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階層クラスタ分析を用いた各因子と振動パターンの特徴との詳細な関係 36

第 3 章 「印象」の体現 12

3.7 階層クラスタ分析を用いた各因子と振動パターンの特徴との詳細な関係 36

3.7.1 分析目的

前節では各因子と振動パターンの特徴との関係について議論したが,評価した振動 パターンはあまりにも多様であり,関係は複雑である.そのため,振動パターンの種 類によっては相関が見られないパターンが存在する可能性がある.そこで,85の振動 パターンの因子得点をもとに階層クラスタ分析を行うことで,パターンを分類し,そ のクラスタ内で再度各因子と振動パターンの特徴との関係を探る.

3.7.2 分析結果

クラスタリングはWard法[87]を採用し,その結果,図3.26に示すクラスタ1–3の3 つのクラスタに分類された.図3.26よりクラスタ1は小さい振動の強度で単調かつ平 坦な振動パターンが多く見受けられる.クラスタ2は振動の強度が大きい振動パター ンが,クラスタ3は振動の強度が頻繁に変化するパターンが含まれていることが見て 取れる.ここで,表3.6に各クラスタの平均因子得点を示す.クラスタ1に分類され たパターンは,主に因子1と因子4で負の値を,クラスタ2に分類されたパターンは,

主に因子2で正の値を,クラスタ3に分類されたパターンは,主に因子1と因子3で 正の値と因子2で負の値を有するものである.

以上の各クラスタの傾向を踏まえたうえで,因子得点と振動パターンの特徴量との 間で相関係数をクラスタごとに算出した結果を表3.7–3.9に示す.これらの表において,

表3.5で示した相関関係とは異なる結果を示した因子と特徴量に焦点を当てる.その ため,評価性を表す因子1における因子得点と特徴量との相関関係は,相関係数の値 に多少の違いはあるものの,表3.5の結果と同等であるため以下の考察では省略する.

75 74 39 77 41 62 43 16 32 72 11 25 46 70 60 78 38 76 69 20 48 26 18 64 51 42 40 47 45 53 59 1 8 6 27 3 13 31 24 52 7 57 58 81 80 34 4 9 71 83 14 85 35 84 22 23 61 29 65 30 73 15 63 12 67 10 2 50 37 66 5 21 33 68 36 79 82 17 55 28 56 19 49 44 54

クラスタ1

クラスタ2

クラスタ3

クラスタ1

75 74 39

77 41 62

43 16 32

72 11 25

46 70 60

78 38 76

69 20 48

26 18 64

51 42 40

47 45 53

59

クラスタ2

1 8 6

27 3 13

31 24 52

7 57 58

81 80 34

4 9 71

83 14 85

35 84 22

23 61 29

65

クラスタ3

30 73 15

63 12 67

10 2 50

37 66 5

21 33 68

36 79 82

17 55 28

56 19 49

44 54

図 3.26: クラスタリングによる結果

表 3.6: 各クラスタに分類された振動パターンの平均因子得点 クラスタ 因子1 因子2 因子3 因子4

1 0.66 0.04 0.25 0.84

2 0.25 1.01 0.13 0.27

3 0.68 0.93 0.46 0.17

表 3.7: クラスタ1における因子得点と振動パターン特徴量との相関係数(∗∗p < .01,

p < .05

特徴量 因子1 因子2 因子3 因子4 Integration .66∗∗ .75∗∗ −.05 −.31

Variation .04 .17 .12 .44 Difference .31 .58∗∗ .25 −.02

Max .46∗∗ .40 .05 .06

Min −.15 −.30 −.01 −.15 Zero −.20 −.21 .15 .52∗∗

Peak −.19 .07 .24 .65∗∗

3.7.3 クラスタごとの各因子と振動パターンの特徴との関係

クラスタ1 重量性を表す因子である因子2において,表3.7に示すとおりDifference で正の相関が見られた.これは振動の強度が上昇するような振動パターンが「重たい」

や「力強い」といった印象に影響を与えることを意味する.クラスタ1は比較的に振動 の強度が小さいパターンが含まれているクラスタであることから,振動フィードバッ クに重量感や力強さを付与したい場合は,振動の強度が上昇するパターンにすること で効率的にユーザの印象に影響を与えることが期待できる.規則性を表す因子3はど の特徴量においても無相関であることから,振動の強度が小さい平坦な振動パターン においては斬新さを表現することは困難だと思われる.平滑性を表す因子4は表3.5と ほぼ同等の結果を示している.

クラスタ2 クラスタ2における因子得点と振動パターン特徴量との関係を表3.8に示 す.表3.5の結果とは異なり因子2においてZeroにのみ負の相関が見て取れる.これ は,クラスタ2に強度の大きい振動パターンのみが含まれていることが原因だと推測 される.

因子3は表3.5の結果と比べ,より強い相関が確認できることから,振動が途切れる ことが重要な要因であることがわかる.一方で,因子4は表3.5の結果と異なりZeroPeakとの相関関係を確認することができない.これらを踏まえると,振動の強度の変 化における差異の程度が因子3と因子4の違いを生むのではないかと考えられる.つ まり,図3.26に示すクラスタ2内の振動パターン57や81のような,差異が大きい振 動パターンは因子3に影響を与え,ユーザに斬新な印象を与える.逆に,クラスタ2 内の振動パターン9や13のような,差異が小さい振動パターンであっても,強度の変 化を感じとることができ,そこに繰り返しの要素が加われば因子4に影響を与え,ざ らざらとした印象を抱かせる.また,このことは表3.7に示したクラスタ1における結 果からも読み取ることができる.クラスタ1はもともと強度の小さい振動パターンが 多く含まれているため,強度の変化における大きな差異が存在しない.そのため,因

表 3.8: クラスタ2における因子得点と振動パターン特徴量との相関係数(∗∗p < .01,

p < .05

特徴量 因子1 因子2 因子3 因子4 Integration .44 .23 −.30 .02

Variation .01 −.20 .65∗∗ .48∗∗

Difference .16 .15 .21 .30

Max .44 .04 .06 .41

Min −.15 .21 .12 .07

Zero .20 −.39 .32 .12

Peak .16 −.20 .59∗∗ .34

子4では表3.5と同等の結果が見られたにも関わらず,因子3では全く相関が見られず 斬新さを表現するのは困難であるという結論になったと考えられる.

クラスタ3 クラスタ3における因子得点と振動パターン特徴量との関係を表3.9に示 す.因子2においては,表3.5の結果と同様に強度の大きい途切れない振動パターンと 正の相関を確認できた.

クラスタ3には頻繁に変化を繰り返すような振動パターンが含まれている.そのた

め,因子3と因子4のIntegrationを比べると,それぞれに正と負の相関が現れており,

クラスタ2における振動の強度の変化における差異の程度に関する知見が裏付けられ る.ただし,因子3ではMinに正の相関,Zeroに負の相関が,因子4ではZeroに正 の相関,Peakに正の相関が見られることから,振動と静止を頻繁に繰り返しすぎると 大きな差異があっても,ざらざらとした印象をユーザは抱く.また,実験1の3.3.5項 に知見として示したように,振動が途切れることで既存の行動のリズムを想像し,斬 新な印象は抱かないことが推測される.つまり,頻繁に強度を変化させ,変化の差異 を大きくし,かつ振動を途切れさせない,図3.26に示すクラスタ2内の振動パターン 34やクラスタ3内の振動パターン5のような振動パターンが斬新さの表現に適してい る.そして,振動を何度も途切れさせる,もしくは変化を頻繁に行う図3.26に示すク ラスタ1内の振動パターン31やクラスタ2内の振動パターン8のようなパターンがざ らざらとした印象を表すのにふさわしいといえる.

表 3.9: クラスタ3における因子得点と振動パターン特徴量との相関係数(∗∗p < .01,

p < .05

特徴量 因子1 因子2 因子3 因子4 Integration .67∗∗ .77∗∗ .49 −.59∗∗

Variation −.02 −.21 .21 .31 Difference .02 .14 −.04 −.15

Max .49 .50∗∗ .29 −.28 Min −.11 .20 .40 −.13 Zero −.29 −.54∗∗ −.44 .47 Peak −.26 −.42 .00 .44