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ジャンルによる「急に」「突然」の「独自の語」の相違

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 166-169)

第 9 章 新聞データに見られる「急に」 「突然」の相違と、

9.3 調査データ

9.7.3 ジャンルによる「急に」「突然」の「独自の語」の相違

ここでは、『毎日』と『文学』における「急に」「突然」の「独自の語」の出現傾向につ いて比較する。

まず、『毎日』における「急に」「突然」の「(使用)範囲・度数分布表」と、『文学』にお ける「急に」「突然」の「(使用)範囲・度数分布表」での各頻度層の見出し語の出現比率に ついて見る。

表9-9 「(使用)範囲・度数分布表」の見出し語の出現比率11 副詞 高頻度 中頻度 低頻度 合計

『毎日』 急に 13.1% 19.0% 67.9% 100.0%

突然 9.9% 26.0% 64.1% 100.0%

『文学』 急に 6.7% 36.3% 57.0% 100.0%

突然 10.7% 36.7% 52.6% 100.0%

表9-9から『毎日』における「低頻度」の見出し語の出現比率は「急に」が67.9%、「突 然」が64.1%であり、『文学』における「低頻度」の見出し語の出現比率は「急に」が57.0%、

「突然」が52.6%である。これらの数値は、伊藤(2008)が言及した「頻度1の見出し語 の出現比率は50%前後が普通である」ことから、「急に」の方が「突然」より多様な頻度1 の語と共起していること、また、『毎日』の方が『文学』より「低頻度」の見出し語の比率 がやや高いことが分かる。

次に、『毎日』と『文学』における両副詞の「独自の語」を『分類語彙表』の各部門に 分けて集計した結果が次の表9-10と表9-11である。

119-9は、『毎日』は第89.5の表9-3、表9-4と、『文学』は第88.5の表8-4、表8-5から作成し た。

表9-10 「急に」の「独自の語」の出現頻度

『分類語彙表』における部門

ジャンル 抽象的関係 人間活動 自然現象 合計

『毎日』 7 6 0 13

『文学』 59 47 45 151 合計 66 53 45 164

表9-11 「突然」の「独自の語」の出現頻度

『分類語彙表』における部門

ジャンル 抽象的関係 人間活動 自然現象 合計

『毎日』 69 33 6 108

『文学』 112 65 25 202 合計 181 98 31 310

表9-10のジャンルによる「急に」の「独自の語」の分布について、カイ二乗検定を用い て検定したところ(χ2=5.35 、p=0.068 p>0.05)、有意差は認められなかった。 また、

表9-11のジャンルによる「突然」の「独自の語」の分布についても、カイ二乗検定を用い て検定したところ(χ2=4.1918、p=0.123 p>0.05)、有意差は認められなかった。

また、ジャンルごとに、「急に」「突然」の「独自の語」はどのような出現比率と意味分 布をするか比較・検討する。

ジャンル別に現れる両副詞の「独自の語」の意味分布について、『分類語彙表』の各部門 の出現比率をまとめたものが次の表9-12である。

表9-12 ジャンル別の「独自の語」の出現比率

ジャンル 副詞 抽象的関係 人間活動 自然現象 合計

『毎日』 急に 53.8% 46.2% 0.0% 100.0%

突然 63.9% 30.6% 5.6% 100.0%

『文学』 急に 39.1% 31.1% 29.8% 100.0%

突然 55.4% 32.2% 12.4% 100.0%

表9-12から、『毎日』において、両副詞の部門別の出現比率を比較すると、「急に」の

「独自の語」は「人間活動」部門に多く現れ、「突然」の「独自の語」は「抽象的関係」「自 然現象」部門に多く現れる。一方、『文学』では、両副詞の部門別の出現比率について、「急 に」の「独自の語」は「自然現象」部門に多く現れ、「突然」の「独自の語」は「抽象的 関係」「人間活動」部門に多く現れることが分かる。

さらに、次の表9-13は、表9-12のジャンル別に現れる両副詞の出現比率を比較し、出 現比率の高い部門に「○」を付けたものである。

表9-13 ジャンル別の「独自の語」の出現傾向

ジャンル 副詞 抽象的関係 人間活動 自然現象

『毎日』 急に ○

突然 ○ ○

『文学』 急に ○

突然 ○ ○

表9-13から、「○」のついた「独自の語」の出現傾向はジャンル別に異なる傾向が現れ る。本論文の研究対象である他の類義関係にある副詞(「やっと」「ようやく」と「ついに」

「とうとう」)の「独自の語」の意味分布はある一定の傾向が見られたが、「急に」「突然」

には一定の傾向は見られない。

9.7.3.2 ジャンルによる「独自の語」の意味分布

ここでは、ジャンルによる「急に」「突然」の「独自の語」の相違について見る。

まず、「急に」は「抽象的関係」部門において、『毎日』では人の感情の変化、人の移動 や存在場所の変化、物事の状態の変化を表している。これらには事態の成立までの進行過 程の意味合いが含まれている。『文学』では全体的に事態が成立までの進行過程が含まれ ており、連続する時間の中に展開していく事態を表すことが多かった。また、人の状態の 変化、人の気持ちや感情の変化、人の言語行為、環境や状況の変化を表している。このこ とから、「急に」は「抽象的関係」部門において、幅広い意味範囲に現れ、人と物事の状 態の変化が多く現れた。また、その変化は連続する時間の中で展開していく進行過程が著 しく見られることが分かる。

また、「人間活動」部門において、『毎日』では感覚や欲望、期待に現れ、『文学』では 人の感情を表すものが多かった。また、相手に影響を及ぼす人の言語行為を表す用例が見 られた。

さらに、「自然現象」部門において、『毎日』では「独自の語」が現れず、『文学』では人 の言語行為、人の状態の変化、聴覚的な事態の変化、状況の変化を表しており、これらは 事態に連続する過程が含まれている。

次に、「突然」は、まず「抽象的関係」部門において、『毎日』では人の言語行為、人の 移動や存在場所の変化、人の状態の変化、ある状況の変化、人の思考の変化を表しており、

また、事態が成立する時と成立前が断絶している用例が多かった。

『文学』では全体的に事態の成立した時と成立する前に断絶がある用例が多く見られ、

物事の状態の変化、人の存在場所の変化、人の環境や状況の変化、人の気持ちや感情の変 化を表すことが分かった。

また、「人間活動」部門において、『毎日』では人の状態の変化、人の感情の変化、言語 行為、人の動作(相手に影響を及ぼす)を表している。『文学』では人の言語行為(相手 に影響を及ぼす働きを持つ)、人の動作や人の状況の変化、人の思考を表している。

さらに、「自然現象」部門において、『毎日』では聴覚的事態の変化、状況の変化、人の 言語行為を表し、また、事態が成立する時と成立前が断絶している用例が見られた。

『文学』では聴覚的な事態の変化、状況の変化、人の状態の変化を表しており、事態の 成立の時と成立する前に断絶が見られた。

以上のように、「急に」「突然」の「独自の語」は、ジャンルごとにその意味分布の特徴 から大きな異なりは見られなかった12

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