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第 5 章 「切迫感 · 不快感」の体現 50

5.6 操作への影響

5.6.1 実験タスクの操作性

全実験協力者の各難易度のタスクにおけるドラッグ所要時間とミス回数の平均値と 標準偏差をそれぞれ図5.10,5.11に示す.ドラッグ所要時間では,難易度H条件にお いてのみ一部の振動パターンの標準偏差が大きく,データにばらつきがあることがわ かる.そこで各難易度の各パターンにおけるドラッグ所要時間に対してコルモゴロフ– スミルノフ検定を用いて正規分布に従う模擬データと母集団の確率分布を比較した.

その結果,H条件の振動パターン5,9,12,13において有意差(それぞれp < 0.05, 0.01,0.01,0.01)が見られ,正規分布に従っていないことがわかった.そこで,H条 件はノンパラメトリック手法で分析を行う.

ラッグ所要時間

振動パターン番号 [s]

難易度H 難易度M 難易度L

図 5.10: 各難易度における全振動パターンの平均ドラッグ所要時間

ミス回数

振動パターン番号 [/試行]

難易度H 難易度M 難易度L

図 5.11: 各難易度における全振動パターンの平均ミス回数

図5.12にH条件におけるドラッグ所要時間とミス回数の中央値を示す.H条件のド ラッグ所要時間,ミス回数においてフリードマン検定,M,L条件のドラッグ所要時 間,ミス回数において分散分析を行った.その結果,H条件にのみドラッグ所要時間

p<0.01)で有意差が見られた.このことから,簡単なタスクに関しては振動がタス クの操作性に影響を及ぼすことはないことが明らかになった.さらにH条件において,

マン·ホイットニーのU検定をすべての振動パターン間で行いその結果にボンフェロー ニ法を用いて補正することで多重比較を行った.その結果,いずれの水準間の差も有 意ではなかった.

各難易度においてドラッグ所要時間,ミス回数それぞれと表3.4の特徴量間で相関 係数を算出した.その結果,H条件においてドラッグ所要時間とMaxとの間に負の相 関(r =0.61,p< 0.05)が見られた.このことから,強度の大きい振動を使う区間 数,すなわち強度の大きい振動時間が少ない振動パターンの方がドラッグをするのに 時間がかかることがわかった.

ドラ所要時間

振動パターン番号 [s]

(a)ドラッグ所要時間

ミス回数

振動パターン番号

[回/試行]

(b)ミス回数

図 5.12: H条件における各中央値

5.6.2 ドラッグの軌跡

全実験協力者の各難易度のタスクにおけるドラッグの軌跡と境界線の中心線との差 の分析を行った.例として,図5.13にパターン1が付加された場合の難易度Mにおけ る実験協力者1の1試行の軌跡と中心線との差を1度ごとに算出し,グラフにプロッ トしたものを示す.円を2周ドラッグするため,0–710度(対象が線に触れたタイミン グで終了のため720度より少し小さい)を測定対象とした.そして,試行ごとに差の 総和を算出し,H条件においてフリードマン検定,M,L条件において分散分析を行っ た結果,有意な差は見られなかった.このことから,振動パターンによって中心から 大きくずれたり,あるいは正確にドラッグしたりする傾向は見られなかった.

-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4

50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

中心線の差

(cm)

スタートポジションと対象の角度

図 5.13: 難易度Mにおける実験協力者1の1試行の軌跡と中心線との差

5.6.3 実験タスクの作業負荷

図5.14に各実験協力者の各振動パターンにおけるワークロード評価WWL(Weighted

Workload)の平均値と標準偏差を示す.有意水準5%で分散分析を行った結果,振動

パターン間で有意差(F(13, 196) = 2.26,p < 0.01)が見られた.さらに,Tukey法 による多重比較を行った結果,振動パターン10を付加した場合のセットの方が振動パ ターン14,つまり振動なしのセットに比べ有意に作業負荷が高いことがわかった.た だし,振動パターン10と振動パターン14のドラッグ所要時間に関しては図5.12より 差がないことがわかる.そのため作業負荷が本実験の範囲でのドラッグ操作に影響を 与えるとはいえないことが明らかになった.

各振動パターンのWWLと特徴量間で相関係数を算出した.WWLとMaxで正の相

関(r = 0.59,p<0.05)が見られたことから振動の強度が大きい方が作業負荷が高い

ことが明らかになった.また,WWLとIntegrationは無相関であったことから,常に 振動の強度が大きい必要はないことがいえる.

0 20 40 60 80 100

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

W W L Sc o re

振動パターン番号

*

図 5.14: 各振動パターンにおけるWWLの平均評価値(p <0.05)