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除外した項目

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 73-83)

第 5 章 新聞データに見られる「やっと」「ようやく」の相違と、

5.4.2.1 除外した項目

「やっと」と「ようやく」と共起する述語の出現傾向から両副詞の相違について検討す るが、共起する述語の用例のうち除外したものは以下の通りである。

(9)問題意識のあまりの低さに、調査担当の総務局幹部も「驚いている」と声を絞り出 すのがやっとだった。(2008年4月19日)

(10)楽天は完封を免れるのがやっと。(2008年5月12日)

(11)今野は3月のワールドカップ(W杯)アジア3次予選のバーレーン戦は3バック の一員を務めたが、ようやく本職での出番が濃厚に。(2008年5月23日)

(12)チームは51試合目でようやく勝率5割に到達。(2008年5月29日)

(13)私たちもリョウトウナラなどを5000本ほど植えました。でも、植樹はまだや っと山一つ分だけです。(2008年10月6日)

(14)今季開幕戦の阪神戦では先発メンバーから外れるなどやっとの思いで定位置を確 保し、タイトルを手にしたプロ8年目の26歳。(2008年10月13日)

上記の(9)「やっと+助動詞。」のような用例、(10)のように、「やっと。」「ようやく。」 で終わる用例、(11)のように、両副詞と共起する述語が省略された用例、(12)のように、

「体言止め」であるもの、(13)のように、「名詞+助動詞」で終わる用例は、除外した。

また、(14)のように、慣用的な表現のように使われる「やっとの+名詞で」などの表現も 除外した2

以上の用例を除外した結果、(総出現頻度は「やっと」が547 例、「ようやく」730 例で ある)「やっと」が399例、「ようやく」が684例となった。

5.4.2.2 「やっと」「ようやく」と共起する述語

ここでは、両副詞と共起する高頻度の述語を確認する。用例は「やっと」が399例、「よ うやく」が684例であり、両副詞と共起する述語を出現頻度順10位までまとめたものが下 記の表5-2である。

2 「やっと」は、「やっと。」が33例、「やっと+助動詞」が32例、「やっとで」が1例、「やっとな」が1 例、「やっとの~」が19例、述語が省略されたものが15例、「名詞+助動詞」が3例、「名詞止め」が44 例現れており、「ようやく」は、述語が省略されたものが4例、「名詞+助動詞」が2例、「名詞止め」が 39例、「ようやく。」が1例現れた。

表5-2 「やっと」「ようやく」と共起する高頻度の動詞

やっと ようやく

順位 動詞 頻度 比率 順位 動詞 頻度 比率

1 する 50 12.5% 1 する 149 21.8%

2 できる 41 10.3% 2 なる 53 7.7%

3 なる 35 8.8% 3 できる 27 3.9%

4 見つける 20 5.0% 4 出る 15 2.2%

5 来る 18 4.5% 4 始まる 15 2.2%

6 立てる 9 2.3% 6 たどりつく 12 1.8%

6 出る 9 2.3% 7 戻る 11 1.6%

6 分かる 9 2.3% 8 終わる 9 1.3%

7 認める 6 1.5% 9 上げる・こぎつける 8 1.2%

7 戻る 6 1.5% 9 見せる・認める 8 1.2%

表 5-2 から、「やっと」「ようやく」と共起する述語の 1位は共に「する」であり、その 次は、「やっと」が「できる」「なる」の順で、「ようやく」が「なる」「できる」の順であ った。上位 5 位以内に共通する述語は「する」「なる」「できる」である。これらの他に共 通に現れる述語として「出る」「認める」「戻る」がある。上位 3 位までの述語の出現比率 を合わせると、「やっと」が31.6%、「ようやく」が33.4%である。

また、「やっと」のみに共起する高頻度の動詞は「見つける」(4 位)、「立てる」(6 位)

である。しかし、「ようやく」も「見つける」(11位)と共起している(表5-2には入って いない)。

一方、「ようやく」のみに共起する高頻度の動詞は「たどりつく」(6 位)、「上げる」「こ ぎつける」「見せる」(9位)であるが、「やっと」においても、「たどりづく」(11位)、「上 げる」(10位)と共起している。

以上のように、「やっと」「ようやく」と共起する高頻度の動詞はその出現傾向が似てい ることが分かる。

しかし、両副詞と共起する共通の動詞は個々の用例においても似ている振る舞いをして いるのか疑問である。似ているのならば、どのような点が似ており、相違があるのならば、

どのような相違があるのかについて記述する必要がある。

そこで、表5-2において、両副詞と共起する述語のうち出現比率が近い「出る」を用い、

検討する。検討の際には、『分類語彙表』を用いて意味分類を行う。「出る」の出現比率は

「やっと」が9例(2.3%)現れ、「ようやく」が15例(2.2%)現れている。実際の用例は 以下の通りである。

(15)まずは先に土俵に上がった白鵬から。朝青龍の取りこぼしで星が並び、「やっと余 裕が出てきた」とは、指導する熊ケ谷親方(元前頭・竹葉山)。(2008年3月23日)

(16)教員志望の学生の不信は尽きない。埼玉県の小学校教員を志望する私立大3年の 男子学生(20)は、予備校で元教員の教師が「やっと(不正が)明るみに出た」

と口にするのを聞き、「どこでも(口利きは)行われていたのか」と感じた。(2008 年7月30日)

(17)弁護士を立てて娘を退去させたいと考える父親とは何なのかと思ったが、聞くと、

父と娘の不仲がこじれにこじれ、家賃が払えないなら自宅に戻れと諭す父の言葉に 娘は耳を貸さない。父親からの電話にも応答しない。そこで法的措置しかない、と 判断したという。結局、裁判所の手続きに従い、女性はやっと部屋を出た。(2008 年3月13日)

(18)これで貯金1。日本ハムに、ようやく元気が出てきた。(2008年4月9日)

(19)一方のバーレーンは後半32分、イスマイールが懸命にボールを追い、左サイド から放り込んだクロスが決勝点につながった。日本は失点後、ようやく攻撃にスピ ードが出てきたが、時すでに遅かった。(2008年3月27日)

(20)スライダーを振り抜いた打球は「手応えありました」との言葉通り、右翼席で大 きくはねた。愛知・東邦から強打者の期待を受けて入部したものの、過去2年間は 3安打のみ。ようやく出た初本塁打は2点差を追いつき、チームに勢いを与える貴 重な一打となった。(2008年4月13日)

「やっと」の「出る」は、(15)は「抽象的関係」の「存在/発生・復活」に、(16)は

「抽象的関係」の「作用/出・出し」に、(17)は「抽象的関係」の「作用/移動・発着」

に現れる。一方、「ようやく」の「出る」は、「やっと」の(15)(16)(17)と似ている意 味分布が見られ、その他(18)は「人間活動」の「心/心」に見られた。また、(19)(20)

は「抽象的関係」の「作用/出・出し」に現れる。

「抽象的関係」の「作用/出・出し」は、両副詞に共に現れる表現であり、「やっと」に は、(16)の「不正が明るみに出る」以外に、「血筋の良さが出る」「判決が出る」「結果が 出る」などが見られる。一方、「ようやく」には、「人の味が出る」「改革の効果が出る」「意 識が出る」「OKが出る」「自覚が出る」などが見られており、また、サッカーや野球などの スポーツに関する内容(記事)に使われる傾向が見られる3

このように、『分類語彙表』を用いての意味分類により、「ようやく」がスポーツ記事に 現れること以外、「やっと」「ようやく」に大きな相違は見られなかった。

3 『毎日』において、記事別に、ある傾向が見られた。それは、「ようやく」「ついに」は、「スポーツ」面 に多く現れることである。「社説」面など記者の主観が入りやすい内容とは異なり、「スポーツ」面の記事 は、行った事実をそのまま客観的に伝える内容が多い。そのため、改まった文により多く現れる「ようや く」「ついに」が使われているのではないかと考えられる。新聞記事面における副詞の出現傾向については 今後の課題にしたい。

ところで、「やっと」と共起する「出る」の文には、下記のように、(21)の「騒ぎの末」、

(22)の「結局」のように、事態の成立においてその最終段階を表す表現が見られた。

(21)お忍びで市中に雪見に出かけたお殿様、粗末な煮売り屋の並ぶ辺りでにおいにひ かれ、一軒の店に入る。落語「ねぎまの殿様」は「目黒のさんま」の冬バージョン だ。こちらの殿様はしょうゆ樽(だる)に座ってマグロとネギの小鍋だてに熱燗(あ つかん)で大満足である▲屋敷に帰った殿様がそのねぎま鍋を所望すると、料理番は マグロを蒸して脂抜きし……とお約束の展開だ。騒ぎの末やっと本物のねぎま鍋が 出たところで、殿様「これ、しょうゆ樽をもて」。(2008年12月3日)

(22)弁護士を立てて娘を退去させたいと考える父親とは何なのかと思ったが、聞くと、

父と娘の不仲がこじれにこじれ、家賃が払えないなら自宅に戻れと諭す父の言葉に 娘は耳を貸さない。父親からの電話にも応答しない。そこで法的措置しかない、と 判断したという。結局、裁判所の手続きに従い、女性はやっと部屋を出た。(2008 年3月13日)

(21)(22)に現れる最終段階を表す表現から、「やっと」には最終段階を表すことによ って事態の成立が際立って見られる効果があるのではないかと思われるが、「やっと」につ いての先行研究において、このような最終段階を表す表現との共起を言及しているものは 見当たらない。

以上、「やっと」「ようやく」と共起する動詞の出現傾向と、両副詞と共起する述語のう ち出現比率が近い「出る」の意味分布から、「やっと」に事態の成立を強調する、最終段階 を表す表現が出やすいこと以外、両副詞の相違はあまり見られないことが分かった。

5.5 「独自の語」からの「やっと」「ようやく」の相違

本節では、「やっと」「ようやく」の相違を明らかにするために、両副詞と共起する中頻 度語のうち「独自の語」を用い、意味分布を検討する。

次の表5-3と表5-4は、両副詞のそれぞれの「独自の語」を抽出した表である。

表5-3 「やっと」の「(使用)範囲・度数分布表」

頻度層 度数 累積比率 共通動詞 固有動詞 共通動詞 固有動詞 合計 比率

50~9 0%~47.9% 7 1

8~4 ~59.6% 9 1 3 ~70.2% 9 4 2 ~79.7% 11 9

低頻度 1 ~100.0% 44 38 44 38 82 61.7%

合計 399 80 53 80 53 133 100.0%

延べ語数 『毎日』範囲(補正前) 『毎日』範囲(補正後) 異なり語数

高頻度 16 2 18 13.5%

中頻度 20 13 33 24.8%

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 73-83)