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第3章 大学生の摂食態度の実態

第1節 ピアによる予防教育の効果

-映像及びダイエットの実態アンケート結果より-

1 研究の動機

現在の摂食障害の実態としては、ありふれた病気(Common disease)、重症化(長期の治 療時間)、治療の困難性が挙げられる。

厚生労働省統計情報部「患者調査」、第 18 回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関す る検討会(平成2164日)、独立行政法人福祉医療機構「児童・思春期の精神医療に ついて」によると、若年女性でAN(神経性食思不振症)が0.1~0.5%、BN(神経性過食症)が 1~4%。10代後半の発症が多いという。

また、症状に気づいてから子どもの心の専門病院を受診するまでにかかった期間は平均 すると、2.2年かかっており、思春期の時期へのダメージは大きいことが分かる。

専門病院を予約してから受診までの期間について、1か月以内は53%、1年以上は8%を 要したという統計がある。専門機関と専門医の不足が緊急の課題であることがうかがわれ る。そこで、このように思春期において好発する摂食障害について、現代高校生はどのよ うな意識を持ち、正確な疾病理解ができているのか調査する必要性を感じた。また、治療 の必要な疾病であり、長期の加療が必要であることから、予防教育の必要性を痛感した。

2 研究の目的

発症を食い止めるため予備群の早期発見をめざす。高校生の予防教育に重点を置き、摂 食障害を発症させないことを第一の目的とした。手法として生徒が作成したプログラムを 利用した予防教育の実践の成果について検討する。理論としてピアサポートを念頭に置い た。

3 研究方法

筆者の元勤務校である大阪府立A高等学校での選択科目「国語表現」の授業において「ダ イエットと健康」を題材に生徒同士で研究調査する過程で、摂食障害についての疾病への 理解を深めさせ、生徒による実践として調査した内容を発表させた。

同時に、事前・事後のアンケート調査を実施した。事前アンケートには、資料16ページ のアンケート様式10を使用した。ダイエットの経験、現在の身長、体重と男女別理想身長 と理想体型について質問した。

事後アンケートには、アンケート様式11(資料18ページ)を使用した。摂食障害につい ての発表を聞いて、特に記憶に残った項目について回答を求めた。回答項目として、発表 に用いたテレビコマーシャルの映像、ダイエットの実態、ダイエットの理由、種類、理想

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体型、体型について気をつけていること、摂食障害の原因、摂食障害は源氏物語にも出て 来ること等を挙げておき、複数回答可で○をつけさせた。

発表までの準備として、様々な視点から入手したダイエット情報を発表メンバー(高校3 年生男子1名、女子 3名)で共有した。事前に、メンバー全員でバナナダイエットを経験 し、発表に盛り込んだ。

50 分間の発表では、事前アンケートの結果から、自分たちの学校でのダイエットの実態 や、理想体型、理想身長の男女による違いから見た外見への意識の違いが発表された。国 内の摂食障害の実態を検証し、討論によって検証結果をさらに深めた。源氏物語等の歴史 的背景から見た摂食障害についてまとめて口頭で説明した。授業の最後に、海外で実際に 放送されているテレビコマーシャル、拒食症の女性の映像を視聴し共有した。「ダイエット と健康」発表の流れについて図5-1に示した。

5-1 「ダイエットと健康」発表の流れ 4 発表内容

(1) 発表内容1 (バナナ)ダイエットの体験からの報告

メンバー全員が1週間「バナナダイエット」を経験した。バナナダイエットの方法と して、朝食に、バナナ1~2本と常温の水を飲むだけとした。

ダイエットの目的は自分に合った適正体重に戻すことを目的とする。

メンバーは全員が適正体重であったことが判明する。

(2) 発表内容2

生徒向け事前アンケート(3年1組と4組 男子24人 女子51人)結果報告

① ダイエット経験の男女比較

ダイエット経験の有無について、事前アンケートで質問した男女別結果を表5-1に示した。

5-1 ダイエット経験の男女別比率 人数%

女子 男子

ある 27(52.9) 3(12.5) ない 24((47.1) 21(87.5)

合計 51 24

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ダイエット経験は女子が53%、男子が13%であった。

② 理想身長(女子)の男女比較

女子の理想身長について、男女別回答について表5-2に示した。

5-2 女子の理想身長 男女別比率 人数%

151~155 156~160 161~165 その他 女子 5(9.8) 27(52.9) 15(29.4) 4(7.8) 男子 9(47.4) 6(31.6) 3(15.8) 1(5.3)

女子の理想身長について見ると、女子では156~16053%と最も多く選ばれていた。

男子は、151~155が47%と最も多く選ばれていた。

③ 理想身長(男子)の男女比較

男子の理想身長について、男女別回答について表5-3に示した。

5-3 男子の理想身長 男女別比率 人数%

170 以下 171~175 176~180 180 以上 男子 0 7(26.9) 15(57.7) 4(15.4) 女子 5(9.8) 25(49.0) 12(23.6) 9(17.6)

男子の理想身長についてみると、男子では176~18058%と最も多く選ばれていた。

女子では、171~175が49%と最も多く選ばれていた。

④理想体型(女子)の男女比較

女子の理想体型について、男女別回答について表5-4に示した。

5-4 女子の理想体型について 男女別比率 人数%

ほっそり ぽっちゃり がりがり ふくよか ほそマッチョ その他 女子 37(74.0) 2(4.0) 1(2.0) 3(6.0) 1(2.0) 6(12.0) 男子 7(38.9) 2(11.1) 0 5(27.8) 0 4(22.2)

女子の理想体型について見ると、女子ではほっそりが 74%と最も多く選ばれていた。男 子では、ほっそりが39%、ふくよかが28%と二極化が見られた。

⑤理想体型(男子)の男女比較

男子の理想体型について、男女別回答について表5-5に示した。

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5-5男子の理想体型について男女別比率 人数%

ほそマッチョ ほっそり その他

男子 20(66.7) 4(13.3) 6(20.0) 女子 30(66.6) 7(15.6) 8(17.8)

男子の理想体型について見ると、男女ともに、ほそマッチョが 67%と最も多く選ばれて いた。男子の理想体型は男女で差は見られなかった。

⑥ ダイエット方法について

一番多かったダイエット方法は、ご飯を抜くことであった。

(3) 発表内容3 討論(クイズを活用した)

・拒食症の疫学的知識(好発年齢=高校生)

・拒食症の原因(心理的、社会的、生物学的)

源氏物語に拒食症を見つける(宇治大君)

・拒食症・過食症の症状(こころの病気)単純に痩せるだけでない。

・治療状況、回復過程について かなりの時間がかかるから高校生活への影響は大き い。

① 討議した内容について(意見から集約)

なぜ女子はほっそりしたいのか、男子には理解できない部分が存在している。

なぜ摂食障害はこころの病気なのかを、摂食障害の症状から考えてみる。

・自分の痩せに気づかない。

・強制的なエネルギー消費活動を続ける。

・自分自身のボディイメージには男女差が存在することに気が付く。

・異性に対するボディイメージには男女差がある。

・ほっそりとふくよかというイメージの男女による違いが存在した。

②「ダイエットと健康」の発表を終えて(生徒の感想文から集約)

・摂食障害は回復に時間がかかる。

・ダイエットを軽く見すぎていた。

・周囲の摂食障害の人たちにきちんとかかわってあげられなかった。

・正確な知識を早く身につける必要が分かった、「何よりも正確な知識を知ることが大 切」。

*討議した結果、予防には正確な知識が必要であることが分かった。

*内面から美しく健康に生活することが大切。

次の第2段階では「ダイエットと健康」授業実施前と後での受講群と未受講群のアンケ ート結果の比較より、自分たちの研究発表が同年齢の高校生にどのような行動変容を起こ すのかを調査検討した。

135 1 アンケート調査実施

「ダイエットと健康」受講群 男子7名、女子6名と未受講群 男子2名、女子14名に おけるアンケート結果を比較し、摂食障害を予防する効果について検討した。

2 アンケート実施日

平成21116日及び1110

3 質問紙構成

「ダイエットと健康」の発表を聞いた事後の意識について尋ねた。

①事後アンケート(印象に残ったこと)(複数回等可)

②セルフ・エスティーム尺度質問

③摂 食態度検 査( Eating Attitude Test:EAT26) 摂食態 度につい て、 ガー ナーら (Garner,D.M. et al. 1979)が作成した EAT26 を用いた。当初作成された EAT40 項目から 26 項目に縮小してもその信頼性と妥当性が確認されている。各項目は「いつも」「非常にし ばしば」「しばしば」「ときどき」「まれに」「全くない」の 6 段階で自己評価する。頻度 の多い順から「いつも」を 3 点、「非常にしばしば」を 2 点、「しばしば」を1点として、

それ以下の頻度を 0 点とした。反転項目として項目 25 は「全くない」を 3 点、「まれに」

を 2 点、「ときどき」を 1 点としてそれ以上の頻度を 0 点とした。そして各項目の得点の 単純加算を総得点とし、切断点 19/20 に設定した。

④以下三つのボディイメージをContour Drawing Rating Scale(図5-2)から選ぶ。

自分、理想(同性)、理想(異性)のボディイメージ

Contour Drawing Rating Scale は、Thompson, M. A., & Gray, J. J. (1995) によって 作成されたものである。自己及び他者のボディイメージを視覚的に示すことができる。表 は 9 人の男性と 9 人の女性の輪郭図面から構成されており、ボディイメージの評価ツール として世界的に最もよく使われているものである。

5-2 Contour Drawing Rating Scale