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第2章 高校生の摂食態度の実態

第2節 食行動における地域差の検討

-過疎地と都心部の高校生の意識から見えてくること-

ここでは、高校生の摂食障害の危険性及び摂食障害の発症因子について調査検討する。

過疎地と都心部の高校生を比較検討することによって、摂食障害の原因の一つである「社 会的・文化的」発症因子に何が存在するのかを検討する。

横山(1997)によれば、日本での摂食障害患者は 1985(昭和 60)年前後に激増したと考えら れ、それを境に摂食障害は社会階層を問わない、より一般的な疾患(common disease)と なったという。日本が戦後の復興期、高度経済成長期から、高度成長後の社会へ移行する 中で、日本の都心部と地方都市の格差は大きくなるばかりである。その中で、生まれ育っ た高校生の意識を比較することによって、摂食障害を発症する危険因子は何かを検討する。

食行動に影響する生活背景として、コンビニエンスストアの存否があるので、コンビニ エンスストアがない地域を対象の一つに入れ、もう一つの対象はコンビニエンスストアが ある都心部とした。

コンビニエンスストアの定義は、広辞苑によれば、「食料品を中心にした小型セルフサー ビス店。適地立地・無休・深夜営業など便利さを特徴とする」とある。社会経済の変化、

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外食に対する意識の変化、外食産業の発展に伴い、今日では「食の外部化」が進行してい ると言われる。

図 3-2 外食率と食の外部化率の推移 (単位:%)(食の安全・安心財団統計資料)

食の安全・安心財団が公表する、外食率と外部化率の推移によると、家の外で食事をす る「外食率(食料支出に占める外食の割合)」は 1975(昭和 50)年では 27.8%であったもの が、1990(平成 2)年 37.7%と年々増加していたが、1997(平成 9)年の 39.7%をピークに 漸減傾向が見られている。2007(平成 19)年には 37.1%になっている。

一方、「食の外部化率(食料支出に占める 外食・中食支出額の割合)」では、1975(昭和 50)年では 28.4%であったものが、1990(平成 2)年 41.2%、2007(平成 19)年の 45.6%

のピークに漸減傾向系にあるものの、今や外食率との間に画然とした開きが見られ、「中食」

が増加していることがうかがえる。

「中食」という言葉が登場したのは、働く女性やコンビニエンスストアが社会に定着し た 1980 年代頃からであると思われる。それまで日本の食事は、母親が手作りする「わが家 のごはん」と、飲食店で食べる「お店のごはん」に大きく分かれていたが、核家族化や女 性の社会進出が進むにつれ、コンビニ弁当やスーパー・デパートの総菜、宅配ピザ、持ち 帰り弁当など「わが家で食べるお店のごはん」が食卓に並ぶようになった。調理の手間が かからず、価格も外食より手頃なことから、年々市場規模が大きくなっていった。コンビ ニエンスストア等の外食産業に影響され、「中食」等、若者たちの食行動への影響も大きく、

最も利用しやすい施設として、コンビニエンスストアが 45.7%と重要な位置を占め、来店 客層は 16~25 歳が最も多いとされている。

1 研究の目的

居住する地域及び性別の相違に着目して、高校生の食行動及び体型等に対する意識につ いて比較し、摂食障害発症に及ぼす影響について検討する。過疎地にはコンビニがなく、「食 行動は健康的である」という仮説を立てた上で、分析検討した。

51 2 研究方法

研究対象が遠隔地のため、調査を実施する担当者には具体的アンケート実施方法を指示 した上で、アンケートを実施した。

(1)質問紙構成

①年齢・学年・性別、現在の身長と体重、理想の身長と体重

②「痩身願望」項目 ダイエット、おしゃれ、体重満足、体型満足、体重を気にする、

体型を気にする、痩せたいと思うの 7 項目について「とてもよく」「少し」「あまりな い」「全くない」の4件法で回答を求めた。

③ダイエット(体重操作)の経験について 「体重操作」とは日常生活において体重が 増え過ぎないようにダイエット以外に実行していることと定義した。具体的には、運 動する、間食を減らす、少ししか食べない日を作る等が挙げられる。ダイエットと体 重操作については実行の有無について 2 件法で回答を求めた。また、体重操作の理由 について尋ねた。理由について「太ったから」「人より太いから」「痩せている方が健 康に良いから」「良いスタイルになりたいから」「痩せている方がかっこ良いから」「人 から言われて気になったから」「その他」について回答を求めた。

④自分の身体像(外見)への拘り」について ムダ毛の手入れ、「男性はすらっとしてい る方がかっこいい」、「女性はすらっとしている方がきれいだ」等の意識についての質 問を「とてもよく」「少し」「あまりない」「全くない」の4件法で回答を求めた。

⑤外見からの影響について a)「体重が増えると嫌になる」「自分の体型や体重に対す る周りの目が気になる」等の主観的思いについての質問を「とてもよく」「少し」「あ まりない」「全くない」の4件法で尋ねた。b)体型や体重について、「誰の言葉が気 になるか」について、父親、母親、兄弟、彼女・彼氏、同性ともだち、異性ともだち、

先生、その他について尋ねた。c)自分が痩せているか、太っているか「誰と比較す るか」について 友達、芸能人またはモデル、兄弟、その他について尋ねた。

⑥摂食障害に関する知識について 拒食症、過食症、標準体重について知っているか 2 件法で尋ねた。

(2) 研究対象

・都市部の高校生1~3年生 男子 37 名、女子 26 名、計 63 名

・過疎地の高校生1~3年生 男子 48 名、女子 49 名、計 97 名

・アンケート時期 2013 年7月(都市部)、2013 年 9 月(過疎地)

倫理的配慮

調査の主旨等を学校側に説明し、教職員同意のもと、生徒には文書で主旨を説明した 上で、自記式による調査を求めた。

氏名記入については、すべて無記名の回答とした。

調査方法 教科保健の授業を利用して無記名自記式による調査を実施した。質問紙へ

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の回答は授業の最後 10 分間に記入させ、その場で回収した。

(3)分析方法

①体格について

身長と体重より BMI を求めた。BMI の数値より以下の 3 群に分類した。BMI が 18.5 未 満を痩せ、18.5 以上、25 未満を普通、25 以上を肥満の 3 群に分類した。

②質問紙では「とてもよく」「すこし」「あまりない」「まったくない」の 4 段階評定で回 答を求めたが、「とてもよく」「すこし」を「はい」とした。同様に「あまりない」「ま ったくない」を「いいえ」として分析した。

「痩身願望」「ダイエット(体重操作)の経験」「自分の身体像(外見)への拘り」「外見 への影響」「摂食障害に関する情報源」の 5 項目について地域差と性別について相関関 係を見るため、Pearson のχ乗検定を用いた。有意確率をp<.05 とした。

3 結果

A 高校(都市部)、B 高校(過疎地)とした。各校の学年及び男女別人数は表 3-12 の通 りである。

表 3-12 各校の学年及び男女別人数 単位:人数

1 年 2 年 3 年

男 女 男 女 男 女 合計

A 高校 12 8 13 9 12 9 63 B 高校 11 10 13 19 24 20 97

身長と体重より得た BMI をもとに痩せ、普通、肥満の 3 群に分類した割合を男女別に比 較したのが図 3-3、図 3-4 に示す。

図 3-3 男子の体格比較 p<.05 図 3-4 女子の体格比較 p<.05 18.9

75.7

5.4 4.8

78.6

16.7 0

20 40 60 80 100

痩せ 普通 肥満

男子の体格比較

都市部 過疎地

15.4

84.6

0.0 40.6 43.8

15.6 0

20 40 60 80 100

痩せ 普通 肥満

女子の体格比較

都市部 過疎地

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性別、地域と体型別にχ検定の結果を表 3-13 に示した。

表 3-13 性別、地域と体型別のχ検定結果

性別 χ df p

男子 6.879 2 * 女子 7.181 2 *

*p<.05

男子において地域差での体格比較について、有意差を見るためにχ²検定を行ったとこ ろ有意であった(χ²(2)=6.88,p<.05)。残差分析をした結果、都市部と過疎地とでは有 意差が見られた。都市部男子の肥満が有意に少なかった。

女子において地域差での体格比較について、有意差を見るためにχ²検定を行ったとこ ろ有意であった(χ²(2)=7.18,p<.05)。残差分析をした結果、都市部と過疎地とでは有 意差が見られた。女子では、普通の体格は都市部において有意に多かった。痩せと肥満は 過疎地で有意に多かった。

次に、アンケート項目別の結果を都市部と過疎地で男女別に比較検討した。それぞれを 摂食態度に影響する五つの変数として、痩身願望、体重操作、外見への拘り、外見からの 影響、摂食障害に関する知識と名付けた。アンケート質問項目に「はい」と答えた人数と χ検定結果を表 3-14 に示した。

表 3-14 アンケート質問項目に「はい」と答えた人数とχ検定結果 アンケート質問

項目

都市部 過疎地 男子 女子 男子 女子 χ df p ダイエットをし

たことがある 0(0) 12(25.0) 8(30.8) 30(61.2) 16.647 1 ***

ダイエットを話

題にする 1(2.7) 9(19.1) 11(42.3) 33(67.3) 10.349 1 **

痩せたいと思う 8(21.6) 22(46.8) 22(84.6) 42(85.7) 5.71 1 * 体重不満足 9(25.7) 31(66.0) 20(76.9) 40(81.6) 11.257 1 **

体型不満足 14(38.9) 40(85.1) 24(92.3) 44(89.8) 14.709 1 ***

体重を気にする 11(29.7) 24(51.1) 20(76.9) 44(89.8) 7.572 1 **

体型を気にする 12(32.4) 30(63.8) 21(80.8) 44(89.8) 10.546 1 **

体重操作 4(10.8) 17(35.4) 12(46.2) 24(49.0) 4.74 1 * ムダ毛手入れ 13(35.1) 31(66.0) 21(80.8) 44(89.8) 10.296 1 **

54 男性はすらっと

している方がか っこいい

32(86.5) 42(89.4) 19(73.1) 38(77.6) 0.149 1 ns

女性はすらっと している方がき れいだ

34(91.9) 37(78.7) 25(96.2) 47(95.9) 1.59 1 ns

体重が増えると

嫌になる 4(10.8) 22(46.8) 13(50.0) 40(83.3) 22.202 1 ***

周りの目が気に

なる 8(21.6) 22(46.8) 14(53.8) 37(75.5) 10.719 1 **

拒食症を知って

いる 32(86.5) 31(66.0) 26(100.0) 45(91.8) 4.775 1 *

*p<.05 *p<.01 ***p<.001

(1) 痩身願望

①ダイエット経験の性別と地域比較

男子において地域差によるダイエット経験の有無について連関性を見るために、χ²検定 を行ったところ有意であった(χ²=10.77,df=1,p<.01)。この結果と残差分析をした結果、

都市部の男子ではダイエットをしたことがある者は過疎地男子より有意に少なかった。

女子において地域差によるダイエット経験の有無について連関性を見るために、χ²検定 を行ったところ有意であった(χ²=6.30,df=1,p<.05)。この結果と残差分析をした結果、

都市部の女子ではダイエットをしたことがある者が過疎地女子より有意に少なかった。

②ダイエットを話題にする性別と地域比較

男子において地域差によるダイエットを話題にする違いについて連関性を見るため に、χ²検定を行ったところ有意であった(χ²=5.34,df=1,p<.05)。この結果と残差 分析をした結果、都市部の男子ではダイエットを話題にする者が過疎地男子より有意に 少なかった。

女子において地域差によるダイエットを話題にする違いについて見るために、χ²検 定を行ったところ有意であった(χ²=5.28,df=1,p<.05)。この結果と残差分析した結 果、都市部の女子ではダイエットを話題にする者が過疎地女子より有意に少なかった。

③ダイエットの情報源

ダイエットの情報源について、テレビ、新聞、ラジオ、友人、インターネット、その 他の7項目について回答を求めた。回答項目ごとに、地域別、性別4群における割合を 図 3-5 に示した。