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本章のまとめ

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 169-172)

第 9 章 新聞データに見られる「急に」 「突然」の相違と、

9.8 本章のまとめ

『文学』では全体的に事態の成立した時と成立する前に断絶がある用例が多く見られ、

物事の状態の変化、人の存在場所の変化、人の環境や状況の変化、人の気持ちや感情の変 化を表すことが分かった。

また、「人間活動」部門において、『毎日』では人の状態の変化、人の感情の変化、言語 行為、人の動作(相手に影響を及ぼす)を表している。『文学』では人の言語行為(相手 に影響を及ぼす働きを持つ)、人の動作や人の状況の変化、人の思考を表している。

さらに、「自然現象」部門において、『毎日』では聴覚的事態の変化、状況の変化、人の 言語行為を表し、また、事態が成立する時と成立前が断絶している用例が見られた。

『文学』では聴覚的な事態の変化、状況の変化、人の状態の変化を表しており、事態の 成立の時と成立する前に断絶が見られた。

以上のように、「急に」「突然」の「独自の語」は、ジャンルごとにその意味分布の特徴 から大きな異なりは見られなかった12

『毎日』では両副詞と共起する共通の述語「なる」「する」「言う」の出現比率を合わせ ると、「急に」が42.4%、「突然」が33.8%であった。

一方、『文学』における「なる」「する」「できる」「言う」の出現比率を合わせると、「急

に」が41.7%、「突然」が24.5%である。このことから、「急に」の方が「突然」より少

ない語彙が高頻度で用いられていることが分かった。また、『毎日』における「急に」と 共起する「増える」から、事態が連続して成立していることが分かり、『毎日』『文学』

における「突然」と共起する「現れる」「倒れる」から、事態の成立とその前の事態が断絶 していることが分かった。

また、『毎日』において、両副詞の部門別の出現比率を比較すると、「急に」の「独自の 語」は「人間活動」部門に多く現れ、「突然」の「独自の語」は、「抽象的関係」「自然現象」

部門に多く現れた。

一方、『文学』では、両副詞の部門別の出現比率は、「急に」の「独自の語」は「自然現 象」部門に多く、「突然」の「独自の語」は「抽象的関係」「人間活動」部門に多く現れる ことが分かった。ジャンルにより両副詞の出現傾向が異なっていることが明らかになった。

さらに、両副詞の「独自の語」の意味分布について、ジャンルごとに明らかになったこ とは、以下の通りである。

「抽象的関係」部門から述べると、「急に」の「独自の語」は、『毎日』では人の感情・

存在場所・物事の状態の変化を表しているが、事態の成立までの進行過程の意味合いが含 まれている。『文学』でも人の状態・感情・言語行為・状況の変化を表しているが、『毎日』

と類似して全体的に事態が連続する時間の中で展開していく進行過程の意味が含まれてい ることが分かった。『文学』の方に現れる事態は多かったものの、両ジャンルに共通して現 れる事態が多く、成立するまでに連続する進行過程の意味が含まれている点も共通してい ることが明らかになった。

一方、「突然」の「独自の語」は、ジャンルによる違いは見られず、『毎日』『文学』にお いて人の言語行為、人の存在場所・人の状態・ある状況・人の思考の変化など幅広い意味 に使われており、全ての事態は成立とその前が断絶している点で共通していることが明ら かになった。

次に、「人間活動」部門において、「急に」の「独自の語」は、『毎日』では人の感覚、感 情を表しており、『文学』では人の感情、相手に影響を与える人の言語行為を表している。

一方、「突然」の「独自の語」は、『毎日』では人の感情の変化、言語行為、相手に影響 を与える人の動作を表し、『文学』では相手に影響を与える人の言語行為、人の動作や行動、

人の状況の変化、人の思考を表している。

「人間活動」部門において、「急に」「突然」の「独自の語」はジャンルによる違いはな く、「突然」の「独自の語」が、広い意味範囲に使われていることが明らかになった。

また、「自然現象」部門において、「急に」の「独自の語」は、『文学』では人の言語行為、

人の状態の変化、聴覚的な事態の変化、状況の変化を表しており、事態に連続する過程が 含まれている。『毎日』では「独自の語」は現れなかった。

一方、「突然」の「独自の語」は、『毎日』では聴覚的事態の変化、状況の変化、人の 言語行為を表し、事態が成立する時と成立前が断絶していることが分かった。「自然現象」

部門において、事態の成立が連続する進行過程にあるという「急に」の「独自の語」の特 徴と、事態の成立とその前が断絶している「突然」の「独自の語」の特徴は「抽象的関係」

部門にも現れ、両部門が類似していることが分かった。

また、聴覚的な事態の変化において、両副詞は共通して現れているものの、「急に」は 存在していた音や声の音量が小さくなることを表わしているが、「突然」は存在していな かった声や音が突発的に生じることを表わしている点で相反的な意味が現れていることが 明らかになった。

森田(1989)は、「突然」の意味用法について「行為・作用・現象などが前触れなしに 急に起こるさまに用いる。『予知なしに行う』の意識はない。自然現象・無意識行為・意 識的な行為、いずれも可能で、ある瞬間に成立する動作・作用・現象に使う。『急に』の ような、時間的幅の中で進行するあわただしい変化を表わさない」と述べているが、「自 然現象・無意識行為・意識的な行為、いずれも可能」という指摘は「突然」に限らず、「急 に」も似ていることが明らかになった。

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章 結章

本章では、第4章から第9章までの研究結果をまとめ、注目したい結果、類義語の研究 への応用、今後の課題について述べる。

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