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開発途上国のフィールドでの適用に向けて

第6章 結論

6.2 開発途上国のフィールドでの適用に向けて

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(11)援助の投入を行うと、十分な予算と、対策実施に投入できるリソースの増加

(国内リソースのみならず海外のリソースも利用可能となると想定)により、

送配水管や給水管の更新を多く実施できるようになるため、給水管や送配水管 からの漏水を大幅に削減することができる。また、援助資金を借り入れるため の償還財源は、見掛け損失を削減することで得られる水道料金の増収で十分ま かなえることが分かった。 これより、投入できる予算額に応じて、まず自己予 算の場合は見掛け損失対策や漏水の探知・修理から開始し、水道料金の増収に よって少額の借り入れが できるようになったら、援助を借り入れて給水管の更 新による漏水削減を本格化させ、さらに水道料金収入が増えて償還財源が増加 したら、より多額の援助の借り入れを行い、送配水管更新を本格化させる、と いう段階的な無収水対策を講じることで、大幅な無収水率の低下が可能である ことが示唆された。

(12)上記の点に伴い、開発援助の役割としては、 まず技術協力によって自己資金 でも対応可能な見掛け損失対策や漏水探知・修理に関する能力強化に取り組み、

無収水の削減によって料金収入が増加し、返済原資が確保できるようになった 後に、資金協力によってコストのかかる管路の更新を支援するという段階的な 組み合わせが考えられる。 また、資金協力も、まずは少額の融資によって給水 管の更新を支援し、次いでより多額の費用がかかる送配水管の更新へと進むこ とが効果的と考えられる。 既に独自の対策で見掛け損失対策や漏水探知・修理 に取り組んでいて、財務状況が良好な水道事業体に対しては、資金協力から支 援を開始すればよいと考えられ、逆にそれらの優先度の高い対策にも着手でき ていない水道事業体に対しては、まずそれらの対策を実施する能力が育成でき るような支援を行うことが先決であると言 える。これより、無収水対策に対す る援助の形態を選択する際には、対象となる水道事業体の対策実施状況、無収 水率やその構成、債務返済能力等を見極めることが必要であると考えられる。

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ついては、以下のように考えられる。

(1)原単位やパラメーターにフィールドの実測データ等を用いることによって、実 効性のある無収水対策計画を策定することができる。

(2)追加的な水資源開発が困難な水道事業体では、見掛け損失よりも漏水などの実 損失の削減を優先すると考えられる。また、費用便益比の最大化を目指した場 合など、目的関数を変えた場合には最適な対策の選択も変化すると考えられる。

水道事業体の方針に合わせて目的関数を設定した検討が可能である。

(3)本研究では都市の規模を100万人で一定とし、施設の拡張も考慮に入れていない が、途上国においては都市化が進行しており、 水道施設も常に拡張が求められ る状況であることから、そのような途上国の状況を考慮した際にどのような無 収水対策の選択が望ましいか、今後の分析が必要である。 施設拡張への投資と 無収水削減への投資をどのように配分することが望ましいのか分析するモデル も検討が可能であろう。

(4)途上国の水道事業体においては、入手可能なデータが限られているが、施設条 件に対する最適な無収水対策の選択について分析を深めることにより、比較的 入手しやすいデータから最適な無収水対策の選択を示すことができれば、意思 決定支援のためのツールとして有用であろう 。

(5)途上国の水道事業体において入手可能なデータが限られている ことを考慮する と、フィールドで適用するためには、目的関数の計算式を簡素化し、使用する パラメーターを 少なく、また途上国でも入手、あるいは推定が容易なものとす る必要があろう。

(6)自己予算で対策が可能で短期的に成果が出る対策と、援助の投入が必要と考え られる対策があり、前者のみでは対策効果に限界があることが分かっ た。この2 つのタイプの対策をどのような順序やタイミングで実施するのが最適なのか、

連続的な対策の遷移として考えるべきなのか、それとも異なるサブシステム と して捉えるべきなのかなど、無収水対策の選択のあり方についても、より考察 を深めることができるであろう。

(7)無収水対策効果の減衰 は対策の選択や順序に影響しているが、本研究では減衰 効果の感度分析は行っていない。メーター故障率や管路の事故率が変化した場 合の影響については、今後考察を深める必要がある。

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(8)本研究では、自己予算で対策を実施する場合と、援助の投入を想定して予算投 入率を大幅に増やした場合を検討したが、自己予算と援助資金借り入れに対す る返済のいずれの場合であっても、毎年の水道料金収入に対して一定の割合を 投入するとした場合に、どのような資金調達方法が最適となるのか、また無収 水対策の成果による水道料金収入の増収効果も加味した場合に、どのような資 金調達とどのような対策の選択によって無収水対策を実施することが最適とな るのかなど、自己予算の投入と援助の投入を一体的に扱うことが可能なモデル への拡張も検討可能であろう。例えば、自己予算で見掛け損失対策と漏水探知・

修理を一定期間実施し、その後援助によって給水管の更新や送配水管の更新を 実施するという一連のプロセスを想定した場合に、無収水率や費用対効果がど のように遷移するか、シミュレ ーションを行うことが考えられる。

(9)無収水対策の集中的な実施によって無収水率をいったん減少させても、管路や メーターの老朽化が進むと、再び無収水率は増加に転じる。下げた無収水率を 維持するために必要な投資額を算定するなど、無収水率を削減するフェーズと、

下げた無収水率を維持するフェーズを、連続的に扱うことが可能なモデルへの 拡張も検討が必要であろう。

(10) 本研究 では、 費用 便益比 が1を下 回ら ない、 ある いは内 部収益 率(IRR)

が一定の値以上となる、などの経済性に関する制約条件は設けていない。過剰 な投資を避けるためには、経済性 に関する制約条件を組み込むことを検討する 必要がある。

(11) 本研究では、給水管の更新や送配水管の更新においては、漏水の有無に拘 わらず対策実施数量が決定できるため、この部分では漏水が発生する前の予防 的対策という側面が含まれているが、メーターに関しては故障しているメータ ーのみを更新するという設定にしているため、予防的対策は検討対象となって いない。実際の対策においては、当初は対症療法的な対策に注力することにな るが、徐々に予防的対策に移行することが必要になると考えられ、特に一度低 下させた無収水率を維持するためには、予防的対策を計画的に実施することが 重要となる。選択する対策を 予防的対策まで拡張した場合のモデルの構築も、

今後検討する必要がある。

159 1.検討の目的

開発途上国においては水道メーターの故障が多いことが問題となっている。これは、

不十分な浄水処理や水道管の老朽化によって、水道水中に泥、鉄錆、バクテリアなどが 含まれることが多く、これらの異物が水道メーター内に堆積したり付着したりして故障 を引き起こすことや、間欠給水であるために空気が混入し、軸受部の摩耗や損傷、水撃 圧などが発生して故障の原因となること(国際厚生事業団. 1999)、安価で質が低く故障 しやすい水道メーターが購入されること、などが原因となっている。

メーター の更新については、①一定期間毎に全戸訪問調査 で水道メーターを一斉点検 し、故障メーターを更新する場合と、②故障の有無に拘わらず全ての水道メーターを一 定期間毎に更新する場合(全数更新)が考えられる。そこで、こ の2ケースを 比較検討し、

どちらが経済的に優位であるか分析した。

2.メーター更新モデルの構築

(1)モデルの考え方

水道メーターが故障している場合、実際の使用水量が計量できないため、定額で水道 料金の請求が行われ、実際の使用水量よりも定額での料金請求のベースとなる見なし使 用水量の方が小さいことが一般的である。この差分が計量誤差となり、無収水量となる。

水道メーターを更新せずに放置すると、逸失利益( 無収水による経済的 損失) が増大す る。一方、故障した水道メーター の更新に要するコストが、経済的コストとなる。逸失 利益と経済的コストの和が最小となるような水道メーター更新頻度が、経済的に最適と なる。

(2)逸失利益

水道メーター故障に起因する 無収水による逸失利益は以下の式で表される。

𝐶𝐿

𝑡

= 𝑈𝑃 ∙ 𝐿𝑀

𝑡

CLt:t年の無収水による逸失利益(円/年)

t:基準年からの経過時間(年)