第 8 章 フィードバック設計の支援に向けた推定モデルの構築 82
8.3 パフォーマンステスト
モデル構築後,パフォーマンステストを実施した.85パターンとサンプル数が限ら れていることから,ネットワークの学習に用いられるパターンを増やすために leave-one-out cross-validationを用いてニューラルネットワークモデルの検証を行った.85 パターンから1パターンをテスト事例として除き,残りの84パターンで学習行った ネットワークのパフォーマンスを取り除いたテスト事例で検証する.この手順ですべ ての振動パターンのテスト事例と学習事例の組み合わせについて検証を行う.
図8.2に弱々しい–力強いの印象語対におけるテスト結果を示す.印象評価実験で得 た平均主観評価値と比較するために,印象推定モデルの出力値を1–5に変換した.青 の三角および赤の丸がそれぞれ平均主観評価値とモデルの出力値を示している.緑の 棒グラフは評価値と出力値の誤差の絶対値を表している.結果より,振動パターン32 以外のすべてのパターンで,誤差が5段階のSD尺度における1.0以下に収まっており,
平均誤差は0.28であった.また,その平均主観評価値と印象推定モデルの出力値の相 関係数はr = 0.95であり,有意に正の相関があることが確認できた(t(83) = 26.47,p
<0.01).
その他の例として図8.3になめらかな–ざらざらとしたの印象語対におけるテスト結 果を示す.すべてのパターンにおいて誤差が1.0以下であり,平均誤差は0.26であっ た.同様にt検定を行った結果,主観評価値とモデルの出力値の間で正の相関が見ら れた(r = 0.67,t(83) = 8.28,p < 0.01).
表8.1に全印象語対における評価値と出力値間の5段階SD尺度における平均誤差,
および相関係数を示す.そして,図??に残りの印象語対におけるテスト結果をそれぞ れ示す.すべての平均誤差が0.35以下であり,すべての印象語対において相関が見ら れた.これらのことから構築した印象評価モデルは十分に評価値の推定を行えている ことがわかった.
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号 実測評価値 推定値
誤差
図 8.2: 弱々しい–力強いにおけるパフォーマンステストの結果
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号 実測評価値 推定値
誤差
図 8.3: なめらかな–ざらざらとしたにおけるパフォーマンステストの結果
表 8.1: 振動パターンの印象を表現する印象語対
No. 印象語対 平均誤差 相関係数
(標準偏差)
2 不規則な – 規則的な 0.35 (0.30) r = 0.71,t(83) = 9.11, p <0.01 13 軽い – 重たい 0.22 (0.15) r = 0.84,t(83) = 14.31,p <0.01 14 弱々しい – 力強い 0.28 (0.20) r = 0.95,t(83) = 26.47,p <0.01 5 なめらかな – ざらざらとした 0.26 (0.15) r = 0.67,t(83) = 8.28, p <0.01 8 ありふれた – 斬新な 0.28 (0.14) r = 0.91,t(83) = 19.93,p <0.01 4 不快な – 心地よい 0.22 (0.14) r = 0.74,t(83) = 9.96, p <0.01 9 つまらない – 楽しい 0.28 (0.19) r = 0.87,t(83) = 16.41,p <0.01 11 つめたい – あたたかい 0.23 (0.15) r = 0.64,t(83) = 7.56, p <0.01
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error 実測評価値
推定値
誤差
(a)不規則な–規則的な
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error
実測評価値 推定値
誤差
(b)軽い–重たい
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error 実測評価値
推定値
誤差
(c)ありふれた–斬新な
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error
実測評価値 推定値
誤差
(d)不快な–心地よい
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error
実測評価値 推定値
誤差
(e)つまらない–楽しい
0 1 2 3 4
1 2 3 4 5
1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85
印象評価値 誤差
振動パターン番号
model output subjec!ve evalua!on
error
実測評価値 推定値
誤差
(f)つめたい–あたたかい
図 8.4: 残りの6印象語対におけるパフォーマンステストの結果