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酵素触媒重合の重合挙動解析

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 75-79)

2.3 結果・考察

2.3.2 酵素触媒重合の重合挙動解析

Scheme 2.25: Proposed mechanism of the lipase-catalyzed polymerization of β-BL.

Scheme 2.25に酵素触媒重合の現在までに推定されている反応機構(Scheme 2.1)を本 重合系に当てはめることで示した。この反応機構では酵素により活性化されたモノマーに 重合系内のオリゴマーが求核攻撃することによりポリマー鎖が成長する。このような逐次 的なポリマー鎖成長反応の場合、モノマー転化率と得られるポリマー分子量の間に一次相 関が成立することがリビング重合4の研究により広く知られている。すなわち、ポリマー 鎖数が重合初期段階で決定された以降はモノマーがポリマー鎖の成長のみに消費されるた め、モノマー転化率の上昇に伴って得られるポリマー分子量は一次的に増加する。

したがって、モノマー転化率とポリマー分子量の相関関係を検討することにより、本重

合反応がScheme 2.25に示した反応機構のみで進行したか否かを判断することが可能であ

る。また、モノマー転化率とポリマー分子量の相関関係は重合系の酵素濃度の影響を強く 受けると考えられる。すなわち、酵素濃度増加に伴って重合系内のポリマー鎖数も増加す るため、得られる相関関係の傾きが小さくなると考えられる。

そこで、本項では本重合系における副反応の有無を確認するため、ポリマー分子量とモ ノマー転化率の相関性を検討した。本重合系の基本的な重合挙動の解析で得られた知見を もとに、幅広いモノマー転化率でのデータが得られるように重合条件を設定した。また、

重合反応に用いた酵素濃度がポリマー分子量とモノマー転化率の相関に与える影響につい

4リビング重合: 重合反応中に停止反応や連鎖移動反応がおこらず、単量体が反応しつくしたあとも連 鎖成長末端が活性を保持している重合

ても検討を行うため、3種の異なる酵素濃度を設定して解析した。結果をTable 2.9及び Fig. 2.26にまとめた。

Table 2.9: The relationship between monomer conversion and number-average molecular weight on the polymerization of β-BL a).

Entry Enz. conc.

(wt.-%) Time(h)  Mn  Mw/Mn Conv.

(%)

1 5 12 — — 1.64

2 5 24 530 1.8 4.4

3 5 36 600 2.0 8.2

4 5 48 880 2.0 14.0

5 5 60 950 2.0 22.4

6 5 72 1300 1.9 29.7

7 5 84 1450 1.9 36.5

8 5 96 1570 1.9 44.7

9 5 108 1650 1.9 50.7

10 5 120 1620 1.9 55.9

11 5 132 1890 1.9 61.8

12 5 144 1710 2.0 69.2

13 5 156 1930 1.9 67.2

14 5 168 1960 1.9 75.6

15 5 180 1960 2.0 79.7

16 20 12 260 1.5 6.72

17 20 24 760 2.0 17.6

18 20 36 1120 2.0 33.5

19 20 48 1530 2.0 51.5

20 20 60 1820 2.1 61.8

21 20 72 1940 1.9 70.8

22 20 96 1860 2.0 88.5

23 20 120 1840 1.9 89.2

24 40 2 — — 0.794

25 40 4 — — 2.04

26 40 5 300 1.6 2.32

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Entry Enz. conc.

(wt.-%) Time(h)  Mn  Mw/Mn Conv.

(%)

27 40 6 270 1.6 2.45

28 40 7 250 1.7 4.56

29 40 12 480 1.7 11.9

30 40 18 730 1.9 26.1

31 40 24 970 1.9 40.7

32 40 30 1180 2.0 53.3

33 40 36 1410 2.2 72.3

34 40 42 1450 2.0 79.7

35 40 48 1650 1.8 76.7

36 40 54 1660 2.0 84.3

37 40 72 1740 2.0 91.5

38 40 96 1880 2.3 96.3

39 40 120 1870 2.2 96.6

a) Bulk polymerization of β-BL using CRL at 80 oC.

Fig. 2.26中の破線は各酵素濃度における近似一次直線を示している。Fig. 2.26より、

CRL濃度が40 wt.-%の場合にはモノマー転化率—ポリマー分子量間にある程度の一次関係

が存在し、CRL濃度が5及び20 wt.-%の場合には一次関係が存在しないことが明らかに なった。

Scheme 2.25に示された推定反応機構から活性点の数は酵素濃度に依存すると考えられ、

活性点数の減少に伴ってモノマー転化率—ポリマー分子量間の一次相関直線の傾きは大き くなると推測される。しかしながら、Fig. 2.26で各酵素濃度における近似直線を比較検 討すると、傾きは酵素濃度の影響をさほど受けず、近似直線のy軸切片が酵素濃度の影響 を強く受けた。Fig. 2.26におけるy軸切片はモノマー転化率が0 %の時の分子量を表す ため、原理的にy軸切片は酵素濃度の影響を受けないはずである。

Fig. 2.26における近似直線のy軸切片がモノマー分子量より著しく大きな値を示した

理由は、重合の進行に伴うプロットの傾きの低下だと考えられた。そこで各酵素濃度のプ ロット群に二つの近似直線を当てはめたものを実線で記した。すると、各プロット群は一 本よりも二本の近似直線を用いて作製した近似線に沿っていることが明らかになった。

二本の近似直線を用いてプロットを解析すると、モノマー転化率で20~30 %までの間は

Fig. 2.26: Relationship between monomer conversion and number-average molecular weight on polymerization ofβ-BL a).

a) Bulk polymerization of β-BL using CRL as the catalyst at 80 oC.

各酵素濃度でも、同じモノマー転化率で与えられるポリマー分子量が酵素濃度の影響を強 く受けていることが明らかとなった。すなわち、酵素濃度が低いほど系内のポリマー鎖数 が制限され、モノマーが効率的にポリマー鎖の成長に利用されたと考えられる。モノマー 転化率がさらに上昇すると、特にCRLを5 wt.-%用いた場合にはプロット群の近似直線 の傾きが変化して小さくなったことが明らかになった。このことから、Scheme 2.25に示 された以外の反応が重合系内に存在していることが示された。さらに、Scheme 2.25に示 されずに重合系内に存在する反応はモノマー転化率が低い段階ではあまり進行していない と考えられた。

2.3.3 酵素触媒重合により得られるポリマーの構造解析

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