第5章 まとめと今後の課題
第4節 今後の課題
摂食障害の発症原因が幼少期の愛着障害に遡ることが、多くの事例において見られた。
このことから、摂食障害発症を予防するには、思春期の生徒だけではなく、幼少期からの 継続的対応が必要であることが分かった。摂食障害ハイリスク群の児童生徒は、幼稚園、
小学校、中学校、高校とそれぞれの段階において、個々に手厚い対応を受けているはずで ある。ただし、それぞれの段階で対応した養護教諭同士での情報共有や、進学時の申し送 り等必要な連携がなければ、対応は途絶えるばかりでなく、発症のさらなる危険性を高め ることにつながる。
この事態を未然に防ぐために、今後の課題として、以下の4点を提言しておく
1.児童生徒の健康をつかさどる幼小中高の養護教諭同士の連携を強め、縦断的な情報 共有の場を設けることが必要である。
2.食行動異常の子どもを早期に発見し、早期に対応する具体的方法を共有しておくこ とが必要である。
3.養護教諭、担任、栄養教諭、臨床心理士等の多職種の関係者との連携を深める連絡 体制を持つことが必要である。
4.発症を予防するために、学校現場では養護教諭、担任、栄養教諭、臨床心理士等が チームとなって子どもの発達段階に即した予防策を講じることが必要である。
以上の4点から、さらに今後の方策として具体策を挙げておく。
女性の社会進出に伴い、早期に母親以外に保育が任されることが日常化している。baby
sitterや保育園に預けるとき、食行動の特徴を母親に替わる保育者に一覧できる食事発達レ
ベルを表す様式の作成が必要である。内容には、食物アレルギーの食材や調理方法、量、
アレルギー症状やその対応にも記入できるものにする。離乳については、離乳食の段階を 明記する。離乳が軌道に乗らない場合は繰り返す必要もあるので、離乳食の段階について は丁寧に、開始時期、継続時時期を明記する。離乳食の内容、偏食、量、食事時間の工夫 等も記入する。摂食障害のハイリスク群の児童生徒は、このような早期対応の食事(離乳 食)の様式が保育園、幼稚園での進級時での引継ぎ事項の一つに挙げられることが必要で ある。
また、母子手帳に掲載されている成長曲線を、保育園、幼稚園だけでなく、小中高と引 き継ぐことを視野に入れた、「拡大母子手帳」の様式を提案する。
次に、摂食障害のハイリスク群を発見するための早期のチェック様式作成が早急に望ま
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れるところである。本論文においてハイリスク群としたのは、自記式であることから、最 も早い時期でも就学後の文字が読めてアンケートに答えられる高学年以降の児童が対象に なる。この時期以前の早期の児童を対象にするためには、保護者や教員が対応する生活の 中で、食事に伴う行動から摂食障害を早期に発見するためのチェック様式が必要である。
この点については、摂食障害が本人の病識がない点においても、周囲の観察から早期対応 すべき時期を見落とすことのないようにしていく必要が考えらえる。
進級、進学と学年を重ねるときに、摂食障害の危険性があれば、必ず引き継ぐ様式の考 案が必要である。これについては、学校現場での検尿、心臓検診結果が引き継がれるよう に健康診断への記入を義務付ける必要が考えられる。また、健康診断時での学校医の所見 を引き継ぎ、専門機関への紹介する時期を逃すことないように対応する必要がある。
成長曲線の活用が文部科学省の通達であるが、授業が最優先のなかで、健康診断が二の 次になりがちである。また健康診断の意義と必要性について、さらに説明していかなけれ ばならない。身長、体重測定の継続実施は、健康な身体の保持には必要であることと、痩 せすぎの危険性について、さらに説明を丁寧に続ける必要性が考えらえる。
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結 論
本論文では、摂食障害発症には未だ至らないが、食行動異常を示すハイリスク群を検討 するに当たって、発症が多い思春期だけではなく、乳幼児期における食行動である哺育及 び離乳食等の摂食状況に注目した。具体的に言えば、乳幼児期の食物アレルギーをその一 例として取り上げた。乳幼児期に発症する食物アレルギーには、母親の食物アレルギー発 症への多大な不安が存在し、それに起因した不完全な母子相互作用が存在することで、食 物アレルギーの遷延化につながることに言及した。
摂食障害を発症する子どもには、従来は反抗期なしに、母親の言うなりに頑張った優等 生が多いと言われていた。母親にとっては自慢の娘であった。そのほとんどの母子関係に は、無意識に子どもを押さえつけることや、娘の行動すべてを監視下に置かないと不安で たまらない母親の心理が見られた。結果として、子どもに自尊心が育たないことや、心の 闇を抱えたまま育つ環境が見られた。過度の期待がプレッシャーとなり強いストレスを抱 えることにつながり、思春期前後における摂食障害発症を増長させることが考えられる。
母子における不安感や愛着障害が、摂食障害の好発時期である思春期まで、発症の時期を うかがうように経過することを指摘した。
このように、思春期に多く発症する摂食障害の原因が乳幼児期に存在する。忘れてしま うほどの長い期間を経て幼少期に端を発する愛着障害が、問題の顕在化として摂食障害と いう形で思春期に花開くことになる。
このことからも、摂食障害発症を未然に予防するためには、子どもの全生涯を通じて、
幼少時から成人まで体系立てた対応が必要になることは必須であり、幼小中高に至る養護 教諭の連携が一層強く求められることになる。
幼少期の愛着障害を含めて、摂食障害の発症につながる影響要因について多角的に分析 検討した結果、社会・文化的要因、環境的要因、心理学的要因、発達的要因の四つに類型 化した。この四つに類型化した影響要因に基づき、教育現場で実際に活用できる予防教育 について検討した。摂食障害発症を予防するために、医療的専門知識を持つ養護教諭が中 心となって、学校現場で取り組むことができる項目として、「ピアによる予防教育」、「栄養 指導」、「アサーショントレーニング」、「睡眠指導」、「成長曲線」の活用の手法を五つにま とめた。以下に、五つの予防教育のポイントについてまとめておく。
1.摂食障害の発症予防には、生徒同士のピアサポートによる予防教育が、教師による強 制のある予防教育よりも効果的であり、ピアサポートが必要である。
2.健康な生活を送るために必要な食物を中心に置いた栄養指導や、日常の保健指導の継 続が必要である。
3.言語表現を活発にし、コミュニケーション能力を高めるために、該当児童生徒の成長 発達段階に即したアサーショントレーニングが必要である。
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4.身長と体重の身体測定結果を成長曲線に書き込むことの必要性を挙げた。高校におい ては、小中学校の測定結果も併せて書くことで、摂食障害の早期発見及び予防教育に つながる。
5.健康な食習慣には、欠かすことのできない睡眠時間の確保が必要である。そのために は、スマホ等に影響されないように、生活時間の有効的な利用について保健指導が必 要である。
169 参考文献
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