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第4章 途上国の大都市を想定した入力値の設定

4.3 目的関数に使用するパラメーター

4.3.3 管路事故率に関するパラメーター

管路の破裂事故による漏水の発生を推定するには、破裂事故の発生確率(事故率)を 設定する必要がある。 日本と途上国では使用している管材の質や施工技術に相違がある ため、事故率も変わるものと考えられるが、 途上国における管路事故率に関する 調査事 例やデータが入手できなかったため、日本における管路事故率の推定式を用いる ことと した。今後、途上国においても事故率推定のための調査が必要であろう。

財団法人水道技術研究センターは、2011年3月に取りまとめられた「持続可能な水道サ ービスのための管路技術に関する研究(e-Pipeプロジェクト)」において、国内外の文献 調査から管路の機能劣化予測式を抽出するとともに、国内の水道事業体に対するアンケ ート調査によって6,453件の漏水事故のデータを把握し、標準事故率推定式を求めている

(水道技術研究センター. 2011.)。

同研究に基づく送配水管 の標準事故率推定式は、3.4.5で述べたとおり、以下のよう

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な式となる。

𝑌𝐷

𝑡

= 𝐶1 ∙ 𝐶2 ∙ 𝐶3 ∙ 𝑓

𝑘𝑡

YDt:材齢t年の送配水管の推定破裂事故率( 箇所/km/年)

C1:仕様に関する補正係数 C2:口径に関する補正係数 C3:地盤条件に関する補正係数 fkt:管種kの材齢tにおける標準事故率

また、給水管の標準事故率推定式については、同研究の対象になっていないため、3.

4.6で述べたとおり、途上国における給水管の事故発生率を反映した補正係数C4を導入 して、以下のとおり設定することとした。

𝑌𝑆

𝑡

= 𝐶1 ∙ 𝐶2 ∙ 𝐶3 ∙ 𝐶4 ∙ 𝑓

𝑘𝑡

YSt:材齢t年の給水管の推定破裂事故率( 接続/1,000接続/年)

C1:仕様に関する補正係数 C2:口径に関する補正係数 C3:地盤条件に関する補正係数

C4:途上国における給水管の事故発生率を反映した補正係数

fkt:管種kの材齢tにおける標準事故率

管種kの材 齢tに おける 標 準事故率fktは、同 研究で 日本国内の 事故デ ータか ら求められ

た以下の式を用いた。

k

=VPの時、 𝑓

𝑘𝑡

= 1.27×10

−5

𝑡

2.907

k=CIPの時、𝑓𝑘𝑡= 1.91×10−12𝑡6.502

仕様に関する補正係数C1は、漏水事故のデータから 表 4.6のとおり設定されている が、鋳 鉄管(CIP)に 対 する設 定はな いため 、同 じ金属 管であ る ダク タイ ル管(DIP) 、 鋼管(SP)の値 を参 考に して1.0と した。 塩化 ビ ニル管 (VP)の 場合 は 継手に よっ て異 なる値を取るが、途上国の施工品質や資材品質を考慮すると事故率は大きいと考えられ

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ることから、最も大きな設定値である1.0とした。

表 4.6 既往研究における仕様に関する補正係数 C1の設定

仕様 管種

DIP SP VP

ポリエチレンスリーブなし 1.0 ポリエチレンスリーブあり 0.4

溶接継手 1.0

ねじ継手 1.4

TS継手(1979年以前) 1.0 TS継手(1980年以降) 0.2

RR継手 0.1

口径に関する補正係数C2は、漏水事故のデータから表 4.7のとおり設定されている。

表 4.7 既往研究における口径に関する補正係数 C2の設定

口径 CIP DIP SP VP

50 -

1.0

2.8

0.8 75

1.0

1.0

100 1.4

150

- 200

1.0 250

300

0.2 0.8

350 400 450 500

0.1 0.2

0.3 600

700 800

0.1 900

1,000

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日本における配水管延長の口径別 割合は、水道統計のデータを集計して分析した結果 が 公 表 さ れ て お り ( 水 道 技 術 研 究 セ ン タ ー. 2015) 、 図 4.4 に 示 す 通 り 口 径75mm超

100mm以下の区分 が最も多く、その前後にあたる50mm超75mm以下の区分 から125mm超

150mm以下までの区分を合わせると、66%を占める。 このデータは配水管のみを対象と

して集計しているが、 浄水場と配水池を結ぶ幹線である 送水管は、配水池と各利用者を 結んでネットワーク状に敷設される 配水管に比べると 大幅に延長が短いため、送配水管 の口径分布は配水管の口径分布 によってほぼ決定されると考えてよい。

こ れ よ り 、 本 研 究 で は 送 配 水 管 の 口 径 に つ い て 最 も 使 用 頻 度 が 高 い と 考 え ら れ る

100mmで代表することとし、VPは1.4、CIPは1.0とした。一方、給水管は口径20mmや13mm

といった細い管が多いが、参照している既往研究は送配水管の事故を対象としているた

め、VPについて口径75mmの場合1.0、口径50mmの場合0.8といった設定値になっている。

VPは口径が小さくなるほどC2も小さくなる設定となっているため、口径20mmや13mmの

場合は0.8よりもさらに小さなC2となると考えられることから、0.6とした。

地盤条件に関する補正係数C3は、漏水事故のデータから 表 4.8のとおり設定されて いる。「良い地盤」とは山地、山麓地、丘陵、火山地、ローム台 地、扇状地等を指し、

「悪い地盤」とは谷底低地、後背湿地、旧河道、三角州、干拓地、埋立地等を指す。一 50mm以下,

16%

75mm以下, 20%

100mm以下, 28%

150mm以下, 18%

200mm以下, 8%

250mm以下,

3% 250mm超, 7%

図 4.4 日本における配水管延長の口径別割合

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般に都市が広がる地盤は概ね「良い地盤」に該当すると考えられることから、本研究で は1.0とした。

表 4.8 既往研究における地盤条件に関する補正係数 C3の設定

地盤条件 CIP DIP SP VP 良い地盤 1.0 1.0 1.0 1.0 悪い地盤 1.5 1.5 1.3 1.0

以上の設定に基づく、送配水管の推定破裂事故率YDtは、以下の図 4.5のとおりとな る。

途上国における給水管の事故発生率を反映した補正係数C4は、途上国における給水管 の事故発生率のデータ を参照して設定することとした。1,000接続当たりの 給水管におけ る 年間 漏 水 事故 発 生 数と し て は 、 既 存文 献 に おい て 、 ウ ガ ン ダの 首 都 カン パ ラで131件

(Mutikanga et al. 2009)、ブラジルのサンパウロで69件(国際協力機構. 2008a)などの 報告事例がある。すなわ ち、給水管では1,000接 続当たり年間100件前後 の漏水事故が発 生している。 これらの報告事例では給水管の敷設後の年数に関するデータが明らかでは

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0 10 20 30 40

送配水管の推定破裂事故率YDt (箇所/km/年)

送配水管の敷設後の経過年数t

VP CIP

図 4.5 送配水管の推定破裂事故率

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ないため、地方公営企業法施行規則によって定められた管路の法定耐用年数が40年であ ることを参考 にしつつ、途上国では管路更新が滞り老朽管が多いことも考慮に入れ、概 ね30年 程 度 経 過 し た 時 点 で の 事 故 発 生 数 が 上 述 の よ う な 報 告 事 例 の 水 準 と な る よ うC4 を設定することとした。 図 4.6より、敷設後30年程度で1,000接続当たりの年間漏水事 故発生数が概ね100接続程度となるよう、C4は700と設定した。なお、日本における給水

管の事故発生数 は、1,435の上水道事業を対象とした2010年度のデータにおいて、中央値 は4.1件となっており(水道技術研究センター.2012)、途上 国の水 準の1/10以下であ る。