• 検索結果がありません。

診断基準

ドキュメント内 <474C F31312E DFC82E88A7789EF E706466> (ページ 46-49)

第Ⅱ章  骨粗鬆症の診断

E.   診断基準

わが国における診断基準の特徴は

 現行の診断基準は「原発性骨粗鬆症の診断基準

(2012年度改訂版)」(図 18,巻末の付表 1)5)である。

この診断基準は骨量測定方法の進歩と普及を背景に して,1991 年の国際骨粗鬆症会議で提唱された骨粗 鬆症の定義228)にしたがって,わが国におけるデー タをもとに日本骨代謝学会で作成され,その後改訂

された

2000 年の診断基準を改訂したものである。近

年,骨強度に対する骨密度以外の規定因子が注目さ れ,骨質と総称されている。このことは骨粗鬆症の 概念自体の変遷にもつながり,NIHによるコンセン サス会議では,「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリ スクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されてい る2)

 骨密度のみで骨折リスクが説明できないことは周 知のことであり,骨密度とは独立した臨床的危険因 子の解析は進んできた。その中で最も重要なものが 既存骨折の有無である。わが国の診断基準において は,当初から骨粗鬆症性骨折の危険因子としての既 存骨折に注目し,既存骨折を有する場合は骨密度カッ トオフ値を

YAM

に対するパーセンテージで

10%高

く設定していた。既存骨折のうち,特に椎体骨折と 大腿骨近位部骨折は,骨密度で補正した上でもその

後の骨粗鬆症性骨折の発生リスクは有意に高く,こ れらの骨折を有する場合は骨密度測定値に関わらず,

骨粗鬆症と診断することになった。また,その他の 骨粗鬆症性骨折(肋骨,骨盤,上腕骨近位部,前腕 骨遠位部,下腿)による骨折リスクの上昇も鑑み,

これらの骨折があった場合には,従来通り骨密度が

YAM

80%未満であることで診断する。

 なお,骨密度は

YAM

SD

表記を併記することに なった。

 もうひとつの特徴は鑑別診断の重要性を冒頭にう たっていることである。低骨量をきたす骨粗鬆症以 外の疾患,または続発性骨粗鬆症を認めないことが 診断基準を適用する前提である。

わが国の診断基準における鑑別診断の位 置づけは

 鑑別診断は診断基準を適用する上での前提である。

鑑別診断の意義としては,少なくとも

3

つのことが 考えられる。

 第

1

は,鑑別診断を進めることが悪性腫瘍や内分 泌疾患の発見につながり,患者の予後を左右する可 能性があることである。

 第

2

は,続発性骨粗鬆症の原因を把握し,除去す

図 18 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版)(文献 5 より引用)

第Ⅱ章 骨粗鬆症の診断

ることが,原疾患のみならず骨脆弱性の管理にも役 立つことである。さらに,続発性骨粗鬆症の原因疾 患が持つ骨代謝に対する影響を把握することが骨粗 鬆症の治療方針決定に有用である。

 第

3

は,骨量低下以外の機序を介して骨脆弱性を 亢進させる原因になりうる疾患や病態が存在する場 合には,原発性骨粗鬆症と同じ骨評価のカットオフ 値をあてはめることができないことである。その

1

例がステロイド性骨粗鬆症である。ステロイド薬に よる骨脆弱性の亢進は骨量の低下のみでは説明がつ かず,同じ骨量でもステロイド薬使用者は骨折リス クが高いことが知られている。日本骨代謝学会のワー キンググループにより,ステロイド性骨粗鬆症の診 断基準が定められた229)

骨密度のカットオフ値は

 先に述べたように,脆弱性骨折として,椎体骨折 または大腿骨近位部骨折をすでに有している場合は 骨密度の測定値に関わらず骨粗鬆症と診断し,その 他の部位の骨折をすでに有している場合には,骨密

度が

YAM

80%未満を骨粗鬆症とする。脆弱性骨

折がない場合には

YAM

70%以下または− 2.5SD

以下を骨粗鬆症と判定する。骨密度の測定部位はわ が国では原則的には腰椎骨密度だが,国際的には大 腿骨近位部骨密度が汎用される。この基準は男性に も適用されるが,男性や高齢者において脊椎変形な どのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断さ れる場合には大腿骨近位部骨密度とする。これらの 測定が困難である場合は,橈骨,第二中手骨の骨密 度を測定する。

エックス線写真の位置づけと活用方法は

 椎体骨折の位置,個数,変形の程度は患者の日常 生活に大きく影響するため,脊椎エックス線写真は,

診療上も重要な情報となる。椎体骨折は日本人にお

いて有病率が高いのみならず,既存骨折として存在 する場合はさらなる骨折リスクの増大を示す。骨量 測定値のカットオフ値も,椎体骨折の有無によって

YAM

に対するパーセンテージで

10%の差がある。痛

みを伴わない形態骨折が,痛みを伴う臨床骨折の約

2 倍存在することから,脊椎エックス線写真による判

定が重要である。

 従来,骨量評価の一つの方法として,腰椎の側面 エックス線写真を用いて骨粗鬆症化の評価がなされ ていたが,主観的な判定であり,判定に再現性が乏 しいことが指摘されていた。

2012

年の診断基準では 骨粗鬆症化の評価は採用しないことになった。

診断基準と骨折リスクの関連は

 脆弱性骨折を有しない場合の骨密度カットオフ値 は,椎体圧迫骨折の有病率に関する横断的調査と発 生率に関する縦断的調査の

ROC

解析をもとに作成さ れた。その時点における最大の感度・特異度をもっ て骨粗鬆症患者をそれ以外の者と区別する方針で策 定された値であり,骨折リスクの高低をもとに決め られた値ではない。この診断基準に合致する閉経後 女性の椎体骨折リスクを推定すると,その値は年齢 依存性に上昇し,また,同じ年齢層であっても骨折部 位を問わない既存骨折なしで診断された場合に比べて 既存骨折がある場合のリスクが高く(表 10)230),そ の差はどの年齢層でも約

1.6 倍である。

 このため,脆弱性骨折を有する場合には骨密度が

YAM

80%未満であれば骨粗鬆症と診断するように

規定されている。さらに椎体骨折や大腿骨近位部骨 折を有する場合には,骨密度測定値で補正しても二 次骨折のリスクが有意に高いことから(表 11)23), これらの骨折を有する場合には骨密度測定値の結果 を問わないことになった。

表 10 閉経後骨粗鬆症における 5 年間の椎体骨折リスク   の推定値(%)(文献 230 より引用)

年 齢 既存骨折なし

(骨密度< YAM の 70%)

既存骨折あり

(骨密度< YAM の 80%)

55 〜 59 歳 60 〜 64 歳 65 〜 69 歳 70 〜 74 歳 75 〜 79 歳 80 〜 84 歳

3.08 4.65 7.05 10.7 16.1 24.4

5.05 7.65 11 17.5 26.5 40.1

表 11 椎体骨折を有する場合の2次骨折発生率(%)

       (文献 23 より引用)

性・年齢 既存骨折なし 既存骨折あり

 女性

50 歳代 60 歳代 70 歳代 80 歳代

0.52 1.24 2.45 5.61

3.62 5.97 8.80 14.1

 男性

50 歳代 60 歳代 70 歳代 80 歳代

0.25 0.65 1.28 2.59

1.94 3.15 4.48 6.42

ドキュメント内 <474C F31312E DFC82E88A7789EF E706466> (ページ 46-49)