。

①椎体の一部あるいは,ほぼ全体が低信号域であり,

低信号域は椎体の前壁から後壁に及んでいること。

低信号域が椎体前方上縁あるいは前方下縁に限局 し,後壁へ及んでいないものは除外する。

②低信号域と正常域との境界は細かく入り組み,か つやや不鮮明であること。

③ 低信号域は基本的には「水平方向へ走る」ものが 多いこと。

④低信号域の内部に多少のむらがあり,かつ無信号 でないこと。大きな無信号域を含むものは新鮮期 の骨折ではない(図 16)218)

骨折後の時間経過で MRI 所見はどのよう に変化するか

 椎体骨折の

T1 強調画像の時間的変化は新鮮期は違

いが明らかでないものの,その後は骨折の経過の良 し悪しによって変化の仕方は分かれる。例えば,経 過良好例では

5

週後には低信号域の減少がみられ,3 ヵ月後には椎体全体が正常化または線状陰影のみ残 存する(図 17)219)

 経過不良例では

3

ヵ月後は後壁の正常化がみられ ず,さらに,6ヵ月後でさえ,椎体全体が低

/

無信号 のままというものもある。偽関節例もこれに含まれ る。なお,偽関節例では

T2

強調画像による液体貯留 の証明(均一な高信号域の存在)が診断に有用である。

椎体骨折の MRI による所見とエックス線 写真の所見の違いは

 椎体骨折では椎体高が減少していないこともある。

図 16 MRI(T1 強調画像)による椎体骨折診断判定の例         (文献 218 より引用)

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