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開発途上国における水道事業体の無収水削減手法に関する研究 利用統計を見る

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(1)

関する研究

著者

松本 重行

学位授与大学

東洋大学

取得学位

博士

学位の分野

国際地域学

報告番号

32663甲第423号

学位授与年月日

2017-09-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00009007/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

2017 年度

東洋大学審査学位論文

開発途上国における水道事業体の無収水削減手法に関する研究

国際地域学研究科 国際地域学専攻 博士後期課程

(3)

1

目次 ... 1

表目次 ... 4

図目次 ... 7

略語表 ... 9

第1章

序論 ... 10

1.1

研究の背景 ... 10

1.1.1

開発途上国の水道に関する問題 ... 10

1.1.2

無収水対策の重要性 ... 12

1.2

研究の目的と意義 ... 13

1.2.1

研究の目的 ... 13

1.2.2

研究の意義 ... 13

1.3

本論文の構成 ... 13

第2章

途上国における無収水の問題と先行研究 ... 15

2.1

無収水に関する問題の概要 ... 15

2.1.1

無収水の定義 ... 15

2.1.2

無収水の問題 ... 18

2.1.3

無収水対策の概要 ... 21

2.2

無収水削減手法の最適化に関する先行研究 ... 23

2.3

国際協力機構(JICA)による実践 ... 28

2.3.1

国際協力機構による水道分野に対する協力 ... 28

2.3.2

無収水対策に対する協力の実績 ... 31

2.3.3

主な取り組み内容 ... 33

2.3.4

課題 ... 39

第3章

無収水対策選択モデルの構築 ... 40

3.1

モデルの全体構成と考え方 ... 40

3.2

パラメーター一覧 ... 43

3.3

検討対象とする無収水の区分と対策 ... 45

3.4

目的関数の設定 ... 47

(4)

2

3.4.3

メーター未設置による認定誤差 ... 49

3.4.4

非認定給水量(違法接続) ... 49

3.4.5

送配水管からの漏水 ... 50

3.4.6

給水管からの漏水 ... 51

3.5

制約条件式の設定 ... 53

3.5.1

制約条件式の構成 ... 53

3.5.2

メーター故障による計量誤差 ... 53

3.5.3

メーター未設置による認定誤差 ... 54

3.5.4

非認定給水量(違法接続) ... 54

3.5.5

送配水管からの漏水 ... 54

3.5.6

給水管からの漏水 ... 55

3.5.7

予算制約 ... 55

第4章

途上国の大都市を想定した入力値の設定 ... 56

4.1

パラメーター入力値の設定 ... 56

4.2

対象とする都市の設定 ... 60

4.3

目的関数に使用するパラメーター ... 60

4.3.1

メーター故障率に関するパラメーター ... 60

4.3.2

見掛け損失の無収水量原単位に関するパラメーター... 64

4.3.3

管路事故率に関するパラメーター ... 67

4.3.4

漏水 1 か所当たりの漏水量計算に使用するパラメーター ... 72

4.4

施設条件 ... 76

4.4.1

管種 ... 76

4.4.2

j 年の送配水管延長 ... 77

4.4.3

j 年時点での違法接続数 ... 79

4.4.4

j 年時点における材齢 t 年の稼働メーター数... 79

4.4.5

j 年のメーター未設置数 ... 79

4.4.6

平均水圧 ... 79

4.4.7

j 年の送配水管の最も古い材齢 ... 81

4.4.8

j 年のメーターの最も古い材齢 ... 81

4.4.9

j 年の給水管の最も古い材齢 ... 81

4.4.10

1 接続当たりの給水管単位延長 ... 81

4.5

対策コストの単価 ... 81

4.5.1

メーター更新の単価 ... 81

4.5.2

メーター設置の単価 ... 82

4.5.3

違法接続対策の単価 ... 82

4.5.4

送配水管更新の単価 ... 83

(5)

3

4.5.7

給水管漏水探知・修理の単価 ... 86

4.6

年間対策実施上限数量 ... 88

4.6.1

メーター更新の年間対策実施上限数量 ... 88

4.6.2

メーター新規設置の年間対策実施上限数量 ... 88

4.6.3

違法接続対策の年間対策実施上限数量 ... 88

4.6.4

送配水管更新の年間対策実施上限数量 ... 89

4.6.5

送配水管漏水探知・修理の年間対策実施上限数量 ... 90

4.6.6

給水管更新の年間対策実施上限数量 ... 90

4.6.7

給水管漏水探知・修理の年間対策実施上限数量 ... 91

4.7

予算制約 ... 91

4.7.1

自己予算を想定した場合 ... 91

4.7.2

援助資金の投入を想定した場合 ... 94

第5章

無収水対策の選択に関する考察 ... 98

5.1

整数計画法を用いた最適化計算 ... 98

5.2

予算制約の影響 ... 101

5.3

施設条件の影響 ... 118

5.4

短期的対策と中期的対策の比較 ... 126

5.5

目的関数を変えた場合の影響 ... 131

5.6

無収水削減量原単位に関する感度分析 ... 135

5.7

無収水削減対策単価に関する感度分析 ... 137

5.8

援助の投入に関する検討 ... 140

第6章

結論 ... 153

6.1

結論 ... 153

6.2

開発途上国のフィールドでの適用に向けて ... 156

補論:メーター更新に関する検討 ... 159

1.検討の目的 ... 159

2.メーター更新モデルの構築 ... 159

3.パラメーター入力値の設定 ... 161

4.メーター更新の最適化に関する考察 ... 162

参考文献 ... 164

謝辞 ... 170

(6)

4

表 2.1 国際水協会(IWA)による水収支表 ... 15

表 2.2 JICA の技術協力プロジェクトの対象都市・パイロット地区にお

ける無収水率 ... 19

表 2.3 主な無収水対策 ... 22

表 2.4 2011 年度から 2013 年度における JICA の水供給・衛生分野の経

費実績 ... 30

表 2.5 2011 年度から 2013 年度における JICA の水供給・衛生分野の案

件数実績 ... 30

表 2.6 無収水対策を含む技術協力プロジェクト(2005~2015 年度) 32

表 2.7 JICA の技術協力プロジェクトの事前の調査における把握情報 35

表 2.8 JICA の技術協力プロジェクトにおける活動内容の分析結果 .... 37

表 3.1 パラメーター一覧 ... 43

表 3.2 配水量分析表 ... 46

表 3.3 検討対象とする無収水の区分と対策 ... 46

表 4.1 パラメーター入力値一覧... 56

表 4.2 技術協力プロジェクトの調査におけるメーター故障率 ... 63

表 4.3 ワイブル分布のパラメーターの設定値 ... 63

表 4.4 アジア 11 都市、南部アフリカ 30 都市の 1 接続当たり水使用量65

表 4.5 「インド国ゴア州無収水対策プロジェクト」パイロット地区に

おける ... 67

表 4.6 既往研究における仕様に関する補正係数 C1 の設定 ... 69

表 4.7 既往研究における口径に関する補正係数 C2 の設定 ... 69

表 4.8 既往研究における地盤条件に関する補正係数 C3 の設定 ... 71

表 4.9 漏水量原単位 ... 75

表 4.10 ソロモン諸島の事例による漏水修理に要する時間 ... 75

表 4.11 JICA の技術協力プロジェクト対象都市における管種の調査事

例 ... 76

表 4.12 アフリカ 30 都市のデータに基づく配水管延長 ... 78

表 4.13 南部アフリカ 30 都市における水圧データ ... 80

表 4.14 JICA の無償資金協力準備調査における配水管敷設費用の積算

例 ... 83

表 4.15 JICA の技術協力プロジェクトにおける配水管の漏水修理費用

の例 ... 85

表 4.16 JICA の技術協力プロジェクトにおける給水管の漏水修理費用

(7)

5

施工延長の検討例 ... 89

表 4.18 アジアの主要都市における水道料金の水準 ... 92

表 4.19 無収水量の初期値(千 m

3

/年) ... 93

表 4.20 初期条件における料金収入の計算 ... 93

表 4.21 8.8 億円/年(予算投入率 30%)の援助資金借入を行った場

合の返済額 ... 96

表 4.22 27 億円/年(予算投入率 100%)の援助資金借入を行った場

合の返済額 ... 97

表 5.1 予算投入率 1%の時の対策実施数量、配分予算割合、予算投入

額 ... 102

表 5.2 予算投入率 5%の時の対策実施数量、配分予算割合、予算投入

額 ... 103

表 5.3 予算投入率 10%の時の対策実施数量、配分予算割合、予算投入

額 ... 104

表 5.4 5 年間の対策実施可能数量上限値(基本シナリオ) ... 108

表 5.5 費用便益比(B/C) ... 112

表 5.6 費用便益比(B/C)算出根拠 ... 113

表 5.7 内部収益率(IRR)の算出結果 ... 116

表 5.8 違法接続率初期値の変化に伴う対策構成比の変化 ... 120

表 5.9 メーター設置率初期値の変化に伴う対策構成比の変化 ... 121

表 5.10 送配水管総延長の変化に伴う対策構成比の変化 ... 123

表 5.11 送配水管総延長の変化に伴う 5 年間の対策実施数量の変化率124

表 5.12 送配水管の管種の変化に伴う 5 年間の対策実施数量の変化 125

表 5.13 対策投資費用割合に関する 5 年後の最適化と 20 年後の最適化

の比較 ... 131

表 5.14 無収水対策の単位費用当たりの無収水削減効果 ... 132

表 5.15 5 年目の無収水量を最小化した場合と単位費用当たりの無収

水削減効果が高い対策から順次実施した場合の対策数量 ... 133

表 5.16 5 年目の無収水量を最小化した場合と単位費用当たりの無収

水削減効果が高い対策から順次実施した場合の 5 年後の無収水削減量134

表 5.17 無収水削減量原単位に関する変化率 ... 136

表 5.18 無収水削減対策単価に関する変化率 ... 138

表 5.19 対策単価を変化させた場合の 5 年間の対策数量の変化 ... 139

表 5.20 8.8 億円/年(予算投入率 30%)の援助を投入した時の対策

実施数量、配分予算割合、予算投入額 ... 141

表 5.21 27 億円/年(予算投入率 100%)の援助を投入した時の対策

実施数量、配分予算割合、予算投入額 ... 142

(8)

6

(9)

7

図 1.1 ミレニアム開発目標(MDGs)のモニタリングによる水道の普及

率 ... 11

図 1.2 本論文の構成 ... 14

図 2.1 JICA の技術協力プロジェクトの対象都市・パイロット地区にお

ける無収水率 ... 20

図 2.2 Mutikanga らの研究による無収水対策の優先順位と無収水削減

のイメージ ... 25

図 2.3 Wyatt の研究による実損失の最適な無収水率に関するモデル化27

図 2.4 Wyatt の研究による見掛け損失の最適な無収水率に関するモデ

ル化 ... 27

図 2.5 JICA の技術協力プロジェクトの事前の調査における把握情報の

分析結果 ... 34

図 2.6 JICA の技術協力プロジェクトにおける活動内容の分析結果 .... 36

図 3.1 無収水対策選択モデルの計算手順 ... 42

図 3.2 無収水対策選択モデル構築の手順 ... 43

図 4.1 故障の 3 つのパターンとバスタブ曲線 ... 62

図 4.2 メーター故障率 ... 64

図 4.3 メーターの累積故障率 ... 64

図 4.4 日本における配水管延長の口径別割合 ... 70

図 4.5 送配水管の推定破裂事故率 ... 71

図 4.6 給水管の推定破裂事故率... 72

図 4.7 円借款の貸付と返済のイメージ ... 95

図 5.1 予算投入率が異なる場合の最適対策における予算配分(予算投

入率 1~5%) ... 105

図 5.2 予算投入率が異なる場合の最適対策における予算配分(予算投

入率 6~10%) ... 106

図 5.3 予算投入率が異なる場合の最適対策における予算投入額( 5 年

間の合計) ... 107

図 5.4 予算投入率が異なる場合の各対策数量の上限値に対する割合 108

図 5.5 無収水量とその内訳の変化(初期値及び 5 年間の対策実施後)110

図 5.6 無収水率とその内訳の変化(初期値及び 5 年間の対策実施後)110

図 5.7 費用と便益の発生時期に関する考え方 ... 111

図 5.8 違法接続率初期値の変化に伴う対策構成比の変化 ... 120

図 5.9 メーター設置率初期値の変化に伴う対策構成比の変化 ... 122

(10)

8

図 5.11 平均水圧の変化に伴う対策構成比の変化 ... 126

図 5.12 対策投資費用割合に関する5年後の最適化と 20 年後の最適

化の比較(予算投入率 10%の場合) ... 127

図 5.13 対策投資費用割合に関する5年後の最適化と 20 年後の最適

化の比較(予算投入率 5%の場合) ... 128

図 5.14 対策投資費用割合に関する5年後の最適化と 20 年後の最適

化の比較(予算投入率 1%の場合) ... 129

図 5.15 予算制約が異なる場合の最適対策における予算配分 ... 143

図 5.16 援助を投入した場合の無収水量とその内訳の変化(初期値及

び 5 年間の対策実施後) ... 145

図 5.17 援助を投入した場合の無収水率とその内訳の変化(初期値及

び対策実施後) ... 146

図 5.18 無収水対策の段階の推移と望ましい援助の形態 ... 147

(11)

9

ACP Asbest Cement Pipe 石綿セメント管 CIP Cast Iron Pipe 鋳鉄管

DAC Development Assistance Committee 開発援助委員会 DIP Ductile Iron Pipe ダクタイル管 DMA District Metered Area メーター計量区画 GIP Galvanized Iron Pipe 亜鉛メッキ鋼管 IRR Internal Rate of Return 内部収益率 IWA International Water Association 国際水協会

JICA Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構 LDC Least Developed Countries 後発開発途上国

MDGs Millennium Development Goals ミレニアム開発目標 NRW Non-Revenue Water 無収水

OECD Organization for Economic Cooperation and Development

経済協力開発機構

OJT On-the-Job Training オンザジョブ・トレーニング PE Polyethylene Pipe ポリエチレン管

SDGs Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標

SP Steel Pipe 鋼管

UNICEF United Nations Children’s Fund 国連児童基金 WHO World Health Organization 世界保健機構

(12)

10

第1章

序論

1.1 研究の背景

1.1.1 開発途上国の水道に関する問題

水は人間が生きていく上で必要不可欠なものであり、特に飲料水は生命を支える上で、 また健康な生活を営む上で、欠くことのできないものである。日本においては、 24時間 いつでも、蛇口を捻れば安全な水道水が低廉な価格で入手できるようになっており、2014 年度末時点での全国の水道普及率は97.8%に達している( 厚生労働省. 2015)。 しかし、 開発途上国の水道普及率は、 国連が定めた2015年までの国際的な開発目標で あるミ レニア ム開 発目 標 ( MDGs)の モニタ リン グ 結果 による と、2015年 時点で 全人口 の49%に過ぎないと推定されている(WHO, UNICEF. 2015)。国連において特に開発に 遅れが見られる国として認定されている 後発開発途上国(LDC)は、2016年5月現在で48 カ国あり( United Nations Committee for Development Policy. 2016)、これらの国々の水道 普及率は12%に過ぎない(WHO, UNICEF. 2015a)。図 1.1は、開発途上国及び後発開 発途上 国にお ける水 源へ のアク セスを 示した グラ フであ る。 MDGsで は、 適切な 保護が なされていない湧水や浅井戸、ドラム缶や小さなタンクを積んだカートによる水売りな どを「改善されていない水源」と定義し、このような改善されていない水源や川の水な どの表流水を未処理で飲 用している人々は、 2015年時点で6.63億人残 され ていると推定 している(WHO, UNICEF. 2015a)。

(13)

11

こ の よ う に 、 途 上 国 に お け る 水 供 給 の 問 題 は 依 然 と し て 深 刻 で あ る こ と を 受 け て 、 MDGsの 後 継 と な る 国 際 的 な 開 発 目 標 と し て 2015 年 に 採 択 さ れ た 持 続 可 能 な 開 発 目 標 (SDGs)においては、水・衛生分野に特化したゴール6「全ての人々に水と衛生施設へ のアクセスと持続可能な管理を確保する 」が設定され、その中に含まれる8つのターゲッ トのうちの1つとして、 ターゲット 6.1「2030年 までに、安全で入手 可能 な価格の飲料水 に対する全ての人々の公平なアクセスを達成する」が掲げられた( United Nations. 2015)。 SDGsにお ける 目標 設定 の特徴 は、 MDGsが「 2015年ま でに 安全 な水 と基 礎的な 衛生 設備 へアクセスできない人を( 1990年比で)半減する。」という目標を掲げて、安全な水へ のアクセスという量的な側面のみに注目していたのに対して、「 安全で入手可能な価格 の飲料水に対する全ての人々の公平なアクセス」という質的な側面を加えたことである。 また、 MDGsで は、 安全 な水か 否かの 判断基 準と して、 改善さ れた水 源か 否かと いう水 源のタイプを代替指標として用いていたが、これでは実際の水質や、水を家庭内で汲み 置いておくことによる汚染などを考慮していないという批判があった。SDGsターゲット 6.1のグ ローバ ルレベ ルで のモニタ リング を 担う 世 界保健機 構( WHO)と国 際連合児 童 基 金(UNICEF)は、SDGsにおける安全な水へのアクセスについて、利用者が敷地内で必 要な時に いつでも糞便性の細菌や主要な化学物質に 汚染されていない飲料水が入手でき るというサービス水準を「 Safely managed」と定義し、アクセスの確保のみならず、サー 開発途上国 後発開発途上国 水道 水 道 以 外 の 改 善 された水源 改善 さ れて いない水源 表流水 水道 49% 図 1.1 ミレニアム開発目標(MDGs)のモニタリングによる水道の普及率 水道 12%

(14)

12

ビスレベルの向上を視野に入れた取り組みを進めることを提唱している(WHO, UNICEF. 2015b)。 しかし、 水道が普及している都市においても、途上国の 多くの都市の水道事業が 、24 時間の連続給水 になっていない、水質基準を順守できていないなど、「Safely managed」 のレベルには及ばないサービス水準となって いる。また、2015年時点の都市人口の割合 は54%と推測されているが(The World Bank. 2017)、2050年には70%に達すると推測さ れており( UN Habitat. 2010)、特にアジアとアフリカの途上国における都市化が顕著で あることから、増え続ける都市人口に追随して水道を 拡張することも、大きな課題とな っている。 SDGsの 達成を 目指す た めには、水道施設 の拡張 や水道サ ービス の改善 の ための 投資予 算の確保が重要であるが、途上国の多くの水道事業体は経営状態が悪く、 十分な予算が 確保できていない。

1.1.2 無収水対策の重要性

途上国の水道事業 の経営において、必要な投資予算が確保できない主な要因として、 政策的に低く抑えられた水道料金 水準や無収水量の多さが挙げられる。無収水量とは、 水道システムに投入された水量 (総配水量)のうち、料金請求の対象とならなかった水 量のことであり、漏水などの実損失水量、 及び水道メーター誤差や 違法接続(盗水)等 による見掛け損失水量 から構成される(Farley and Trow. 2003)。途上国の水道事業体の 無収水率(配水量に対する無収水量の割合) は平均約35%というデータがあり、流量計 が 設 置 さ れ て い な い な ど の 理 由 で デ ー タ が 取 得 で き な い よ う な 事 業 体 も 含 め る と 40~ 50%程度 になる 可能性 が ある との 推定も ある( Kingdom, et al. 2006)。こ の ことは、コス トをかけて生産した水道水の半分程度は水道料金が請求できていないということを意味 する。無収水量の削減は 、水道料金収入を増やし、水道事業の経営を改善し、ひいては 施設の拡張やサービス改善のための 投資資金を確保するための重要な課題となっている。

(15)

13

1.2 研究の目的と意義

1.2.1 研究の目的

本研究は、途上国の水道事業の無収水の特徴を踏まえ 、無収水削減対策の実施数量(以 下、対策数量と呼ぶ)を変数とする無収水対策選択モデルを構築し 、整数計画法を用い た最適化計算によって 、無収水削減対策の望ましい組み合わせを得る方法を提案し 、結 果に影響を与える因子を明らかにすることを目的 とする。 また、無収水の削減を推進する上での開発援助の役割について考察する。

1.2.2 研究の意義

途上国における無収水の問題は、水道事業体の経営悪化の大きな要因となっており、 水道サービスの拡張や質の向上に必要な投資ができなくなるという点で、国際的な開発 目標であるSDGsの達成にとっても障害となる。しかし、途上国の厳しい資金制約の下で、 多様な無収水の原因や対策を考慮した上で、 最も効率的に無収水を削減するための対策 を組み合わせ る方法は明らかになっていない。そのため、資金制約を理由に無収水対策 に十分に取り組んでいない水道事業体が多く、開発協力においても個別の対象都市にお いてパイロット事業を通じて効率的な無収水 対策の方法を検討するなど、必ずしも効率 的ではない方法を取っている。本研究は、途上国における無収水対策を促進するために、 現実の都市のデータを入力して最適解を得ることができるような無収水対策選択モデル を提案するものであり、資金制約や対象とする水道事業体が置かれている施設条件等の 下での最適な対策が明らかとなることにより、無収水対策の推進に資すると考えられる ことから、その意義は大きい。

1.3 本論文の構成

本論文の構成は図 1.2 に示すとおりである。第 1章では序論として、研 究の背景、 目的、意義、論文の構成について簡潔に述べる。第2章 では、無収水に関する現状の問 題、先行研究、改善に向けての取組みなどを説明する。第3章では、無収水対策選択モ デルの構築方法について説明する。第4章では検討の対象とする都市の設定や入力値に

(16)

14

ついての考え方や設定値について述べる。 第5章では、第3章で構築した無収水対策選 択モデルに、第4章で設定した入力値を入れて計算した結果と考 察を記述する。第6章 は、以上の結果をまとめた結論を述べる。 第1章 序論 ・研究の背景 ・研究の目的と意義 ・本論文の構成 第2章 途上国における無収水の問題と先行研究 ・無収水に関する現状の問題 ・先行研究 ・改善に向けての取組み 第3章 無収水対策選択モデルの構築 ・全体構成と考え方 ・対象範囲 ・目的関数 ・制約条件 第4章 途上国の大都市を想定した入力値の設定 ・対象都市の設定 ・パラメーターの入力値の設定 ・各種条件の設定 第5章 無収水対策の選択に関する考察 第6章 結論 補論 メーター更新に 関する検討 図 1.2 本論文の構成

(17)

15

2.1 無収水に関する問題の概要

2.1.1 無収水の定義

無収水量とは 、水道システムに投入された水量のうち料金請求の対象とならなかった 水量であり、漏水などの実損失水量や 、違法接続(盗水)や水道メーター誤差に起因す る見掛け損失水量等、様々な形でのロスが含まれる( Farley and Trow. 2003)。

国際的には、国際水協会( IWA)が提唱している水収支表 (Water balance)に基づく 無収水の定義が広く知られており、 表 2.1のとおりである。 表 2.1 国際水協会(IWA)による水収支表 配水量 System Input Volume 認定給水量 Authorized consumption 請求認定給水量 Billed Authorized Consumption 請求計量給水量

Billed Metered Consumption (including water exported)

有収水量 Revenue Water 請求非計量給水量

Billed Unmetered Consumption 非請求認定 給水量 Unbilled Authorized Consumption 非請求計量給水量

Unbilled Metered Consumption

無収水量 Non-Revenue Water (NRW) 非請求非計量給水量 Unbilled Unmetered Consumption 損失水量 Water losses 見掛け損失 水量(商業的 損失水量) Apparent Losses (Commercial Losses) 非認定給水量 Unauthorized Consumption 計量・集計誤差

Customer Metering Inaccuracies

実損失水量 Real Losses

送水管・配水管からの漏水 Leakage on Transmission and/or Distribution Mains

配水池からの漏水・越流 Leakage and Overflows at Utility’s Storage Tanks

給水管(メーター上流側)か らの漏水

Leakage on Service Connections up to point of Customer

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IWAの 定義 で は、 浄 水場 や配 水 池か ら 水道 シス テ ムに 投 入さ れ る配 水量 を 、認 定 給水 量と損失水量に分けている。認定給水量は、水道料金の請求がなされているか否かに拘 わらず、水道事業体が利用者や用途を認識している給水量であり、 このうち料金請求の 対象となった水量である請求認定給水量が、有収水量となる。 有収水量は、水道メータ ーによる計量の有無によって、請求計量給水量と請求非計量給水量に分けられ、後者は 水量が計測されていないため、推定や一定の算定基準に基づく推計によって求められる。 水道システムに投入される配水量から、有収水量を差 し引くことで、無収水量が求めら れる。 一方、無収水 を削減するためには、その原因や内訳を把握する必要があり、大きく非 請求認定給水量、見掛け損失水量、実損失水量に分けられる。 非請求認定給水量は、利用者や用途は認識されているものの、料金を請求しない、あ るいは請求できない水量のことであり、水道事業体が水道管の洗浄等に用いる事業用水 や、水道管工事に伴う濁り水 の発生等によって顧客に対して料金請求を行わなかった水 量(調定水量)が該当する。非請求認定給水量は一般に少量であり、対策を講じて削減 することは難しいため、無収水削 減対策において主たるターゲットになることはない。 見掛け損失水量は、非認定給水量と計量 ・集計誤差に分けられる。 非認定給水量は、水道事業体が認めていないにも拘らず使用されている水量であり、 違法接続(盗水)が主である。途上国では、時間給水(間欠給水)であったり、水圧が 低かったり、細工が容易なプラスチック管を配水管に使用したりしていることが多く、 違法接続のための工事を行いやすい環境にある こと、順法意識が低く摘発もあまり行わ れていないことなどから、違法接続が多く見られる。配水管に給水管を不正に接続して、 料金を払わずに水道を利用しているケースや、メーターが設置されているもののバイパ ス管を取り付けるなどの方法で実際の使用水量よりも少ない料金しか払わないケースが 見られる。 計量・集計誤差は、メーターの精度の低下に起因する計量誤差や、ごく少量の流量で 使用された場合にメーターに検知されないといったメーター不感、メーターの検針や料 金請求のプロセスにおける誤差などが含まれる。途上国においては、メーターの精度が 低い、水質が悪くメーターが故障しやすい、メーターが正しく設置されていない 、メー ターが適正に管理されていない などの問題が多く 見られる。写真2.1 と写真2.2 は、 途上国におけるメーターの状況の例である。

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実損失水量は、漏水や配水池からの越流などによって物理的に失われた水量であり、 特に水道管からの漏水が多い。途上国では、水道管の施工品質が低い、使用している管 材料の質が低い、石綿セメント管などの脆弱な管材料を使用している、適切な時期に水 道管を更新することができておらず老朽化が進んでいるなどの理由によって、漏水が多 く見られる。 漏水には、漏水量が多い、あるいは水圧が高い、などの理由によって地表 からも漏水が視認できる地上漏水と、地下で漏水が発生しているものの地表からは視認 できない地下漏水に分けられる。漏水は小さな漏水 孔からの少量の漏水から始まり、時 間が経つにつれて漏水孔が拡大したり、亀裂や破裂へと発展したりして、大量の漏水へ と変化していくと考えられており(山﨑章三. 2011)、地上漏水は直ぐに修理が可能であ るが、地下漏水は漏水探知作業を行った上で修理を行わなければ、漏水が継続すること になる。そのため、時間当たりの漏水量としては地上漏水の水量が地下漏水の水量より も多いが、修理されるまでの時間を考慮に入れると、地上漏水の水量よりも地下漏水の 水量の方が多い。 また、 公道の下に埋設される配水管よりも、配水管と各利用者を接続 する給水管の方がより漏水が多く、これは配水管との接続部分(分水サドル)、直管と 曲管の接続、メーターとの接続など漏水の原因となりやすい接続箇所が多いことや、施 工品質が低いこと、埋設深度が低く地表からの衝撃が伝わりやすいことなどが要因とな っている。写真2.3 に、給水管からの地上漏水の例を示す。 なお、IWAの定義では料金請求の対象となったか否かで有収水量と無収水量を区分し ており、料金が実際に徴収されたか否かに基づく区分ではない。途上国では料金徴収率 の低さも問題になるが、料金徴収率が低いということは無収水量とは関係が ない。 写 真 2 . 1 適 切 に 管 理 さ れ て お ら ず、ほとんど埋まった状態の水道メー ター(ネパール)(筆者撮影) 写真2.2 排水溝内に設置されて水 没 し て い る 水 道 メ ー タ ー ( ミ ャ ン マ ー)(筆者撮影)

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2.1.2 無収水の問題

日本の上水道事業全体の無収水率は 2014年度で10.16%と低いが(水道技術研究センタ ー. 2016)、途上国では平均約35%というデータがあり、データが取得できないような事 業体も含めると40~50%程度になる可能性があるとの推定もある(Kingdom, et al. 2006.)。 表 2.2はJICAの技術協 力プロジェクト の対象都市、あるいは パイロット地区 におけ る、プロジェクトでの対策を実施する前 の無収水率である。ここに示した無収水率の数 値は、IWAによる定義に準拠して算出されたものである。 また、同表をグラフにしたの が図 2.1である。グラ フの幅は複数の 都市ある いはパイロット地区にお ける無収水率 の分布範囲を示している。幅があるものの、平均すると約 40~60%の無収水率となって おり、生産した水道水の半分は水道料金の請求につながっていないという深刻な状況と なっていることが分かる 。 写真2.3 給水管からの激しい地上漏水(サモア)(筆者撮影)

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表 2.2 JICA の技術協力プロジェクトの対象都市・パイロット地 区における無収水率 対象地域、年 都市名・地区名 無収水率(%) 平均(%) イ ン ド ネ シ ア 国 南 ス ラ ウ ェシ州、2010年 (国際協力機構 . 2012a) マカッサル市 48.0 40.9 マロス県 41.6 ゴワ県 42.8 タカラール県 31.2 インド国ゴア州、2013年 (国際協力機構 . 2014a) Curtorim地区 45.1 52.3 Khadpaband地区 58.7 Moira地区 53.0 ス リ ラ ン カ 国 コ ロ ン ボ 市、2010年 (国際協力機構 . 2012d) Borella地区B1 40 67 Borella地区B3 84 Borella地区B4-1 60 Borella地区B4-2 62 Borella地区B6 50 Kotahena地区 K1 85 Kotahena地区 K2 78 Kotahena地区 K3・ K4 73 バ ン グ ラ デ シ ュ 国 チ ッ タ ゴン市、2011年 (国際協力機構 . 2013) Khulshi地区 55 55 ヨルダン国、2007年 (国際協力機構 . 2008c) Al-Salalim 地区 45 47 Hashimiah 地区 58 Wadi Al-Hajar 地区 47 Faisalea 地区 57 Smakeheh & Hmoud 地区 44 Muhay & Hamdieh 地区 63 Mansurah 地区 28 Odruh 1 地区 55 ケニア国、2012年 (国際協力機構 . 2012b) エンブ市 パイロット地区 61 56 ナロック市 パイロット地区 39 カプサベット市 パイロット地区 68.52

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無収水量が多いということは、取水、導水、浄水、配水等の水道水の生産にコストが かかっているにも拘わらず、水道料金が請求できない水量が多いということを意味して おり、水道事業の経営に与える悪影響が大きい。 また、無収水のうち漏水が多いということは、水資源が利用者の元に届く前に水道シ ステムの中で失われていることを意味しているため、乾燥地、半乾燥地 等の水資源が乏 しい地域や、水源を遠隔地に求めざるを得ない大都市など、水資源が貴重な地域におい ては漏水の削減も重要な課題となる。途上国では水供給量が水需要量に追いついていな いことが多いため、漏水を削減することで、削減した漏水量を新たに利用者への給水に 回すことができ、新たな水源開発のための投資を先送りすることができる。 無収水の問題としては上述の 2点が大きいが、他にも漏水が多いということは水道管に 漏水孔が多く空いているということを意味するため、途上国でしばしば見られる時間給 水(間欠給水)、断水、低水圧といった問題 があると、水道管の周囲の地下水、汚水を 管内に引き込み、 水道水の水質が汚染される原因となる。また、盗水が多い、メーター が故障しているなどの問題は、利用者と水道事業体の間の信頼関係を弱め、更なる水道 無 収 水 率 ( % ) 0 20 40 60 80 100 無 収水率 (%) 平均 値の分布範囲 図 2.1 JICA の技術協力プロジェクトの対象都市・パイロット地区に おける無収水率

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サービスの低下につながる。 このように、無収水には様々な問題があり、途上国においてはその削減が重要な課題 となっている。 無収水対策を強化することは、水道メーターの設置や違法接続対策などを通じて、貧 困層も含めて水道料金の請求を強化することにもつながるが、貧困層に対しては別途社 会福祉政策の一環として、水道料金や接続費用の 減免措置を講じ、支払可能額の範囲内 での負担を求めつつ水道サービスを提供するべきであると考えられる。

2.1.3 無収水対策の概要

無収水対策は大きく、①発生している無収水を削減する事後対策、②無収水の発生を 未然に抑える予防的対策、③無収水対策を推進するための体制整備、の 3つに分けられる。 主な対策を表 2.3に示す。 このように無収水対策は多岐に亘るが、本研究ではこのうち既に発生している無収水 量を削減するための事後対策を対象とし、中でも最も基本的な無収水削減手法であり、 削減効果も大きい、①不良メーターの更新、②メーターの設置、③違法接続の摘発と正 規接続化、④送配水管の更新、⑤配水管の漏水探知・修理、⑥給水管の更新、⑦給水管 の漏水探知・修理を対象とする。 不良メーターの更新は、検針時等に 目視により故障していることが明らかなメーター を把握する、あるいは料金請求の実績から使用量が突然大幅に減少したり、世帯構成か ら推測される使用水量よりも極端に少ない検針結果になったりしている顧客を把握する、 といった方法で不良メーターを発見し、新しいメーターと交換する。他にも、メーター の精度を検査したり、一定期間使用したメーターは義務的に交換したりする方法も取ら れる。途上国の場合は故障メーターが多いため、明らかに故障しているメーターを更新 するだけでも、大きな効果がある。 メーターの設置は、メーターが設置されておら ず定額での料金請求が行われている顧 客にメーターを設置することで、従量制料金により使用した水量に見合う適正な料金を 請求するものである。メーターボックスとメーターを新たに設置する工事が必要となる。

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表 2.3 主な無収水対策 対策の種類 対象の無収水 主な対策 事後対策 非請求認定給水量  無料の公共施設用水の見直し  事業体による維持管理作業の改善 見掛け損失水量  違法接続の摘発と正規接続化  メーター設置  不良メーターの更新  検針、料金請求プロセスの改善 実損失水量(漏水)  地上漏水の修理  地下漏水の探知・修理  漏水が多発している配水管の更新  漏水が多発している給水管の更新  水圧が高すぎる地区の解消  配水池等からの漏水の補修工事 予防的対策 見掛け損失水量  違 法 接 続 を 未 然 に 防 止 す る た め の 住 民 啓 発活動  メーターの質、精度の向上 実損失水量(漏水)  計画的な管路の更新  管路施工品質の向上  使用管材の質の向上 体制整備  無収水対策を推進する部署 の設立  無収水量の測定、配水量分析  無収水対策の費用対効果の分析  無収水対策計画の策定  無収水量のモニタリング体制の整備  人材育成体制の整備、技量向上  配水区域のブロック化  管路情報の整備  顧客台帳の整備  調査、技術開発 違法接続の摘発と正規接続化は、検針時 や漏水調査実施時などに、不正な工事を行っ ている形跡がないかどうかを目視で確認したり、顧客台帳と料金請求の実績から不自然 な使用水量となっている顧客をリストアップしたりして、違法接続を発見し、対象者を 説得して正規の接続に改め、料金請求の対象とするものである。正規接続にするために は、メーターの設置と同様に、メーターボックスとメーターを新たに設置する工事が必 要となる。 送配水管の更新は、老朽化したり、脆弱な管材を使用したりしていて漏水の発生が多 い送配水管を新たな管に更新することによって、漏水の発生量を削減するもので ある。 管路の老朽化が進むと、漏水の探知・修理を行っても近傍の別の場所で漏水が発生する

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など、漏水探知・修理のみでは効率的な 漏水削減ができなくなる。途上国では資金不足 により、老朽化した管路が多く残っていることがある。また、石綿セメント管のように 衝撃に弱い管材を使用していると、漏水が多くなる傾向がある。 送配水管の漏水探知・修理 は、地下の送配水管で生じている漏水を地表から探知し、 漏水箇所を特定し、修理を行うことで漏水量を削減するものである。漏水の探知は、配 水区域のブロック毎、あるいは管路毎に漏水量を測定し、漏水量 の多いブロックや管路 を特定した上で、漏水音等を探知する漏水探知機器を用いた巡回作業によって漏水箇所 を特定する作業が行われる。配水区域のブロック化ができていない場合などには、巡回 作業のみが実施されることもある。 給水管の更新 は、老朽化したり、脆弱な管材を使用したりしていて漏水の発生が多い 給水管を新たな管に更新することによって、漏水の発生量を削減するものである。 給水管の漏水探知・修理 は、地下の給水管で生じている漏水を地表から探知し、漏水 箇所を特定し、修理を行うことで漏水量を削減するものである。地表に出ているメ ータ ーに漏水音等を探知する漏水探知機器を当てて、給水管からの漏水の有無を確認する手 法が多く用いられる。

2.2 無収水削減手法の最適化に関する先行研究

無収水に関する研究は 、1970~80年代に漏水を中心とする 実損失に関する分析が英国 を中心に進み 、1990年代後半から国際水協会( IWA)を中心に、見掛け損失も含んだ形 で無収水が定義され、その対策についても体系化が進められた( Asian Development Bank.

2010)。 しかし、 水道事業の現場において活用することを想定した 実務的な 解説資料、 ガイド ライン、マニュアル、 対策事例の紹介等は数多く作成されているものの (Berg. 2014)、 途上国の資金制約を考慮した上で、多くの対策の中から最適な方法を最適な順序や組み 合わせで選択することに焦点を当てた研究は 少ない。また、研究は先進国で行われたも のが多く、先進国で問題となる漏水対策 やメーターの精度を扱った論文は多いが 、途上 国において問題となる盗水やメーター故障なども含めた 見掛け損失に関する論文は少な い。 無収水削減手法の最適化を扱った 研究としては、Mutikangaらがウガンダの首都カンパ

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ラを例に、多 目的意思決定問題として無収水対策を定式化し、7種類の無収水対策に対す る8人の意思決定者の選好を元に、無収水対策の 優先度に関する順位づけを試みた例があ る(Mutikanga. 2011)。この研究では、メーター更新、違法接続対策、漏水修理の迅速 化 と 質 の 向 上 、 管 路 更 新 、 配 水 管 網 の ゾ ー ニ ン グ と メ ー タ ー 計 量 区 画 ( District Meter Area: DMA) の 設 置 、 水 圧 管 理 、 漏 水 探 知 と い う 7種 類 の 無 収 水 対 策 を 選 択 肢 と し て 挙 げており、実損失と見掛け損失の双方に対応した途上国においてよく実施されている対 策を対象として いる。しかし、7つのクライテリア(収入向上、投資コスト、維持管理コ スト、節水、水質、供給の安定性、水道料金への影響)を設定して点数付けをしている ものの、点数は Very poor(Very low)からVery good(Very high)までの定性的な5段階 評価となっており、さらに 8人の意思決定者による主観的な点数付け を行っているため、 各対策のコストや効果の大きさは 定量的、客観的な分析となって おらず、資金制約や効 果発現に要する時間も考慮されていない 。その ため、初期投資が大きく時間もかかる管 路更新が最も高く 評価されるという、途上国の実態からみて 必ずしも妥当とは思われな い 結 果 を 示 し て い る 。 Mutikangaら の 研 究 の 結 論 に 相 当 す る 無 収 水 対 策 の 優 先 順 位 は 図 2.2に示すとおりとなっており、優先順位は管路更新、水圧管理、漏水修理の迅速化と 質の向上、漏水探知、メーター更新、配水管網のゾーニングとメーター計量区画の設置、 違法接続対策という順番になっている。また、この図ではこのような優先順位に従って 順次無収水対策を実施し、段階的に無収水 量を削減するイメージが示されているが、グ ラフはノン・スケールであると明記されており、縦軸、横軸とも定量的な グラフとはな っていない。

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以上より、Mutikangaらの研究は、途上国において実損失対策と見掛け損失対策の双方 を含む複数の無収水削減手法の優先順位を検討しているという点で、本研究の先行研究 と位置付けられるが、各対策のコストや対策の効果、効果発現に要する時間等がいずれ も定量的な評価となっておらず、資金制約が考慮されておらず、優先順位付けの手法も 少数の意思決定者の主観に依存しているという課題が指摘される。 より定量的な分析を目指した研究としては、Wyattが途上国を対象に無収水対策の経済 的な最適化を検討したモデルを構築し た例がある (Wyatt. 2010)。この研究では、実損 失のうち漏水、見掛け損失のうちメーターの精度低下を取り上げ、漏水の探知・修理を 行う実損失対策と、メーターの更新を行う見掛け損失対策について、数式を用いて対策 の効果とコストをモデル化し、定常状態において便益とコストがバランスする最も経済 的な水準の無収水量や、その水準を維持するために必要な 無収水対策費用を議論してい る。この研究のモデルを 示したグラフは、 実損失 について 図 2.3、見掛 け損失につい 図 2.2 Mutikanga らの研究による無収水対策の優先順位と無収水削減の イメージ

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て図 2.4のとおりとなっている。実損失に関する図 2.3は、縦軸が年間の対策コスト (Cpl)も しくは 水道 水生 産のため の変 動費用 ( Cv)、水源 開発 のため の投 資費用( Cc) を示しており、横軸は実 損失に関する無収水率( p)を示している。 実損 失の無収水率 を低く保とうとすればするほど、漏水が減ることによって、水道水生産のための変動費 用(Cv)も水源開発のための投資費用( Cc)も低く抑えることができるが、対策コスト (Cpl)は急増する。よって、限界費用と限界便益がバランスす る最も経済的に妥当な水 準の実損失の無収水率( p*)が得られる1。 見掛け損失に関する 図 2.4は、縦軸が年間の対策コスト(Ccl)もしくは便益(水道 料金収入)(R)を示しており、横軸は見掛け損失に関する無収水率( c)を示している。 見掛け損 失の 無収水 率を 低く保と うと すれば する ほど、料 金収 入( R) は 増加する もの の、対策コスト( Ccl)は急増する。よって、限界費用と限界便益がバランスする最も経 済的に妥当な水準の見掛け損失の無収水率 (c*)が得られる。

1 原図中に表記されている「 Optimality」の 数 式 は 、右 辺 が - dC c/dpとなっているが 、これは- dCp l/dp の誤記であると思われる。

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また、Wyattの研究ではアフリカの実際の15の水道事業体のデータを入力して計算する ことにより、最適な無収水量と現在の無収水量に大きな乖離があることを示している。 Wyattの 研究は 、途 上国を 対象とし て、実 損失と 見 掛け損失 の双方 を扱い 、これらの 無 図 2.4 Wyatt の研究による見掛け損失の最適な無収水率に関するモデル化 図 2.3 Wyatt の研究による実損失の最適な無収水率に関するモデル化

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収水量を規定するパラメーターを用いて数式モデルを構築していることや、 対策コスト と得られる便益を定量的に扱っているという点で、本研究の先行研究と見なすことがで きる。しかし、定常状態において維持すべき経済的な無収水量のレベルや 、その水準を 維持するために必要な無収水対策 費用を議論したものであ り、現状からの 無収水量の削 減は扱っていない。そのため、無収水対策も漏水の探知・修理とメーターの更新のみを モデル化の対象としているに過ぎない。 以上より、本研究は、①途上国における現状からの無収水の削減を扱い、②予算制約 を考慮に入れた定量的な分析を行い、③多様な無収水対策を取り上げてその組み合わせ の最適化を検討している、という点で先行研究にはない新規性があ る。

2.3 国際協力機構(JICA)による実践

2.3.1 国際協力機構による水道分野に対する協力

独立行政法人国際協力機構( JICA)は、日本政府が行う政府開発援助( ODA)を担う 実施機関として、途上国に対する国際協力を実施している。日本の ODAは、1954年に技 術協力を通じてアジア太平洋諸国の開発を進めるための国際機関 「アジア及び太平洋の 共同的経済社会開発のためのコロンボ・プラン」 (通称「コロンボ・プラン」)に加盟 したことを端緒とし、1958年の円借款開始、1962年の海外技術協力事業団( OTCA。JICA の前身組織)設立など、協力手法や体制の整備が進められた 。 水道分野における国際協力も早い時期から実施されており、 1959年に戦後賠償に準ず る供与として実施された 無償資金協力(「準賠償」と呼ばれる)によって、カンボジア の首都プノンペンの水道建設や資機材調達に対する支援が行われ、続いて 1963年にはラ オスの首都ビエンチャン の水道建設に対する支援 が行われた(篠永宣孝 . 2004)。1965 年には韓国の3都市の水道事業に対して初めての円借款が供与された(国際協力事業団国 際協力総合研修所. 1989:120)。技術協力としては、1967年にアフガニスタンに対して初 めての水道分野の専門家が派遣され (国際協力事業団国際協力総合研修所 . 1989:29)、 1968年 には 当 時の 日本 水 道界 の第 一人 者が テキ ス ト作 成を 支援 する 中で 、 途上 国か ら日 本に研修員を招へいして集中的な研修を行うべく、 水道分野の研修コース が設立された (国際協力事業団国際協力 総合研修所. 1989:43)。 当初の協力は、円借款や無償資金協力といった施設建設や資機材調達のための資金協

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力、専門家派遣、研修員受入、開発調査であったが、 1973年に開始されたインドネシア の水道研修所に対する協力を皮切りに、複数の専門家をチームで派遣し、専門家派遣や 技術指導用の資機材調達などをパッケージにして実施する大規模なプロジェクト型の協 力が開始された(丹保憲仁ほか. 1994)。 以来、厚生労働省、国内の水道事業体、開発コンサルタント、その他の民間企業等の 支援を得つつ協力を実施しており、 水道分野に対する協力を含む 水供給・衛生分野での 協力金額は、2014年(暦年)の支出額で12.19億米ドルとなっている(OECD-DAC. 2017)。 経済協力開 発機構( OECD)の開 発援助委 員会( DAC)に報告 されてい る 、世界銀行 等 の 多 国 間 援 助 機 関 や ド イ ツ 、 フ ラ ン ス 等 の 他 の 二 国 間 援 助 を 合 計 し た 世 界 全 体 の 水 供 給・衛生分野のODA額は 72.44億米ドルであるため、日本の貢献はそ の17%を占め、第2 位の世界銀行、第3位のドイツを抑えて、最も多額の貢献を行っている国 となって いる。 2011年度 から2013年度 ま での 3か年 水供給・衛生 分野の 支 援実績 は、経費 実績が 表 2. 4、案件数の実績が表 2.5のとおりとなっており2(国際協力機構. 2016a)、いずれも 都市給水(水道)分野が村落給水分野や衛生分野に比べて突出して多いことが分かる。

2 複数の分野にまたがる案件は、それぞれの分野に重複して計上している。また、衛生分野には分散型 の各戸処理(トイレ、セプティックタンク、浄化槽等)や衛生啓発に関する案件を含んでおり、下水道 のみを扱った案件は含まれない。

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表 2.4 2011 年度から 2013 年度における JICA の水供給・衛生分野の経費実績 分野 協力形態 経費実績(百万円) 割合 都市給水 技術協力 11,065.3 88 % 無償資金協力 37,954.0 円借款 276,225.0 小計 325,244.3 村落給水 技術協力 8,257.7 7% 無償資金協力 12,903.0 円借款 3,210.0 小計 24,370.70 衛生 技術協力 3,604.4 5% 無償資金協力 374.0 円借款 14,081.0 小計 18,059.40 合計 367,674.4 100% 表 2.5 2011 年度から 2013 年度における JICA の水供給・衛生分野の案件数実績 分野 協力形態 案件数実績(件) 割合 都市給水 技術協力 426 65% 無償資金協力 28 円借款 18 小計 472 村落給水 技術協力 113 19% 無償資金協力 25 円借款 1 小計 139 衛生 技術協力 109 16% 無償資金協力 1 円借款 2 小計 112 合計 723 100%

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2.3.2 無収水対策に対する協力の実績

水道分野に対する専門家派遣は 1960年代から開始されているが、初期の専門家の業務 は途上国における水道建設の支援であり、計画策定や入札図書作成に対する協力が主で あった。1973年に開始されたインドネシアの水道研修所に対する協力 において、漏水対 策等の指導がなされた可能性があるが、文献記録が残されておらず、詳細は不明である。 1980年 代 に入 ると 、 無 収 水対 策の うち 実損 失対 策 であ る漏 水対 策を 専門 的 に 指 導する 専門家が派遣されるようになり、マレーシアに対して 1985年から漏水防止を指導する専 門家が派遣され(藤原冽. 1987)、タイに対しては1987年から漏水探査を指導する専門家 が派遣された(三上基樹. 1990)。1986年から1991年まで実施された「タイ水道技術訓練 センタープロジェクト(フェーズ1)」では、水道計画、経営管理、浄水・水質、管路 維持、機械・電機の5つの研修コースの設立を支援しており、このうち管路維持のコース の中に、漏水防止に関するサブコースが設けられていた(国際協力事業団 . 2000:39)。 また、1989年からフィリピンに対して、漏水探知機器使用方法の指導と、無収水削減 のための手法と基準の作成を指導内容とする専門家が派遣された。この 専門家は、それ 以前の専門家が指導していた漏水対策に留まらず、「無収水」という言葉を使用し、配 水区域の区画化による無収水量の測定、故障メーターの更新なども指導したという点で、 今 日 の JICAの 無 収 水 対 策 に 関 す る 包 括 的 な 協 力 の 嚆 矢 と な る も の で あ る ( 小 田 直 正 . 1991) 。 その 後フ ィリ ピ ンに 対し ては 、 1991年から「 無収 水低 減化 対策 」 を指 導科 目と する専門家が派遣され(金谷敬一 . 1993)、さらに1994年から1997年にかけて小規模のプ ロジェクト(通称「ミニプロ」)「無収水低減化対策」が実施された(渡邊純也 . 1997)。 これが、JICAにおける無収水対策を主たるターゲットとして取り組まれた最初のプロジ ェクトであると考えられる。 1994年から1999年まで実施された「タイ水道技術訓練セン タープロジェクト(フェーズ 2)」においても、水資源管理、浄水処理の高度化技術、 水運用制御、営業事務改善の各研修コースと並んで、 無収水量管理の研修コースが設け られ、漏水対策のみならず、メーター管理や違法接続対策も含む包括的な テキストが作 成された(国際協力事業団. 2000:51)。1996年からは、日本における研修コースとして 「上水道無収水量管理対策」が開始され、各国から研修員を受け入れて無収水対策に特 化 し た ト レ ー ニ ン グ を 行 う よ う に な っ た ( 国 際 協 力 事 業 団 名 古 屋 国 際 研 修 セ ン タ ー . 1997)。 この研 修コー ス は 20年を 経た2016年現 在 も、継続 して実 施され て いる。 2000年 代 に入 ると 、数 多 くの 無収 水対 策を 目的 と する プロ ジェ クト や、 無 収水 対策を

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成果3の一部とするプロジェクトが実施されるようになった。 2005年度以降に開始され、 2015年 度ま で に終 了し た 、無 収水 対策 をプ ロジ ェ クト の目 的も しく は成 果 とす る技 術協 力プロジェクトは、表 2.6に示す13件がある。 表 2.6 無収水対策を含む技術協力プロジェクト(2005~2015 年度) 案件名 開始 年度 終了 年度 受注者 1 インドネシア国南スラウェシ州 マミナサタ広域都市圏上水道サ ービス改善プロジェクト 2009 2012 株式会社日水コン 株式会社コーエイ総合研究所 2 インド国ゴア州無収水対策プロ ジェクト 2011 2014 株式会社日水コン 3 エジプト国シャルキーヤ県上下 水道公社運営維持管理能力向上 計画プロジェクト 2006 2009 八 千 代 エ ン ジ ニ ヤ リ ン グ 株 式 会社 4 エジプト国ナイルデルタ地域上 下水道公社運営維持管理能力向 上プロジェクト 2011 2015 八 千 代 エ ン ジ ニ ヤ リ ン グ 株 式 会社 5 エルサルバドル国上下水道公社 事業運営能力強化プロジェクト 2009 2011 株式会社日水コン 6 ケニア国 無収水管理プロジェ クト 2010 2014 中央開発株式会社 東京水道サービス株式会社 7 スリランカ国コロンボ市無収水 削減能力強化計画プロジェクト 2010 2012 株式会社日水コン 8 パラグアイ国配水網管理技術強 化プロジェクト 2011 2014 株式会社協和コンサルタンツ 中央開発株式会社 9 バングラデシュ国チッタゴン上 下水道公社無収水削減推進プロ ジェクト 2009 2012 株 式 会 社 エ ヌ ジ ェ ー エ ス ・ コ ンサルタンツ 10 ブラジル国無収水管理プロジェ クト 2007 2010 中央開発株式会社 11 ペルー国リマ上下水道公社無収 水管理能力強化プロジェクト 2012 2015 株式会社協和コンサルタンツ 東京水道サービス株式会社 12 ヨルダン国無収水対策能力向上 プロジェクト 2005 2008 株式会社日水コン 株式会社東京設計事務所 13 ヨルダン国無収水対策能力向上 プロジェクト フェーズ2 2009 2011 株式会社 日水コン 株式会社 東京設計事務所

3 JICA の技術協力プロジェ クトでは、「活動」を行うことによって「成果」が達成され、複数の「成 果」が達成されることによって「プロジェクト目標」が達成されるという考え方で、プロジェクトのデ ザインを行っている。

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2000年代 前半ま では、JICAの技 術協力 は日本 国 内の水道 事業体 や水道 関 連業界か ら派 遣される専門家がほとんどであったが、2000年代後半以降は開発コンサルタントが JICA との契約によって実施を担う例が増加している。また、対象国も東南アジアから、南ア ジア、中近東、アフリカ、中南米へと広がっていることも分かる。

2.3.3 主な取り組み内容

無収水対策には様々な対策が含まれ、資金協力による既存の老朽管路の更新は漏水対 策となり、技術協力においても管路施工技術や漏水探知など、無収水対策の一部となる 技術を指導している例がある。一方、無収水対策を包括的に扱う技 術協力プロジェクト も近年増加傾向にあり、その主な取り組み内容としては、無収水対策を推進する組織の 設立、無収水対策に関する基礎知識の研修、無収水の現状把握、 パイロット事業を通じ た無収水の 原因構成 の把 握と対策技 術の OJT、対策コストや 費用対効 果の 分析、無収 水 対策を継続・波及させるための計画策定などが挙げられる。 JICAの 無収水 対策プロ ジ ェクトの 取り組 み内容 を より網羅 的、定量 的に 把 握するた め、 表 2.6に示した13件の プロジェクトを対象とし て、プロジェクトの活動 内容を計画 す る段階で実施される事前の調査で把握されている情報や 、プロジェクトの活動内容を分 析した(松本重行, 北脇秀敏. 2016c)。事前の調査の報告書から、計画立案段階で把握 されていた情報を抽出するとともに、プロジェクト事業完了報告書から 実際に行われた 活動内容を把握した。 13件のプロジェクトのうち、「 ヨルダン国無収水対 策能力向上プ ロジェクト」と「ヨルダン国無収水対策能力向上プロジェクトフェーズ2 」は、連続す る2フェーズのプロジェクトであるため、合わせて 1件とカウントした。 事前の調査の報告書に記 載されている情報をカウ ントした結果が 表 2.7 であり、グ ラフ化したのが図 2.5 である。事前の調査の調 査項目としては、後述の 技術協力プロ ジェクトにおける活動内容を報告書から抽出し、それらの活動の必要性を判断したり、 活動内容を検討したりするために必要と考えられる項目を抽出した。また、文献(山﨑 章三. 2011)による無収水削減対策の種類と実施手順を参考にした。

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0 2 4 6 8 10 12 調査しているプロジェクト数 事前の調査における調査項目 無収水対策推進体制に関する項目 実損失対策に関する項目 見掛け損失対策に関する項目 図 2.5 JICA の技術協力プロジェクトの事前の調査における把握情報の分析結果

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表 2.7 JICA の技術協力プロジェクトの事前の調査における把握情報 見掛け損失対策 実損失対策 無収水対策推進体制の整備 水 道 メ ー タ ー 設 置 状 況 水 道 メ ー タ ー 故 障 状 況 水 道 メ ー タ ー の 精 度 水 道 メ ー タ ー 検 定 の 実 施 状 況 水 道 メ ー タ ー の タ イ プ メ ー タ ー 検 針 員 の 能 力 顧 客 デ ー タ ・ 料 金 請 求 ・ 徴 収 事 務 の 状 況 違 法 接 続 の 状 況 配 水 管 材 料 配 水 管 老 朽 化 状 況 給 水 管 材 料 給 水 管 老 朽 化 状 況 地 上 漏 水 の 修 理 記 録 管 網 デ ー タ の 整 備 状 況 地 下 漏 水 探 知 、 修 理 記 録 給 水 管 施 工 技 術 の 状 況 民 間 業 者 の 関 与 、 資 格 制 度 水 圧 の 状 況 無 収 水 削 減 組 織 の 有 無 、 体 制 無 収 水 量 測 定 の 状 況 配 水 量 分 析 の 実 施 状 況 無 収 水 率 パ イ ロ ッ ト プ ロ ジ ェ ク ト の 実 施 状 況 住 民 啓 発 の 実 施 状 況 無 収 水 対 策 計 画 策 定 状 況 水 源 の 逼 迫 度 合 い 水 道 料 金 財 務 状 況 費 用 対 効 果 分 析 実 施 状 況 インドネシア国南スラウェシ州マミナサタ広域都 市圏上水道サービス改善プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ インド国ゴア州無収水対策プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ エジプト国シャルキーヤ県上下水道公社運営維持 管理能力向上計画プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ エジプト国ナイルデルタ地域上下水道公社運営維 持管理能力向上プロジェクト ■ ■ ■ ■ エルサルバドル国上下水道公社事業運営能力強化 プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ケニア国 無収水管理プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ スリランカ国コロンボ市無収水削減能力強化計画 プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ パラグアイ国配水網管理技術強化プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ バングラデシュ国チッタゴン上下水道公社無収水 削減推進プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ブラジル国無収水管理プロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ペルー国リマ上下水道公社無収水管理能力強化プ ロジェクト ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ヨルダン国無収水対策能力向上プロジェクト/同 フェーズ2 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 合計件数 8 6 1 5 4 0 8 6 6 4 3 0 2 7 4 0 7 4 8 6 5 12 4 2 3 3 9 12 1

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無収水率や財務状況は全ての報告書に記載されていたが、無収水対策 として取り組む べき対策の範囲や、そ の優先度を判断するために必要と思われる情報であっても、必ず しも記載が多くない情報があることが明らかとなった。 例えば、実損失対策と見掛け損 失対策のどちらに優先的に取り組むかは、配水量分析の結果による無収水量の内訳の確 認、漏水対策の優先度を判断するための水源 の逼迫度合い、管路の老朽化状況やメータ ーの故障状況などを総合的に勘案して判断するべきであると考えられるが、これらの項 目を事前の調査の報告書に明記している例は、半分の 6件以下であった。 ただし途上国の場合、水道事業体自身がデータ や情報を持っていないことが 多いため、 報告書に記載がない理由には、データや情報が 入手できなかったケースと、調査をして いないケースの双方が含まれると思われる。 次に、技術協力プロジェクトの中で、どのような 無収水対策が実施されたのか、無収 水対 策毎 に実 施 して いる プロ ジェ クト の 数を カウ ント した 結果 を 図 2.6 と表 2 .8 に 示す。対策の種類は、過去の技術協力プロジェクトで実施されている対策、及び文献(山 﨑章三. 2011)で整理されている対策を参考に抽出した。 0 2 4 6 8 10 12 実 施して いるプ ロジェ クト数 無収水対策推進体制に関する項目 実損失対策に関する項目 見掛け損失対策に関する項目 図 2.6 JICA の技術協力プロジェクトにおける活動内容の分析結果

参照

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