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第5章 無収水対策の選択に関する考察

5.3 施設条件の影響

水道施設の条件が変化した場合に 、無収水対策の選択に変化があるかどうか検討する 。 違法接続率の初期値に関して 、1%の場合、5%の場合(基本シナリオ) 、10%の場合 の3つのシナリオ を設定して 計算した 。5年分の 無収水対策の合計投資額の対策別内訳構 成比を表 5.8と図 5.8に示す。予算投入率が10%の場合と5%の場合は、違法接続率 の初期値が大きくなるにつれて 、違法接続対策への投資も比例して大きくなり 、その分

119

送配水管更新や給水管更新の投資が減少することが明らかとなった 。一方、予算投入率 が1% の場 合 は違 法 接続 の 初 期 値が1%か ら5% に 増加 す ると 違 法 接続 対 策 への 予 算配 分 も比例して増加するが、違法接続の初期値が5%から10%に増加しても、違法接続対策へ の予算配分は変わらなかった。これは、予算投入率が1%の場合、充当可能な予算が少な いため、違法接続の増加に対して 対策予算が追い付か ないためと考えられる。違法接続 対策は図 5.4で示した とおり優先度が高いため 、違法接続の初期値が大 きければそれ に応じた対策予算が配分されると考えられるが 、予算が少ない場合にはそのような対応 が困難になることが明らかと なった。これは、途上国においては予算制約が取り得る対 策に大きく影響しているという実態に整合している。

120

表 5.8 違法接続率初期値の変化に伴う対策構成比の変化

(単位:%)

予算投入率 10%

予算投入率 5%

予算投入率 1%

違法接続初期値 違法接続初期値 違法接続初期値

1% 5% 10% 1% 5% 10% 1% 5% 10%

メーター更新 5 5 5 11 11 11 50 47 47 新規メーター設置 23 23 23 47 47 47 33 0 0 違法接続対策 1 6 11 2 11 22 11 47 47 送配水管更新 44 39 34 0 0 0 0 0 0 送配水管漏水探知・修理 0 0 0 1 1 1 3 3 3 給水管更新 26 26 26 39 30 19 0 0 0 給水管漏水探知・修理 0 0 0 0 0 1 3 3 3

予算投入率 10% 予算投入率5% 予算投入率1%

違法接続率初期値 メーター更新(i=1)

新規メーター設置(i=2)

違法接続対策(i=3)

送配水管更新(i=4)

送配水管漏水探知・修理 (i=5)

給水管更新(i=6)

給水管漏水探知・修理 (i=7)

対策投資費用割合

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1% 5% 10% 1% 5% 10% 1% 5% 10%

図 5.8 違法接続率初期値の変化に伴う対策構成比の変化

121

メーター設置率の初期値 を変化させた場合の対策予算の構成比の変化 も、違法接続の 初期値を変化させた場合と 同様の傾向を示した。表 5.9と図 5.9はメーター設置率の 初期値を 、100%、75%(基本シナリオ) 、50%と変化させた場合の5年分の対策の合計 投資額の対策別内訳構成比であり 、予算投入率が5%、10%と大きい場合はメーター設置 率の初期値が低いほど新規 メーターの設置を積極的に進めることが最適 であるが、予算 投入率1%のように予算制約が厳しい場合には 、メーター設置率の初期値が低くても 新規 メーターの設置が困難となる結果であった 。また、メーター設置率の初期値が大きいと、

設置されているメーターの数が多いことになるため、メーター更新の需要が増加し、特 に予算投入率が1%と小さい時には、メーター設置率の初期値が大きいほどメーター更新 に予算を配分することが最適となる。

表 5.9 メーター設置率初期値の変化に伴う対策構成比の変化

(単位:%)

予算投入率 10%

予算投入率 5%

予算投入率 1%

メーター設置率 初期値

メーター設置率 初期値

メーター設置率 初期値 100% 75% 50% 100% 75% 50% 100% 75% 50%

メーター更新 7 5 4 13 11 8 65 47 32 新規メーター設置 0 23 47 0 47 80 0 0 6 違法接続対策 6 6 6 11 11 11 30 47 56 送配水管更新 61 39 17 22 0 0 0 0 0 送配水管漏水探知・修理 0 0 0 1 1 1 3 3 3 給水管更新 26 26 26 52 30 0 0 0 0 給水管漏水探知・修理 0 0 0 0 0 1 3 3 3

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一方、送配水管からの漏水に影響すると考えられる送配水管総延長と送配水管の管種 は、送配水管の漏水探知・修理の対策数量には影響するものの 、送配水管更新の対策数 量には影響しな かった。表 5.10と図 5.10は、送配水管総延長を3,000km、5,000km

(基本シナリオ)、7,000kmと変化させた場合の、5年間の無収水対策予算の対策別構成 比を示したものである。 送配水管更新は予算投入率が多 い場合のみ 実施されるため、予 算投入率10%の場合の計算結果を示す。 これより、送配水管総延長を変化させても、対 策予算の構成比にほとんど変化がないことが分かる。

予算投入率10% 予算投入率 5% 予算投入率 1%

メーター設置率初期値 メーター更新(i=1)

新規メーター設置(i=2)

違法接続対策(i=3)

送配水管更新(i=4)

送配水管漏水探知・修理 (i=5)

給水管更新(i=6)

給水管漏水探知・修理 (i=7)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

100% 75% 50% 100% 75% 50% 100% 75% 50%

対策投資費用割合

図 5.9 メーター設置率初期値の変化に伴う対策構成比の変化

123

表 5.10 送配水管総延長の変化に伴う対策構成比の変化

(単位:%)

予算投入率10%

送配水管総延長

3,000km 5,000km 7,000km

メーター更新 5 5 5

新規メーター設置 23 23 23

違法接続対策 6 6 6

送配水管更新 39 39 39 送配水管漏水探知・修理 0.3 0.3 0.3 給水管更新 26 26 26 給水管漏水探知・修理 0.2 0.2 0.2

ただし、送配水管総延長の変化は、送配水管漏水探知・修理の 対策数量に影響を与え る。送配水管漏水 探知・ 修理の対策数量は、存在する 漏水箇所数を上限とすることにな り小さいことから 、予算に占める対策費用の割合が小さいため 、対策費用 の構成比 でみ ると施設条件の変化の影響が表れにくい 。そのため、5年間の対策数量合計が送配水管総 延 長の 変 化 によ っ て ど の よ うに 変 化 する か を 計 算 し 、送 配 水 管総 延 長 が5,000kmの 場 合

(基本シナリオ)を1とした場合の変化率で示した結果を表 5.11に示す。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

3,000km 5,000km 7,000km

対策投資費用割合

送配水管総延長

メーター更新(i=1)

新規メーター設置(i=2)

違法接続対策(i=3)

送配水管更新(i=4)

送配水管漏水探知・修理 (i=5)

給水管更新(i=6)

給水管漏水探知・修理 (i=7)

図 5.10 送配水管総延長の変化に伴う対策構成比の変化(予算投入率 10%)

124

表 5.11 送配水管総延長の変化に伴う 5年間の対策実施数量の変化率

送配水管 総延長

メーター 更新

(個)

メーター 設置

(箇所)

違法 接続 対策

(箇所)

配水管 更新

(m)

配水管 漏水 探知・

修理

(箇所)

給水管 更新

(接続)

給水管 漏水 探知・

修理

(接続)

3,000km

対策実施数量 46,357 50,000 12,000 89,153 464 49,926 1,567 変化率 1.0 1.0 1.0 1.0 0.6 1.0 1.0 5,000km 対策実施数量 48,742 50,000 12,000 88,295 777 49,926 1,567

変化率 - - - - 7,000km 対策実施数量 46,375 50,000 12,000 88,627 1,090 49,926 1,567

変化率 1.0 1.0 1.0 1.0 1.4 1.0 1.0

これより、送配水管漏水 探知・修理の対策数量のみが、送配水管総延長が5,000kmの場 合を1として、3,000kmの場合は0.6、7,000kmの場合は1.4と送配水管総延長の増減に比例 して変化する が、他の対策は ほとんど対策実施数量に 変化がな いことが分かった。これ は、送配水管総延長が長くなることにより 、漏水箇所数が増えるため 、漏水探知・修理 に優先的に対応することが最適解となるためであると考えられる 。

送配水管の管種 は、基本シナリオにおいては プラスチック 管である塩ビ管(VP)とし たが、これを金属管である鋳鉄管(CIP)とした場合の対策実施数量の変化を 表 5.12 に示す。送配水管が金属管になると、 プラスチック管に比べて 漏水箇所数が大幅に減少 するため 、送配水管漏水 探知・修理よりも、他の対策の方が優先される結果となった 。 予算投入率10%の場合に金属管では樹脂管に比べて送配水管更新延長が大幅に減少する が、これは対策コストの単価が金属管の方が高いためである。

125

表 5.12 送配水管の管種の変化に伴う5年間の対策実施数量の変化

予算 投入率

送配水管の 管種

メーター 更新

(個)

メーター 設置

(箇所)

違法 接続 対策

(箇所)

送配水 管更新

(m)

送配水 管漏水 探知・

修理

(箇所)

給水管 更新

(接続)

給水管 漏水 探知・

修理

(接続)

10% 樹脂管 48,742 50,000 12,000 88,295 777 49,926 1,567 金属管 48,742 50,000 12,000 53,366 0 49,926 1,567

5% 樹脂管 49,067 50,000 12,000 0 782 29,084 1,649

金属管 49,056 50,000 12,000 0 0 29,646 1,646

1% 樹脂管 42,728 0 10,065 0 782 0 1,794

金属管 42,638 0 10,707 0 0 0 1,794

平均水圧を20m、40m( 基本シナリオ)、60mと 変化させた場合の、5年 間の対策の合 計投資額の対策別内訳構 成比は 図 5.11に示す とおりであり、平均水圧 を変化させて も構成比には変化が生じなかった。 平均水圧が大きくなれば漏水量が増え 、実損失への 対策の優先度が上がると考えられるが 、見掛け損失対策を上回るまでの優先度にはなら ず、最適な対策選択は変わらなかったものと考えられる 。

ただし、本研究では管路の敷設後経過年数の初期設定を 、送配水管が10年、給水管が5 年として おり、より老朽化が進んだ管路が含まれるような初期設定とした場合 は、実損 失水量が当初より多いことになり、平均水圧 もより大きく影響することが予想され る。

なお、本研究のモデルでは、平均水圧は実損失水量のみに影響するものとして目的関 数を構築している。平均水圧が高いと 水道の給水栓からの水の出が良くなるため、違法 接続やメーター未設置のように 、水使用量 の多寡が水道料金に影響しないという環境下 で水道水を使用できる場合は、水使用量が増加し、無収水量原単位の増加につながる可 能性があ るが、この点は考慮していない。しかし 、上述の点は 違法接続対策とメーター 設置とい う優先度の高い対策において、 さらに 優先度を上げる方向に働くため 、他の対 策との優先度の逆転は生じないものと 考えられる 。

以上のとおり、予算制約と対策の種類によって、 施設条件の変化が対策実施数量や対 策予算の構成比に影響を 与える場合とほとんど与えない場合があることが明らかとなっ た。予算制約に応じた対 策の優先度が影響してお り、 図 5.4において優 先度が変化し