第2章 途上国における無収水の問題と先行研究
2.3 国際協力機構(JICA)による実践
2.3.1 国際協力機構による水道分野に対する協力
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、日本政府が行う政府開発援助(ODA)を担う 実施機関として、途上国に対する国際協力を実施している。日本のODAは、1954年に技 術協力を通じてアジア太平洋諸国の開発を進めるための国際機関 「アジア及び太平洋の 共同的経済社会開発のためのコロンボ・プラン」 (通称「コロンボ・プラン」)に加盟 したことを端緒とし、1958年の円借款開始、1962年の海外技術協力事業団(OTCA。JICA の前身組織)設立など、協力手法や体制の整備が進められた 。
水道分野における国際協力も早い時期から実施されており、1959年に戦後賠償 に準ず る供与として実施された 無償資金協力(「準賠償」と呼ばれる)によって、カンボジア の首都プノンペンの水道建設や資機材調達に対する支援が行われ、続いて1963年にはラ オスの首都ビエンチャン の水道建設に対する支援 が行われた(篠永宣孝. 2004)。1965 年には韓国の3都市の水道事業に対して初めての円借款が供与された(国際協力事業団国 際協力総合研修所. 1989:120)。技術協力としては、1967年にアフガニスタンに対して初 めての水道分野の専門家が派遣され (国際協力事業団国際協力総合研修所. 1989:29)、
1968年には当時の日本水道界の第一人者がテキスト作成を支援する中で、 途上国から日 本に研修員を招へいして集中的な研修を行うべく、 水道分野の研修コース が設立された
(国際協力事業団国際協力 総合研修所. 1989:43)。
当初の協力は、円借款や無償資金協力といった施設建設や資機材調達のための資金協
29
力、専門家派遣、研修員受入、開発調査であったが、1973年に開始されたインドネシア の水道研修所に対する協力を皮切りに、複数の専門家をチームで派遣し、専門家派遣や 技術指導用の資機材調達などをパッケージにして実施する大規模なプロジェクト型の協 力が開始された(丹保憲仁ほか. 1994)。
以来、厚生労働省、国内の水道事業体、開発コンサルタント、その他の民間企業等の 支援を得つつ協力を実施しており、 水道分野に対する協力を含む 水供給・衛生分野での 協力金額は、2014年(暦年)の支出額で12.19億米ドルとなっている(OECD-DAC. 2017)。
経済協力開 発機構(OECD)の開 発援助委 員会(DAC)に報告 されてい る 、世界銀行 等 の 多 国 間 援 助 機 関 や ド イ ツ 、 フ ラ ン ス 等 の 他 の 二 国 間 援 助 を 合 計 し た 世 界 全 体 の 水 供 給・衛生分野のODA額は72.44億米ドルであるため、日本の貢献はそ の17%を占め、 第2 位の世界銀行、第3位のドイツを抑えて、最も多額の貢献を行っている国 となって いる。
2011年度から2013年度までの3か年水供給・衛生分野の支援実績は、経費実績が表 2.
4、案件数の実績が表 2.5のとおりとなっており2(国際協力機構. 2016a)、いずれも 都市給水(水道)分野が村落給水分野や衛生分野に比べて突出して多いことが分かる。
2 複数の分野にまたがる案件は、それぞれの分野に重複して計上している。また、衛生分野には分散型 の各戸処理(トイレ、セプティックタンク、浄化槽等)や衛生啓発に関する案件を含んでおり、下水道 のみを扱った案件は含まれない。
30
表 2.4 2011年度から 2013年度における JICAの水供給・衛生分野の経費実績
分野 協力形態 経費実績(百万円) 割合
都市給水
技術協力 11,065.3
88
% 無償資金協力 37,954.0
円借款 276,225.0
小計 325,244.3
村落給水
技術協力 8,257.7 無償資金協力 12,903.0 7%
円借款 3,210.0
小計 24,370.70
衛生
技術協力 3,604.4 無償資金協力 374.0 5%
円借款 14,081.0
小計 18,059.40
合計 367,674.4 100%
表 2.5 2011年度から 2013年度における JICAの水供給・衛生分野の案件数実績
分野 協力形態 案件数実績(件) 割合
都市給水
技術協力 426
無償資金協力 28 65%
円借款 18
小計 472
村落給水
技術協力 113
無償資金協力 25 19%
円借款 1
小計 139
衛生
技術協力 109
無償資金協力 1 16%
円借款 2
小計 112
合計 723 100%