2.2 試薬・機器・方法
2.2.3 実験方法
(1)酵素触媒重合
あらかじめ減圧乾燥しておいた6 mm攪拌子を付したねじキャップ付き試験管(φ13 ×
100 mm)に所定量の酵素をはかり取り、次いで減圧乾燥したマイクロシリンジを用いて
モノマーであるβ-BLを300 µL(315 mg)添加した。その後、試験管内をアルゴン置換し た上で密栓し、所定温度の油浴上で所定時間攪拌することにより重合を行った。反応終了 後、反応混合物をクロロホルム 2 mLに溶解させ、桐山ロートにセライト545を2 g敷き 詰めて不溶物を濾別した。さらにクロロホルム(合計 20 mL)で数回洗浄した。次いで、
クロロホルムを減圧留去して粗ポリマーを得た。
Fig. 2.3: 1H-NMR spectrum of β-BL.
1H-NMR (300 MHz: CDCl3) : δ = 1.58 (–O–CHCH3–CH2–CO–O–, 3H, d, J
= 6.09 Hz), 3.07 (–O–CHCH3–CH2–CO–O–, 2H, dd, J= 4.00, 16.4 Hz), 3.57 (–O–
CHCH3–CH2–CO–O–, 2H, dd,J= 4.00, 16.4 Hz), 4.77 (–O–CHCH3–CH2–CO–O–
, 1H,J= 6.09 Hz)
モノマーのポリマーへの転化率は 1H-NMRにおける1.58 ppm[β-BL]と1.22~1.33
ppm[P(3HB)]のβ-メチル由来ピークの積分値を用いて算出した。また、重合反応の条件
検討の際に求めたポリマー分子量はサイズ排除クロマトグラフィー (SEC)により求めた。
モノマーの1H-NMRチャートをFig. 2.3にポリマーの1H-NMRチャートをFig. 2.4に 示した。
Fig. 2.4: 1H-NMR spectrum of P(3HB).
1H-NMR (270 MHz: CDCl3) : δ = 1.22~1.33 (–O–CHCH3–CH2–CO–O–, 3H, m), 2.41~2.63 (–O–CHCH3–CH2–CO–O–, 2H, m), 5.16~5.37 (–O–CHCH3–CH2– CO–O– , 1H, br)
(2)超臨界二酸化炭素クロマトグラフィー (SFC)による分別
酵素触媒重合により得られたポリマーの詳細な構造解析を行うには得られたポリマーを 単一な分子構造もしくは単一な分子量のフラクションに分別する必要がある。そこで本研 究では、既に分子量分散を有するポリスチレンから単一分子量を有するフラクションへの 分別が報告されているSFCを用いて、β-ブチロラクトンの酵素触媒重合により得られた ポリマーを単一な分子構造もしくは単一な分子量のフラクションに分別した。SFCの装置 概要はFig. 2.2に記した。
(3)酵素とオリゴマーの相互作用に関する検討
酵素触媒重合の反応機構を検討する上で、反応系内で順次生成するオリゴマーに対する 酵素の基質認識能を調べる必要があった。そこで本研究では、基質としてSFCを用いて 分別した分子量的に均一なオリゴマーを用いた。その際、基質の得られる量が非常に少量 であったことから、基質を有機溶媒を用いて希釈して酵素を作用させた。また、酵素中に 含まれる無機不純物として考えられるリン酸カリウム塩を基質に対して直接作用させるこ とにより本検討におけるブランク反応性も検討した。
以下に実験方法を記す。基質であるオリゴマーを十分に減圧乾燥し、所定の有機溶媒
に溶解させた。ついで、あらかじめ所定量の酵素と磁気攪拌子を付した1.5 mLエッペン チューブに基質が4 mg入るように分注した。反応は所定温度に設定したカラムオーブン 中で行った。また、Novozym°r 525は緩衝溶液中に溶解状態で保存されていたので、エッ ペンチューブに100 µL分注し、ドライアイス-アセトンを用いて凍結させた後に凍結乾 燥したものを反応に用いた。反応の有無はMALDI-TOF MSを用いて確認した。