第4章 途上国の大都市を想定した入力値の設定
4.1 パラメーター入力値の設定
本研究では、無収水対策の最適選択に影響を与えると考えられる要因として 、対策予 算と施設条件を検討した 。施設条件としては、筆者らがメーターの設置が十分でない途 上国の大都市を想定してパラメーター入力値を設定した基本シナリオ を作成した。また、
都市や水道施設が置かれている環境の違いによって値が大きく異なると考えられるパラ メーターについては、複数のケースを分析することとした。具体的には、 違法接続初期 値、メーター設置数初期値、送配水管総延長 、送配水管の管種 、平均水圧を変化させて、
施設条件が変化した場合の 分析を行うとともに、目的関数に含まれる無収水量原単位と、
制約条件に含まれる無収水削減対策単価 は、変化させたときの感度分析を行った。一方、
都市や水道施設が置かれている環境にそれほど影響を受けないと考えられるパラメータ ーの値は固定することとし、途上国の状況を想定して設定した。
モデルへの入力値をまとめると、表 4.1のとおりである。以下、4.2以降で各入力 値の設定根拠を説明する。
表 4.1 パラメーター入力値一覧
パラメーター 計算に使用した 入力値等 パラメーターの種別 と記載箇所
k:管種 途上国で多く使われている管種として 、 給水管は硬質塩化ビニル管(VP)とした。
配水管は基本シナリオをVPとし、鋳鉄管
(CIP)の場合を加えた2つのシナリオを 設定した。
施設条件(4.4)
Bj:j年の無収水対 策予算(円)
途 上 国 で は5年 程 度 の 開 発 計 画 を 立 案 し、計画立案時に予算配分も検討するこ とが一般的であるため、jによらず毎年同 額とした。予算の多寡の影響を分析する ため、水道料金を途上国の水準に照らし て30円/m3として、初期状態における水 道 料 金 収 入 を 計 算 し 、 そ の1% 相 当 額 か ら10% 相 当 額 ま で1%き ざ み で 変 化 さ せ た。
予算制約(4.7)
57
C1:管路推定事故 率 の 仕 様 に 関 す る 補正係数
CIPについては1.0とした。VPは継手によ って異なる値をとるが 、途上国の施工品 質 、 資 材 品 質 を 考 慮 し 、 最 も 大 き い1.0 とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
C2:管路推定事故 率 の 口 径 に 関 す る 補正係数
送配水管は、最も使用頻度が高いと考え られる口径100mmで代表することとし、
VPは1.4、CIPは1.0とした。
給水管は0.6とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
C3:管路推定事故 率 の 地 盤 条 件 に 関 する補正係数
良い地盤を仮定し、1.0とした。 目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
C4:管路推定事故 率 の 途 上 国 に お け る 給 水 管 の 事 故 発 生 率 を 反 映 し た 補 正係数
途 上 国 に お け る 給 水 管 の 事 故 発 生 率 の データは、1,000接続当たりの事故発生数 と し て 、 ウ ガ ン ダ の 首 都 カ ン パ ラ で131 件、ブラジルのサンパウロで69件などの 調査事例がある 。これらの水準に合うよ う、C4は700とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
LTj:j年 の 送 配 水 管総延長(km)
我 が 国 の98事 業 体 の デ ー タ 及 び ア フ リ カ30都 市 の デ ー タ を 元 に 、 人 口100万 人 の 都 市 に 相 当 す る 延 長 と し て5,000kmを 基本シナリオとし、3,000km、7,000kmの 場合を加 えた3つ のシナ リオを設 定し 、j によらず一定とした。
施設条件(4.4)
NCT:接続数合計 人 口100万 人 の 都 市 を 想 定 し 、 接 続 数 合 計は20万とした 。
都市の設定(4.2)
NICj:j年時点にお ける違法接続数
途上国の実態から、基本シナリオの初期 値NIC0を 接 続 数 合 計NCTの5% と し 、
10%、1%の場合を加えた3つのシナリオ
を設定した。
施設条件(4.4)
NMFjt:j年 時 点 に お け る 材 齢t年 の 稼働メーター数
メ ー タ ー 設 置 数 に 対 し て 故 障 率 を 考 慮 し、稼働メーター数と故障メーター数を 計算した。初期値NMF0 tは、初期故障率 を0.2として計算した 。
施設条件(4.4)
NNMj:j年 の メ ー ター未設置数
メーター未設置率の初期値を 、基本シナ リ オ で は25% と し 、0% 、50% の 場 合 を 加えた3つのシナリオを設定した 。
施設条件(4.4)
NUGDj:j年の送配 水管地下漏水箇所 数
初期値NUGD0 は、送配水管総延長Lが材 齢TD0に な る ま で の 累 積 地 下 漏 水 箇 所 数 を計算して与えた。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
NUGSj:j年の給水 管地下漏水箇所数
初期値NUGS0 は、給水管接続数NCTが材 齢TS0に な る ま で の 累 積 地 下 漏 水 箇 所 数 を計算して与えた。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
P:平均水圧(m) 基本シナリオを40mとし、20m、60mの場
合を加えた3つのシナリオを設定した。
施設条件(4.4)
RIC:違法接続数初 期 値 に 対 す る 毎 年 の違法接続増加率
5%と仮定した。 施設条件(4.4)
58
TDj:j年 の 送 配 水 管 の 最 も 古 い 材 齢
(年)
初期値TD0は10年とした 。 施設条件(4.4)
TF:破裂事故によ る 漏 水 の 修 理 に 要 する時間(hr)
途上国における実績水準から 、24時間と した。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
TMj :j年のメータ ーの最も古い材齢
(年)
初期値TM0は5年とした 。 施設条件(4.4)
TSj :j年の給水管 の最も古い材齢
(年)
初期値TS0は5年とした。 施設条件(4.4)
UC1: メ ー タ ー 更 新の単価(円/個)
対策コストはメーターの費用とし 、途上 国の実績水準から1,500円/個とした。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC2: メ ー タ ー 設 置 の 単 価 ( 円 / 箇 所)
対策コストはメーター 、メーターボック ス、施工の合計とし、途上国の実績水準 から6,300円/箇所とした 。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC3: 違 法 接 続 対 策 の 単 価 ( 円 / 箇 所)
対策コストはメーターの費用 、メーター ボックスの費用 、施工費用の合計とし 、 途上国の実績水準から6,300円とした。違 法 接 続 者 を 説 得 す る た め の 人 件 費 は 既 存人員での対応が一般的であり 、追加コ ストとは考えないこととした 。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC4: 送 配 水 管 更 新の単価(円/m)
途上国の施工費用の実績水準から 、VPは 6,000円/m、CIPは10,000円/mとした。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC5: 送 配 水 管 漏 水 探 知 ・ 修 理 の 単 価(円/箇所)
途上国における実績水準から 、5,000円/
箇所とした。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC6: 給 水 管 更 新 の単価(円/接続)
途 上 国 に お け る 施 工 費 用 の 実 績 水 準 か ら、7,000円/接続とした 。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UC7:給水管漏水 探知・修理の単価
(円/接続)
途上国における実績水準から 、2,000円/
接続とした。
対 策 コ ス ト の 単 価
(4.5)
UIC:違法接続1
か所当たりの無収 水量(m3/年/箇 所)
1接 続 当 た り の 水 使 用 量600m3/ 年 の 全 量が無収水になるとした 。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
UL:1接続当たり の給水管単位延長
(m/接続)
途上国における事業計画例から 、5m/接 続とした。
施設条件(4.4)
UMN:故障メータ ー1 個 当 た り の 無 収水量(m3/年 / 個)
ア ジ ア 主 要 都 市 及 び ア フ リ カ30都 市 の 実 績 水 準 か ら 、1接 続 当 た り の 水 使 用 量 を600m3/ 年 と し 、 こ の50% が 無 収 水 に なると仮定した 。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
UNM:メーター未 設置1 か所当たり の無収水量(m3/ 年/箇所)
1接 続 当 た り の 水 使 用 量600m3/ 年 の 50%が無収水になると仮定した 。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
59
ULBGD:送配水管 の 探 知 困 難 な 漏 水 量原単位(m3/ 管 路延長(km)/日
/水圧(m))
0.096m3/管路延長(km)/日/水圧(m)
とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
ULBGSC:給水管1 接続当たりの探知 困難な漏水量原単 位(m3/接続/日/
水圧(m))
0.0006m3/接続/日/水圧(m)とした。 目 的 関 数 に 使 用 す る
パラメーター(4.3)
ULBGSL: 給 水 管 延 長1km当 た り の 探 知 困 難 な 漏 水 量 原単位(m3/管 路 延長(km)/日/
水圧(m))
0.016m3/管路延長(km)/日/水圧(m)
とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
ULRBD:破裂事故 の 送 配 水 管 漏 水 量 原単位(m3/時 間
/ 水 圧 (m) / 箇 所)
0.24m3/時間/水圧(m)/箇所とした。 目 的 関 数 に 使 用 す る
パラメーター(4.3)
ULRBS:破裂事故 の 給 水 管 漏 水 量 原 単 位 (m3/ 時 間
(hr)/水圧(m)
/接続)
0.032m3/時間(hr)/水圧(m)/接続
とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
ULUGD:地下漏水
の 送 配 水 管 漏 水 量 原単位(m3/時 間
/ 水 圧 (m) / 箇 所)
0.12m3/時間/水圧(m)/箇所とした。 目 的 関 数 に 使 用 す る
パラメーター(4.3)
ULUGS:地下漏水 の 給 水 管 漏 水 量 原 単 位 (m3/ 時 間
(hr)/水圧(m)
/接続)
0.032m3/時間(hr)/水圧(m)/接続
とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
W1:メーター更新 の 年 間 対 策 実 施 上 限数量(個)
1班 が1日6個 更 新 で き る と 仮 定 し 、 年 間 250日、20班の稼働を想定し、30,000個と した。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
W 2:メーター新規 設 置 の 年 間 対 策 実 施上限数量
1班 が1日4個 設 置 で き る と 仮 定 し 、 年 間 250日、20班の稼働を想定し、20,000個と した。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
W 3:違法接続対策 の 年 間 対 策 実 施 上 限数量
1班が1日2箇所で説得 、給水管の適正化、
メ ー タ ー 設 置 を 行 う こ と が で き る と 仮 定し、年間250日、20班の稼働を想定し、
10,000箇所とした。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
W 4:送配水管更新 の 年 間 対 策 実 施 上 限数量
送配 水 管の 施 工速 度 を20m/ 日 / 班 と仮 定し、年間250日、20班の稼働を想定し、
100,000mとした。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
60
W 5:送配水管漏水 探 知 ・ 修 理 の 年 間 対策実施上限数量
1班 が1日2箇 所 を 修 理 で き る と 仮 定 し 、 年 間250日 、4班 の 稼 働 を 想 定 し 、2,000 箇所とした。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
W 6:給水管更新の 年 間 対 策 実 施 上 限 数量
1班 が1日2接 続 を 更 新 で き る と 仮 定 し 、 年間250日、20班の稼働を想定し、10,000 接続とした。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
W 7:給水管漏水探 知 ・ 修 理 の 年 間 対 策実施上限数量
1班 が1日4箇 所 を 修 理 で き る と 仮 定 し 、 年 間250日 、4班 の 稼 働 を 想 定 し 、4,000 箇所とした。
年 間 対 策 実 施 上 限 数 量(4.6)
fkt: 管 種 別 の 標 準 事故率曲線
以下のとおりとした。
k=VPの時、𝑓𝑘𝑡= 1.27×10−5𝑡2.907
k=CIPの時、𝑓𝑘𝑡= 1.91×10−12𝑡6.502
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
m:ワイブル分布 形状パラメーター
途 上 国 に お け る メ ー タ ー 故 障 率 が20~
40% に 及 ぶ 実 態 に 合 う よ う 以 下 の と お り設定した。
初期故障要因:0.1 偶発故障要因:1 摩耗故障要因:5
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
ƞ:ワイブル分布 尺度パラメーター
mと同様に、以下のとおり設定した。
初期故障要因:100 偶発故障要因:100 摩耗故障要因:20
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)
γ:ワイブル分布位 置パラメーター
故 障 開 始 時 点 を 示 す パ ラ メ ー タ ー で あ るため、0とした。
目 的 関 数 に 使 用 す る パラメーター(4.3)