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緒言

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 111-115)

第 3

有機溶媒中における

poly(3-hydroxybutanoate) の酵素分解

1. 高分子状態を維持しながら溶融・溶解して再成型するマテリアルリサイクル法 2. 高分子材料を化学的もしくは生物学的方法により原材料にまで戻し、再び高分子材

料を合成するケミカルリサイクル法

3. 廃高分子材料を熱・触媒などの作用により分解して燃料ガス・油などの有用物質に 変換して利用するケミカルリサイクル法

4. 廃高分子材料をそのまま高炉原料化、あるいは発電用の石炭代替燃料として利用す るサーマルリサイクル法

5. 洗浄して再利用するリユース法

ここでは循環型化学工業の確立に有用であると考えられる、上の2. に記した化学的に 高分子材料を高分子材料の原料へと変換するケミカルリサイクルについて記す。一般に高 分子材料の原料であるモノマーはエネルギー的に高いため、従来検討されてきた方法で高 分子材料を原料に戻すためには熱・圧力など多大なエネルギーを要した。そのため、バー ジンモノマーと再生モノマーでは価格面で大きな差が生じ、実用化は不可能とされてき た。そこで、本研究では生分解性高分子材料が酵素が切断可能な結合で構成されているこ とに着目し、酵素を触媒に用いた生分解性高分子材料のケミカルリサイクルについて検討 を行った。ポリマーとして化石資源由来の非天然型poly(3-hydroxybutanoate) [P(3HB)]

の場合の概念図をFig. 3.1に示した。

Fig. 3.1: Conceptual scheme of the enzyme-catalyzed chemical recycling.

ついで、本研究の分解系が水系ではなく有機溶媒系である理由について説明する。本研 究は生体触媒を用いたケミカルリサイクルの構築が最終的な目的である。したがって、分 解生成物の取得と分子構造が重要である。近年、水系(緩衝溶液)における様々な脂肪族

ポリエステルのリパーゼによる分解が報告されている。このことは自然環境中に放出され た脂肪族ポリエステルが特異的な分解菌ではなく、一般的なリパーゼにより分解されるこ とを示しており、生分解性ポリマーの環境低負荷性を示している。しかし水系反応はケミ カルリサイクル系を構築する際に適切な方法ではないと考えられる。

すなわち、ポリマーがオリゴマーやモノマーにまで分解された場合、水系では分解生成 物が水中に溶解する。それらの分解生成物を回収するためには有機溶媒を用いた抽出、も しくは水分を減圧濃縮により除去する必要がある。しかし、抽出操作では分解生成物を

100 %回収するのが困難であり、水の減圧濃縮は必要とされるエネルギーが非常に大きい

上に緩衝溶液由来の塩を同時に回収してしまう問題点が挙げられる。

そこで、本研究ではリパーゼが他の酵素と比較して有機溶媒に対する耐性に優れている ことを利用し、有機溶媒に溶解させたポリマーをリパーゼにより切断させる方法を選択 した。

P(3HB)分解酵素は基質吸着部位を構造内に有しており、そのために水に不溶なポリ

マーを水中において切断することができるとされているが、リパーゼはそのような基質吸 着部位を有さないために溶媒にポリマーが溶解することが最低限必要であると考えた。ま た、リパーゼは有機溶媒に対する耐性に優れているが、親水性溶媒中では他の酵素と同様 に活性を失うことが知られている。したがって、有機溶媒を選択するポイントとしては次 の4点を重視した。

① ポリマーを溶解できること 

② 酵素が活性を保持することができること 

③ 沸点がある程度高く、反応系がある程度の温度に耐えられること 

④ 環境に対する負荷を考え、ハロゲン系溶媒でないこと 

PPLがジエチルエーテル中においても活性を保持することは報告されているが、ジエチ ルエーテルは沸点が低いために選択しなかった。また、クロロホルムはポリマーに対して 良溶媒であるが、ハロゲン系溶媒であると同時にクロロホルム中では酵素が活性を失いや すいことが知られているため選択しなかった。

トルエンは溶媒自体も生分解性であること、ポリマーに対して良溶媒であること、酵素 が活性を保持しやすい疎水性溶媒であることから選択した。また、ジイソプロピルエーテ ルを選択した理由としてはオリゴマーと酵素の相互作用を検討した際に酵素がジイソプロ ピルエーテル中において活性を保持していることが確認されており、さらにジエチルエー テルと比較して沸点が高いことが挙げられる。しかしながら、この溶媒は爆発性が非常に 高く、蒸留により純度を上げると更に爆発性が上昇するとされている。本検討においても 蒸留といった精製を行わずに用いており、溶媒中に含まれる安定剤といった化合物の影響

を完全に無視することができない。したがって、適切な溶媒とは考えることができないが、

溶媒の相違が分解挙動に与える影響を検討するために用いた。

過去の当研究室の報告により、poly(trimethylene carbonate)がアセトニトリル中 Novozym°r 435の作用を受けて分解することが確認されているため117,118,186)、アセトニ トリルを溶媒として選択した。また、アセトニトリルは親水性が非常に高い溶媒であるた め、溶媒の疎水性が分解挙動に対して与える影響を検討できると考えた。

したがって、本研究では前章でも検討を行った非天然型P(3HB)の各種有機溶媒中にお ける酵素分解反応について詳細な検討を行った。特に得られた分解生成物の構造について は前章と同様、MALDI-TOF MSを用いた詳細な検討を行った。

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