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治療関連骨粗鬆症

ドキュメント内 <474C F31312E DFC82E88A7789EF E706466> (ページ 148-200)

第Ⅵ章  続発性骨粗鬆症

C. 治療関連骨粗鬆症

a. ステロイド性骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症の概要は

 骨粗鬆症は長期ステロイド薬(

GC

)治療における最も 重要な副作用の

1

つであり,長期

GC

治療を受けている 患者の

30

50%に骨折が起こるとの報告がある

952.953)。   ス テ ロ イ ド 性 骨 粗 鬆 症(glucocorticoid-induced

osteoporosis: GIO

)は患者数が多く,また小児から高齢 者まで,閉経前女性や男性にも幅広く起きるため,社会生 活への影響は大きい。一方,原疾患の治療にたずさわる 医師は骨粗鬆症の専門医でない場合が多く,医師,患者 ともに

GIO

に関する認識は高くない。

 GIOの病態には骨形成低下と骨吸収亢進の両者が関 与しているが,その中心は骨形成低下である954)。骨吸 収亢進の中心的機序は腸管カルシウム吸収量減少と尿 中カルシウム排泄量増加の結果生じる二次性副甲状腺 機能亢進症である。一方,骨形成の低下には多因子が 関与している。GCは骨芽細胞や骨細胞のアポトーシス を促進し寿命を短縮させる。さらに,骨芽細胞の増殖抑 制やコラーゲンや非コラーゲン蛋白の産生抑制には,

GC

の直接作用のほか副腎や性腺由来のホルモンの低下など,

間接的な影響も関与している。また, GCは幹細胞から

骨芽細胞への分化に重要な転写因子

Runx2

を抑制して 骨芽細胞への分化を阻害し,

PPAR

γの発現を高め,脂 肪細胞への分化や分化転換を促進する。

ステロイド薬服用によって骨折リスクが高ま るか

 GC開始後の骨量減少率は初めの数ヵ月間は

8

12%

と高く,その後は

2

4% /

年の割合で減少する。GC開 始後の腰椎骨密度低下率を検討した縦断研究を比較する と,高用量を投与した研究では,投与後

6

ヵ月で

6

%以 上の骨密度低下がみられるのに対して,低用量では骨密 度低下の程度が小さくスピードも緩徐であった955)。  骨折リスクの上昇は,骨密度低下が起きる前に起きるこ とが知られている。英国の疫学的研究では,

GC

開始前 の非椎体骨折の発生率は

1.6/100 人年であるが,GC

開 始後はじめの

3

ヵ月では

2.0/100 人年に上昇する。GC

投 与の

1

年目は

2.0/

人年であり,5年目でも

2.2/ 100

人年 と高い発生率が持続する。一方,骨折の発生率は

GC

中 止後,急速に減少し

,

その傾向は椎体骨折で顕著である

956)。骨折リスクを検討すると,非椎体骨折リスクは投与開

図 30 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のアルゴリズム(文献 961 より引用)

第Ⅵ章 続発性骨粗鬆症

始後

3

6

ヵ月で上昇し,1年目のリスクは投与開始前に 比べて

54

%上昇した。椎体骨折リスクも投与開始後

3

6

ヵ月で上昇し,プレドニゾロン(PSL)換算

7.5mg/

日 以上の投与例では顕著であった955)

 GIOでは原発性骨粗鬆症に比べて骨密度からみた骨 折閾値が高いことが示されている957)。骨強度の低下や易 骨折性に皮質骨や海綿骨の微細構造などの変化が寄与し ていると考えられている958)。HRQCT法や

HRpQCT

法を 用いると,椎体骨折のある

GC

服用患者の椎体では皮質 骨骨密度低下,皮質骨幅減少と骨梁間隔の拡大,また,

橈骨遠位端では皮質骨の菲薄化と多孔化がみられた。海 綿骨の変化に加え,皮質骨の骨密度低下

,

菲薄化,多 孔化および骨梁数の減少が起こることで軽度の外力により 骨折が起こると推定できる959,960)

GC

による骨細胞のア ポトーシスの誘導は骨細胞−骨小腔−骨細管ネットワーク に影響を与え,骨の脆弱性の一因となっている可能性が ある958)

治療方針はどのように決定されるか

 GIOの管理において重要なのは,GC投与開始後のす みやかな骨密度低下と骨折リスク上昇を抑制する一次予 防とその後の二次予防の両者が重要である。そのために は,GC投与開始後あるいは投与中に骨折リスクが高い 症例を同定し,速やかに治療的介入を行う必要がある。

 日本骨代謝学会は

GIO

の管理と治療ガイドラインを

10

年ぶりに改訂し,

2014

年改訂版を発表した961)。改訂ガイ ドラインの特徴は,国内の

GIO

コホートの解析により独自 の骨折危険因子を抽出して,初めてスコア法を薬物治療 開始の基準判定に導入したことである。スコア法による治 療介入基準は,種々の基礎疾患,低用量から高用量の

GC

治療,一次予防と二次予防のいずれの場合でも対応 可能である。ガイドラインの対象,スコア法による個々の 骨折リスクの評価,薬物療法の推奨など

GIO の管理と治

療のアルゴリズムをまとめたフローチャートを図 30に示す。

薬物療法で骨折の発生を抑制できるか

 GIOに対する薬物療法の効果に関するエビデンスは限定 的で,骨折抑制効果を主要評価項目として検討した臨床 試験はない。しかし,ビスホスホネート薬やテリパラチドは

RCTの副次的評価項目として骨折抑制効果が明らかになっ

ている。

2014

年版ガイドラインでは,国内外の

RCT

やそのメタア ナリシスデータから,一次予防と二次予防試験における骨 密度低下と椎体骨折の抑制に対する有益な効果を総合的 に判断し,薬物の推奨度を独自に決定した(表 58)961)。  アレンドロネート,リセドロネートは複数の

RCT

において,

一次予防および二次予防の両者で腰椎・大腿骨骨密度低

下の抑制効果が認められ962,963),主要評価項目ではない が

,

椎体骨折を有意に抑制することが示されている(推奨 度

A:第 1

選択薬)。アレンドロネートは週

1

回製剤でも

,

連日製剤と同様の有効性が示されている964)

 イバンドロネートは二次予防試験において腰椎・大腿骨 骨密度を有意に上昇させ,アルファカルシドールに比べて 有意に椎体骨折を減少させた965)。しかし,一次予防に関 するデータが少ない(推奨度

B:代替え薬)

 アルファカルシドール,カルシトリオールは腰椎骨密度,

大腿骨骨密度低下の抑制効果が複数の臨床試験で示され,

また,単一試験では明らかでないが,複数の臨床試験のメ タアナリシスで,プラセボやカルシウム薬に比べて椎体骨折 抑制効果が示されている(推奨度

B:

代替え薬)966.967)。  遺伝子組換えテリパラチドは二次予防において,腰椎骨 密度,大腿骨骨密度を上昇させ,椎体骨折リスクを低下 させた。その効果はアレンドロネートより優れていた757,968)。 しかし,一次予防の臨床データはなく,投与期間が

2

間に限定されており,その使用法に関してはまだ十分な データが得られていない(推奨度

B: 代替え薬)。

表 58 ステロイド性骨粗鬆症薬物療法の推奨度       (文献 961 より引用)

製剤 薬剤名 推奨度 *

ビスホスホネート製剤 アレンドロネート A

リセドロネート A

エチドロネート C

ミノドロン酸 C

イバンドロネート B

活性型ビタミン D3製剤 アルファカルシドール B

カルシトリオール B

エルデカルシトール C

ヒト副甲状腺ホルモン (1-34)

遺伝子組換えテリパラチド B

テリパラチド酢酸塩 C

ビタミン K2製剤 メナテトレノン C

SERM ラロキシフェン C

バゼドキシフェン C

ヒト型抗 RANKL モノクローナル抗体

デノスマブ C

* 推奨度

A:第 1 選択薬として推奨する薬剤

B:第 1 選択薬が禁忌などで使用できない,早期不耐容である,ある いは第 1 選択薬の効果が不十分であるときの代替薬として使用する C:現在のところ推奨するだけの有効性に関するデータが不足している

140

第Ⅵ章 続発性骨粗鬆症

 C. 治療関連骨粗鬆症    

b. 性ホルモン低下療法に伴う骨粗鬆症

性ホルモン低下療法の概要は

● 乳癌に対する内分泌療法

 乳癌に対する内分泌療法は,エストロゲン依存性 である乳癌細胞に対してエストロゲンシグナルをエ ストロゲン産生あるいはエストロゲン受容体(ER)

結合部位でブロックするものであり,反応予測因子 として

ER

あるいはプロゲステロン受容体(PgR)免 疫染色が通常用いられ,乳癌全体の

60

70%で陽性

である。

a) 術後補助療法

標準治療として以下の治療法が推奨されている969-971)。 閉経前患者内分泌療法: タモキシフェン 5年 (ま たは

10

年)

LHRH

アゴニスト(ゴセレリンまた はリュープロレリン,

2

3

年)

閉経後患者内分泌療法:

アロマターゼ阻害剤(AI,

レトロゾール,アナストロゾール,エクセメスタン)

5

年またはタモキシフェン

2

3

年+

AI 2

3

年 b) 再発転移に対する治療

閉経前患者内分泌療法:LHRHアゴニスト + タモ キシフェン972)

閉経後患者内分泌療法: AI 973)

● 前立腺癌に対する内分泌療法

 アンドロゲン依存性である前立腺癌に対して,ア ンドロゲンシグナルをアンドロゲン産生あるいは アンドロゲン受容体(

AR

)結合部位でブロックす るものであるが,前立腺癌はほぼ全例で

AR

を発現 し,LHRHアゴニスト単独および

LHRH

アゴニスト

+AR

アンタゴニスト(maximum androgen blockade,

MAB

)によるアンドロゲン遮断療法(

ADT

)に

80

90%が反応する

974)

a) 術後,放射線照射後の補助療法

術後補助内分泌療法:確立していない975)。 外照射後補助内分泌療法:

LHRH

アゴニスト単独 または

MAB

976)

b) 進行再発前立腺癌に対する標準治療977-979)

LHRH

アゴニスト単独または

MAB

性ホルモン低下療法で骨折リスクは上昇するか

●乳癌ホルモン療法の骨密度,骨折リスクへの影響 a) タモキシフェン

閉経後女性ではタモキシフェンは骨保護効果をも つが,閉経前女性では骨密度を低下させる980)。骨 折を増加または減少させるとのデータはない。

b) 卵巣機能抑制

ゴセレリン単独投与により

2

年間で

5.0%の骨密度

低下がみられるが,治療終了後1年間で

1.5%回復

する981)。化学療法による人工閉経でも骨密度低下 がみられる982)。骨折を増加させるとのデータはな い。

c) AI

著明なエストロゲン濃度低下をきたすため骨密度 低下・骨粗鬆症の発症をきたす983)。アナストロゾー ルは

5

年間の投与で腰椎

6.1%,大腿骨 7.2%の骨

密度低下を来し,骨折発生率はアナストロゾール で

5.9

%,タモキシフェンで

3.7

%と明らかな差が あった984)。レトロゾール985),エクセメスタン986)

についても骨密度の低下,骨折発生率の上昇が指 摘されている。

● 前立腺癌ホルモン療法の骨密度,骨折リスクへの 影響

 1年間の

ADT

によって腰椎で

2

4.6%,大腿骨近

位部で

1.8

2.3

%の骨密度低下が起こる987-992)。骨 密度低下は

ADT

開始早期に大きいが,ADTを

10

年 間行うと

2

年間に比較して著明に低下する993)。  ADTに伴う骨折の発生率については後ろ向きの研究し かない。前立腺癌の診断を受け

5

年以上生存した症例中,

ADT

を受けた症例における骨折発生率は

19.4%と ADT

を受けていない症例の

12.6%に比較して高かった

836)。ま た,ADTにより骨折リスクが

34%上昇し,また骨折経験

者は死亡率が約

2

倍となった1019)。他の後ろ向き研究で も同様の結果であった836,994-995)。 また,ADT治療期間 と骨折リスクは相関していた996)

性ホルモン低下療法にどう対処するか

● 骨量減少の抑制(表 59, 60)

ドキュメント内 <474C F31312E DFC82E88A7789EF E706466> (ページ 148-200)