• 検索結果がありません。

酵素のオリゴマーに対する基質認識能

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 102-105)

2.3 結果・考察

2.3.4 酵素のオリゴマーに対する基質認識能

これまでに提唱されているラクトン環の酵素触媒重合の反応機構(Sheme 2.25)はモノ マーと酵素の相互作用に関してのみであり、重合の進行とともに生成するオリゴマー鎖及 びポリマー鎖に対する酵素の基質認識能に関しては未だ不明瞭な点が多い。本研究のこれ までの解析から、重合反応中に他の反応が同時に進行していることが示され、Sheme 2.25 に示した反応機構からは生成が説明できない環状型及びクロトネート型の分別も行われた。

ある種の脂肪族ポリエステルは緩衝溶液中で、油脂加水分解酵素(リパーゼ)の作用によ り分解されることが知られている。このことは重合系内に生成するオリゴマー鎖及びポリ マー鎖がリパーゼの基質となることを示している。

酵素のオリゴマーやポリマーに対する基質認識能が報告されていない理由は、オリゴ マーが有する分子量分散のために解析が非常に困難であるからである。酵素がオリゴマー 鎖もしくはポリマー鎖を基質として認識した結果、加水分解とエステル交換反応が重合系 内で生じると考えられる。これらの反応により得られる構造体は分子量分散を有するオリ ゴマー及びポリマーの集合体であると推測され、分子構造の根本的な変化がないために、

1H-NMRでは反応の有無を検証できない。また、反応前後の分子量変化が小さければ、

SECによる反応が存在することの証明は困難である。

このように一般的な測定方法ではオリゴマー鎖及びポリマー鎖を酵素が基質として認識 したか否かを明らかにするのは困難であるが、明らかとなれば酵素触媒重合の反応機構に 関して判明する領域は大きい。そこで、解析を困難にしている基質オリゴマーの分子量分 散を限りなく小さくすれば本解析は可能であると考え、SFCを用いて分取した単一分子量 を有するオリゴマーを基質として用いることとした。分子量変化の追跡はMALDI-TOF MSを用いて行った。

結果をTable 2.11にまとめた。また、反応前後のMALDI-TOF MSスペクトルをFig.

2.52に示した。

Table 2.11: Screening of enzymes and organic solvents for the interaction between oligomers and enzyme a).

Entry Enzyme Solvent  Temp. (℃)   Time (h)  Reaction

1 Novozym°r 525 IPE(*) 60 12 Yes

2 Novozym°r 525 IPE(*) 60 48 Yes

3 Novozym°r 525 toluene 60 96 Yes

4 Novozym°r 525 toluene 80 72 No

continues to next page

continues from previous page

Entry Enzyme Solvent  Temp. (℃)   Time (h)  Reaction

5 CRL IPE(*) 60 48 No

6 CRL toluene 80 48 No

7 PPL IPE(*) 60 48 No

8 PPL toluene 80 48 No

9 PPE IPE(*) 60 48 No

10 PPE toluene 80 48 No

11 salt(*) IPE 60 48 No

12 – IPE 60 48 No

a) 4.1 mg of oligomers in 500 µL of solvent and enzyme were stirred.

(*)IPE = Diisopropyl ether, (*)salt = Potassium phosphate

Fig. 2.52: MALDI-TOF MS spectra of fractionated P(3HB) before and after the enzymatic reaction b).

b) 4.1 mg of oligomers in 500 µL of IPE and Novozym°r 525 (lyophilized powder from 100µL of Novozym°r 525 solution) were stirred at 60oC for 48 h.

酵素中に含まれると考えられるリン酸塩を作用させても全く反応の進行が確認されな かったことから、本反応は酵素の作用により進行していると考えられる。また、反応後の

Scheme 2.53: Proposed mechanisms of the lipase-catalyzed inter/intra-molecular transesteri-fication of P(3HB) polymer chains.

スペクトルより、反応が単純なエステル化のみではなく、広範囲にわたる加水分解反応及 びエステル交換反応であることが示された。

ここでは、基質が非常に微量であったために有機溶媒で希釈した。したがって、酵素の 有機溶媒耐性を考慮せずにNovozym°r 525以外の酵素がオリゴマーを認識しないとは断定 できない。しかし、本検討結果は、リパーゼが有機溶媒環境下においてオリゴマーを基質 として認識することを明確にした。

本検討の結果をまとめると、リパーゼはモノマーのみならず、ポリマー鎖をも基質とし て認識し、加水分解反応及びエステル交換反応を引き起こすことが明らかとなった。した がって、重合反応中においてもScheme 2.53のように酵素は重合系内に生成したポリマー を基質として認識し、エステル交換もしくは加水分解反応を生じることが示された。

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 102-105)