第 3 章 「印象」の体現 12
3.6 因子と振動パターンの特徴との関係
3.6.1 振動パターンの特徴量の選出
1
2
3 4 5 6
7
8
9 10
11
13 12 14
15 16
17
18 19
20
21 22
23
25 24
26 27
29 28
30 31
32
33
34 36 35
37 38
39 40
41 42
43 44
45
46 47
48
49 50 51
52 53
54 55
56 57 58
59
60 61
62
63 64
65
67 66 68
69
70
71
72 74 73
75 76
77 78
79 81 80 82
83 84 85
-3 -2 -1 0 1 2 3
-3 -2 -1 0 1 2 3
ᖹᛶᛶᅉᏊ
ホ౯ᛶᅉᏊ
図 3.19: 評価性因子と平滑性因子の因子得点との関係
図3.21にIntegrationと弱々しい–力強いにおける印象評価値の関係を示す.この時,
相関係数はr = 0.85であり有意に正の相関があることがわかった(t(83) = 14.99, p <
0.01).このことから,振動の強度は弱々しい,力強い印象を与えるうえでの特徴量の 1つとして有効であることが示された.
No. 80 No. 13 No. 31
(a)力強い
No. 47 No. 68 No. 48
(b)弱々しい
図 3.20: 力強い,弱々しい印象と評価された上位3振動パターン
3 13
19 29 30
31
39 44
52 66
75 80 84
5
1 2
4 5
6 8 7
9
10
11 12
14 15
16 17
18 20
21 22 23
24 25
26
27 28
32 33
34 35
36
37
38
40
41
42 43 45
46
47 48
50 49
51 53
54 55
56
57 58
59
60 61
62
63
64
65 67
68
69 70
71 72
73 74 76
77
78 79
81
82
83 85
0 20 40 60 80 100 120 140
1 2 3 4
印象評価値
In te g ra o n
r = 0.85
図 3.21: Integrationと印象評価値との関係
停止 軽い–重たいの印象語対においても,弱々しい–力強いと同様にIntegrationが重 要な特徴量の1つである.Integrationと軽い–重たいにおける評価値との相関係数はr
= 0.62であり,有意に正の相関が見られた(t(83) = 7.22,p< 0.01).しかし,軽い–重 たいにおける評価値とIntegrationとの相関係数rが弱々しい–力強いの時ほど高い値を 示していないことから,Integrationのみで軽い–重たい印象を表現することは難しいこ とがわかる.弱々しい–力強いにおいて,図3.22の振動パターン30と19はそれぞれ評 価値4.4,4.3を示し,力強い印象を与えることがわかる.しかし,軽い–重たいにおい ては,これらの2つのパターンは両パターン3.0という評価値を示し,重たい印象を 与えるとはいえない.一方で,図3.23の振動パターン13,3,6はそれぞれ評価値3.9,
3.8,3.7を示し,重たい印象を与えることがわかった.前者の2パターンが振動が停止 する区間が存在するのに対し,後者の3パターンは徐々に振動が変化する,なだらか な波形のパターンであることが見てとれる.そこで,この振動の停止する区間の有無 が特徴量の1つになり得ると考えた.そして,Iint= 0の区間数をなだらかではない振 動パターンを表現する特徴量Zeroとして定義した(図3.22における振動パターン30, 図3.23における振動パターン13に当てはめた場合,それぞれ3,0となる).軽い–重 たいにおける評価値とZeroとの相関係数はr =−0.50であり,有意に負の相関を示し た(t(83) = 5.27, p < 0.01).一方で,弱々しい–力強いにおける評価値とZeroとの相 関係数はr =−0.18となり有意な傾向は見られなかった.このことから,軽い,重た い印象を同定する特徴量の1つとしてZeroは有効であることが明らかになった.
No. 30 No. 19
図 3.22: 力強い印象と評価された第4,5位の振動パターン
No. 3
No. 13 No. 6
図 3.23: 重たいと評価された上位3振動パターン
強度の変化 なめらかな–ざらざらとしたの印象語対において,図3.24(a)の振動パター ン23,20,48はそれぞれ評価値3.8,3.6,3.6を示し,ざらざらとした印象を与えるこ とがわかった.一方,図3.24(b)の振動パターン60,74,1はそれぞれ評価値2.2,2.4,
2.4を示し,なめらかな印象を与える.前者の3つの振動パターンは,徐々に振動の強 度が変化する後者の3パターンに比べ,顕著に強度が変化していることが見てとれる.
これらのことから,強度の変化が特徴量の1つになり得ると考えた.そこで,強度の 変化を特徴量Variationとして以下の式で定義した(図3.24における振動パターン23 と60に当てはめた場合,それぞれ30,3となる).
Variation =
∑19
int=1
|Iint−Iint−1| (3.2)
No. 23 No. 20 No. 48
(a)ざらざらとした
No. 60 No. 74 No. 1
(b)なめらかな
図 3.24: ざらざらとした,なめらかな印象と評価された上位3振動パターン
図3.25にVariationとなめらかな–ざらざらとしたにおける印象評価値の関係を示
す.この時,相関係数はr = 0.52であり有意に正の相関があることがわかった(t(83)
= 5.48, p < 0.01).このことから,振動の強度の変化はなめらかな,ざらざらとした
印象を与えるうえでの特徴量の1つとして有効であることが明らかになった.
上記の3つの特徴量カテゴリ「強度」,「停止」,「強度の変化」をもとに,定義した 3つの特徴量にさらに4つを加え,振動パターンに関する7つの独自の特徴量を表3.4 のとおり定義した.既存の特徴量ではなく独自の特徴量を設けることで,収集した多
されないよう考慮した.ここで,図3.13(b)の振動パターンをこの定義に当てはめた場 合,Integration = 79,Variation = 31,Difference = −3,Max= 7,Min = 0,Zero
= 6,Peak = 3となる.
1
2 3
4 5
6 7 8
9
10
11 12
13 14 15
16 1718
1920 2122
23
24 25
26 27
28
29 30
32
33 34 35
36 37 38
39
40 41 42
43 44
45 46
4849 50
51 54
55 56
57 58
59
60
61
62 63
64 65 66
67 68
69 70
71
72 73
74 75
76 77
78 79
80 81 83 82
84 85
1 10 100
1 2 3 4 5
印象評価値
V a ri a o n
r = 0.52
図 3.25: Variationと印象評価値との関係
表 3.4: 振動パターンの特徴量の定義
特徴量 定義
Integration ∑19
int=0Iint
Variation ∑19
int=1|Iint−Iint−1| Difference Iint ̸= 0の最後の区間のIintから
Iint ̸= 0の最初の区間のIintをひいた値
Max Iint= 7の区間数
Min Iint= 1の区間数
Zero Iint= 0の区間数
Peak Iint= 0の区間で分割される山の数